「八月の狂詩曲」黒澤明

映画が公開されるもあまり人気がなかった作品だった記憶があります。

原作の本があるみたいですがそれは未読です。

久しぶりの黒澤映画ということでとても楽しみにしていました。

個人的にはとても好きです。

調整がとれていないピアノを面白半分に弦を押しているシーンから始まります。



それに関わらず人は深い悲しみ深い傷を負ってしまうものだと思っています。そして、それを誰に言うわけでもなく語源化されないまま、ずっと心の奥に鈍痛として残ってしまうものだと思っています。

その原因が何かという訳ではなく、日々の生活や人生というものは続いていくし、時代も変わっていく。その流れに取り残されるように人の心の悲しみというのはあると感じています。

失ってしまった者に対する哀愁も自分にしか分からないし、その痛みを抑えながらも、時として何かの拍子に露出してしまう…。


供養、法事で蟻の行列を映したシーンは本当に居た堪れない者の気持ちが伝わって来たし、夏の暑さのなかに潜む狂気に似た想いの一旦も伝わってくる映画でした。

公園のシーンもその鎮痛な思いが伝わって来て苦しくなりました。

最後は幻想で豪雨の中、カサを差して必死に助けに向かい走り出すシーンは、運命に対して抗うものの人生が象徴されているようで、そこに最後に「野ばら」が流れ、すべて昇華するものを感じました。


何度も見返した映画です。

当時アメリカからも批判された映画ですが、映画の持つ本質は別のところにあると感じています。





なにもかもどうでもいい

明日なんかなくてもいい

今、あなたに会えるなら

もうそれだけでいい

何もいらない

いっときだけでも

あなたに会えるなら

それだけでいい

もうそれだけでいい

何もいらない

もうこの世界から居なくなってもいい

消えてしまってもいい

ただ今あなたに会えるのならば

もうそれだけでいい







Series Minor movie!(そんなシリーズあったっけ?)

ということで今日は「オーケストラリハーサル」。

ある音楽隊、楽団員のもとにテレビ局の取材が入る、指揮者、主催者、そして楽員たちにカメラを向けながら次々にインタビューしていく、指揮者も楽団員も裏手のスタッフたちもバタバタ忙しい中動きながら写されたモニターごしにインタビューに答えいく。仲間内の批判や悪態、愚痴など出るわ出るわで美しいメロディを奏でる人たちとは思えない程…。

ワイワイガヤガヤとふざけた調子でそれでも本気で嫌になったりしている、そんな風な感じでインタビューは続いていく、もう今にも解散してもおかしくないほど均等がとれてない…。

本当に人前で披露出来るの?この状態で?と見てるこっちが心配になって来る。

とうとう公演の前日まで来てしまう。

そして文句ばかりは言っていても仕方ないので皆で一緒になって公演前の最後のリハーサルをするのであった…。

これも10代の頃NHKでやっていた「名画劇場」で見た。なんにも事件らしい事件も起こらず、ただインタビュアが楽団員たちに次々にインタビューしていくだけの映画なのだけれど、知らず知らずのうちにずっと見てしまう魅力がありました。先にも書きましたが、見てるとこの楽団員の人たちそして指揮者大丈夫なの?どうするの?なんて少し心配になりながらとうとうラストに差し掛かって、最後のリハーサルに突入して行きます…。

最後まで見て良かった映画でした。

人の愚痴ってあまり好きじゃないけどこうして映画でみせられると一人ひとりが人間臭く、それ故の魅力みたいなものが出てている映画でした。

最後は少し感心して感動してしまいました。

マイナーでほとんど話題に出る事のない映画ですが個人的に好きで時々この映画を思い出しては努力する素晴らしさを教えられた様で生きる糧にしています。