ロイヤル・オペラ・ハウスのドン・カルロにはなんと4度も行き、その度にパフォーマンスの感想だけは速攻で手短に書いて、仲間内ではしゃいでいましたが、
千秋楽も終わってもうドン・カルロは過去のファイル、にしてしまったら、ドン・カルロってどんなオペラかご存じない方はご存知ないままで「????なんだったの???」ってことになってしまうかもしれません。
それではこのブログの売り物である(お金はもらえませんが)「オペラを知らない方のためのオペラブログ」(趣味の押し付けとも言う)たる所以から外れてしまうので、今更ながらですが、一応書いておきましょう。そういうことは先に書け!と仰るでしょうが、すみません時間がなかったし、こんなんでもやっぱり実際に観ないとイメージが沸かないんですよ。
オペラについて
Don Carloは1867年パリで初演されたヴェルディ中期の傑作で、原作はシラーの戯曲「ドン・カルロス」。16世紀スペイン宮廷が舞台の大作オペラです。
フランス語版(Don Carlos)とイタリア語版があり、それぞれに4幕ものと5幕もの、さらに序曲のあるなし、といろんなバージョンがありややこしいのですが、今回のROHは1886年の5幕イタリア語版で正味3時間半。
タイトル・ロールはテノールですが、低音歌手が活躍する重厚な大作オペラです。
何人もの上手は歌手が揃わないとできないので、滅多に上演されないオペラとされていましたが、なぜかここに来て急にロンドン、パリ、ウィーンでほぼ同時に上演されてちょっとしたドン・カルロ・ブーム。歌手に病欠されたらお互いに融通し合おうね、と談合でもしたんでしょうか?
登場人物
実在の人とでっち上げられた人がいますが、まず実在はこの王室メンバー。
フィリッポ2世(またはフィリペ2世)(1527-1598)
スペインでのハプスブルグ家の最盛期に強大な権力を誇ったスペイン国王で、イギリス歴史上ではエリザベスI世の天敵としてお馴染みの存在(悪者としてですが)。1588年の無敵艦隊を英国勝利がイギリスが世界に羽ばたくきっかけとなったわけだしね。ヘンリー8世の娘でエリザベスI世の姉であるメアリー女王(カトリック)と結婚していて、カトリック勢力拡大のためスコットランド女王メアリー・スチュワート(英国国教会のエリザベス1世のもう一人の天敵)を支援。スペイン統治を否認した植民地フランドル(今のオランダ)を弾圧。
エリザベッタ・ド・ヴァロワ (1545-1568)
フランス国王アンリ2世の長女で、スペイン皇太子ドン・カルロスの許婚であったが和平条約締結のためフィリッポ2世の3人目の妻となる。夫婦仲は円満で二人の王女を出産したが、23歳で死亡。スコットランド女王メアリー・スチュワートと親友であったそうな。
ドン・カルロ (1545-1568) フィリッポ2世の当時の一人息子。あまり資料がないけれど、血族結婚を繰り返したハプスブルグ家は頭も体も虚弱な王子王女が多く産まれたので、彼もそんな一人だったのではあるまいか?とてもフィリッポ2世の跡継ぎになれるような優秀な王子様ではなかったでしょう。
この3人でこのままではオペラになりませんね。
優秀で幸せな王妃とパープリンな義理の息子王子の間に恋愛があったとは思えないのですが、
シラーは、生まれたのも死んだのも同じ年だったというこの二人を悲劇のヒロインに仕立て、一大ラブロマンスにしてしまい、それに題材を取ったヴェルディの名作オペラで、この二人はほとんどロメオとジュリエット。
あらすじ
ドラマチックに仕上げるために架空の人物も加わって美化された嘘っぱちオペラはこんな感じです、というエッセンスだけですが。
ドン・カルロ 「僕の許婚のエリザベッタってどんな女性かな~? 待ちきれないから、フォンテンブローの森までこっそり見に来ちゃったよ。あ、いた! 美しいプリンセスじゃないか、僕あ、幸せだなあ」
エリザベッタ 「あ~れ~、森の中で迷っちゃったわ。ちょっとそこでニヤニヤしてるおにいさん、えっ、貴方スペイン人なの? ちょうどよかった。ドン・カルロ皇太子ってどんな人?私のフィアンセなんだけどさ」
ドン・カルロ 「彼の肖像画を見せてあげる」
エリザベッタ 「まあ、貴方が本人じゃないの」
ドン&エリ 「わあーい、よかった! 愛してる。早く結婚したいね」
侍従 「姫様、皇太子ではなくスペイン国王との結婚に急遽変更にござります。女王様、万歳。」
かくしてドン・エリは幸せの絶頂から一気に不幸のどん底に。さあ、皆でスペイン宮廷に行きましょう。
ロドリゴ(カルロの友人) 「なにか悩んでいるらしき友よ、どうしたんだ? えっ、お義母さんに恋してるって? そりゃまずいなあ。気を紛らわすためにフランドル地方に行かないか?虐げられてるフランドルの人たちのために頑張ってる拙者と一緒に戦おうではないか」
フィリッポ2世 「妻はわしのことを年寄り扱いしおって、愛してくれんのは淋しい限りじゃ。もしかしてカルロと・・?」
エボリ皇女(エリザベッタの侍女) 「私はドン・カルロを愛してるんだけど、彼ったらつれない素振り。と思ったらなんと女王様を慕ってるなんて。この私を振っといて許せないわ。よーし、女王が後生大事にしてるカルロの肖像画の入っている宝石箱を盗んじゃお。それを王様のところに持ってって暴露してやるわ」
エリザベッタ 「王様、私の宝石箱が盗まれました。宝石よりも大切なものが入っているんです」
フィリッポ2世 「宝石箱はここにある。カルロの肖像画も。この裏切り妻めが!」
エボリ皇女 「まあ私はなんてことを。女王様、お許し下さい。それにもう一つ誤ることがございます。実は私は王様のお妾なんです。ああ、我ながらこの美貌が憎い」
ロドリゴ 「大変だ、フランドルの反逆者たちの味方をしたかどでカルロが逮捕されてしまった。せっかく王様の信頼を得たけど、よし、ここは拙者が一肌脱いで罪を被ることにしよう。」
エリザベッタ 「カルロ、あのフォンテンブローで私たち幸せだったね」
ドン・カルロ 「僕を救うために親友のロドリゴは処刑されちゃったし、もう何も楽しいことはないさ。あ、先代王であるおじいちゃんが墓の中から僕を呼んでる。から僕はもうあの世に行くよ。エリザベッタ、あの世で幸せになろうね」
他にもカトリックと新教の闘いの時代を反映して、国王にも厳しく意見する強気の宗教裁判長とか出てきます。
↓ セットと衣装はパクリ写真をどうぞ。シックな衣装と漫画チックなセットですが、全体的にはまともなイメージ。
王よ、フランドルの人々の苦しみを知り給え 義母ちゃん、好きだ、好きだ、好きなんだよ~
横顔は美人のエリザベッタ 爺ちゃん(カルロス5世)があの世から呼んでるんだ
カーテンコール写真とパフォーマンスの感想はこちらですが、
一回目(6月6日初日) 二回目(6月11日) 三回目(6月17日) 四回目(7月3日千秋楽)
充実した男性陣に比べて女性陣は格下だったので最高の顔ぶれとは言い難いものの、オケ(パッパーノ指揮)もコーラスも素晴らしく、ずっと切符売り切れ状態で待ちわびたこの新プロダクション、期待通りの素晴らしさでした。
Composer Giuseppe Verdi
Director Nicholas Hytner
Designs Bob Crowley
Conductor Antonio Pappano
Don Carlo Rolando Villazón
Elisabetta di Valois Marina Poplavskaya
Rodrigo Simon Keenlyside/Dmitris Tiliakos
Philip II Ferruccio Furlanetto
Princess Eboli Sonia Ganassi
Tebaldo Pumeza Matshikiza/Paula Murrihy/Pumeza Matshikiza
Conte di Lerma Nikola Matišic
Flemish Deputies
Jacques Imbrailo
Krzysztof Szumanski
Kostas Smoriginas
Daniel Grice
Darren Jeffery
Vuyani Mlinde
Grand Inquisitor Eric Halfvarson
Monk Robert Lloyd








