シーラという子 / トリイ・ヘイデン | 趣味は読書です

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ひたすら読んだ本たちの記録

<トリイ・へイデン文庫>シーラという子--虐待されたある少女の物語 (ハヤカワ文庫 HB)/早川書房
¥782
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お世辞にも清潔とはいえぬ姿に敵意むきだしの目。

シーラは6歳にして傷害事件を起こし、

トリイの特殊教室に送られてきた。

決してしゃべろうとせず泣きもしない。

ときに怒り狂い金切り声をあげ大暴れする。

だが実は、ずばぬけた知能の持ち主で、

心身に深い傷を負っていた…。

暴力、貧困、虐待に蝕まれた少女が

堅く閉ざした心をおそるおそる開き、

一人の献身的な教師と

深い信頼の絆で結ばれてゆく姿を描いた

感動のノンフィクション。


 


 

すっっっばらしい本でした。

ここにだらだら変な感想を書くのが

申し訳なくなるぐらい。

作者のトリイ・ヘイデンが、教師として

“くず学級(Gabage Class)”という

「精神遅滞の子どものクラス」、

「情緒障害の子どものクラス」、

「身体的な障害をもつ子どものクラス」、

「問題行動を起こす子どものクラス」、

「学習障害の子どものクラス」の

どれにも分類できない子どもたちが

施設に収容される前に入れられる

最後の砦となるクラスで、

季節労働者キャンプから来た

29歳のメキシコ系アメリカ人・アントンと、

毎日2時間だけ来て働くという

14歳の中学生・ウィットニー

と共に過ごす物語です。

では、クラスの9人の子供たちの紹介をば。

 

ピーター

8歳。黒人。

神経の病気で、激しい発作を起こす。荒々しい。

 

タイラー

8歳の女の子。既に2回自殺を試みている。

喉から人工のチューブが出ている。

 

マックス

6歳。自閉症。

 

フレディ

7歳。超肥満児。自閉症。

 

セーラ

7歳。身体的及び性的虐待の犠牲者。

 

スザンナ・ジョイ

6歳。美しいお人形のような女の子。

小児分裂病(現在で言う、統合失調症)で、

聴覚的にも視覚的にも幻覚を持っている。

 

ウィリアム

9歳。

水と暗闇と車と電気掃除機とベッドの下のほこりを

怖がっている。

 

ギレアモー

9歳。季節労働者の子ども。怒りっぽい。盲目。

 

シーラ

途中からこの学級に来た、6歳の女の子。

3歳の男の子に火をつけた罪。

自身も虐待の被害者で、異常な復讐心を持つ。

しかしIQが170を超えるという天才でもあった。

 

そして、この子どもたちが

その後どのような人生を歩んでいるかが、

著者トリイ・ヘイデンの公式サイトこちら

に載っていました。どれも衝撃・・。

 

そして子どもたちはもちろん、

それらを取り巻く大人たちが素晴らしい!

トリイのボーイフレンドで弁護士のチャドが、

最終的にトリイと結婚しなかったらしいことを知って

なぜか私が本当に本当に落胆しました。笑

シーラと家族ごっことかしてあげて、

本当にその優しさに、泣きそうになりました。

シーラもチャドのことが大好きでした。

物語の最後、劇に出るシーラの為に

再びチャドがドレスをプレゼントしてしまう所は、

胸がかきむしられる思いでした。


もう一人は、教室でのトリイの助手、しかし

助手と言う立場を大きく越えて大活躍した、アントン。

彼は高校も出ておらず、季節労働者を脱するために

この仕事を始めました。しかしやっていくうちに、

子どもたちを心底愛するようになり、また彼自身、

子どもに接する仕事に

自分の才能を見い出していきます。

もう大好き!!

彼の小さな小屋で、彼のことを大好きな

奥さんと小さな2人の息子を前にして、トリイに

自分が学校に戻って教職を取れるような

可能性はあるだろうかと聞きます。

高校卒業認定資格の取得を目指して

勉強していることをトリイに打ち明けるのです。

トリイは、教師になるレベルの

教育を受けるまでにかかる

時間とお金を思い、とても無理だと思いますが、

夫が大いなる計画を語るのを

顔を輝かせて聞いている奥さんの顔や、

お父さんが本当の先生になったら、

本当の家に住んで、自転車を買ってもらうんだ!

と踊っている子どもたちの姿を見て、

とても真実を言えませんでした。

 

しかししかし!物語の終盤、トリイの誕生日に

アントンがあるものを渡します。それは、

ある大学が、アントンを奨学生として

受け入れることを決めた、という手紙でした。

彼はやりました!!!

先程載せた、トリイの公式サイトの、

登場人物たちのその後、に

アントンのことも書いてありましたね。

「アントンは現在50代の前半です。

既婚で、 2人の息子はすでに成人しています。

彼は最初の学位を教育学で取得したのち、

先頃も精神障害に重点を置いた特殊教育で

修士号をとりました。アントンは先だって、

教育に携わって20年目を祝いました。

現在はカリフォルニアに住んで、

ラテンアメリカ系移民の子どもに対する

特殊教育プログラムの仕事をしています。」

すごいですっ!!!夢があるなら、

いつからでも遅くないことの証明です。

 

そして肝心のシーラですが、

トリイと出会って、まともになってきてからの

シーラの感情表現が本当にかわいい!

髪をとめるクリップをもらった時も、

初めて本物の花を見て、それをもらった時も、

精神病院に入れられるかどうかの裁判に勝った夜

チャドにピザを食べさしてもらい、

ドレスまで買ってもらった時も、

喜びのダンスを踊りまくります。

「胸がいっぱいに大きくふくれてる。

すっごく大きくなってるんだよ。

あたし、いちばん幸せな子かもしれない。」

人間というのは本来、喜ぶ生き物なのです。

 

ウィットニーは、極度の恥ずかしがり屋のくせに、

人を笑わせるという才能も持っていました。

「わたしたちはよく笑った。

だからといってわたしたちの教室が

いつもいつもおかしなことばかりだった

わけではない。むしろ、

いつのまにか笑っているようなことでも、

笑うのをやめて本気で考えてみれば

悲劇でしかないというようなことが多かった。

人間の精神がもつ最高の魔力とは

笑う能力だといえるかもしれない。

自分のことを、お互いのことを、

自分たちの絶望的な状況のことを

笑いとばせる能力かもしれない。

笑いにはわたしたちの生活を

正常なものにしてくれる力がある。」

 

シーラのお父さんも、

正直やっていることはひどいのですが、

最終的に何だか憎めない、

彼もまた一人の被害者なのだということがわかりました。

たまにシーラの活躍を見に学校に来る時や

トリイたちに会う時に、

何とかきれいな状態でいようと努力しているのが

わかるのがいじましい。

彼はその後どうなったのでしょう・・

このシーラの物語には、続編があります。

タイガーと呼ばれた子 」。衝撃のあらすじです。

 

7年ぶりに再会したシーラは、

オレンジ色の髪をした14歳のパンク少女だった。

驚いたことに、かつての楽しかった日々も

二人の間の信頼関係もまったく憶えていないという。

彼女が少しでも打ち解けてくれるよう、

トリイは自分がセラピストを務めるクリニックで

夏休みの間、手伝いをしてくれないかと誘う。

やがてシーラの口から、

幼い頃から受けていた性的虐待の事実が明るみに…。

真の癒しを見出すまでのシーラとトリイの葛藤を描く。

 

Oh、、って感じでしょう??

実はこの2冊のシーラの物語以外にも、

トリイ・ヘイデンはノンフィクションをたくさん書いています。

よその子

檻のなかの子

愛されない子

幽霊のような子

「ヴィーナスという子」

「霧のなかの子」

 

もちろん全部読みます。

本当、いいシリーズに出会えました。


 


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