以前の記事「工学部Zくん 理系で大学3年のインターンシップは必要か?」でお伝えしたように、現在、首都圏国公立大・理工系3年のZくんは、6月~7月にかけて、5社に応募(文章末に、Zくんのおおまかなスケジュールを掲載)。
うち、エントリーシート(ES)通過2社。
しかし、面接は、「経験値不足で惨敗!! 」で、「夏の陣」は終了。
夏休みに入り、お盆過ぎからは夏バイト※1 を予定しているZくんと、「反省会」(ランチ)をしました。
「現在、公開できる情報」の範囲が限られているのと、インターンシップそのものが、大学入試などと同様に、刻々変化していますので、Zくんの証言をまじえつつ
 (1)エントリーシート通過の勝因→「志望動機」と記述力(本記事)
 (2)面接の敗因→面接NGは口頭発表NGに通じる
 (3)志望企業の探索(Exploration)と、全体のまとめ
の3回にわけて、筆者の再構成版で、ご紹介します。
 
■そもそも理系インターンシップとは?
なお、一口にインターンシップといっても、Zくんがめざした「サマーインターンシップ」とは、理系限定、5日~15日くらいの日程で、職場体験(工場、事業所、研究所)するタイプを指します。
例:コニカミノルタ ※3  
文系(事務系)や、文理同時募集は、今回受けなかったそうです。
また、実質「会社説明会」の「1dayインターンシップ」も、今回は受けませんでしたが、5社目は、「修士1年相手の長期インターンシップでは、学部3年はやはり不利と、だんだん思ってきて」、3日間ほどの「職場見学会」タイプに申し込んだそうです。
この5社目は、ES段階で落ちましたが、メールに「予定より大幅に多い応募者があり返事が遅れました。今回の合否は、採用とは一切関係ありません」とわざわざ書いてあったそうなので、前回記事でも触れた、「就活の前倒し」で、理系修士1年生が、有名企業の「短期(数日)インターン」になだれ込んだ可能性があります。
来年のインターンシップでは、「学生=実質・就活、企業=囲い込み」の傾向が、さらに強くなると思います。この点は、(3)でまた触れます。
では、今回は(1)エントリーシート(以下、ES)についてです。
 
●1-1 来年からは、ESをAIが判定?
就活サイト「マイナビ」と三菱総研が、昨年10月に「エントリーシート優先度診断サービス」を発表しました。

http://news.mynavi.jp/news/2016/10/28/264/

さらに、ESの「使いまわし」や、ネットからの例文「コピペ」をチェックする機能も加わる見込みです。2019年卒就活の文系(事務系)から導入が本格化されるようです。

上記サービスの記事をまずZくんに読ませて ↓。
P(筆者):来年からは、まず事務系(文系)の就職やインターンシップ応募から、AIが活用される見込みだけれど、理系の場合、何か影響はあるかな?
Z:ぼくは、50社くらい調べて、10社くらいにプレエントリーして、最終的に5社に絞ったわけですが、ES
の中身は、大きく分けると
 (A)自己紹介(長所)
 (B)学生時代にがんばったこと
 (C)研究内容
 (D)志望動機
のパターンでした。
ぼくは、学部3年なので、「研究内容」ではなく、「4年から研究したい内容(最終的に4つくらいに絞れました)、卒論/修論構想」を、「志望動機」とからめて書く戦法をとったんで、「研究したい内容」と「志望動機」は5社バラバラになりましたが、修士1年だと、(A)~(C)は、「ほとんど同じ内容」(コピペ? )になってもしょうがないんじゃないかな?
逆に、エントリーする会社によって、(A)の自己紹介の中身が、全然違う方が問題のような気がしますが…。

●1-2 WEBテスト(性格検査)と自己紹介
P:Zくんが応募した5社の中で、1社だけWEBテストも受けさせたって? インターンシップ選考でWEBテストまでするのは少数派らしいけど、
参考記事:

https://careerpark.jp/4505

就活本番ではたいていの会社が、適性検査(性格検査と学力・能力検査など)をするので、そもそも(A)の自己紹介の中身が、性格検査の結果と一致していないと、かえってマイナスになると思う。

たとえば、Zくんが(A)自己紹介で、「コミュニケーション能力があります」と書いても、WEBテストや面接で、ばれるよね。
Z:ぼくは、「他己分析」をPさんにお願いして、そのとき「理系インターンシップで、文系ほどコミュニケーション能力は重視されないと思う。ただ、チームで行動するときに、どういう形で貢献できるタイプなのか?(P注:協調性は必要です) 実際、大学の実験や実習ではどうだったか、具体例も書いてみれば?」とアドバイスがあったので、“過去10年内に他大学で死傷者も出たと、先生に警告された某実験・実習の件を書きました。
 
●1-3 Zくんが「志望動機」で重視したこと
Z:あと、(D)の志望動機では、Pさんから「学科の就職先の王道(たとえば、都市開発専攻で建設会社とか)以外の会社を考えたら?」と、これも事前アドバイスをしてもらったおかげで、かえって「御社の○○に、ぼくの関心がある□□が役にたちそうなので、この志望テーマ△△に応募しました」という書き方で、スムーズに書けました。
P: Zくんの協力で、通過した2社のESの下書を読ませてもらったら、確かに「志望動機」の部分で、この会社で、こんな事業をやってて※6 、こんな募集があったんだ!! という募集内容を見つけて、それに対して、Zくんの専攻をからめてアンサーを書いてるね。
実は、5社すべて、売上高1兆円超の国内企業かグローバル企業の日本法人なので、失礼ながら、そもそも第一関門(ES)の突破ができるか? すらあやしいと思っていましたが。
やはり理系の場合は「研究(予定)内容」を、しっかり説明できるか? が、第一のポイント。
とくに、修士1年になると、たいていは、修論テーマになるべく近い募集内容を選ぶと思うので、(C)(D)は、ワンセットで考えましょう。
ZくんがESで落ちた3社については、応募内容(企業名、期間、場所、希望した研修テーマ)だけ聞いたんだけど、5社ともけっこう希望テーマがバラバラだよね。
Z:5社の応募時期が、6月はじめ~末の約1か月の時間差があったので、その間に、考え方が変わった部分もあります。研究予定テーマも、最終的に4つくらいに絞込みましたが、逆に、いろいろな会社の「研修テーマ」を見て、そこから自分の「傾向」=「関心」が分かったり広がったり、ということもあります。
たとえば、「志望動機」が詰められなかったので、今回は応募しませんでしたが、「新日鉄住金」の夏季インターンシップでは、「実習テーマ」の中に、「鉄スラグを利用した藻類生産システム」がありました。
P:鉄スラグ?
Z:Pさんもやっぱり初耳ですよね。ネットで調べると、 

  http://www.nssmc.com/csr/env/circulation/sea.html

ということで、製鉄の過程で産まれる「鉄スラグ」を、海中に入れると、海藻の生産量が劇的に増えるらしいです。前に、Pさんから「東京海洋大」の話を聞いてましたので、「海を対象にする工学もありだな」とは思っていました。それで、キーワード「もずく」で、応募を考えたんですが※4。
 
●1-4 「関連付け」で「志望動機」が書ければES突破は見えてくる
P:「鉄スラグ」みたいに、いったんボツにしたアイディアの集積から、新しいことが生まれるので、そういうのは、大事に寝かせておきましょう。当ブログのネタも、「バベルの塔」とか「ダ・ヴィンチのロボット」とか、いろいろ書きたいことはありまして。
ちょうど、つい先日、読売新聞の記事※5 で、当ブログでも前に、子どもの「読解力」の記事で取り上げた「PISA(国際学習到達度調査)」に関連したインタビュー記事が載っていた。
その中で、テストを実施しているOECD(経済協力開発機構)の幹部が、
「日本の生徒(15歳)は、“計画的学習”(自分で優先度や目標を決め、進捗度を管理しながら効率的に学ぶ)はできているが、様々な知識や情報を、自分と関連付けて学ぶ生徒は少ない
という趣旨の発言をしていた。
学部3年生は、研究(予定)テーマが決まっていない分、逆に、Zくんのように、「御社の○○に、ぼくの関心がある□□が役にたちそうなので、この志望テーマ△△に応募しました」という、関連付けの幅は広いから、そこを工夫して書くと、ES突破が見えてくると思う。
Z:どうせ、来年「IoT」は、バズワード(Buzzword)からはずれていると思いますので、ネタばらしすると、今回僕は、「ぼくの関心のあるIoT関連の□□(専攻に関わる言葉が入る)が、御社の○○に~」のパターンで、文章を組み立てました。
 
1-5 埼玉大学工学部の「小論文」対策が、ES作成のヒントになるかもしれない
P:工学系だと、今年はどの分野でも、AI/ビッグデータ/IoTのどれかを、キーワードにできたと思う。
「キーワード×研究内容を、志望動機に代入」するとして、来年の「キーワード」は当然変わりますから、そこを見つける努力が必要です。
見つけ方のトレーニングとしては、ちょうど埼玉大学工学部※7 が、来年度(平成30年)入試の前期から、「小論文」を出題するようで、その設問例が
「人工知能、省エネルギー社会、温室効果ガスの排出削減、自然災害などに関して、重要と考える技術的な課題を一つ取り上げて説明しなさい。またその課題に対して科学技術がどのように貢献できるか述べなさい」
この要領で、これからのニュース記事から、1テーマ400~800字(理系ESの標準字数でもあります)でまとめる練習をしてはどうでしょうか?
Z:工学部の一般入試で、小論文ですか?
P: Zくんは、都立独自問題作成高校の入試対策で、記述式のトレーニングをしていたから、大学のレポートでもES作成でも、苦労しなかったと思うけど、全国の大多数の高校入試※8 では、これまで記述式対策が必要でなかった。
"これからの変化"は、当ブログの理工系Vくんシリーズの「記述式」でまたフォローしますが、現在の学部3年で、Zくんは「記述力」という有利な武器をもっているありがたみは、自覚しておいた方が良いよ!!
各大学(とくに教育学部のある大学)は、入試と入試後の成績推移をチェックして、入試方法を改善していきますから、埼玉大工学部の小論文導入効果については、埼玉大教育学部のみなさんが奮起※9 して、分析してみてください。
あと、平成30年度以降工学部入学者の、インターンシップ参加率もですね。
実際、書いてみると分かるけど、400~800字のまとまった文章を書くのは、けっこう大変ですから、そこで挫折する人も多いかも。
 
【追加情報】
エントリーシートについては、主に修士1年(卒論ベース)むけですが、下記に理工系にフォーカスしたESの書き方をご紹介しました。250字とか、短い方がかえって難しいと感じた3年生は、今がチャンスですので、この段階から「記述力」アップに努めると、秋以降の「応募」や、卒論執筆時など、なにかと役立ちますよ。
 
【付録】理工系・学部3年 2017年度のZくんの大まかなスケジュール
4月 新学期開始から、1単位分の時間を、インターンシップ研究? にあてる
5月 「他己分析」に筆者が協力。この時点では、「学部3年のインターンシップは、あえて“学科の先輩が就職していない”企業を選んでみたら? 」とアドバイスしていました
6月 マイナビ、リクナビなどの就活サイトが、2019年卒向けのインターンシップ情報の掲載をはじめる
6月初め(中間試験後) 応募開始
6月下旬 Zくんは、5社で応募を終える
7月中旬 面接(2社)
7月下旬 大学の前期末試験
8~9月 予定では「長期サマーインターンシップ」に参加するはずが…。
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※1 2年夏休みにバイトしたIT企業で、今年も週4日働くそうです。
※2 中央線某駅近くのサラダバーが名物の店
※3 通常ページで、募集の場所や概要が見られる例を選びました。プレエントリー(住所、大学・学部・学科名ほかをまず登録)しないと、詳しい内容が分からない会社の方が、多いです。なお、このコニカミノルタの「募集概要」だと、修士1年がターゲットと推測できますので、Zくんは、このような「業務本格体験型」には、そもそも応募しなかったそうです。
※4 Zくんの大学・学部・専攻は、今後も書けませんが、「もずく」との関連性は、「鉄スラグと海藻」同様に、説明をくわしく聞かないとわからない、意外な取り合わせです。
たとえば、もずく×ドローンとかね。
そして、ドローンと言っても、躯体のCNF(セルロースナノファイバー)化とか、学科によりアプローチは当然違ってきます。
※5 2017年8月11日 読売新聞朝刊11面「編集委員が迫る 総合学習 学力アップの鍵」
※6 たとえば、今回例にあげた、コニカミノルタの「事業紹介」には、黄疸計(ヘルスケア事業)、プラネタリウムなどもありました。
※7 当ブログ記事で、学部改編を速報ずみ
※8 ほかに、宮城県の進学高校・仙台二高ほか、一般入試で高度な小論文を出題する形態もありますが。
http://www.hinoki-sendai.com/moshi/zenki_senbatsu/essay.html
※9 平成30年度から、430→380 に定員減。なお、埼玉大工学部の小論文導入は、隣接する東京都の、都立自校問題作成高校の生徒(高校入試段階で記述式の特訓済み。上位層は、旧帝大、中位層は自宅から通える国公立大狙いが多い)を、学部に呼び込むための深謀なのかもしれません。

BGM:Zくんの選曲で、 UNISON SQUARE GARDEN 「シュガーソングとビターステップ」
写真提供:2点ともPixabay