新津章夫 Official Blog 《迷宮の森》 -17ページ目

新津章夫 Official Blog 《迷宮の森》

謎に満ちた迷宮のギタリスト、新津章夫のオフィシャル・ブログ。迷宮の森 《Forest in maze》

 あけましておめでとうございます。

 まずは、皆さんに感謝を述べさせてください。なんと1月1日の順位が未曾有の387位になりました! これまでの最高位は600位台ですから、信じられない順位です。前日の1000位台から700人抜きです。

 おそらく、年賀状メールにBlog情報を載せたためだと思われますが、これほどまでにたくさんの人々が訪問してくれるとは思ってもいませんでした。

 今年もまた新津章夫の未発表テイク集を出したいと思っています。引き続きこのBlogもよろしくおねがいします。

 2006年 元旦 新津隆夫

 まったく似つかわしくないのですが、新津章夫はクリスマス・ソングが大好きでした。実際、3枚目のアルバム「ウィンター・ワンダーランド」にはホワイト・クリスマス」が収録されています。このBlogで音が出せるのであればお聞かせしたいほどの名編曲&名演奏です。いずれはアルバム自体をCD化したいと思っています。

 それでは、新津章夫になりかわりまして、皆様に、Merry Christmas !


参照 / 新津章夫「ホワイト・クリスマス」~日本のクリスマスソングのサイトより

http://christmasx.hp.infoseek.co.jp/songlist-na-no.htm


 驚きました。話題のmixi(ミクシイ)に新津章夫のコミュニティが生まれました。せっかくなので僕も参加することにしました。しかし、こんなマイナーなアーティストにここまでしてくれる人が多いとは…。本当に感謝感謝です。インターネットならではの広がりに驚いております。


新津章夫・コミュニティ

http://mixi.jp/view_community.pl?id=260584


 ただいま「JJazz.Net」 というサイトにて「サイエンス・クラシックス」の中の数曲が視聴できます。CD購入を考えていただいている方、一度、閲覧してみてください。「温故知新」というコーナーです。


JJazz.Net 「温故知新」コーナー

http://www.jjazz.net/aboutjjazznet/index.php


PS.Blogのが突然、未曾有の600位台まであがりました! 訪問いただいた皆様に感謝します。1000位台が定位置だったのに…。


PSのPS. 12月6日、定位置の1000位に戻りました。ありゃりゃ?


 新津章夫のお気に入りミュージシャンについて語ろうと思います。Blogのプロフィールに、「ジミ・ヘンドリックス、ジェフ・ベック、マイケル・ブルームフィールド、ジョー・パスなどに影響を受け」と書きましたが、それ以外にも愛聴していたレコードやミュージシャンはたくさんいました。

 その一人が、オランダのロックバンド、フォーカスのギタリスト、ヤン・アッカーマンです。新津章夫自身は、ドイツ人だと思っていたようで、ドイツ好きの彼としては、より一層の愛着があったようです。1970年代半ば、来日した際には、中野サンプラザに一緒に見に行った思い出があります。

 とくに好きだったアルバムは、「ハンバーガー・コンチェルト」。これは僕が買ってきたレコードですが、ほとんど彼の手元にありました。1曲目、「リュートとリコーダーの為の小品(音楽の歓び)」は、文字通り、ヤン・アッカーマンが奏でるリュートとタイス・ヴァン・レアーのリコーダーによる曲ですが、当時のロックを取り巻く状況においては、とても異質でした。たしかに、ELPの「展覧会の絵」をはじめ、とくにプログレの人たちがクラシックにアプローチする傾向大きな流れではありましたが、この曲は、まんま古楽です。

 しかし、これを聴いたことが、四半世紀後に「サイエンス・クラシックス」の制作を喚起させたことは事実でしょう。

 ヤン・アッカーマンの、バックボーンにバロック音楽を感じさせるメロディーも、新津章夫がやりたかった音楽に自信を持たせてくれたと思います。


Focus

INK


 カフェバーブームが静かに始まろうとしていた1982年ごろ、その中心的な存在といえるLIVE&BAR、インクスティック六本木にて毎週金曜日の午後10時からライブを行っていました。


 ライブといってもバンドを持っていはない新津章夫の場合は少し変わっていました。メインのギターパートが入っていないマイナスワンのテープを使って、それをバックに演奏する、というスタイルのライブでした。聞こえはいいのですが、ま、言い換えればカラオケのテープを持参して地方のドサマワリ(死語ですね)をする演歌歌手みたいなものです。そんなんでお金(チャージ)をとっていいのかよ、と思うようなライブでしたが、デザイナーやミュージシャンなど、暇なんだか酒飲むにもBGMがあるといいな、という感じなんだか、けっこう人は入っていました。


 当初は彼一人でやっていましたが、ショーアップを目指して当時のマネージャーが途中からバイオリニスト、美尾洋乃さん(REAL FISH、MIO FOUなどで活躍)に応援を依頼しましたが、いつのまにかなくなりました。元々、人前に出るのはとっても苦手な人でしたから、ステージに立つこと自体が奇跡的でした。こんなライブが可能だったのも、すべてはオーナーの故・松山勲さん(カフェバーブームの大重鎮)が新津章夫の音楽を気に入ってくれていたからでした。新津章夫よ、天国で感謝してろ、本当に。なんと「ファンクラブ」まで作ってくれたんですからね(実態は不明)。

 友達から「タイガー&ドラゴン」のDVDを借りて見ました。浅草生まれの私としては懐かしい風景もてんこ盛りで久々に練りこまれたドラマを見たような気がします。新津章夫が生きていれば、ぜひ見せたかった。

 というのも、我々新津三兄弟は大の落語ファン。「落語特選会」(TBS)や「落語in六本木」(フジテレビ)をよく一緒に見たものです。新津章夫が大好きな落語家は立川談志。まさに孤高の人らしい、としかいいようがありません。


 さて、落語というのは、究極の一人芝居であります。顔の向き、声質、話すリズムを変えて最低でも2人の役をこなさなければならない。しかも、客から見えるカッコは例の羽織姿。場合によっては声だけしかわかりません(ラジオ中継では)。非常に高度な芸なのです。

 一人で作・編曲、演奏、レコーディング、エンジニアリング、ミキシングをこなす新津章夫も、いわば音楽の落語家みたいなもの、だといえるでしょう。

 元々が、エッシャーのだまし絵、クラインの坪やメビウスの輪、シンメトリーとパラドックス、そして、アンチクライマックス、回文、円周率…。そんな視覚や論理の"まやかし"が好きな人ですから、彼の音楽もまずはそういった構造作りから始まります。
 小さなギャグをちりばめて練りに練りこんだ話を作り最後に落とす。落語の構造ととても似ているのです。
 たとえば、「I・O」に収録されている「光のオルゴール」は三度(半音3つ)の転調を4回繰り返して元のキーに戻る(完結する)という構造です。メロディー作りよりも、まずはのデザインありきなのです。
 同アルバムの「迷宮の森」は動物や鳥の鳴き声、さらには雅楽に使う笙篳篥(しょう・ひちりき)などの音まで、すべてがフェイク(ギターによる物真似、芝居)です。


 とあるサイトで、新津章夫のついて、こんなことを書いてくれている人がいます。
昨今のサウンドスケープ指向のミュージシャンは、完結しないことを好むようだ(新津章夫などとは大違い)。」

”歌は世に連れ、世は歌に連れ”などといいますから、本来、音楽とは時代とともに変化するものなのかもしれませんが、昨今の、まるで情報誌のように旬が過ぎたら使い道がなくなってポイッと捨ててしまうような音楽には涙が出てきます。時が過ぎようと世の中が変わろうと、なんら影響を受けない古典落語のような、完結した音楽を作るミュージシャンが少なすぎるのです。


 ちなみに、我々新津三兄弟、長男の干支は寅、次男・章夫の干支は辰(1952年)。まさに、「タイガー&ドラゴン」なのでした。
 おあとがよろしいようで。(お囃子入る)

 楽しみにしていたブリッジ・レコードのマンスリー・チャート(月間売り上げランキング)が出ました。とりあえず第3位。満足です。知名度で大村憲司氏には勝てませんからね。


 少し前になりますが、9月17日付けの日刊スポーツ新聞 芸能・文化面に「サイエンス・クラシックス」が紹介されました。ありがとうございました。


 アメブロのランキングは停滞していますが、着実に多くの人の目にふれているのはわかります。皆さんに感謝・多謝です。


 ミラノはすでに初冬のたたずまいです。仕事場にデロンギ・オイルヒーターを灯してブログを書いてます。そろそろ骨のある原稿をアップします。お楽しみに。

「サイエンス・クラシックス」のライナーノーツを読んでいただいている方はご存知かと思いますが、「サイエンス・クラシックス」は四半世紀にまたがる2つの企画からできています。ひとつは、デビュー作「I・O」から「ウィンターワンダーランド」に至る期間に録音されたもの。もうひとつは、新津章夫が亡くなる1年前に製作された「プチクラ」というプロジェクトからの抜粋です。ライナーノーツには書きませんでしたが、ここに新津章夫から届いた1通のEmailを紹介します。


・ 2001年3月25日 受信
≪企画「プチクラ21」は4月スタート予定≫
 クラシック曲を100曲程度サンプリング音源で制作してきました。小品だけでなく、運命やボレロもあり、省略抽出加工型編曲を施してあります。全文提示型の’樽酒’ではなく’柑橘系エッセンス’に近付けてきました。この中から、ショパン、フォーレ、サティー、ラベルなどのフランス音楽を中心に売込み用の選曲をしました。

《中略》

 クラシック小品集21曲の仕様は次のようになります。
ⅰ.演奏時間は1分40秒から2分30秒の間に収まります。
ⅱ.編曲では、原曲に音数を増やすことなく新音を付加しない。
ⅲ.通常の楽器音を使わない。
 こうすることで、曲イメージに集中でき、情感リピートさせやすくデータとして扱いやすくなります。
《中略》

≪企画「プチクラ21」は放送の為のCD販売化≫
 これは放送での消費を前提とします。放送では記号化、楽曲ラベリングが進んでいます。10年前からこの場面にはこの系統の楽曲という紋切り型消費指向からIndex化が進行しています。サティーはその典型でしょう。今だに放送回数は多いようです。
《中略》

 1985年の音楽からソフト屋に移行するにあたって、映画の仕事だけはやり残しになりました。ビデオ(曼荼羅のCG)は最後の秀作であると思うのは、やっつけ感ですんなりはまっている作業スタイルが新鮮でした。「ほぼ日」の糸井氏が横尾忠則と祖父江慎の仕事感でふれていた。’いいかげんにやって いい感じにしあがると、いい感じがするんですよ。’今回の「プチクラ21」もこれに近い感触です。



以上。

 唯一無二と言われる新津章夫の音楽は、彼がこだわったいくつかの独創的な録音技術によって支えられている。ひとつは、自身が「倍速ギター」と呼んでいた録音技術。
 昔のオープンリール型のテープレコーダーは速度が変えられたビデオでいえば標準と3倍速のようなもの。1960年代に大ヒットした帰って来たヨッパライ 」(ザ・フォーク・クルセーダーズ=加藤和彦)はこの技術を使った代表的な作品だ。新津章夫は再生する半分の速度でギターを録音し、それを倍の速度で再生することで、音階も2倍高く、演奏速度も2倍、逆に響く音の長さ(音の減衰)は2分の1という不思議なギターサウンドを手に入れた。
 この技術を効果音として使用することは昔から多かったが、新津章夫は音階、速度、残響を計算し、偶然がもたらす計算不可能な面白さではなく、必然的に得られるユニークな音を計算して作り出した。「I・O」のレコード紹介に「何千時間という気の遠くなるような時間が流れた」とあるが、その大部分はこの作業にあてられたと言ってもいい。
 今の時代だったら、そんなもの、コンピュータを使えばちょちょいのちょい。なにをご苦労さんに…となるが、1970年代末はまだコンピュータで音楽を作れる時代ではなかった。世界初のパーソナル・コンピューター(当時はマイコンと呼ばれていた)である8ビットの個人向けパソコンが出るのは、その5年後のことだ。
 新津章夫はなんと2倍速ギターどころか、「I・O」の中の「ブラックホール」では最大8倍速まで実現している。シンバルのように聞こえる音のいくつかは、この8倍速ギターだ。 8倍速と言葉にするのは簡単だが、8分の1の速度で演奏する技術を考えてみて欲しい。ちょっとしたピッキングミスが再生時には、何倍も耳障りな音になる。新津章夫のアナログ技術の結集は、実は卓越したギターテクニックにあるのだ。 
 また、「オレンジ・パラドックス」では、途中のピッという音から後半部分が逆回転になるわけだけど、それを録音するために正回転で演奏したテープを逆回転で聴き、それをコピーするという、まるで偽札を作るときに鉛の版から掘り起すような作業をしていた。今ならばスキャナーすれば済むこと。しかし、その安直さがわざわいして捕まる若者の多いこと…。関係ないけど。
 そういった、いわば実験で得られたものは技術的なものだけではない。新津章夫のメロディーには、一見、メルヘンぽいようで不条理な後味の悪さ残ったり、心地よいメロディーのようで留まる先のない不安定さが待っていたりする。このような音階は、往々にしてこれらの実験の中から見つけ出されたものであったりした。1対1の縮尺の世界で見つけられないものが見つけ出せる。1分が60秒とされる世界では感じられない音が聞こえる。それを現実のサイズにまとめなおしたものが、新津章夫の音楽の摩訶不思議さを支えている。

 新津章夫のセカンドアルバム「PETSTEP」はタイトルが回文になっているが、パラドックス、シンメトリー、回文、アンチクライマックスなど、視覚的及び論理な不思議遊びが彼は大好きだったことも付け加えておきたい。


IO

「I・O (イ・オ)」 発売元・(株)ブリッジ
http://www.bridge-inc.net/catalogs/bridge/bridge009.html