(90)薬剤性催眠術と暗示
催眠術と聞くと忌み嫌う精神科医(わたしもかってそうでした)も、EMDR(PTSDの最新治療法と言われる単なる催眠術)と聞くと抵抗感がなくなりますが、あんなの簡単に習得できるわけありませんし、それだけで治療できるわけでもありません。私がPTSD治療で最初に試したのは医師なら誰でもできる薬剤性催眠術です。第二次大戦中に英米戦陣精神医学が千人単位で治療に用いた手技です。睡眠薬注射剤(当時はバルビツール剤、私が使ったのはベンゾジアゼピン剤)をゆっくり静脈注射すると催眠状態と類似した状態になり暗示をかけることができます。全身麻酔手術の覚醒時に恥ずかしいことをわめいてしまうというのも同じ話です。
(89)PTSDによるアルコール・ニコチン・ギャンブル依存とSSRI(フルボキサミン)
依存症の治療は患者同士による集団カウンセリング(アルコールなら断酒会)しか有効なものはないとされ、薬物治療法はないというのが定説です(役に立たないシアナマイドを知ってる人は無駄な知識だから忘れなさい)。SSRIのフルボキサミン(商品名ルボックス)がアルコール依存を抑制することに気づいた人がいて症例をかなり集めた人もいますが、理屈がないとして無視されています。その人は患者が酒がまずくなったと言うことに気がつきました。私はパチンコ依存に悩んで受診した患者に患者の父親がギャンブル依存で自殺した外傷体験があることを初診で発見し、暗示をかけてフルボキサミンを処方しました。彼はいきなりパチンコをやめました。自分がPTSDと気がついてなかった患者に禁煙を勧め、フルボキサミンを処方すると煙草もまずくなったそうです。依存症患者の中にも多数混在するPTSD患者にSSRIによる治療を併用すれば大きな効果が期待できるのですが。