(今日は先月のトスカの感想をアップする予定だったのですが、どうせ遅れついでだ、それはまた後回しにすることにして(明日頑張ります)、まだ興奮覚めやらずの昨晩(11日)のドン・カルロについて手短かにメモしておきます)



待望のROHの一大イベントだった6月6日の初日 のパフォーマンスの批評は概ね素晴らしいもので、その中でも最も絶賛されたのはフィリッポ2世役のフルッチョ・フルラネットで、その次がポーザのサイモン・キーンリーサイドですが、もし二日目の批評をされても同じにちがいありません。


低音歌手の良さを認識させるべきオペラなのですが、この超一流の二人が渡り合う場面の素晴らしかったことと言ったら!コベントガーデンの格も上げて頂いて感謝感激。


サイモンは、初日の方が少し良かったような気がします。昨日は最初ちょっと声が乾いていたような。


それは別にしても、この横綱二人に優劣を付けるとすると、出番の少ないフルラネットに軍配が上がるのは、

フィリッポ2世が様々な感情を表現する役柄であるためということもあるでしょう。国王としての威厳と残忍さ、裏切り息子への怒り、宗教に屈する敗北感、妻に愛されない悲しみ・・・、自然と歌い方を変えなくてはなりません。


それに比べるとポーザには本音を吐露する場面がなく、伝達役や励まし役、犠牲役としていつも正義感を全面に押し出すばかりなので、どうしても一本調子にならざるを得ないわけです。


それにしても、病気にでもならない限り、きっと全公演を安定した歌唱で皆を感心させてくれるにちがいないこの二人には脱帽です。


    


しかし、他の人たちはそうはいきません。


もっとも、どんなに実力があっても高音歌手に安定を求めるのは無理難題で、それがスリリングな魅力でもあるわけですが。



すでにドン・カルロのロランド・ヴィリャゾンは初日にその心配が的中してしまい、危なっかしいスタートになってしまいました。


(少人数の人から)カーテンコールでブーイングまでされたのは、いつもは素晴らしい彼への期待が高かったということでしょうが、批評はまちまちで、多少のぐらつきはあっても彼らしい熱血ぶりは褒めてもらえたのですが、何度か高音が出なかったりして本人も満足のいく出来ではなかったでしょう。


それで落ち込んでしまったどうなることやら、でしたが、


幸い、昨日はずっと良くなって、かなりいつもに近いヴィリャゾン節を聞かせてくれました。1、2度高音の出が不十分でしたが、なんたって長丁場の大作のタイトルロールだ、トラヴィアータやオネーギンとは難易度がちがいます。


昨日はカーテンコールでもとても嬉しそうだったヴィラゾン、初日の不出来を指揮者パッパーノに慰めてもらったのでしょうか、パッパーノが舞台に出てきたら万歳して感謝の気持ちを表して、こちらまでハッピーになる仕草でした。

私は特にヴィラゾンのファンではないですが、生舞台で映える人です。



さて、不安材料といえば、今回は未知数であるエリザベッタ役のマリーナ・ポプラフスカヤでしょう。ROHならではの手前味噌的大抜擢でしたが、初日は皆の足を引っ張ることなく無事に大役を務めて本人も周囲も一安心だったでしょう。


でも、次はどうかしら? と心配してたら、彼女も昨日は初日よりもよくて、高音がうまく出てました。声量は充分だし、中音低音は深みがあって絶対の強味だし。

感心したのは、初日も昨日も、王妃らしい立ち居振る舞いで気品に満ち、特に彼女を諦めきれなくてすがりつくドン・カルロを「それなら、父王を殺して、私と結婚する?そんなガッツある?」と諌める場面は若いのに堂々として素敵。


エラの張った顔は正面から見るととても美しいとは言えないけど、すらっとした体つきと綺麗な長い金髪がチャーミングだし、これだけ歌えれば他の大劇場からもお声が掛かるでしょうから、コベントガーデンに縛られずに世界に羽ばたいて下さいね。って、彼女の声が私あまり好きではないので、しょっちゅう聴きたくないの・・・



ソニア・ガナッシのエボリは、初日の方が良かったですね。昨日は低い声が出ず、高音も無理矢理しぼり出していたように聞こえました。

エボリ役には彼女はちょっと軽すぎるような気もしますが、今回はエリザベッタが暗い暗い声なので、エボリがこれくらい細い声でちょうどいいのかもしれません。私は細い声のエリザベッタと太いエボリの逆の組み合わせが好きですが。


宗教裁判長のエリック・ハルファヴソンは、初日も昨日もお馴染みの低音が出てないのがすごく残念。アラーニャとマッティラのフランス語版ドン・カルロスで同じ役をやった時の凄みはもう無理なの?


パッパーノ率いるROHのオケも素晴らしかったです。コーラスもやる気がみなぎっていて迫力があり、これだけの重厚はパフォーマンスはROHでも滅多にない程の素晴らしさでした。


舞台袖の席を申し込んだのに今回は運悪くろくな席が取れなかったのですが、これが僅か13ポンドで聴けるなんて、物価の高いロンドンで一番お得なお金の使い方でしょう。


多分もう一回行けると思うのですが、それまでにいつものオペラ紹介もできれば致しましょう。


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