「理系研究職の世界」というシリーズで、前回までに理系研究職の世界では出身大学よりもむしろ出身研究室が大事であること、そして力のある(≓研究費が潤沢な)研究室は私立大学よりも国立大学に多い傾向があることなどを書いてきました。

 

理系研究職の世界(1) 社会に出たらどこの大学を出てるかなんて分からない?

理系研究職の世界(2) 理系は国立大学がいい?

 

では、学生として力がある研究室に入ると、具体的にどんなメリットがあるか、ということを今回は書いていきたいと思います。

なお、これらが当てはまるような研究室は旧帝大や東工大にはたくさんありますが、それ以外の大学ではそう多くはないと思います。

 

 

まず、力がある研究室では世の中に発表できるような成果が出やすく出張費を出せるお金もあるので、大学院生の間に(場合によっては大学4年生でも)学会発表を何度も経験でき、学術雑誌に論文を投稿する経験もできたりします。

 

それまでのテストで点を取るため(?)の勉強とは全く違い、研究活動では自分がこれまでに学んできたことや考えたことを生かして出した成果を発表する機会もあり、それをもとに大学や国をも超えた知的な交流ができるのです。とてもエキサイティングな世界です。こんな経験を学生のうちにさせてもらえることこそが理系の力がある研究室にいく醍醐味でしょう。

 

試しに電子情報通信学会、応用物理学会、日本建築学会、日本物理学会、日本化学会といった大きな学会のプログラムを見れば、どんな大学からの発表が多いかを見ることができます。そうすると、先の記事のランキングに出てくるような研究費のある大学ばかりが並んでいることがお分かりいただけるかと思います。発表しているのは教員もいますが、特にポスター発表ならその多くは大学院生です。

 

 

あまり悪い方を書くのはあれなのですが、少しは数字を書かないとイメージが沸かないと思いますので具体的に書きます。一部の例外を除く一般的な私立理系の場合ですと、1つの研究室に卒論の4年生が例えば20人くらい配属されてしまい、しかも大学院生や教授以外の教員、研究員、スタッフは合わせても数人しかいなくて、あまり面倒を見てもらえないまま卒業するということが普通に起こります。

 

これに対し力がある研究室ですと、大学4年生~大学院修士課程までが各学年5人ずつに対して、大学院博士課程、教員(教授/准教授/講師/助教)、博士研究員やその他いろいろな名前の研究員がその同数以上いたりして層が厚く、「面倒見」が桁違いです。そのうえ同分野の海外研究者や大企業の技術者の出入りも多いのです。プレゼンやディスカッションの鍛えられ方は歴然としています。

 

 

 

結局、会社に就職する場合も面接ではこれらの経験の差が質疑応答に「深み」としてもろに出ますし、最初の配属くらいまでは効いてきます。アカデミック(大学、国研など)の世界ではこういった経験と人脈の差がなおさら効いてきます。そもそも、こういった研究室では大学院博士課程のうちに「学振」(学術振興会の特別研究員)というお金をもらえるポジションにありつける人もちらほらいるくらいで…

 

と、今回は力のある研究室に行くことのメリット面を書いてきましたが、実はこれらは人によってはデメリットになる場合もあります。次回はそのあたりを書きたいと思います。

 

色々とオブラートに包みながら書いているので、分かりにくい部分があるかもしれません。もっとぶっちゃけた話が聞いたいなどありましたらコメントかメッセージをくださいねニコニコ