(※31)(※27)で述べたように、3次対称群S₃は位数2の部分群H₂~H₄をもつ。H₂~H₄の固定体をそれぞれM₂~M₄とする。定理21よりM₂~M₄の拡大次数はいずれも3である。ガロア対応によりM₂~M₄の各固定群はH₂~H₄である。固定群を異にしていることからM₂~M₄は異なる3つの体である。

  次にM₂~M₄のほかに拡大次数3の中間体がないことを示そう。M₂~M₄のほかに拡大次数3の中間体M₅があると仮定する。このときM₅の固定群H₅の位数は2であり、その固定体はM₅である。H₅はH₂~H₄と固定体を異にしていることから、H₂~H₄とは異なる位数2の部分群である。

M₅が存在すれば、位数2の部分群が4個以上存在することになる。対偶にかえて位数2の部分群が3個のみであることから、M₅が存在しないことが導かれた。

 

(※32)代数的拡大体Lの原始元をθとする。Lの任意の中間体Mが代数的拡大体であることを示そう。

  以下、背理法を用いる。Mが代数的拡大体でないと仮定する。このときQに有限個の代数的数を付加してもMは構成できない。したがってQに「Mの元をくわえていく操作」を繰り返してもMの中間体にしかならない。この操作を繰り返すことで、拡大次数ではLを上回り、M’⊂MをみたすM’を構成できる。

M’(θ)=Lが成り立てば、拡大次数の一意性(定理5)もしくは次元の積公式(定理6)が成り立たなくなる。したがって定理5、6の成立からMが代数的拡大体であることが導かれる。

  

(※33)まず正規部分群について説明する。Gの部分群Hが、Gの任意の元gについてgH=HgをみたすときHをGの正規部分群という。gHとは、Hの元hを用いてghの形で表記できる元の集合を意味しており、この集合をHによる剰余類という。

gH=Hgという等式はgHとHgが集合として一致することを意味する。すなわちGの任意の元gとHの任意の元hについてgh=h’gをみたすHの元h’が存在することになる。

  またG⊃H₁⊃H₂⊃…Hn⊃eついて、「H₁がGの H₂がH₁の H₃がH₂の…」正規部分群であるとき、この列を正規列という。

 

(※34)剰余類群について説明する前にラグランジュの定理を証明する。「群Gの位数をnとする。Gの任意の部分群Hの位数mはnの約数である」というのがラグランジュの定理である。証明するには、(1)「Gのすべての元を重複なくm個ずつに分類できること」を示せばよい。

 

  まず、各剰余類には異なるm個の元が含まれている。このことはa≠bならばac≠bcであることから分かる。

 

  次に、g’∈gHならばg’H=gHが成り立つことを確認する。g’∈gHよりg’=ghをみたすHの元hが存在する。代入してg’H=ghH=gHが得られる。

  したがってg’∈g₁H、g’∈g₂Hならば、g’H=g₁H=g₂Hである。各元の含まれる剰余類が唯一つに定まることが分かる。

  

また、g∈gHより任意のgを含む剰余類が存在する。

  あわせて(1)が示された。

 

  上記をふまえて剰余類群について説明する。

剰余類F₁、F₂の積、F₁・F₂を以下のように定義する。

f₁∈F₁、f₂∈F₂をみたすf₁、f₂を選び、f₁・f₂の含まれる剰余類をF₁・F₂と定める。

HがGの正規部分群ならば、f₁、f₂の選び方によらず、F₁・F₂は一意に定まる。

したがって剰余類の集合にこの演算を導入し、剰余類群をつくることができる。剰余類群が群の公理をみたしていることの確認については省略する。

 

(※35)Gの任意の元x、yについてxy=yxが成り立つとき、Gを可換群という。

 

(※36)群Gの位数をnとする。Gに位数nの元が含まれるとき、Gを巡回群という

 巡回群の各元は生成元аを用いて「а а² а³…аⁿ=e」の形で表記される。したがって巡回群は可換群である。

  一方で可換群が巡回群であるとは限らない。このことのみをふまえれば、本書のガロア群の定義は、一般のガロア群の定義よりも多くの群を含むように思われる。しかし実際にはどちらの定義でもガロア群となる群は一致することが知られており、2つの定義に実質的な差はない。

  可解でない5次方程式の存在を示すうえでは、各剰余類群が可換群であることを条件とした方が好都合と考え、この定義にした。

 

(※37)ガロア拡大列Q→M→Lとは、Q→M、M→Lともにガロア拡大であることを意味している。

 

(※38)ガロア拡大体Lの原始元をθとし、その中間体をMとする。(※8)で示したようにM(θ)=Lが成り立つ。θはM→Lの原始元でもあり、M→Lのガロア群はθからそのM上共役解への置換の集合である。したがって、Lのガロア群の部分群がそのままM→Lのガロア群となる。

 

(※39)Lの原始元θのQ上共役解を「θ=θ₁ θ₂ θ₃…」とする。Lの元α=A(θ)について「A(θ₁) A(θ₂) A(θ₃)…」をαの軌道という。またα=A(θ)に不変に作用する置換の集合をαの固定部分群という。

 

(※40)以下の(1)、(2)が同値であることを主張するのがガロアの主定理である。

(1)Q上方程式f(X)=0の解の1つが根号を用いて表記可能である。

(2)f(X)=0の最小分解体Lのガロア群が可解群である。

 本書では(1)→(2)のみを示しており、定理28は正確にはガロアの主定理のうちの半分である。