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夢の彼方に

折に触れて鑑賞している様々なライブやアート、スイーツについて
綴っています。

2022年9月、墨田区菊川にクラウドファンディングにより誕生したミニシアター・Strangerで、「東京カウボーイ」を鑑賞しました。

監督は「男はつらいよ」の撮影現場に参加した経験を持つマーク・マリオットで、井浦新がアメリカ映画で初主演を務めた。また、平成「ガメラ」シリーズ等に出演した藤谷文子が脚本を共作し、主人公の上司であり恋人役でキャストに名を連ねている。

 

大手食品会社に勤めるサラリーマンのサカイヒデキ(井浦新)は、様々な食品ブランドのM&Aを進めることが主な仕事で、上司である副社長のケイコ(藤田文子)と婚約をしている。

ヒデキは会社が米国モンタナ州に所有する経営不振の牧場を収益化するため、希少価値の高い和牛に切り替えることを提案。和牛畜産業の専門家であるワダ(國村準)を連れてモンタナへ向かう。初日にワダが怪我で入院したため、ヒデキはスーツ姿で牧場へ向かい、和牛の事業計画を牧場スタッフにプレゼンするが、全く相手にされない。ある日スタッフのハピエルのファミリーが開催するバースデーパーティーに参加したことで文化や風習の違いを知り、自分の生き方を見つめ直すこととなる。更にハピエルが副業としていたキヌア栽培から、新たな牧場再建のプランを思いつくが・・・。

 

起死回生、大逆転のプランはいいのだが、その肝心の部分がスルーされていて、やや不完全燃焼か。兎にも角にもモンタナの、桁違いに広く、美しい大自然に圧倒される。いや、もうほとんどそれが全てとも言える映画だろう。モンタナの大自然を背景にした時点で、細かいストーリーは吹き飛ばされたのかも知れない。

隅田川以東で唯一のミニシアター・Strangerの更なる成功を祈念します。

 

 

 

 

今夜はねづっちの独演会でしたが、お目当ては音曲師の桂小すみさんでした。

春風亭昇太の独演会で何度か高座を鑑賞していたが、その超絶技巧に唖然とさせられた。

とにかく経歴が凄いビックリマーク

幼少時からピアノを習い、中学と高校では吹奏楽部でフルートを演奏。東京学芸大学教育学部音楽科では国費でウィ―ンに留学しミュージカル専攻科で特別賞を受賞するが、在学中に三味線に魅了され、お囃子さんに成るべく国立劇場の寄席囃子研修生となる。

三代目桂小文治門下に入門し、寄席で前座修行。2019年4月からは、寄席色物の音曲師に転身し、桂小すみとなる。

高座では、ホイットニー・ヒューストンの代表曲である「I Will Always Love You」のメロディーラインを三味線で弾き、歌詞を「花笠音頭」で演奏するなど、まさに、天才現る!!である。

また、ねづっちのなぞかけもいつも通り神がかっていた。

道楽亭は30名で満席の会場で、今夜は4割が若い女性で、いかにも落語好きそうなおじさん(おじいさん?)は私を含めて3人ほどだった。

若手芸人を中心に開催されていた道楽亭だが、5日ほど前にオーナーが急逝されたそうで、昨夜までの予定は全て中止されていたが、ねづっちの会だけは特別に開催された。

 

 

 

「関心領域 (The Zone of Interest)」を鑑賞しました。
第96回アカデミー賞で国際長編映画賞と音響賞の2冠を受賞した作品で、「音」にこれほど拘り、これほど衝撃を受けた作品はありません。オープニングでタイトルが出た後、オ~~という抑揚のない合唱と伴奏の音がバックに流れる中、スクリーンは黒一色となり、それが約3分間も続く。

時は1943年、青い空と緑の芝生にプール、色とりどりの花が咲き乱れる美しい花壇や温室、庭で催されるパーティー・・・そこにはとても穏やかな上流階級の家族の日常があった。誰もが笑顔で子供たちの楽し気な声が聞こえている。しかし、鉄条網が付いた塀の向こう側にある大きな建物からは黒煙が上がり、女性や子供の泣き声が聞こえてくる。そこはアウシュビッツ収容所であり、その家族は収容所の所長であるルドルフ・ヘスの家族だった。彼らが交わす日常会話のバックには、常に焼却炉のゴォーという音が流れている。しかし彼らはそれらの音に慣れてしまっていて、全く気にも留めていない。新たな収容者から奪い取った毛皮を着るヘス婦人、歯磨き粉の中に忍ばせていたダイヤモンドを見つけて喜ぶメイドたち、入れ歯の裏側を探る子供たち。やがてヘスの昇進でベルリンへの異動を命ぜられるが、妻はここが理想の家であり、ここを離れるつもりはないとこれを拒否する・・・。

全編を通して流れる焼却炉の音、銃声、汽車が迫る音、犬の遠吠え、そして苦痛にゆがむ悲鳴・・・。収容所内部の映像は一切使わず、「音」のみで人類史上最も凶悪な暴力が、塀の向こう側から聞こえており、それを想像するだけで全身が総毛立つ。終盤で、ヘスが階段を下りながら嘔吐するシーンから、画面がいきなり現代にジャンプし、今は博物館となっている元アウシュビッツ収容所で、館内を清掃する職員の姿が映し出される。それが何を意味するのか?それは、観る者に委ねられているのだろう。