アジアのお坊さん 番外編 -18ページ目

アジアのお坊さん 番外編

旅とアジアと仏教の三題噺

「ホームページ アジアの東司…お寺のトイレ」の中で、日本各地のお寺の注意書きや貼り紙を紹介させて頂いているのですが、先日、美濃のご法務に出掛けた折に、知多半島の源義朝の墓のある野間大坊(大御堂寺)へと足を延ばさせて頂いたら、このような掲示がありました。いずれホームページを更新致したく思います。

 

 

 

 

                おしまい。

平家物語は旧約聖書やギリシャ神話、インドのラーマーヤナにも匹敵する日本最高の伝奇文学だと私は思っている。誰もが知っている登場人物とエピソード、そこに含まれている数々の神話伝説や仏教理論、「祇園精舎…」で始まる冒頭の文章と首尾一貫する結末までの華麗な文章、どれを取っても申し分ない物語だ。

 

さて、最近改めてそう感じて、所用で出掛けた先の付近で平家物語ゆかりの地があれば参拝させて頂いている。

 

先ずは京都府南部、以仁王の御陵墓。

 

 

教科書にも必ず出て来る「以仁王の令旨」だが、この挙兵が後の源氏の世の端緒となったとは言え、その無念さは如何ばかりだったかと思われる。その近くにある浄妙塚は以仁王に従った浄妙法師を葬った塚だ。

 

 

浄妙坊が皇族ではないにも関わらず、そこは宮内庁の管理(以仁王墓飛び地)となっていて、さぞ浄妙は嬉しかろうと思って詠んだ川柳一句、

 

 浄妙を 意気に感じて 粋な処置

 

 

さらに南へ進むと大仏炎上の咎で南都に怨まれた平重衡首洗いの池がある。

 

 

木津川沿いではねられた重衡の首を洗ったその池の付近では、以来、柿の木が生らないという「不成柿(生らず柿)」の伝説が有名だ。

 

 

しかし実際に訪れてみると池の傍の柿の木にはたわわに柿が実っており、さては重衡も既に成仏したのかと思ってまた一句、

 

 時を経て 仏となるや ならず柿

 

 

さらに今度は美濃のご法務に向かった時に、是非にと思って知多半島の源義朝の墓へと足を延ばさせて頂いた。

 

 

頼朝・義経の父である義朝は東国へ落ち延びる際に身を寄せた知人に裏切られ、入浴中を襲われて、もしも木刀の一本でもあれば応戦したものをと、悔やんで息絶えたそうだ。

 

 

それにちなんで源義朝の墓所には小さな木刀を供える習わしだということなのだが、怨みを以て怨みに報ずるのは仏教徒の務めではないと思い、木刀ではなく、しばしの読経を手向けさせて頂くことにした。

 

 怨みより 怨まぬことを 法施かな

 

 

              おしまい。

 

 

※タイの高僧・プッタタート比丘の「仏教人生読本」「観息正念」PDF版を「ホームページ アジアのお坊さん 本編」上に公開しております。

カードマジックが好きではないのだが、それだけに松田道弘氏の「トランプ・マジック」(筑摩書房)を初めて読んだ時は衝撃だった。

 

「この本は、これを読めばカード奇術のすべてがわかるといったカード奇術の百科事典ではありません。」

「特別な技術を使わないで、しかも心理的効果の大きなトリックをという一点にスポットをあてていくつかのカード奇術を選り出しました。」

「そのためにふつうカード奇術に必要と考えられているいくつかの基本技法をわざと省きました。」

 

松田氏の「はじめに」と題した前書きにこう書いてある通り、ダブルリフトもカードのパスもコントロールも出て来ないこの本は、他のカード奇術解説書とは全く異質な作りだと言える。

 

例えばメンタル・マジックの「あなたは3の山を選ぶ」、子供向けの奇術本にでも載っているようなこのトリックが、「演出の重要性 マーリニ「3の山を選ぶ」の口上」という工夫によって、何億倍も素晴らしい奇術に変化する。

 

当時、実際に演じてみたので、その効果がどれほど絶大だったかを、今でも忘れることが出来ない程で、全編がこのような、単純にして珠玉の驚異に満ちた奇術本だ。

 

 

※タイの高僧・プッタタート比丘の「仏教人生読本」「観息正念」PDF版を「ホームページ アジアのお坊さん 本編」上に公開しております。

マレーシアのバス事故のニュースで、日本人を乗せたツアーバスがキャメロンハイランドに向かっていたと聞いて、その場所はタイのシルク王、ジム・トンプソンが謎の失踪を遂げた場所だなと思い当たった。

 

私がバンコクのお寺で修行中に読んだ、タイに関する当時の日本語書籍の中にはジム・トンプソン失踪事件のことがよく載っていて、スクンビットの古書店でこの事件を題材にした松本清張の「熱い絹」なども買ってみたし、セン・セーブ運河沿いにある「ジム・トンプソンの家」を黄衣のままで訪ねては、当時珍しかった日本人比丘として歓待して頂いたりしたものだ。戒律による立ち居振る舞いには十分気をつけながら。

 

 

                おしまい。

 

※タイの高僧・プッタタート比丘の「仏教人生読本」「観息正念」PDF版を「ホームページ アジアのお坊さん 本編」上に公開しております。

 

        おはなし

 

 

砂漠の国の王様が
一人の女に言いました。
毎晩おはなししてください。
おはなしなしでは生きられない。
      ※
朝は足なし、昼は二本足、夜は消えてしまうもの、なーんだ。
水中の暮らしを捨てて人となり、
王子との恋に破れて昇天した人魚の姫を悼み、
スフィンクスは道行く人に謎をかける。
      ※
屏風の虎を召し捕れと言われた小僧は、
やおら縄を振り回し、
召し捕ってみせますから誰か虎を追い出して下さい、
早く早く、と言ったものの、
周りの大人は白い目で、
それが出来れば苦労はないわ、
つべこべ言わずにさっさと召し捕れとけしかけたものだから、
早く早くの声も今はかすれて、
小僧はただ、赤面するばかり。
      ※
私があの時、少し悲しい顔をした理由は、
悪人が再び地獄に落ちた、
その罪と罰を思ったからではなくて、
仏と呼ばれる身でありながら、
彼の心を試すように蜘蛛の糸を垂らした自分の心を、
悲しく思ったからなのです。
      ※
さあ、猿よ、
この世の果てにたどり着けたら、
お前を自由にしてやろうと言って、
仏は自分の指をこの世の果ての柱と見せかけて、
猿の行く手を遮った。
猿は仏の指に、

 

   己が手の 猿捨てきれぬ 仏かな
 
と書き付けると、たちまち姿をくらました。

 

 

        おしまい

 

 

 

※画像は香港で購入した西遊記の絵本です。

 

※日本人上座部僧・三橋円寒ヴィプラティッサ比丘が日本語訳された、タイの高僧・プッタタート比丘の「仏教人生読本」「観息正念」PDF版を「ホームページ アジアのお坊さん 本編」上に公開しております。