今日は。
6月7日に、アニメ制作の「ガイナックス」の会社破産の申し立てが受理されたことが明らかになりました。
「ガイナックス」は1984年に設立され、『新世紀エヴァンゲリオン』の制作などでアニメ史に名を刻んできました。
どうやら破産の原因は、「ガイナックス」内部での金の問題によるものらしいです。
ある意味、アニメ全盛の今に、アニメファンには、悲劇です。
ところで、アニメとクラシックといったら、僕には、やはり倒産してしまった虫プロの『展覧会の絵』が思い出されます。
『展覧会の絵』は原案、構成、総監督:手塚治虫で、手塚の公式サイトによると、「クラシックの名曲に合わせてオムニバス・アニメが展開されて行く手塚治虫版の『ファンタジア』といった趣の作品です。」
様子をみてみます。
〇展覧会の絵
https://www.youtube.com/watch?v=5VIVv9Z1moM&t=3s
<まみあな四重奏団 下:
マンガとクラシック>
少し間があきましたが、「まみあな四重奏団」の「下:三回目」をお届けします。
前回の「中:二回目「まみあな四重奏団 カノン」(リンク)を掲載したら、親友からメールがきました。
狸穴だから「同じ穴のムジナ 楽団」だね、と。
僕は、「狸穴」という港区の地名を知っていたので、なんのためらいもなく、「狸穴」は高級住宅地の代名詞としてしまいました。
ですが「まみ」は「アナグマやタヌキ」のことをいうので、彼のいうことに納得してしまいました。
「一見違っているように見えるが、実は同類である」楽団です。
さて本題です。
今回は作品『まみあな四重奏団』から少しテーマを発展させて、「マンガとクラシック」についてです。
●マンガとクラシック
●オーケストラや音楽家についてのマンガ
この『まみあな四重奏団』の特徴はクラシックをベースに描かれていることではないでしょうか?。
この作品は音楽に切りこんでいるわけではありませんが、有名なバイオリニストとその音楽一家、そして家族が通う音楽学校が主な舞台です。
いまでこそ、オーケストラや音楽家についてのマンガが多くありますが、この作品以前はそれほど多くはなかったのではないでしょうか?
そこで、マンガとクラシックについて、ちょっと調べてみました。
〇音楽を題材にしたマンガ(30作品)
https://luck-on.com/2018/06/30/mangaindex/
年代順にこんな作品が出てきました。
〇1950年代~70年代
・1958年『ママのバイオリン』 ちばてつや
・1974年『雨のコンダクター』 手塚治虫
・1975年『オルフェウスの窓』 池田理代子
・1975年『虹のプレリュード』 手塚治虫
・1976年『変奏曲シリーズ』作画:竹宮惠子 原作:増山のりえ
・1978年 『バイエルンの天使』 たらさわみち
〇1980年代
・1980年 『いつもポケットにショパン』 くらもちふさこ
・1982年 『僕たちのモーツァルト』 よしまさこ
・1987年 『ルードリッヒ・B』 手塚治虫
そして、
・1988年『まみあな四重奏団』となっています。
こう見ると、女性マンガ家が多いですね。
●「手塚治虫クラシック音楽館」
(写真:本)
でも、手塚には、1974年『雨のコンダクター』以前にも、クラシックに関係する作品があると記憶していたので、『手塚治虫クラシック音楽館』という本をあたってみました。
やはりありました。
この本をちょっと調べてみただけでいろいろな作品が出てきます。
・1960年『ふたりの演奏家』(中一コース)短編
少し捉え方を広げて、音楽シーンが使われている作品と広げるならば、もっとあるといいます。
・1950年『ジャングル大帝』(漫画少年)(リンク)
・1953年『リボンの騎士』
・1958年『フィルムは生きている』『中学一年コース』
・1959年『白くじゃくの歌』少女にとってのアイドルの世界
・1962年『ヨッコちゃんがきたよ』
・1969年『0次元の丘』輪廻転生を題材にしたSF作品です。
・1973年『ユフラテの樹』(高校一年コース)
音楽好きで、自らもピアノを弾いた手塚は、やはり音楽それもクラシックに関係する作品を多く、発表しています。
●マンガとクラシック
クラシックに関係する作品は、大きく二つの作品にわかれるのではないでしょうか。
一つは、クラッシックの作曲者や演奏者そのものを扱った作品。
もう一つは、クラシックを装置や背景として使っている作品。
手塚の作品でいうと、前者が『野ばらよいつ歌う』や『虹のプレリュード』そして『ルードリッヒ・B』。
『野ばらよいつ歌う』は、ピアニストのクララ・シューマンを主人公に、19世紀を彩る名作曲家たちが登場する少女向けの音楽マンガ。
『虹のプレリュード』は、帝政ロシアの時代にあらがう若きショパンを描いています。
『ルードリッヒ・B』はベートーヴェンの生涯を扱った作品で、手塚の未完の遺作になっています。
1988年の『まみあな四重奏団』の前年の1987年に発表されています。
この作品は、槇村に影響しているのでしょうか?
後者が短編ですが、『ふたりの演奏家』。
戦場の教会でピアノを弾いていた兵隊が、敵兵に会い、二人でピアノとバイオリンの演奏をします。
20年後にこの教会で会おうと約束し、別れた二人は・・・。
『雨のコンダクター』もそうかもしれません。
手塚の『ふたりの演奏家』と『雨のコンダクター』は次回に書きたいと考えています。
(可能ならば、『虹のプレリュード』も)
●「学年誌」と「FMレコパル」
手塚の発表雑誌を見て、気が付いたことがあります。
2作品とも一般の漫画雑誌ではなく、「中学一年コース」といった「学年誌」、あるいは「FMレコパル」という音楽雑誌に掲載されていたことです。
●「FMレコパル」
一般雑誌の読者には少し縁遠いクラシックですが、音楽雑誌ならば壁が低くなります。
音楽雑誌ならば更に、全部ではないと思いますが、クラシックの愛好家が多いと思います。
FM雑誌には他に「週刊FM」(音楽之友社)や「FMファン」(共同通信社)がありました。
両誌とも編集方針が「FMレコパル」ほどカジュアルではなく、オーディオ機器やクラシック中心の少し硬い雑誌だったと記憶しています。
それに比べて、「FMレコバル」は小学館発行で、どちらかというとポップスやロック・ジャズファンが多かったのではないでしょうか?。
ですので、「週刊FM」や「FMファン」はテキスト中心に比べ「FMレコパル」では、マンガという形式も違和感がありません。
そこで、「FMレコパル」のマンガ掲載について調べてみました。
こんなサイトがありました。
〇少女マンガのラボラトリー「図書の家」
【芸術・芸能漫画アーカイブ】
1. FMレコパル・ライブ・コミック掲載リスト(暫定版)
1974年~1987年までの判明分について一覧しました。
https://www.toshonoie.net/archive/art_data/a1_fmrp_list.html
ざっと見ると2割くらいはクラシック関係ではないでしょうか?
その中で、松本零士『不滅のアレグレット フルトベングラ』や高井研一郎の作品が目立ちます。
●創刊編集長小西湧之助
書いているうちに、思い出しました。
「FMレコパル」の初代編集長は「ビッグコミック」(リンク)を創刊した小西湧之助でした。
マンガの連載は小西が編集長だったからこそできた企画でしょう。
これ、「レコパル・ライブ・コミック」といったらしい。
この連載から、松本零士作品を集めた『不滅のアレグレット』、石ノ森作品を集めた『ブリッジ「橋」』、ジョージ秋山・政岡としや・長谷川法世の作を集めた『ワイヤード』の3冊が出ています。
参考:マンガが人気連載だった音楽誌 「ビッグコミック」編集長・小西湧之助がつくった「FMレコパル」
https://www.iza.ne.jp/article/20201005-BR3YVD5JGVOI3NW6WZWBXESRUQ/2/
●学年誌
学年誌は、主に小学生向けと中・高校生向けの月刊誌がありました。
小学生向けには、「○○年生」(小学館)、中・高校生向けでは、旺文社の「○○時代」と学習研究社(現Gakken)の「○○コース」がありました。
中間や期末テストの対策などの勉強に関する記事が主ではありましたが、一部マンガや一般の記事も載っていました。
手塚の『ふたりの演奏家』のような内容は学習誌によく合う内容ではないでしょうか、
余談ですが、「コース」か「時代」だったか覚えていませんが、サイモンとガーファンクルのサクセス・ストーリーの記事を読んだことがあります。
マンガや一般の記事も、学年雑誌は、一般誌とは少し編集方針が異なっていたと思います。
学習誌(学年雑誌)は、こんな記事を書いたら学生の為になるのでは、あるいは、こんな記事を読んで欲しい、という立場で、編集されているのではないでしょうか。
学生は読むべきであって、読者の希望や要望には必ずしもそっていなくてもいいわけです。
ですから、クラシックの音楽家の伝記や演奏家の生き方もその対象となります。
小学生の学年誌については、以前に「ピカピカの一年生」(リンク)を書きました。
「○○コース」や「○○時代」の学年誌については、稿を改めて将来(笑)、書きたいと思います。
次回は、手塚のクラシックに関係した作品をお届けする予定です。