普段はフットボールしか見ないスカパー
中継してくれて心からありがとう
ありがとうのシャワーやでw
パッキングの手を止めて録画を視てたけれど
生中継だから仕方がないとはいえ
「ここぞ!」の場面で俯瞰したり
ソロパートがあっちゃこっちゃだったりしてましたが
これは素直にブルーレイを待つ心境になりました
娘。ヲタ暦が鞘師から始まる僕は
卒業コンサートに大した思い入れはなくて
前回のミチシゲイレブンSOULが印象に残っているくらいですが
今回はとにかく詰め込みすぎ
いい意味でですよ
ハプニングもその場で対応してしまうメンバーを見る限り
今からのモーニング娘。を注目しないで生きていけないレベルです
個人的には鞘師へのチューよりも
リーダーバトンタッチの儀式のようだった「好きだな君が」がハイライト
5回ほどリピートしてw
ブレストメンバーからフクちゃん「道重さんのところに行かなきゃ」と離れる
メインステージの道重さんを確認して走り出す
道重さん「トリプルいいことがあった」笑顔でユニゾン
こっちへ向かってくるフクちゃん確認
「ああ来てくれた」
「ありがとう」の笑顔
フクちゃん合流(センターステージアップで詳細わからず)
イントロスタートで息を整えるフクちゃん
「好きだな君が」スタート
この一連の流れだけでご飯5杯は食べられる
きっと朝起き抜けにこの場面を見ることで一日生きる希望がわいてくるはず
今日から新しいモーニング娘。’14がスタート
考えちゃいけないことだけどまた誰かの卒業を待つスタートでもあるんですよね
うん
いまはただ連綿と続いていく娘。たちの新しいストーリーを楽しもう
最近急にコンタクトしてきたツレ共に業務連絡
出国は12/1
行き先は中国
LINEは出来ないらしいからWeChatって中華アプリ
googleでもappleでもインストールできるからしておいてください
携帯は現地で調達します
終わった
仕事が・・orz
仕事が・・orz
ありがとうのシャワー
メールを読んでいただいたことで少なからず気になっていたこの曲
優しい歌になっていてとても嬉しく思う
なかなかありがとうって素直に言えないもどかしさを振り払ってくれる
こんな駄文を書いているってことはまだ日本にいるわけで
久し振りの東京への出張から自宅に戻って改めて
東京から弾かれて全国を転々とした理由がわかった気がする
僕には東京は忙しすぎる
一息ついてとか
深呼吸を一つとか
余裕が少し欲しい時に隣を他人が走り去っていく
止めどない焦燥感
当てのない孤独感
差し伸べられた手を振り解いて僕は東京から走り去った
13歳の女の子が「大好き」という想いを胸に上京し
当時一世を風靡し国民の誰もがその名を知るグループに加入する
その行為の重さを想像するにこちらがしんどくなってくる
芸能人としてアイドルとしてのスキルは皆無で
呪文のように唱え続ける「私はかわいい」のフレーズで
自分自身の中にある微かな意地を鼓舞し戦い続けた少女
半生をそのグループの名を背負い
リーダーとなりグループの名を高めることに腐心し
明日その使命を終える道重さゆみさん
僕にとっての娘。暦は「鞘師後」から始まるため
黄金だのプラチナだの6期7期8期なんてのは正直どうでもいい話
ただそんな中でも道重リーダー期における組織の「結束」は
過去のどんなグループにもなかった強固なものだと考える
そのリーダーが見せた献身は僕が逃げ出した東京で
闘ってきた少女の輝かしく生きた証だと心から尊敬する
第一線から退く決断があまりにも重く潔いから
彼女の最後のステージをきちんと見守りたいと思う
出発日を12/1に変更した言い訳のためにわざわざ東京に出向いて
道重さんの最後のライブを見届けたいって言ったら
「お前はやれば出来るのになぁ」って上司に言われて
「結果はちゃんと出してますよ」って言ったらキレられたのは
僕がただ正直なだけだと思う
「僕に向かってやれば・・は失礼でしょ?やってない奴に言ってくださいよ」
で益々怒鳴り散らす上司はまあ人間が出来てないよね
メールを読んでいただいたことで少なからず気になっていたこの曲
優しい歌になっていてとても嬉しく思う
なかなかありがとうって素直に言えないもどかしさを振り払ってくれる
こんな駄文を書いているってことはまだ日本にいるわけで
久し振りの東京への出張から自宅に戻って改めて
東京から弾かれて全国を転々とした理由がわかった気がする
僕には東京は忙しすぎる
一息ついてとか
深呼吸を一つとか
余裕が少し欲しい時に隣を他人が走り去っていく
止めどない焦燥感
当てのない孤独感
差し伸べられた手を振り解いて僕は東京から走り去った
13歳の女の子が「大好き」という想いを胸に上京し
当時一世を風靡し国民の誰もがその名を知るグループに加入する
その行為の重さを想像するにこちらがしんどくなってくる
芸能人としてアイドルとしてのスキルは皆無で
呪文のように唱え続ける「私はかわいい」のフレーズで
自分自身の中にある微かな意地を鼓舞し戦い続けた少女
半生をそのグループの名を背負い
リーダーとなりグループの名を高めることに腐心し
明日その使命を終える道重さゆみさん
僕にとっての娘。暦は「鞘師後」から始まるため
黄金だのプラチナだの6期7期8期なんてのは正直どうでもいい話
ただそんな中でも道重リーダー期における組織の「結束」は
過去のどんなグループにもなかった強固なものだと考える
そのリーダーが見せた献身は僕が逃げ出した東京で
闘ってきた少女の輝かしく生きた証だと心から尊敬する
第一線から退く決断があまりにも重く潔いから
彼女の最後のステージをきちんと見守りたいと思う
出発日を12/1に変更した言い訳のためにわざわざ東京に出向いて
道重さんの最後のライブを見届けたいって言ったら
「お前はやれば出来るのになぁ」って上司に言われて
「結果はちゃんと出してますよ」って言ったらキレられたのは
僕がただ正直なだけだと思う
「僕に向かってやれば・・は失礼でしょ?やってない奴に言ってくださいよ」
で益々怒鳴り散らす上司はまあ人間が出来てないよね
『・・うん、何か連絡がある時は携帯に電話して。・・うん、大丈夫だから』
エリコの声が遠くから響いて僕は目が覚めた。
枕元の目覚まし時計を見ると7時半を指していた。
伸びをしながら部屋の中を見回すとエリコはタオルケットにくるまり
ベッドに腰掛けて電話していた。
『起こしちゃったね、ごめんね』
「えっ・・今7時半だよね」
『電車乗り過ごしちゃった、6時半だったんだけど・・』
「ごめん、気がつかなかった」
僕はひたすら謝った。
『いいよ、私もさっき起きたところだもん。お母さんに電話しておいた』
「大丈夫?学校だってあるだろ?」
『うちの学校は試験が9月下旬だし後は適当に授業だけ出ればいいから』
エリコは持っていた携帯電話を床に放り投げ僕の横に座った。
「シャツは乾いてる?」
『まだ見てないけど・・ジーパンがまだかも』
「晩ご飯どうする?」
『そんなにお腹空いてないよ』
「ジーパン乾いたらちょっと歩いたところに居酒屋があるから何か食べに行こうか?」
『またビール掛け?』
「出来るわけ無いじゃん!」
顔を見合わせて笑った。エリコは僕の首に腕を回しキスを強請った。
『大好きだよ、永井君・・』
「ありがとう、エリコ」
僕らは重なり合ってキスを求め続けた。
次の日、僕はエリコのバッグを抱え京都駅にいた。
夏の日差しの中、中学校の修学旅行で回った金閣寺や竜安寺を歩き
嵐山の方までバスに揺られた。
平日だからだろうか、観光客はそれほど多くはなく僕らは手をつなぎ歩いた。
エリコの一つ一つの動作が、僕に向ける笑みが愛しく感じられた。
美空ひばり館の前でクレープを頬張り渡月橋の交差点の角で
桜餅と抹茶をいただき亀山公園のベンチでキスをした。
保津峡下りの船が真下を遊覧していた。
『いつ帰ってくるの?』
「7/29に提出するレポートで終わりだからその日の深夜バスで帰る」
『7/30までちょっとあるね』
「確か朝6時くらいに東京駅に到着だったと思う。バイトの面接もあるし・・」
『帰ったらまた手紙書くね。お父さんと決着つけなくちゃ』
エリコは笑った。
嵐山から京都駅までバスの最後列に座り眠った。
急にざわついたバスの雰囲気で京都駅に到着したことに気付いた。
僕は入場券を買い、エリコはみどりの窓口にいた。
長いエスカレータに乗りホームに出ると到着の新幹線を待った。
離れがたい気持ちだけを共有していた。
僕は背後からエリコを抱きしめていた。
ざわめくホームで新幹線が滑り込んできた。
『まだ一緒にいたいね』
「・・そうだね」
『でも帰るね』
「・・またすぐに会えるよね」
『うん、待ってるからね』
エリコは僕に向き合いつま先立ちになった。
僕は少しだけ屈んで唇を重ねた。その横を乗車の列は動き始めた。
僕はエリコを離さなかった。エリコも僕の首に手を回していた。
発車のベルが鳴った。
僕らはゆっくり離れた。
「それじゃ、また」
『うん、ありがとう』
エリコはバッグを手に取りドアの向こう側に立った。程なくドアは閉まった。
エリコはずっと手を振っていた。
僕は立ちすくんでいた。
新幹線を見送り僕は地下鉄に乗った。
電光掲示板のニュースは近畿地方の梅雨明けを告げていた。
夏が始まる・・
エリコの声が遠くから響いて僕は目が覚めた。
枕元の目覚まし時計を見ると7時半を指していた。
伸びをしながら部屋の中を見回すとエリコはタオルケットにくるまり
ベッドに腰掛けて電話していた。
『起こしちゃったね、ごめんね』
「えっ・・今7時半だよね」
『電車乗り過ごしちゃった、6時半だったんだけど・・』
「ごめん、気がつかなかった」
僕はひたすら謝った。
『いいよ、私もさっき起きたところだもん。お母さんに電話しておいた』
「大丈夫?学校だってあるだろ?」
『うちの学校は試験が9月下旬だし後は適当に授業だけ出ればいいから』
エリコは持っていた携帯電話を床に放り投げ僕の横に座った。
「シャツは乾いてる?」
『まだ見てないけど・・ジーパンがまだかも』
「晩ご飯どうする?」
『そんなにお腹空いてないよ』
「ジーパン乾いたらちょっと歩いたところに居酒屋があるから何か食べに行こうか?」
『またビール掛け?』
「出来るわけ無いじゃん!」
顔を見合わせて笑った。エリコは僕の首に腕を回しキスを強請った。
『大好きだよ、永井君・・』
「ありがとう、エリコ」
僕らは重なり合ってキスを求め続けた。
次の日、僕はエリコのバッグを抱え京都駅にいた。
夏の日差しの中、中学校の修学旅行で回った金閣寺や竜安寺を歩き
嵐山の方までバスに揺られた。
平日だからだろうか、観光客はそれほど多くはなく僕らは手をつなぎ歩いた。
エリコの一つ一つの動作が、僕に向ける笑みが愛しく感じられた。
美空ひばり館の前でクレープを頬張り渡月橋の交差点の角で
桜餅と抹茶をいただき亀山公園のベンチでキスをした。
保津峡下りの船が真下を遊覧していた。
『いつ帰ってくるの?』
「7/29に提出するレポートで終わりだからその日の深夜バスで帰る」
『7/30までちょっとあるね』
「確か朝6時くらいに東京駅に到着だったと思う。バイトの面接もあるし・・」
『帰ったらまた手紙書くね。お父さんと決着つけなくちゃ』
エリコは笑った。
嵐山から京都駅までバスの最後列に座り眠った。
急にざわついたバスの雰囲気で京都駅に到着したことに気付いた。
僕は入場券を買い、エリコはみどりの窓口にいた。
長いエスカレータに乗りホームに出ると到着の新幹線を待った。
離れがたい気持ちだけを共有していた。
僕は背後からエリコを抱きしめていた。
ざわめくホームで新幹線が滑り込んできた。
『まだ一緒にいたいね』
「・・そうだね」
『でも帰るね』
「・・またすぐに会えるよね」
『うん、待ってるからね』
エリコは僕に向き合いつま先立ちになった。
僕は少しだけ屈んで唇を重ねた。その横を乗車の列は動き始めた。
僕はエリコを離さなかった。エリコも僕の首に手を回していた。
発車のベルが鳴った。
僕らはゆっくり離れた。
「それじゃ、また」
『うん、ありがとう』
エリコはバッグを手に取りドアの向こう側に立った。程なくドアは閉まった。
エリコはずっと手を振っていた。
僕は立ちすくんでいた。
新幹線を見送り僕は地下鉄に乗った。
電光掲示板のニュースは近畿地方の梅雨明けを告げていた。
夏が始まる・・
朝の目覚めは穏やかだった。
いつもより遅い9時に起き、冷蔵庫から牛乳を取り出しラッパ飲みし
食パンを一枚流し込んでから顔を洗った。
10時30分からの試験に備えカバンを準備し外に出た。
一層強い夏の日差し、自転車のサドルも熱を帯びていた。
エリコにはまだ電話をしていない。
昨日の夜も電話をしようとして躊躇った。
僕自身がどうしたいのか、エリコが何を思っているのか
結局整理が着かないままベッドに横になってしまった。
ただ「もっと話がしたい」と感じていた。
試験は滞りなく終わった。ひとまず来週の月曜日まで学校に来る必要もない。
提出しなければならないレポートの提出期限を確認し僕は自転車にまたがった。
12時を少し回った時計を見て携帯電話を取り出した。
昨日教えてもらった番号を確認し耳に押し当てた。
無機質な呼び出し音が続く。
6回、7回・・電話はつながらない。
そのうち留守番電話サービスを告げるアナウンスが聞こえ僕は電話を切った。
取り敢えずマンションに向かおう、着替えてからでも遅くはない。
マンションに到着し携帯電話を取り出したもののエリコからの着信は無かった。
カバンを放り投げ、汗まみれになったシャツとGパンを脱ぎシャワーを浴びた。
ユニットバスのドアを少し開けて電話の呼び出し音が聞こえれば
すぐに飛び出せるようにしていたけれど全身を流し終わっても
携帯電話は鳴らなかった。
エアコンが全開で部屋を冷やしていく。冷風に体をさらした。
何となくお腹も空いてきた。
エリコと連絡が取れれば昼食でも、と安易に考えていた。
冷蔵庫のペットボトルのお茶をマグカップに注ぎ、ベッドの下の棚から
着替えを取り出した。
僕はもう一度携帯電話を手にした。
呼び出し音は続いた。5回、6回・・でつながった。
『ごめんね、永井君!全然電話に出られなくて。お茶飲んでいた喫茶店に
忘れてたの。ずっと電話探してて・・』
慌てている様子がはっきりと脳裏に浮かんだ。僕が喋る隙すらないほど
エリコは言葉を続けた。
『で、清水寺でかんざしを買ってから桜餅食べててそこで忘れてたみたい』
「今どこにいるの?」
やっと喋ることが出来た。
『えっ、今?ここは円山公園。八坂神社のところ。でも人も車も多くて大変』
「四条は山鉾巡行してるから動けないよ。何処かで待ち合わせしようか?」
『ちょっと待ってて。今マンションにいるんでしょ?タクシーだから近くまで行く』
と言って電話は切れた。
僕は我に返って部屋を片付け始めた。
携帯電話が鳴った。
『すぐ近くの交差点で降りたの。コンビニの前にいるから迎えに来て』
僕はマンションを飛び出した。
エリコはピンクのボストンバッグを持っていた。
「ちゃんと待ち合わせ決めておけばよかったよな、昨日のうちに」
『夕方の新幹線で帰るもん、大慌てよ』
「うちに来る?ってそのつもりだよな・・」
『一回休ませてよ、京都は暑すぎる』
僕はエリコが持っているバッグを手にした。僕の想像よりは軽いバッグを受け取り
エリコはホッとした表情になった。
玄関を開けるとエリコは驚いたように僕を見上げた。
『男の人のひとり暮らしって結構きれいに生活するものなの?』
「思いも寄らない訪問者のために片付けたんです」
『結構広いんだね。お邪魔します!』とスニーカーを脱いだ。
僕はバッグを台所に置いた。
「俺、腹空いてるんだけどピザでも頼もうか?」
『それはお任せします』
僕は小さいサイズのピザを2枚とサービスのドリンクを頼んだ。
『京都って何でこんなに暑いの?もう信じられない』
「俺も初めてだし何とも言えないけどあまり風は吹かないよね。
窓を開けたら熱気しか入ってこないし・・」
エリコは机の上にあった昨日もらった僕の団扇でバタバタ仰いでいた。
『京都には住めないわ、ゆで上がっちゃう・・』
と思い出したように台所に置いたバッグに近付いた。
『見て、このかんざし。修学旅行の時のとはちょっと違うけどきれいでしょ』
漆塗りの黒いかんざし。桜の花びらのデザインが一際目立っていた。
『これで思い残すことはないわ。そうそうこれお土産』
エリコが取り出したのは黒地の扇子だった。
『桜の花びらの模様でかんざしと同じデザイン。センスいいでしょ?』
「それって洒落てるのか?」
『ちょっとは嬉しそうにしてよ。最初買った扇子と交換してもらってるんだからね』
「サンキュ。これでちょっとは涼しくなるかな」
ピザが程なく届いて僕らは食べながら昔話に花を咲かせた。
小学校の担任の先生と会った話、中学の同級生の話。
中学の時に僕が秘かに思いを寄せていた女の子が
バイト先の店長と結婚したと聞いた時には少なからずショックだった。
高校の時に僕が付き合っていた1つ年上の先輩は地元のミスコンで
グランプリに輝いたそうだ。祭りのキャンペーンポスターにも掲載されているらしい。
一気に空白を埋めるような会話が一頻り続いた。
「それでずっと聞こうと思っていたんだけどなんであのハガキだったの?」
『元気?』
と書かれただけの1枚のハガキが送られてきた意味が未だに解らなかった。
『あのハガキで何も返事がなかったら巧君と付き合うことになってた』
「ええっ、何それ?」
『中学の時からずっと付き合ってくれ、付き合ってくれって言われてたんだけど
ずっと無視してたのね。それでこの間また電話が掛かってきて・・』
「断ったの?」
『誰か好きな奴がいるのか?って聞かれたから・・』
微妙な沈黙が僕らの間を包んだ。
『永井君にその気がないなら別にいいんだ』
ポツリとつぶやいたその一言が胸を突いた。
「飲み物無くなったし、何か買って来るよ、ちょっと待ってて」
すぐ近くのコンビニで缶ビールを2本を買った。
僕は慌てて部屋に戻った。エリコはテレビを見ていた。
「ビール、買ってきた。一度してみたかったことがあるんだ」
エリコの横を一足飛びにベランダの窓を開け放ち缶を揺すった。
「エリコも、ほら」
缶ビールを投げるとベランダに手招きした。
僕はプルタブを起こし勢いよく飛び出すビールをエリコに向けた。
エリコも勢いよく缶を振りながら僕に向けてプルタブを起こした。
僕らは顔にかかったビールを拭いながら笑った。
「もっと買ってくればよかった?」
『すっきりした。気持ちいいね』
缶を逆さまにしてはにかむエリコを僕は抱きしめた。
「わざわざ京都に来てくれてありがとう」
エリコは僕の耳元にキスをした。
『着替え、もうこれしかないんだぞ・・』
「洗ったらいいよ、俺のも一緒でよければ・・」
エリコはうなずき、僕らは長いキスをした。
いつもより遅い9時に起き、冷蔵庫から牛乳を取り出しラッパ飲みし
食パンを一枚流し込んでから顔を洗った。
10時30分からの試験に備えカバンを準備し外に出た。
一層強い夏の日差し、自転車のサドルも熱を帯びていた。
エリコにはまだ電話をしていない。
昨日の夜も電話をしようとして躊躇った。
僕自身がどうしたいのか、エリコが何を思っているのか
結局整理が着かないままベッドに横になってしまった。
ただ「もっと話がしたい」と感じていた。
試験は滞りなく終わった。ひとまず来週の月曜日まで学校に来る必要もない。
提出しなければならないレポートの提出期限を確認し僕は自転車にまたがった。
12時を少し回った時計を見て携帯電話を取り出した。
昨日教えてもらった番号を確認し耳に押し当てた。
無機質な呼び出し音が続く。
6回、7回・・電話はつながらない。
そのうち留守番電話サービスを告げるアナウンスが聞こえ僕は電話を切った。
取り敢えずマンションに向かおう、着替えてからでも遅くはない。
マンションに到着し携帯電話を取り出したもののエリコからの着信は無かった。
カバンを放り投げ、汗まみれになったシャツとGパンを脱ぎシャワーを浴びた。
ユニットバスのドアを少し開けて電話の呼び出し音が聞こえれば
すぐに飛び出せるようにしていたけれど全身を流し終わっても
携帯電話は鳴らなかった。
エアコンが全開で部屋を冷やしていく。冷風に体をさらした。
何となくお腹も空いてきた。
エリコと連絡が取れれば昼食でも、と安易に考えていた。
冷蔵庫のペットボトルのお茶をマグカップに注ぎ、ベッドの下の棚から
着替えを取り出した。
僕はもう一度携帯電話を手にした。
呼び出し音は続いた。5回、6回・・でつながった。
『ごめんね、永井君!全然電話に出られなくて。お茶飲んでいた喫茶店に
忘れてたの。ずっと電話探してて・・』
慌てている様子がはっきりと脳裏に浮かんだ。僕が喋る隙すらないほど
エリコは言葉を続けた。
『で、清水寺でかんざしを買ってから桜餅食べててそこで忘れてたみたい』
「今どこにいるの?」
やっと喋ることが出来た。
『えっ、今?ここは円山公園。八坂神社のところ。でも人も車も多くて大変』
「四条は山鉾巡行してるから動けないよ。何処かで待ち合わせしようか?」
『ちょっと待ってて。今マンションにいるんでしょ?タクシーだから近くまで行く』
と言って電話は切れた。
僕は我に返って部屋を片付け始めた。
携帯電話が鳴った。
『すぐ近くの交差点で降りたの。コンビニの前にいるから迎えに来て』
僕はマンションを飛び出した。
エリコはピンクのボストンバッグを持っていた。
「ちゃんと待ち合わせ決めておけばよかったよな、昨日のうちに」
『夕方の新幹線で帰るもん、大慌てよ』
「うちに来る?ってそのつもりだよな・・」
『一回休ませてよ、京都は暑すぎる』
僕はエリコが持っているバッグを手にした。僕の想像よりは軽いバッグを受け取り
エリコはホッとした表情になった。
玄関を開けるとエリコは驚いたように僕を見上げた。
『男の人のひとり暮らしって結構きれいに生活するものなの?』
「思いも寄らない訪問者のために片付けたんです」
『結構広いんだね。お邪魔します!』とスニーカーを脱いだ。
僕はバッグを台所に置いた。
「俺、腹空いてるんだけどピザでも頼もうか?」
『それはお任せします』
僕は小さいサイズのピザを2枚とサービスのドリンクを頼んだ。
『京都って何でこんなに暑いの?もう信じられない』
「俺も初めてだし何とも言えないけどあまり風は吹かないよね。
窓を開けたら熱気しか入ってこないし・・」
エリコは机の上にあった昨日もらった僕の団扇でバタバタ仰いでいた。
『京都には住めないわ、ゆで上がっちゃう・・』
と思い出したように台所に置いたバッグに近付いた。
『見て、このかんざし。修学旅行の時のとはちょっと違うけどきれいでしょ』
漆塗りの黒いかんざし。桜の花びらのデザインが一際目立っていた。
『これで思い残すことはないわ。そうそうこれお土産』
エリコが取り出したのは黒地の扇子だった。
『桜の花びらの模様でかんざしと同じデザイン。センスいいでしょ?』
「それって洒落てるのか?」
『ちょっとは嬉しそうにしてよ。最初買った扇子と交換してもらってるんだからね』
「サンキュ。これでちょっとは涼しくなるかな」
ピザが程なく届いて僕らは食べながら昔話に花を咲かせた。
小学校の担任の先生と会った話、中学の同級生の話。
中学の時に僕が秘かに思いを寄せていた女の子が
バイト先の店長と結婚したと聞いた時には少なからずショックだった。
高校の時に僕が付き合っていた1つ年上の先輩は地元のミスコンで
グランプリに輝いたそうだ。祭りのキャンペーンポスターにも掲載されているらしい。
一気に空白を埋めるような会話が一頻り続いた。
「それでずっと聞こうと思っていたんだけどなんであのハガキだったの?」
『元気?』
と書かれただけの1枚のハガキが送られてきた意味が未だに解らなかった。
『あのハガキで何も返事がなかったら巧君と付き合うことになってた』
「ええっ、何それ?」
『中学の時からずっと付き合ってくれ、付き合ってくれって言われてたんだけど
ずっと無視してたのね。それでこの間また電話が掛かってきて・・』
「断ったの?」
『誰か好きな奴がいるのか?って聞かれたから・・』
微妙な沈黙が僕らの間を包んだ。
『永井君にその気がないなら別にいいんだ』
ポツリとつぶやいたその一言が胸を突いた。
「飲み物無くなったし、何か買って来るよ、ちょっと待ってて」
すぐ近くのコンビニで缶ビールを2本を買った。
僕は慌てて部屋に戻った。エリコはテレビを見ていた。
「ビール、買ってきた。一度してみたかったことがあるんだ」
エリコの横を一足飛びにベランダの窓を開け放ち缶を揺すった。
「エリコも、ほら」
缶ビールを投げるとベランダに手招きした。
僕はプルタブを起こし勢いよく飛び出すビールをエリコに向けた。
エリコも勢いよく缶を振りながら僕に向けてプルタブを起こした。
僕らは顔にかかったビールを拭いながら笑った。
「もっと買ってくればよかった?」
『すっきりした。気持ちいいね』
缶を逆さまにしてはにかむエリコを僕は抱きしめた。
「わざわざ京都に来てくれてありがとう」
エリコは僕の耳元にキスをした。
『着替え、もうこれしかないんだぞ・・』
「洗ったらいいよ、俺のも一緒でよければ・・」
エリコはうなずき、僕らは長いキスをした。
四条河原町の交差点は歩行者で溢れていた。
交通整理に当たる警察官も粛々と歩行者を誘導していた。
僕は火照った顔を押さえながら手にしていたお茶を飲み干した。
エリコは高島屋のシャッターに向き合うように一頻り携帯電話で話していた。
電話の主がエリコの父親であること
怯えと諦めのような表情と共に通話ボタンを押したこと
僕の動きを制しながら困ったような顔をしていたこと
そしてそれに対して僕は何も出来ないこと
少し酔いの回った頭の中は現実感を失ってただ僕は待つしかなかった。
交差点の喧噪でエリコの会話は少し離れた僕には全く聞こえなかった。
激高している様子もなく
うなずいている様子もなく
駄々をこねているようにも見えなかった。
ただ全てを撥ね付けるような凜とした強さが見て取れた。
これだけ人が溢れているのに同級生に会わないのも不思議だなと
本当に自分勝手な思いを巡らせていると電話を終えたエリコが
目の前に立っていた。
『ごめんね、お待たせ』
「大丈夫だったの?」
何とも間抜けな問い掛けだ。
『箱入り娘の反抗期に驚いているみたい。永井くんからの手紙も知ってたみたいだし・・ すぐに帰ってきなさいって最終の新幹線には間に合わないのにバカだよね・・』
「って言うか、京都に来るって言ってないの?」
『だから朝起きた時には京都来るなんて思ってなかったもん』
「いやいや、そうじゃなくて・・」
『迷惑だった?』
僕のことをのぞき込むように上目遣いで聞いてきた。
『嵐山に着いてからお母さんには電話してたんだけど。
仕方ないよね、初めての無断外泊だから』
「迷惑なんかじゃないよ。色々ビックリしたけどね」
僕は目の遣り場に困りながら通り一遍な答えを返した。
『もう遅いし今日は帰るね』
「嵐山なら阪急なんだろ?」
『うん、もう切符は買ってあるんだ』
高島屋入り口の横にある階段を2人並んで歩を進めた。
何か喋らなくちゃいけない、何かを伝えなくちゃいけないのに
何も言葉にならない。
電話で父親と闘ったエリコも歩を合わせるだけで無言だった。
自動改札機が近付くとエリコは財布から切符を取り出した。
『また連絡してもいいかな?』
「こっちからも電話するよ」
『今日はありがとう』
エリコの髪の匂いが一瞬で近付くと互いの唇が触れた。
『おやすみなさい』
切符は自動改札機に吸い込まれエリコはホームへ続く階段を
振り返ることなく下りていった。
交通整理に当たる警察官も粛々と歩行者を誘導していた。
僕は火照った顔を押さえながら手にしていたお茶を飲み干した。
エリコは高島屋のシャッターに向き合うように一頻り携帯電話で話していた。
電話の主がエリコの父親であること
怯えと諦めのような表情と共に通話ボタンを押したこと
僕の動きを制しながら困ったような顔をしていたこと
そしてそれに対して僕は何も出来ないこと
少し酔いの回った頭の中は現実感を失ってただ僕は待つしかなかった。
交差点の喧噪でエリコの会話は少し離れた僕には全く聞こえなかった。
激高している様子もなく
うなずいている様子もなく
駄々をこねているようにも見えなかった。
ただ全てを撥ね付けるような凜とした強さが見て取れた。
これだけ人が溢れているのに同級生に会わないのも不思議だなと
本当に自分勝手な思いを巡らせていると電話を終えたエリコが
目の前に立っていた。
『ごめんね、お待たせ』
「大丈夫だったの?」
何とも間抜けな問い掛けだ。
『箱入り娘の反抗期に驚いているみたい。永井くんからの手紙も知ってたみたいだし・・ すぐに帰ってきなさいって最終の新幹線には間に合わないのにバカだよね・・』
「って言うか、京都に来るって言ってないの?」
『だから朝起きた時には京都来るなんて思ってなかったもん』
「いやいや、そうじゃなくて・・」
『迷惑だった?』
僕のことをのぞき込むように上目遣いで聞いてきた。
『嵐山に着いてからお母さんには電話してたんだけど。
仕方ないよね、初めての無断外泊だから』
「迷惑なんかじゃないよ。色々ビックリしたけどね」
僕は目の遣り場に困りながら通り一遍な答えを返した。
『もう遅いし今日は帰るね』
「嵐山なら阪急なんだろ?」
『うん、もう切符は買ってあるんだ』
高島屋入り口の横にある階段を2人並んで歩を進めた。
何か喋らなくちゃいけない、何かを伝えなくちゃいけないのに
何も言葉にならない。
電話で父親と闘ったエリコも歩を合わせるだけで無言だった。
自動改札機が近付くとエリコは財布から切符を取り出した。
『また連絡してもいいかな?』
「こっちからも電話するよ」
『今日はありがとう』
エリコの髪の匂いが一瞬で近付くと互いの唇が触れた。
『おやすみなさい』
切符は自動改札機に吸い込まれエリコはホームへ続く階段を
振り返ることなく下りていった。
長刀鉾の周りの車道は遅々として進まない人の列が出来ていた。
テレビの中継もそれぞれに鉾をカメラに収めていた。
僕らはちまきを買う列に並ぼうと探したけれど売場のテントは
殺気立っているように見えた。人の間を擦り抜けるように僕はエリコの手を引き
テントの一番前に立った。
僕はズボンのポケットから千円札二枚を取り出しちまきを二本買った。
それを渡そうとするとエリコはそばにあった絵葉書を手に取っていた。
押しくらまんじゅうのようなテント前から抜け出し、地下鉄の入口の前で
一息ついた。
『すごい人だよね』
「40万人以上来るらしいけど・・これ、ちまき。持って帰りなよ」
『あっ、有難う。これお金渡しておくね。』
「いいよ、その代わりそこのジュース奢ってくれない?」
この蒸し暑さで飲み物を売る売り子も目が回るような忙しさなのだろう。
僕らの横で次々にビールやジュースの箱を空けては補充している。
『何にするの?』
「お茶でいいよ」
『ねえ、ちょっとビール、飲んでみない?』
思いがけない提案にあ然としてしまった。「え、え、ビール・・」
エリコは僕の返答を待つでもなく350mlのビール2本とお茶を買ってきた。
『まずは乾杯でしょ?』
プルタブを起こしわずかに泡が飛び散るのを見ると僕にとってもビールが
かけがえのないものに見えてきた。
エリコからビールと受け取ると僕もプルタブを起こした。
『祇園祭に乾杯!』
エリコは微笑んでいた。
正直な話、僕はビールを飲むのが初めてだった。
実家にいる時は父の晩酌に付き合わされ日本酒を飲んだことはあったけれども
最初の一口で顔は真っ赤になってしまう。
ひとり暮らしを始めてからも最初のコンパで酎ハイを頼んだくらいで
ほとんどアルコールを口にすることはなかった。
「よく飲んだりするの?ビール?」
一口目を含み眉間にしわを寄せているエリコに聞いた。
『全然!飲んだことないよ』
その屈託の無さが僕が飲む初めてのビールへの抵抗感を吹き飛ばした。
渇いた喉は早く水分を欲しがっていた。僕も一気に缶を傾けた。
喉に引っかかる苦み、ためらっていたら吐き出しそうだ。
口の中で含めるだけ目一杯のビールを流し込み、喉を鳴らした。
『永井君は結構飲むの?』
「全然。全く飲まないよ」
『大丈夫なの?酔っぱらうんじゃない?』
「汗をかくだろうし大丈夫だよ。エリコこそ・・」
『でも、なんかおいしいよね!』
僕らは目を合わせて笑った。ビールはすぐに無くなった。
四条通の人集りは時間と共にその数を増していった。
正に老若男女の別なく駒形提灯の明かりに吸い寄せられるように鉾の周りに
集まっては携帯電話やカメラでその姿を収めていた。
僕らはビールの勢いもあって高いテンションを保っていた。
どんな話題でも笑い話になってしまう空間。こんなに以前から親しかっただろうか?
自問自答も全く無駄に思えた。
ここにエリコがいる理由、僕がここにいる理由、ここにふたりでいる理由。
一つ一つの理由は今度聞いたらいい。
四条通を東に向かい未だ賑やかな河原町の交差点に出た。時計は午後9時を指していた。
すると軽やかな呼び出し音でエリコの携帯電話が鳴った。
エリコは携帯電話の画面を見て少しこわばったように見えた。
『お父さんからだ・・』
テレビの中継もそれぞれに鉾をカメラに収めていた。
僕らはちまきを買う列に並ぼうと探したけれど売場のテントは
殺気立っているように見えた。人の間を擦り抜けるように僕はエリコの手を引き
テントの一番前に立った。
僕はズボンのポケットから千円札二枚を取り出しちまきを二本買った。
それを渡そうとするとエリコはそばにあった絵葉書を手に取っていた。
押しくらまんじゅうのようなテント前から抜け出し、地下鉄の入口の前で
一息ついた。
『すごい人だよね』
「40万人以上来るらしいけど・・これ、ちまき。持って帰りなよ」
『あっ、有難う。これお金渡しておくね。』
「いいよ、その代わりそこのジュース奢ってくれない?」
この蒸し暑さで飲み物を売る売り子も目が回るような忙しさなのだろう。
僕らの横で次々にビールやジュースの箱を空けては補充している。
『何にするの?』
「お茶でいいよ」
『ねえ、ちょっとビール、飲んでみない?』
思いがけない提案にあ然としてしまった。「え、え、ビール・・」
エリコは僕の返答を待つでもなく350mlのビール2本とお茶を買ってきた。
『まずは乾杯でしょ?』
プルタブを起こしわずかに泡が飛び散るのを見ると僕にとってもビールが
かけがえのないものに見えてきた。
エリコからビールと受け取ると僕もプルタブを起こした。
『祇園祭に乾杯!』
エリコは微笑んでいた。
正直な話、僕はビールを飲むのが初めてだった。
実家にいる時は父の晩酌に付き合わされ日本酒を飲んだことはあったけれども
最初の一口で顔は真っ赤になってしまう。
ひとり暮らしを始めてからも最初のコンパで酎ハイを頼んだくらいで
ほとんどアルコールを口にすることはなかった。
「よく飲んだりするの?ビール?」
一口目を含み眉間にしわを寄せているエリコに聞いた。
『全然!飲んだことないよ』
その屈託の無さが僕が飲む初めてのビールへの抵抗感を吹き飛ばした。
渇いた喉は早く水分を欲しがっていた。僕も一気に缶を傾けた。
喉に引っかかる苦み、ためらっていたら吐き出しそうだ。
口の中で含めるだけ目一杯のビールを流し込み、喉を鳴らした。
『永井君は結構飲むの?』
「全然。全く飲まないよ」
『大丈夫なの?酔っぱらうんじゃない?』
「汗をかくだろうし大丈夫だよ。エリコこそ・・」
『でも、なんかおいしいよね!』
僕らは目を合わせて笑った。ビールはすぐに無くなった。
四条通の人集りは時間と共にその数を増していった。
正に老若男女の別なく駒形提灯の明かりに吸い寄せられるように鉾の周りに
集まっては携帯電話やカメラでその姿を収めていた。
僕らはビールの勢いもあって高いテンションを保っていた。
どんな話題でも笑い話になってしまう空間。こんなに以前から親しかっただろうか?
自問自答も全く無駄に思えた。
ここにエリコがいる理由、僕がここにいる理由、ここにふたりでいる理由。
一つ一つの理由は今度聞いたらいい。
四条通を東に向かい未だ賑やかな河原町の交差点に出た。時計は午後9時を指していた。
すると軽やかな呼び出し音でエリコの携帯電話が鳴った。
エリコは携帯電話の画面を見て少しこわばったように見えた。
『お父さんからだ・・』
人混みをかき分けて見つけたエリコと目が合った。
暑さと湿気で重い空気、思い切り息を吸い込み額の汗を拭った。
「何でこんな所にいるの?」
『宵山って言うんでしょ?すごい人だよね。』
「いつ来たの?ひとり?」
『今日の昼頃、京都に着いたの。嵐山に叔母がいて、寄ってから来たんだけど・・』
「来るなら来るって教えてくれてもいいんじゃない?」
『今日の朝起きるまで来ようと思ってなかったもん。』
「なんだよ、それ・・」
『あのさ、久し振りに会ったのに何か嬉しそうじゃないよね・・』
僕は持っていたミネラルウォーターを飲み干し、拗ねたようなエリコを見た。
「あのな、予期しない出来事でちょっと混乱してるだけ。」
『結構本番に強いタイプかなと思ってたんだけど。バスケ部の時も、ほら。』
エリコが辿った記憶はきっと高校3年の時のインターハイ県予選の決勝の場面だ。
残り5分で点差は9点。諦めかけた時に立て続けに3本、3Pシュートを決めた。
結局2点差で負けてしまったけれどそのシュートの感覚だけがずっと手の平に
心地よく残っていたのを今でも思い出せる。
「ちょっと順序立てて聞きたいんだけど、いい?」
『まあ、いいじゃない。私も初めて見るお祭りだしブラブラ歩こう、ね?』
目の前には月鉾が立っていた。
目を凝らすとその絢爛豪華な装飾に圧倒される。
「月」と書かれた駒形提灯にも灯が入る。
周りを取り囲む人々の波。
奏でられる祇園囃子。「ちまき買うてんか~、厄除けのちまき買うてんか~」
ひとりでたくさんのちまきを買い、袋を一杯にした老婦人がいる。
缶ビールを片手に鉾に掛けられた絨毯を説明している老人がいる。
きっと数百年前と変わらない風景。時間が醸成した空気が街を流れている。
『あのさ、嵐山の叔母さんに長刀鉾でちまきを買ってきてって言われたんだけど』
「長刀鉾ならさっき写メ撮ろうとしてたんだけど。烏丸の方だし行こうか?」
僕は踵を返すと
『ちょっと、迷子になったらどうするのよ・・』
エリコは突然歩き出した僕に不満そうに立っている。
僕は仕方なくエリコの手首をつかんだ。
『下駄だし、ゆっくり歩いてよね。』
エリコは手首に絡んだ僕の手をほどき左手を握った。
『ねえ、何で京都の大学にしたの?』
なかなか前に進めない、話すきっかけも無く黙っていた僕に問い掛けてきた。
「何故って・・何故だろう?東京で進学するつもりは全くなかったなあ・・」
『私は京都に来たかったんだ。覚えてる?』
エリコが僕の顔を覗き込んだ。
『中学の修学旅行で清水寺のおみやげ屋さんで私がかんざしを選んでいた時に
「こっちの方が舞妓さんみたいで似合うんじゃない?」って永井君が勧めてくれたの』
僕の記憶からは抹消されている。
『でもそのかんざしが7000円くらいして買えなかったのね。でもそういう悔しさ
って忘れられないのよ。いつか京都に買いに行く、ってずっと思ってたんだ。』
「それで京都の大学受けたの?」
『清水寺にもちょっと近かったしね、軽い気持ちで受けたんだけどダメ。もうちょっと
違う動機があればきっと結果は違ってたかもしれないけど・・』
「また来年受験すればいいじゃん、って訳にいかないか」
『無理無理。お父さんに何言われるかわからないもん。出て行け!なら都合いいけど』
僕らは笑った。
途中配られていた団扇を2枚貰いエリコに渡した。
「自分が全く馴染みのない場所に行きたかったんだと思う。」
函谷鉾の横を通り、ちまきを売るテントの人集りを横目に僕はつぶやいた。
「進学先決める時に先生から「推薦でいけるぞ」って言われてた。いつまでも受験勉強
するのも嫌だったし六大学とか勧められてたけどたまたまなんかのテレビで祇園祭を
していて特集していて・・次の日「京都にします!」って宣言してた。」
『結構適当に決めたんだね。』
「結果的にはね。でもこっちに来てよかったよ。不思議なくらい静かに生活してる。」
『で、感慨深いものがある?祇園祭』
エリコは左手で帯留めの所に団扇を挟みながら僕に向かって笑った。
「こんな出会いがあるとは思ってなかったけどね。」
僕も笑った。
ふと視線に入ったエリコの後れ毛に瞬間ドキッとした。
暑さと湿気で重い空気、思い切り息を吸い込み額の汗を拭った。
「何でこんな所にいるの?」
『宵山って言うんでしょ?すごい人だよね。』
「いつ来たの?ひとり?」
『今日の昼頃、京都に着いたの。嵐山に叔母がいて、寄ってから来たんだけど・・』
「来るなら来るって教えてくれてもいいんじゃない?」
『今日の朝起きるまで来ようと思ってなかったもん。』
「なんだよ、それ・・」
『あのさ、久し振りに会ったのに何か嬉しそうじゃないよね・・』
僕は持っていたミネラルウォーターを飲み干し、拗ねたようなエリコを見た。
「あのな、予期しない出来事でちょっと混乱してるだけ。」
『結構本番に強いタイプかなと思ってたんだけど。バスケ部の時も、ほら。』
エリコが辿った記憶はきっと高校3年の時のインターハイ県予選の決勝の場面だ。
残り5分で点差は9点。諦めかけた時に立て続けに3本、3Pシュートを決めた。
結局2点差で負けてしまったけれどそのシュートの感覚だけがずっと手の平に
心地よく残っていたのを今でも思い出せる。
「ちょっと順序立てて聞きたいんだけど、いい?」
『まあ、いいじゃない。私も初めて見るお祭りだしブラブラ歩こう、ね?』
目の前には月鉾が立っていた。
目を凝らすとその絢爛豪華な装飾に圧倒される。
「月」と書かれた駒形提灯にも灯が入る。
周りを取り囲む人々の波。
奏でられる祇園囃子。「ちまき買うてんか~、厄除けのちまき買うてんか~」
ひとりでたくさんのちまきを買い、袋を一杯にした老婦人がいる。
缶ビールを片手に鉾に掛けられた絨毯を説明している老人がいる。
きっと数百年前と変わらない風景。時間が醸成した空気が街を流れている。
『あのさ、嵐山の叔母さんに長刀鉾でちまきを買ってきてって言われたんだけど』
「長刀鉾ならさっき写メ撮ろうとしてたんだけど。烏丸の方だし行こうか?」
僕は踵を返すと
『ちょっと、迷子になったらどうするのよ・・』
エリコは突然歩き出した僕に不満そうに立っている。
僕は仕方なくエリコの手首をつかんだ。
『下駄だし、ゆっくり歩いてよね。』
エリコは手首に絡んだ僕の手をほどき左手を握った。
『ねえ、何で京都の大学にしたの?』
なかなか前に進めない、話すきっかけも無く黙っていた僕に問い掛けてきた。
「何故って・・何故だろう?東京で進学するつもりは全くなかったなあ・・」
『私は京都に来たかったんだ。覚えてる?』
エリコが僕の顔を覗き込んだ。
『中学の修学旅行で清水寺のおみやげ屋さんで私がかんざしを選んでいた時に
「こっちの方が舞妓さんみたいで似合うんじゃない?」って永井君が勧めてくれたの』
僕の記憶からは抹消されている。
『でもそのかんざしが7000円くらいして買えなかったのね。でもそういう悔しさ
って忘れられないのよ。いつか京都に買いに行く、ってずっと思ってたんだ。』
「それで京都の大学受けたの?」
『清水寺にもちょっと近かったしね、軽い気持ちで受けたんだけどダメ。もうちょっと
違う動機があればきっと結果は違ってたかもしれないけど・・』
「また来年受験すればいいじゃん、って訳にいかないか」
『無理無理。お父さんに何言われるかわからないもん。出て行け!なら都合いいけど』
僕らは笑った。
途中配られていた団扇を2枚貰いエリコに渡した。
「自分が全く馴染みのない場所に行きたかったんだと思う。」
函谷鉾の横を通り、ちまきを売るテントの人集りを横目に僕はつぶやいた。
「進学先決める時に先生から「推薦でいけるぞ」って言われてた。いつまでも受験勉強
するのも嫌だったし六大学とか勧められてたけどたまたまなんかのテレビで祇園祭を
していて特集していて・・次の日「京都にします!」って宣言してた。」
『結構適当に決めたんだね。』
「結果的にはね。でもこっちに来てよかったよ。不思議なくらい静かに生活してる。」
『で、感慨深いものがある?祇園祭』
エリコは左手で帯留めの所に団扇を挟みながら僕に向かって笑った。
「こんな出会いがあるとは思ってなかったけどね。」
僕も笑った。
ふと視線に入ったエリコの後れ毛に瞬間ドキッとした。
「なかなか梅雨って明けませんね。
今日は午前中で授業が終わったので四条まで出掛けました。
ポツポツと雨が降ったり止んだりとはっきりしない天気でしたが
祇園祭の『鉾立て』が始まってました。
町の中を動く(走り回ってはいないみたいなので)山や鉾は
釘などは全く使わずに組み立てていくそうです。
見ているだけで蒸し暑さでボーッとしてしまいそうですが
一つ一つの作業はとても丁寧で以前テレビで見た宮大工の仕事を思わせました。
山鉾巡行は前期試験と重なるので見ることは出来ないと思いますが
宵山は雨が降らなければ見に来ようと思っています。
7月の終わりまで試験が続きます。
レポート作成もあるのでバタバタしそうです。
また宵山の感想なんか送ります。
カメラは写メしかないのですがプリントアウトして同封します。
よかったら楽しみにしていてください。
それではまた」
梅雨明け云々より台風が発生していた。
九州に上陸し東へ進路を変えたと天気予報が伝えていた。
3日前に簡単な手紙を送り今日から大学生活初の試験が始まっていた。
午前7時で台風警報が発令していれば試験は延期となっていたけれど
生温い風と雨の中
ジーパンをずぶ濡れにしながらやっとマンションにたどり着いた。
今夜は宵々山だというのにあの山や鉾はどうなるんだろう?
と疑問を抱きつつテレビを付けた。
『台風は今夜半、近畿地方に最接近する模様・・』
窓を叩く雨が一層強くなったような気がした。
目覚ましの音に急かされ飛び起きた。
カーテンを一気に開け窓の外を見ると台風一過の名残の雨が
地面を濡らしていた。
「試験中止にはならないな・・」
勢いの弱い雨を恨めしげに見上げ、僕は洗面台に向かった。
バスは寿司詰め状態だった。
そしてバスが進むはずの道路は全く動かなくなっていた。
試験が終わり、マンションに帰り、ポストの中にスポーツクラブ勧誘のビラしか
ないことを確認するとすぐにシャワーを浴びた。
エリコへの手紙に書いた義務感からか今夜の宵山には
行かなければならない使命感を感じていた。
京都市役所前でようやくバスから降りて浴衣姿をあちこちに見ながら
鉾が立つ四条烏丸までゆっくり歩くことにした。
御池通は明日の山鉾巡行の観覧席が設けられていた。
通りの屋台で冷えたミネラルウォーターと揚げたてのカップに入った唐揚げを買い
御池通を西へと進んだ。
雲間から覗く夕陽のオレンジ色が通りを色濃く照らしていた。
烏丸との交差点を南へ進み新風館を横目に人の流れに逆らうことなく歩いた。
蒸し暑さは相変わらずでも祭りの高揚感が僕を陽気にさせていた。
と次第に人の流れも鈍くなってきた。
動かない、動けない。これが祇園祭の宵山。
四条烏丸の交差点は長刀鉾を中心に恐ろしいほどの人の渦。
それでも鉾に近付きまずは写真、と携帯を取り出した途端に、震えた。
着信非通知でコールされる電話。
「・・・・・」
上手く聞き取ることが出来ない。
『来たよ、聞こえる?』
「え、エリコなのか?」
『すごい人だよね、今何処にいるの?』
「い、いま四条烏丸。長刀鉾のすぐ下だけど、エリコは何処?」
『えっと、池坊短大って所の門の前』
「ちょっと待ってて、そっちに行くから。そのまま待ってて!」
電話を切った。人波をかき分けて進んだ。
ハガキを初めて受け取った時とは全く違う鼓動の高鳴り。
「なんでいつも突然なんだ・・」
ちょっと愚痴りながら室町通を越えた。
『久し振りだね、永井君・・』
紫色の花柄の浴衣姿のエリコが祇園祭の京都でたたずんでいた・・
今日は午前中で授業が終わったので四条まで出掛けました。
ポツポツと雨が降ったり止んだりとはっきりしない天気でしたが
祇園祭の『鉾立て』が始まってました。
町の中を動く(走り回ってはいないみたいなので)山や鉾は
釘などは全く使わずに組み立てていくそうです。
見ているだけで蒸し暑さでボーッとしてしまいそうですが
一つ一つの作業はとても丁寧で以前テレビで見た宮大工の仕事を思わせました。
山鉾巡行は前期試験と重なるので見ることは出来ないと思いますが
宵山は雨が降らなければ見に来ようと思っています。
7月の終わりまで試験が続きます。
レポート作成もあるのでバタバタしそうです。
また宵山の感想なんか送ります。
カメラは写メしかないのですがプリントアウトして同封します。
よかったら楽しみにしていてください。
それではまた」
梅雨明け云々より台風が発生していた。
九州に上陸し東へ進路を変えたと天気予報が伝えていた。
3日前に簡単な手紙を送り今日から大学生活初の試験が始まっていた。
午前7時で台風警報が発令していれば試験は延期となっていたけれど
生温い風と雨の中
ジーパンをずぶ濡れにしながらやっとマンションにたどり着いた。
今夜は宵々山だというのにあの山や鉾はどうなるんだろう?
と疑問を抱きつつテレビを付けた。
『台風は今夜半、近畿地方に最接近する模様・・』
窓を叩く雨が一層強くなったような気がした。
目覚ましの音に急かされ飛び起きた。
カーテンを一気に開け窓の外を見ると台風一過の名残の雨が
地面を濡らしていた。
「試験中止にはならないな・・」
勢いの弱い雨を恨めしげに見上げ、僕は洗面台に向かった。
バスは寿司詰め状態だった。
そしてバスが進むはずの道路は全く動かなくなっていた。
試験が終わり、マンションに帰り、ポストの中にスポーツクラブ勧誘のビラしか
ないことを確認するとすぐにシャワーを浴びた。
エリコへの手紙に書いた義務感からか今夜の宵山には
行かなければならない使命感を感じていた。
京都市役所前でようやくバスから降りて浴衣姿をあちこちに見ながら
鉾が立つ四条烏丸までゆっくり歩くことにした。
御池通は明日の山鉾巡行の観覧席が設けられていた。
通りの屋台で冷えたミネラルウォーターと揚げたてのカップに入った唐揚げを買い
御池通を西へと進んだ。
雲間から覗く夕陽のオレンジ色が通りを色濃く照らしていた。
烏丸との交差点を南へ進み新風館を横目に人の流れに逆らうことなく歩いた。
蒸し暑さは相変わらずでも祭りの高揚感が僕を陽気にさせていた。
と次第に人の流れも鈍くなってきた。
動かない、動けない。これが祇園祭の宵山。
四条烏丸の交差点は長刀鉾を中心に恐ろしいほどの人の渦。
それでも鉾に近付きまずは写真、と携帯を取り出した途端に、震えた。
着信非通知でコールされる電話。
「・・・・・」
上手く聞き取ることが出来ない。
『来たよ、聞こえる?』
「え、エリコなのか?」
『すごい人だよね、今何処にいるの?』
「い、いま四条烏丸。長刀鉾のすぐ下だけど、エリコは何処?」
『えっと、池坊短大って所の門の前』
「ちょっと待ってて、そっちに行くから。そのまま待ってて!」
電話を切った。人波をかき分けて進んだ。
ハガキを初めて受け取った時とは全く違う鼓動の高鳴り。
「なんでいつも突然なんだ・・」
ちょっと愚痴りながら室町通を越えた。
『久し振りだね、永井君・・』
紫色の花柄の浴衣姿のエリコが祇園祭の京都でたたずんでいた・・
突然あんなハガキを送ってごめんなさい。
携帯電話の番号は巧君に教えてもらったんですが
いきなり電話するのも気が引けてしまったので
手紙を書こうと思いました。
京都の住所は高校の同窓会役員の相沢さんに教えてもらいました。
京都の大学に合格したって職員室の前に張り出されていたので
知ってました。私も4月から東京の女子大に通っています。
通学の1時間半、ラッシュに巻き込まれて朝からとても大変です。
一昨日は初めて痴漢に遭いました。一日中いやな気分でした。
自転車や徒歩で通学できるなんてうらやましいです。
叔母が京都に住んでいるので叔母の家に下宿する段取りで
受験の時は京都の大学も受けたのですが落ちてしまいました。
今になってとても後悔しています(笑)
ひとり暮らし、どうですか?質問が変ですね。
自炊しているんですか?
私も一度ひとり暮らしをしたいと思っているのですが
親が納得してくれません。
「通学できるんだからわざわざ出て行く必要はない」
「ただでさえ、家の用事ひとつも出来ないのにひとり暮らしが
出来るはずがない」
「ひとり暮らしを始めて悪い虫でも付いたら・・」
いろいろ言い訳を揃えて私の意見を却下します。
まあ今のうちは両親に甘えておこうかと思っているのですが・・
返事ありがとう。
返事が来るなんて思ってもいなかったのですごく嬉しかったです。
私の方も8月に中学のクラス会があります。
その時によかったら会えませんか?
色々な話も聞いてみたいし言わなくちゃいけないこともあるので。
帰省の予定、教えてください。
追伸の部分、私はまた返事を期待していいんですか?(笑)
昼の授業が終わり傘を差しながらマンションに帰るとポストに封筒が入っていた。
便箋の上に並ぶ文字は丸みを帯びて整っていた。
メールのゴシック体に慣れている僕としてはかえって新鮮な気持ちで便箋の文字を追った。
そして財布の中に入れていた80円切手を取り出し新しい封筒に貼った。
「昨日から京都は雨が降っています。
雨が降っている時に傘を差して自転車に乗っていると
京都に来たばかりの時に向かって走ってくる自転車とぶつかって
手を酷く擦りむいてしまったことがあってそれ以来雨の時は
20分掛けて学校まで歩きます。
雨が降ると涼しい、なんてことはまるでなく蒸し暑さが増幅されます。
7月に入り祇園祭が表立って始まる頃には暑さにも慣れるよ、なんて
近所のコンビニの奥さんは言うのですがあと1週間で慣れることは
出来ないと思います(笑)
京都の大学受験してたんですか?それは全然知りませんでした。
ひとり暮らしはようやく慣れてきました。
自炊は最初から出来るだけしていかないと本当に外食ばかりになると
常々言われていたので昼で授業が終わる時や週末は自分で料理しています。
オレンジページって雑誌が2冊ほど部屋にあります(笑)
不器用な僕でも手軽に作れるメニューがあるので重宝しています。
今は楽しんで作っていますがそのうち面倒くさくなってしまうのでは・・
まあ着々とレパートリー増やしていきます。
前にハガキをもらった時に不思議だったことがあって
何で俺の住所知ってるの?ってこと。
そうか、相沢経由だったのか・・あいつは今、何も連絡してきません。
生徒会やバスケ部のキャプテンだけじゃ不満足だったんですね。
8月はきっと月初めから帰省することになると思います。
自宅近所で1ヶ月だけバイトも見つかったので
実家でゆっくりすることになると思います。
帰省したら連絡先は自宅でいいのかな?
取り敢えず電話します。
それではまた。
追伸
これからも連絡は文通にしましょう。
また切手準備しておきます(笑)」
封をした。
明日、鳩居堂に便箋を買いに行こう・・
携帯電話の番号は巧君に教えてもらったんですが
いきなり電話するのも気が引けてしまったので
手紙を書こうと思いました。
京都の住所は高校の同窓会役員の相沢さんに教えてもらいました。
京都の大学に合格したって職員室の前に張り出されていたので
知ってました。私も4月から東京の女子大に通っています。
通学の1時間半、ラッシュに巻き込まれて朝からとても大変です。
一昨日は初めて痴漢に遭いました。一日中いやな気分でした。
自転車や徒歩で通学できるなんてうらやましいです。
叔母が京都に住んでいるので叔母の家に下宿する段取りで
受験の時は京都の大学も受けたのですが落ちてしまいました。
今になってとても後悔しています(笑)
ひとり暮らし、どうですか?質問が変ですね。
自炊しているんですか?
私も一度ひとり暮らしをしたいと思っているのですが
親が納得してくれません。
「通学できるんだからわざわざ出て行く必要はない」
「ただでさえ、家の用事ひとつも出来ないのにひとり暮らしが
出来るはずがない」
「ひとり暮らしを始めて悪い虫でも付いたら・・」
いろいろ言い訳を揃えて私の意見を却下します。
まあ今のうちは両親に甘えておこうかと思っているのですが・・
返事ありがとう。
返事が来るなんて思ってもいなかったのですごく嬉しかったです。
私の方も8月に中学のクラス会があります。
その時によかったら会えませんか?
色々な話も聞いてみたいし言わなくちゃいけないこともあるので。
帰省の予定、教えてください。
追伸の部分、私はまた返事を期待していいんですか?(笑)
昼の授業が終わり傘を差しながらマンションに帰るとポストに封筒が入っていた。
便箋の上に並ぶ文字は丸みを帯びて整っていた。
メールのゴシック体に慣れている僕としてはかえって新鮮な気持ちで便箋の文字を追った。
そして財布の中に入れていた80円切手を取り出し新しい封筒に貼った。
「昨日から京都は雨が降っています。
雨が降っている時に傘を差して自転車に乗っていると
京都に来たばかりの時に向かって走ってくる自転車とぶつかって
手を酷く擦りむいてしまったことがあってそれ以来雨の時は
20分掛けて学校まで歩きます。
雨が降ると涼しい、なんてことはまるでなく蒸し暑さが増幅されます。
7月に入り祇園祭が表立って始まる頃には暑さにも慣れるよ、なんて
近所のコンビニの奥さんは言うのですがあと1週間で慣れることは
出来ないと思います(笑)
京都の大学受験してたんですか?それは全然知りませんでした。
ひとり暮らしはようやく慣れてきました。
自炊は最初から出来るだけしていかないと本当に外食ばかりになると
常々言われていたので昼で授業が終わる時や週末は自分で料理しています。
オレンジページって雑誌が2冊ほど部屋にあります(笑)
不器用な僕でも手軽に作れるメニューがあるので重宝しています。
今は楽しんで作っていますがそのうち面倒くさくなってしまうのでは・・
まあ着々とレパートリー増やしていきます。
前にハガキをもらった時に不思議だったことがあって
何で俺の住所知ってるの?ってこと。
そうか、相沢経由だったのか・・あいつは今、何も連絡してきません。
生徒会やバスケ部のキャプテンだけじゃ不満足だったんですね。
8月はきっと月初めから帰省することになると思います。
自宅近所で1ヶ月だけバイトも見つかったので
実家でゆっくりすることになると思います。
帰省したら連絡先は自宅でいいのかな?
取り敢えず電話します。
それではまた。
追伸
これからも連絡は文通にしましょう。
また切手準備しておきます(笑)」
封をした。
明日、鳩居堂に便箋を買いに行こう・・