母の介護を通して知ったこと
私の母は透析治療が必要な腎不全患者です。母が最初に倒れた時、三人の子供である私たちは全員が社会人になっていました。
しかし、それはそれで自分の仕事があり、46時中母に付き添っている訳にはいきません。
父は若い頃は仕事一筋の人で、退職後は好き勝手に趣味の世界に生きていました。
家事や育児はもちろん、家の中のことは全て母に任せていた人だったのです。
そんな私たちにとって、家事はともかく、母の介護をどうするかが一番の問題でした。
「老人ホームに入れるしか、ないんじゃない?」私たち子供らの間では誰が言うともなく、そんな話になりました。
私たちは父がどんな人かよく分かっていましたし、父にはとても母の面倒など見られないだろうというのが共通した意見でした。
もし老人ホームに入れるとしたら、どこにするのか、費用はどのくらいなのか等について具体的に考えようとしていたその時、父が「お母さんは老人ホームには入れない」と言い出しました。
「入れないって・・じゃあどうするの?」と尋ねると父は「ワシが家で面倒を見る」と言うのです。
私たちは皆鼻で笑って「無理無理!家事や介護がどれだけ大変か、お父さんは分かってないからそんなことを言えるんだよ」と反対しましたが、父は頑として譲りませんでした。
それから父の挑戦が始まりました。
慣れない家事と母の病院通い。
最初は料理をするにもいちごち子供のうちの誰かを呼びつけ「オイ、卵ってどうやって割るんだ?」などと尋ねていました。
また、どう見ても天カスにしか見えない代物をテーブルの上に置き、「今日は”かき揚げ”だ」と説明して、私たちを唖然とさせたこともありました。
洗濯をすれば母のシルクの下着をボロボロに破り、ゴミを分別をしようとしてはハサミで手を切り・・私たちは「そのうち音を上げるに決まってるよ」と囁き合いました。
しかし父は踏ん張りました。
料理は徐々に上達し、出汁を取っておでんなどを作ってくれるようにもなりました。
未だに裁縫だけは出来ませんが、他の家事に関しては以前のように生活に支障を来たすほどの大失敗をやることもなくなりました。
そして母は今、自宅から父の運転する車で透析に通っています。
あれから12年。
老人ホームの話は誰もしなくなりました。
老人ホームが悪いとは、恐らく父も思っていなかったと思います。
ただ父は、母に自分のそばにいて欲しかったのです。
例え母が家事を一切できなかったとしても。
家庭を顧みず、好き勝手をしていると思っていた父でしたが、本当は私たちが思っていたよりもずっと母を愛していたのだと、母の介護を通して知ったのでした。
両親の介護が必要になったら利用したい老人ホーム
これまで元気に生活していた両親であっても、突然つまずいて怪我をするなどして、運動や歩行に支障をきたしてしまうこともあります。そうなると生活の全ての場面において介護が必要になってきますから、親の面倒を見るべき子供側からすればかなりの負担が出てくるでしょう。
親の介護にばかり集中していると仕事もできないといった事態にもなりかねませんから、それを避けるためにも老人ホームの利用をおすすめします。
老人ホームとは、高齢者をはじめとする生活において世話が必要な方々が一つの施設に集まり、効率良く面倒を見てもらうためのサービスです。
老人ホームへお願いすれば生活の全ての面において面倒を見てもらえますから、子どもは仕事へ集中することができます。
老人ホームというと、狭い施設に閉じ込められてプライバシーも何もないと思う方もいるかも知れませんが、実際にはそういったことはありません。女子陸上動画
それぞれドアの付いた個室が用意されていますし、その中で調理などをすることもできます。
いわば介護サービスの付いたマンションのようなイメージです。
高齢化の進展だけでなくこうしたサービスの良さから、現在老人ホームを利用する方の数は急増しています。
人気の高い老人ホームは競争率も高いですから、利用する際には早めに適切な施設を探しておいたほうが良いでしょう。