§2.1 アーベルの既約定理証明

定理2、定理1の順に証明を述べる。

 

(定理2)

 f(x)、g(x)をQ上互いに素な2式とする。

 Y、Zを未知数とする方程式f(x)Y+g(x)Z=1には、解となるQ上の式が存在する。

 

証明には多項式の割り算における除法の原理を用いる。この除法の原理については(※47)で解説している。

 証明)仮にf(X)、g(X)の一方が有理数ならば証明は容易である。たとえば、g(x)を有理数аに置き換えたf(X)Y+аZ=1はY=0、Z=1/аという自明な解を持つ。

 以下、定理2の証明がf(X)、g(X)の一方が有理数の場合に帰着することを示そう。

次数についてdeg f(X)≧deg g(X)として一般性を失わない。

 f(X)とg(X)は互いに素という仮定によりf(X)をg(X)で割ると余りがでる。除法の原理によりdeg g(X)≧deg h(X)をみたす余りh(X)が存在する。

 このとき、(1)「定理2を示すにはh(X)Y+g(X)Z =1の解となるQ上の式が存在することを示せばよい」。ここで(2)「h(X)とg(X)は再び互いに素になる」。したがってg(X)をh(X)で割って、さらに次数の低い余りを取り、g(X)と置き換える操作が可能である。

 以下、同様に繰り返していくと、やがて余りは有理数になる。したがって、定理2の証明はf(X)、g(X)の一方が有理数の場合に帰着した。    

 

 なお、証明中の(1)、(2)については(※48)で補足を加えている。    ■

 

(定理1 アーベルの既約定理)

 θを代数的数とする。θを解にもつQ上方程式は、θの全Q上共役解を解にもつ。

 

証明)θのQ上最小多項式をf(X)とし、θを解にもつ任意のQ上方程式をg(X)とする。このときf(θ)=0かつg(θ)=0である。したがって不定方程式f(X)Y+g(X)Z=1の解となるQ上の式は存在しない。

定理2を対偶にかえると、f(X)Y+g(X)Z=1が解をもたないとき、f(X)とg(X)は互いに素でない。

あわせてf(X)とg(X)は互いに素でないことが得られる。仮定によりf(X)はQ上既約なので、g(X)はf(X)で割り切れる。f(X)=0の解はいずれもg(X)=0の解になることが示された。  

(※41)5次交代群A₅が群の公理をみたしていることを確認する。

  まず①「定めれた演算で閉じている」ことは、偶数∔偶数が偶数であることから分かる。すなわち「偶数個の互換の積の形に表記された元」を掛け合わせると、その積もやはり偶数個の互換の積で表記されている。

  次に、②「単位元が含まれている」ことは、任意の互換(аb)について(аb)²=eが成り立つことから分かる。

  また、(аb)(cd)の逆元は(cd)(аb)である。このように偶数個の互換の積についてその順序を反転させる操作で、偶数個の互換の積で表記された③「逆元」をえることができる。

A₅が④「結合法則をみたしている」ことについては5次対称群S₅の部分集合であることから自明。

 

(※42)代数的拡大S→Lについて、その原始元がSの元のn乗根(ⁿ√s)であるとき、S→Lをべき根拡大という。クンマー拡大というほうが一般的なのかもしれないが、本書ではべき根拡大で統一する。

 

(※43)xⁿ-1=0の解となる数を1のn乗根という。1のn乗根のうち、n乗してはじめて1になる数を1の原始n乗根という。

  1のn乗根については、ド・モアブルの公式とよばれる以下の式が知られている。

 (Cosθ∔iSin θ)ⁿ=Cosnθ∔Sinnθ…①

この①式にθ=「360°/n、720°/n…」を代入すると1のn乗根が「Cos(360/n)°∔iSin( 360/n)° Cos(720/n)°∔iSin (720/n)°…Cos(360n/n)°∔iSin( 360n/n)°」であることが分かる。

 たとえば1の3乗根は「Cos120°+iSin 120° Cos240°+iSin 240° Cos360°+iSin360°=1」の3数であり、このうち「Cos120°+iSin 120° Cos240°+iSin 240°」が1の原始3乗根である。

 

(※44)ωを1の原始n乗根とする。このときxⁿ-1=0の解は「ω ω² ω³…ωⁿ=1」と表記され、いずれもQ(ω)の元である。ωのQ上共役解はこの中の一部であることからいずれもQ(ω)の元であり、Q→Q(ω)はガロア拡大である。

  ガロア群の元はω→ωªの形をしており、f:ω→ωª¹、g:ω→ωª²とすると、f・g=g・f=ω→ωª¹⁺ª²が成り立ち、ガロア群は可換群である。

 

(※45)代数的拡大列Q→M→Lについて、M、Lの原始元をそれぞれα、βとする。

 M→Lがべき根拡大であれば、βを解にもつM上の式xⁿ-f(α)=0が存在する。

 この式の解は1の原始n乗根ωを用いて「β βω βω²…」と表記できる。アーベルの既約定理より、βのM上共役解はこのうちの一部である。したがってω∈Mならば、M→Lはガロア拡大である。

またべき根拡大がガロア拡大であるとき、ガロア群が可換群であることは以下のようにしてわかる。ガロア群の元は1の原始n乗根を用いてβ→β・ωªの形をしている。f:β→βωª¹、g:β→βωª²とすると、f・g=g・f:β→β・ωª¹⁺ª²が成り立ち、ガロア群は可換群である。

 

(※46){n次}べき根拡大について補足する。S→Lを{n次}べき根拡大とすると、その原

始元βはS上の式xⁿ-f(α)の解になる。しかしこの式がβのS上最小多項式であ

るかは定かでない。したがって、{n次}べき根拡大の拡大次数は必ずしもn次であると

は限らない。{}を用いて{n次}と表記したのはそのためである。

 

(※31)(※27)で述べたように、3次対称群S₃は位数2の部分群H₂~H₄をもつ。H₂~H₄の固定体をそれぞれM₂~M₄とする。定理21よりM₂~M₄の拡大次数はいずれも3である。ガロア対応によりM₂~M₄の各固定群はH₂~H₄である。固定群を異にしていることからM₂~M₄は異なる3つの体である。

  次にM₂~M₄のほかに拡大次数3の中間体がないことを示そう。M₂~M₄のほかに拡大次数3の中間体M₅があると仮定する。このときM₅の固定群H₅の位数は2であり、その固定体はM₅である。H₅はH₂~H₄と固定体を異にしていることから、H₂~H₄とは異なる位数2の部分群である。

M₅が存在すれば、位数2の部分群が4個以上存在することになる。対偶にかえて位数2の部分群が3個のみであることから、M₅が存在しないことが導かれた。

 

(※32)代数的拡大体Lの原始元をθとする。Lの任意の中間体Mが代数的拡大体であることを示そう。

  以下、背理法を用いる。Mが代数的拡大体でないと仮定する。このときQに有限個の代数的数を付加してもMは構成できない。したがってQに「Mの元をくわえていく操作」を繰り返してもMの中間体にしかならない。この操作を繰り返すことで、拡大次数ではLを上回り、M’⊂MをみたすM’を構成できる。

M’(θ)=Lが成り立てば、拡大次数の一意性(定理5)もしくは次元の積公式(定理6)が成り立たなくなる。したがって定理5、6の成立からMが代数的拡大体であることが導かれる。

  

(※33)まず正規部分群について説明する。Gの部分群Hが、Gの任意の元gについてgH=HgをみたすときHをGの正規部分群という。gHとは、Hの元hを用いてghの形で表記できる元の集合を意味しており、この集合をHによる剰余類という。

gH=Hgという等式はgHとHgが集合として一致することを意味する。すなわちGの任意の元gとHの任意の元hについてgh=h’gをみたすHの元h’が存在することになる。

  またG⊃H₁⊃H₂⊃…Hn⊃eついて、「H₁がGの H₂がH₁の H₃がH₂の…」正規部分群であるとき、この列を正規列という。

 

(※34)剰余類群について説明する前にラグランジュの定理を証明する。「群Gの位数をnとする。Gの任意の部分群Hの位数mはnの約数である」というのがラグランジュの定理である。証明するには、(1)「Gのすべての元を重複なくm個ずつに分類できること」を示せばよい。

 

  まず、各剰余類には異なるm個の元が含まれている。このことはa≠bならばac≠bcであることから分かる。

 

  次に、g’∈gHならばg’H=gHが成り立つことを確認する。g’∈gHよりg’=ghをみたすHの元hが存在する。代入してg’H=ghH=gHが得られる。

  したがってg’∈g₁H、g’∈g₂Hならば、g’H=g₁H=g₂Hである。各元の含まれる剰余類が唯一つに定まることが分かる。

  

また、g∈gHより任意のgを含む剰余類が存在する。

  あわせて(1)が示された。

 

  上記をふまえて剰余類群について説明する。

剰余類F₁、F₂の積、F₁・F₂を以下のように定義する。

f₁∈F₁、f₂∈F₂をみたすf₁、f₂を選び、f₁・f₂の含まれる剰余類をF₁・F₂と定める。

HがGの正規部分群ならば、f₁、f₂の選び方によらず、F₁・F₂は一意に定まる。

したがって剰余類の集合にこの演算を導入し、剰余類群をつくることができる。剰余類群が群の公理をみたしていることの確認については省略する。

 

(※35)Gの任意の元x、yについてxy=yxが成り立つとき、Gを可換群という。

 

(※36)群Gの位数をnとする。Gに位数nの元が含まれるとき、Gを巡回群という

 巡回群の各元は生成元аを用いて「а а² а³…аⁿ=e」の形で表記される。したがって巡回群は可換群である。

  一方で可換群が巡回群であるとは限らない。このことのみをふまえれば、本書のガロア群の定義は、一般のガロア群の定義よりも多くの群を含むように思われる。しかし実際にはどちらの定義でもガロア群となる群は一致することが知られており、2つの定義に実質的な差はない。

  可解でない5次方程式の存在を示すうえでは、各剰余類群が可換群であることを条件とした方が好都合と考え、この定義にした。

 

(※37)ガロア拡大列Q→M→Lとは、Q→M、M→Lともにガロア拡大であることを意味している。

 

(※38)ガロア拡大体Lの原始元をθとし、その中間体をMとする。(※8)で示したようにM(θ)=Lが成り立つ。θはM→Lの原始元でもあり、M→Lのガロア群はθからそのM上共役解への置換の集合である。したがって、Lのガロア群の部分群がそのままM→Lのガロア群となる。

 

(※39)Lの原始元θのQ上共役解を「θ=θ₁ θ₂ θ₃…」とする。Lの元α=A(θ)について「A(θ₁) A(θ₂) A(θ₃)…」をαの軌道という。またα=A(θ)に不変に作用する置換の集合をαの固定部分群という。

 

(※40)以下の(1)、(2)が同値であることを主張するのがガロアの主定理である。

(1)Q上方程式f(X)=0の解の1つが根号を用いて表記可能である。

(2)f(X)=0の最小分解体Lのガロア群が可解群である。

 本書では(1)→(2)のみを示しており、定理28は正確にはガロアの主定理のうちの半分である。