(※57)対称群の元を互換の積の形に変形する過程について、具体例を用いて述べる。

f:(12345)→(51432)とする。このときfは互換(34)と3サイクルの元(125)

の積である。一般に、nサイクルの元は(123…n)=(12)(13)…(1n)という変形が可能である。したがって(125)=(12)(15)となり、f=(34)(12)(15)と互換の積で表記できた。

 

(※58)「h₁(θ) h₂(θ) h₃(θ)…」の対称式が、Hの作用で不変であることを確認する。

  「h₁(θ) h₂(θ) h₃(θ)…」の対称式は、式中の「h₁(θ) h₂(θ) h₃(θ)…」をシャッフルしても不変な式を意味する。そこで「h₁(θ) h₂(θ) h₃(θ)…」はHの作用によってシャッフルされることを示そう。

  Hの任意の元をhとする。Hが群の公理をみたしていることから「h₁(h(θ)) h₂(h(θ)) h₃(h(θ))…」⊆「h₁(θ) h₂(θ) h₃(θ)…」。

  また一般の群においてbа=cаならばb=cが成り立つ。対偶にかえてb≠cならばbа≠cаである。したがって「h₁h h₂h h₃h…」はいずれも異なる置換であり、「h₁(h(θ)) h₂(h(θ)) h₃(h(θ))…」が「h₁(θ) h₂(θ) h₃(θ)…」のシャッフルの結果であることが分かる。

 

(※59)定理23の同値変形について補足する。

(1)→(2)Mがガロア拡大体ならばαの任意のQ上共役解はMに含まれている。

(2)→(3)Mの元はhの作用で不変である。

(3)→(4)両辺にθ→g⁻¹(θ)を施した。

(4)→(5)A(θ)に不変に作用する置換はHの元である。

(5)→(6)gh∈HgよりgH=Hg。

 

(6)→(5)gH=Hgより、gh∈Hg。

(5)→(4)Hの元はA(θ)に不変に作用する。

(4)→(3)両辺にθ→g(θ)を施した。

(3)→(2)Hの任意の元の作用で不変ならばMの元である。

(2)→(1)Gの元「e=g₁ g₂ g₃…」について、「A(θ) A(g₂(θ)) A(g₂(θ))…」∈Mを解とする式はQ上の式になる。原始元A(θ)のQ上共役解はこのうちの一部なので、Mはガロア拡大体の十分条件をみたしている。

 

(※60)[S₅-A₅]の元は、奇数個の互換の積で表記される。したがって[S₅-A₅]の元をかけあわせた積は偶数個の互換の積で表記でき、A₅に含まれている。また「аc=bcならばа=b」を対偶にかえて「а≠bならばаc≠bc」である。このことから‘作用’させる元を変えると、得られる積も変わることが分かる。

  なお‘’をつけて‘作用’と表記したのは、作用する集合が群でないためだが必要なかったか。

 

(※61)G・H⊇A・H⊇B・H⊇C・H⊇…⊇e・Hは正規列となることを確認する。

たとえば、B・HがA・Hの正規部分群であることは以下のようにして分かる。

  A・Hの元をаとして、а(B・H)=(B・H)аを示そう。B・HはB、Hのすべての元から生成される群なので、その元はBの元とHの元による積の形で表記される。

この表記を仮に(bh…)とする。ここでBがAの正規部分群であること、HがGの正規部分群であることから、аb=b’а、аh=hа’という変形が可能である。これらの変形を繰り返すと、а(bh…)=(b’h’…)аをみたすB・Hの元(b’h’…)が存在することが得られる。したがって、а(B・H)=(B・H)аが成り立つ。

 

(※62)ガロア拡大体Lの原始元をθ、Lの任意の元をβとする。またLのガロア群Gの部分群Hについて、その固定体をM=Q(α)とする。β=B(θ)にHを作用させた際の軌道が、βのM上共役解と一致することを示そう。証明の流れはガロア対応の証明と同様になる。

 

   βのM上最小多項式をf(α x)とする。

f(α β)=f(A(θ) B(θ))=0にアーベルの既約定理を適用しθ→θ’を施すと、f(A(θ’) B(θ’))=0が得られる。したがってA(θ)=A(θ’)ならば、B(θ’)はf(α x)=0の解である。β=B(θ)はHの作用でf(α x)の解のいずれかに変わることになる。

 

またHの元を「e=h₁ h₂ h₃…」として(x-B(h₁(θ)))(x-B(h₂(θ)))(x-B(h₃(θ)))…=0をつくると、この式はβを解にもつM上の式になる。アーベルの既約定理より、βにHを作用させた際の軌道にはf(α x)=0の解すべてが含まれることが得られる。

 

あわせてHの作用でβがその全M上共役解に置換されることが示された。

 

(※63)作用させる群をA・HからA、A/Bにかえても得られる軌道がかわらないことを確認する。

     A・HはA、Hのすべての元から生成される群なので、その元はAの元とHの元を用いて表記できる。たとえば、A・Hのある元がa₁h₁a₂h₂(a₁、a₂∈A、h₁、h₂∈H)と表記できたとする。Hの正規性より、a₁h₁a₂h₂=h’h”a₁a₂をみたすh’、h”∈Hが存在する。

    また、β=B(θ)∈MはHの作用で不変なので、B(θ)=B(h’h”(θ))が成り立つ。アーベルの既約定理を適用して、両辺にθ→a₁a₂(θ)を施すと、

B(a₁a₂(θ))=B(h’h”a₁a₂(θ))。 

あわせてB(a₁h₁a₂h₂(θ))=B(a₁a₂(θ))となり、Aの元の作用の結果に書き換えることができた。

 

また、Aの元a₁、a₂が剰余類群A/Bの同一の剰余類aBに含まれているとする。このときBはAの正規部分群なのでaB=Baよりa₁、a₂∈Ba。a₁=b₁a、a₂=b₂aをみたすb₁、b₂∈Bが存在する。

β=B(θ)∈[B・H]はBの元の作用で不変なのでB(b₁(θ))=B(b₂(θ))が成り立つ。アーベルの既約定理を適用してθ→a(θ)を施すと、B(b₁(a(θ)))=B(b₂(a(θ)))。

   あわせて、B(a₁(θ))=B(a₂(θ))が得られ、同一の剰余類に含まれる元の作用の結果は一意に定まることが示された。

 

(※64)剰余類群を作用させる場合も、軌道と固定部分群による剰余類に1対1の対応がつくことを確認する。α=A(θ)に剰余類Fの任意の元fを作用させた結果をA(F(θ))と表記することにする。fの選び方によらずA(F(θ))の値が一位に定まることが、剰余類群を作用させる際の前提となっている。

  定理26とその証明を、剰余類群を作用させる場合に書き換えると以下のようになる。

 

(定理26’)

 ガロア拡大体Lの原始元をθ、ガロア群Gの剰余類群をG/Hとする。G/Hの任意の2つの元をF₁、F₂とし、Lの任意の元αのθ形式をA(θ)とする。また、G/Hを作用させた際のαの固定部分群をH’/Hとする。

このとき、①「A(F₁(θ))=A(F₂(θ))が成り立つこと」と②「F₁、F₂が固定部分群H’/H による同一の剰余類に含まれていること」は同値である。

したがって、A(θ)の軌道と固定部分群H’/H による剰余類には1対1の対応がつく。

 

証明)証明は以下の同値変形による。

(1)「A(F₁(θ))=A(F₂(θ))が成り立つ」

   ⇔(2)「A(θ)=A(F₂(F₁⁻¹(θ))が成り立つ」

   ⇔(3)「F ₂・F₁⁻¹∈(H’/H )」

   ⇔(4)「F₂∈(H’/H)・F₁」

   ⇔(5)「F₁、F₂がH’/Hによる同一の剰余類に含まれている」         

                                    ■

 

 

(※47)整数の割り算a÷b=c…dにおいてb>d≧0をみたす余りdが必ず存在する   

 ことが除法の原理として知られている。同様に多項式の割り算f(X)÷g(X)についてもdegg(x)>deg h(X)≧0をみたす余りh(X)の存在が保証されている。

  多項式の割り算を行う際には係数の四則演算を繰り返すことで「割られる式」の次数を下げていき、「割られる式」の次数が「割る式」の次数を下回ったところで計算は終了する。このことが除法の原理が成り立つ要因である。

  これらの操作はQ上の多項式のみならず、任意の拡大体M上の多項式でも可能なので、除法の原理は任意の拡大体において成り立つ。

 

(※48)定理2の証明中の(1)、(2)に補足を加える。

 (1)については以下のようにして分かる。а÷b=c…dのとき、d=a-bcが成り立つ。aⅩ+bY=1…①が整数解をもてば、dX+bY=(а‐bc)X+bY=1…②も整数解をもつ。①式の解を(s t)としたとき、(s t+cs)などが②式の解となる。

   またbとdが互いに素でなければ、bとbc+d=аも互いに素でない。対偶にかえてаとbが互いに素ならば、bとdも互いに素である。

   上記の理屈は、а~dが整数であっても多項式でもあっても変わらない。

 

(※49)原始元の存在(定理4)の証明にいくつか補足を加える。

 

 代数的単拡大列をQ→M₁→M₂→M₃とする。(1)「2回の代数的単拡大をへて構成された体が単拡大体であること」がみたされていれば、M₂は単拡大体であり原始元が存在する。Q→M₂→M₃に注目して再び(1)を用いると、M₃が単拡大体であることが得られる。

 

α、β∈Q(α+qβ)とするとα、βはいずれも(α+qβ)形式で表記できる。したがって、Q(α β)のすべての元は(α+qβ)形式で表記され、Q(α β)⊆Q(α+qβ)が導かれる。同様にα+qβ∈Q(α β)ならば、Q(α+qβ)の元はいずれも(α β)形式で表記でき、Q(α β)⊇Q(α+qβ)が得られる。

 

g(α+qβ X)、f(α+qβ-qX)がβ以外に共通解をもてば、X=β’と(α+qβ-qX)=α’を合わせて(α+qβ-qβ’)=α’。すなわちq=(α-α’)÷(β-β’)となる。したがってこの等式をみたさないようなqを選べばよい。

 

(※50)定理3の証明では「θ形式で表記できる数の集合」が体になっていることを確認した。その証明をQ(α)上のβ形式におきかえると以下のようになる。

 まず、Q(α)上のβ形式の集合が四則演算で閉じていることを確認する。以下、βのQ上最小多項式をf(α X)=0とする。

 

   Q(α)上のβ形式2数の和・差がQ(α)上のβ形式になることは明らか。

 

   Q(α)上のβ形式2数の積h(α β)は、βの次数がQ(α)上のβ形式の定義からオーバーしている可能性がある。その場合、h(α X)をf(α X)で割って、deg f(α X)>deg  h’(α X)をみたす余りh’(α X)を求める。h(α β)=h’(α β)より、h’(α β)が2数の積に等しいQ(α)上のβ形式である。

 

   最後にQ(α)上のβ形式2数g(α β)、h(α β)について、g(α β)÷h(α β)の商となるQ(α)上のβ形式が存在することを確認する。証明は以下のように変形できる。

 

→(1)「Yを未知数とする不定方程式g(α β)=h(α β)Yが解となるQ(α)上のβ形式をもつこと」を示せばよい。

→(2)「1=h(α β)Yが解となるQ(α)上のβ形式をもつこと」を示せばよい。

→(3)「Y、Zを未知数とする不定方程式1=f(α β)Z+h(α β)Yが解となる

Q(α)上のβ形式をもつこと」を示せばよい。

→(4)「1=f(X)Z+h(X)Yが解となるQ(α)上の式をもつこと」を示せばよい。

したがって証明は定理2’に帰着する。

 

(※51)2変数の基本対称式は「x+y xy」の2式である。また、3変数の基本対称式は「x+y+z xy+yz+xy xyz」の3式である。次数1の「x+yとx+y+z」、次数2の「xyとxy+yz+xy」がそれぞれ対応している。

 

(※52)f=x³+y³+z³とする。xに0を代入し、f’=y³+z³=(y+z)³-3xy(x+y)を得る。y+zとx+y+z、yzとxy+yz+xzがそれぞれ対応しているので、g=(x+y+z)³-3(xy+yz+xz)(x+y+z)である。

 

(※53)対称式の基本定理の証明では、f’、hが基本対称式化可能であることを仮定して、fが基本対称式化可能であることを示した。すなわちfが基本対称式化可能であることを示すには、f’、hが基本対称式化可能であることを示せばよいことになる。このように証明すべき式を変数もしくは次数の低い式に変えていき、最終的には変数1もしくは次数1の式に証明を帰着させるというのが二重帰納法の真意である。

 

(※54)x⁻¹x=eからxx⁻¹=eを導こう。両辺に左からxをかけるとxx⁻¹x=x、すなわち(xx⁻¹)x=xが得られ、xx⁻¹=eが分かる。この逆元との可換性はコーシーの定理(定理18)の証明に用いることになる。

 

(※55)コーシーの定理の証明中の(1)、(2)について補足する。

位数nの群Gから重複を許してp-1個の元を選ぶ方法はnのp-1乗通りである。これらについてそれぞれ逆元をかけるとeになることから(1)が分かる。

また、(※54)で述べた逆元との可換性をふまえると、p個の元の積(123…p)がeならば、これをスライドさせた(23…p1)、(34…p12)…の積もeになることが分かる。またpが素数なので、(123…p)の中に異なる複数の元に含まれていれば、p回のスライドで異なるp個の選び方が得られる。あわせて(2)が示された。

 

(※56)互換2個の積について以下のように分類する。

 2個の互換が同一の互換であるとき、その積は単位元eになる…①。また2個の互換  

に同一の数字が含まれていないとき、その積は可換である…②。2個の互換が共通の数字を1個含んでいる場合は、共通する数字を変えてから積の順序を反転させる操作で不変である…③。

 上記①~③を等式化すると以下のようになる。

①    (аb)(аb)=単位元e

②    (ab)(cd)=(cd)(аb)

③    (аb)(bc)=(bc)(аc)=(аc)(аb)

特に③の変形は以降何度も引用することになる。

 §2.8 ガロアの主定理証明

定理29~30、定理27、定理31~32の順に証明を述べる。

 

(定理29)

5次交代群A₅の位数は60か120のいずれかである。

 

証明)A₅の位数が120でない場合、60であることを確認する。

 

A₅は5次対称群S₅の部分群である。S₅の元のうちA₅に含まれない元の集合をS₅-A₅と表記することにする。

 

ラグランジュの定理(※34)により、A₅の位数は120の約数「120、60、40、30…」のいずれかである。したがって、A₅⊂S₅のとき、[S₅-A₅の位数]≧[A₅の位数]が成り立つ。

 

またS₅-A₅の元の1つにS₅-A₅を‘作用’させると、いずれも相異なるA₅の元に変化する(※60)。したがって[S₅-A₅の位数]≦[A₅の位数]が得られる。

 

あわせて、A₅⊂S₅ならば[S₅-A₅の位数]=[A₅の位数]が成り立ち、A₅の位数は60である。                              ■

 

 

(定理30)

5次交代群A₅は可解群ではない。

 

証明には、交換子・交換子群という用語を用いる。群Gの任意の元x、yを用いてx⁻¹y⁻¹xyという形で表記できる元をGの交換子という。また、Gに含まれるすべての交換子によって生成される群をGの交換子群という。すなわち、Gの交換子すべてを含む最小の群がGの交換子群ということになる。交換子群が、交換子のみからなるとは限らないことに注意されたい。

 

証明)A₅の正規部分群のなかで、剰余類群が可換群となる部分群をNとする。定理30を示すにはNにあてはまる群はA₅のみであることを示せばよい。A₅⊇Nは明らかなのでA₅⊆Nを示そう。

 

 A₅/Nは可換群という仮定より、A₅の元x、yについて(xN)(yN)=(yN)(xN)が成り立つ。等式を変形すると、x⁻¹y⁻¹xy∈Nが導かれる。したがってNには、A₅の任意の交換子が含まれており、N⊇「A₅の交換子群」が得られる。

 

 またすぐ後に示すように、(1)「A₅の任意の元は、交換子の積の形で表記することができる」。したがって、A₅⊆「A₅の交換子群」。A₅⊇「A₅の交換子群」は明らかなので、A₅=「A₅の交換子群」が成り立つ。

 

 あわせてN⊇「A₅の交換子群」=A₅より、A₅⊆Nが得られた。

 

最後に(1)を確認しよう。なお以下の互換に関する等式変形は(※56)の結果を用いている。

A₅の元は偶数個の互換の積の形に書き表せる。したがって2個の互換の積が交換子の積の形で表記できることを示せばよい。

2個の互換の積のうち(аb)(bc)のように、文字の1つが重複するものをAタイプの積、(аb)(cd)のように文字が重複しないものをBタイプの積とよぶことにする。

(аb)(cd)={(аc)(bc)}{(аc)(cd)}よりBタイプの積は、Aタイプの積をかけあわせた形で表記できる。

またAタイプの積については(аb)(аc)=(bc)(аc)(bc)(аc)が成り立つ。したがってAタイプの積は交換子である。

あわせて、A₅の任意の元が交換子の積の形で表記できることが示された。

                                  ■

 

 

(定理27)

5次対称群S₅は可解群ではない。

 

証明)S₅の正規部分群のなかで、剰余類群が可換群となる部分群をNとする。定理27 を示すにはNにあてはまる群はS₅もしくはA₅であることを示せばよい。以下、A₅⊆Nを示そう。

 

 S₅/Nは可換群という仮定より、S₅の元x、yについて(xN)(yN)=(yN)(xN)が成り立つ。等式を変形すると、x⁻¹y⁻¹xy∈Nが導かれる。したがってNには、S₅の任意の交換子が含まれており、N⊇「S₅の交換子群」。「S₅の交換子群」⊇「A₅の交換子群」=A₅とあわせて、N⊇A₅が得られる。

 

 N⊃A₅の場合は定理29よりN=S₅なので、NがS₅もしくはA₅であることが示された。              

                                   ■

 

 

(定理31)

「ガロア拡大体・可解群」のLの中間体Mがガロア拡大体であるとき、Mも「ガロア拡大体・可解群」である。

 

証明)Lの原始元をθ、ガロア群をGとする。また、Mの固定群をHとする。このときMのガロア群は剰余類群G/Hと同型になる。以下、Mのガロア群が可解群であることを示そう。

 

 まず、表記について以下の2つの取り決めをする。

 2つの群G、G’のすべての元によって生成される群をG・G’と表記することにする。このとき、G・G’⊇GかつG・G’⊇G’が成り立つ。

 また群Gの固定体を[]を用いて[G]と表記することにする。上記の設定では、[G]=Q、[H]=Mである。

 

 仮定により、Gは可解群である。Gの可解列をG⊃A⊃B⊃C⊃…⊃eとする。このとき各剰余類群「G/A A/B B/C…」は可換群となる。

 またG・H⊇A・H⊇B・H⊇C・H⊇…⊇e・Hは正規列となる(※61)。したがって、[G・H]→[A・H]→[B・H]→[C・H]→…→[e・H]=Mはガロア拡大列となる。Mのガロア群が可解群であることを示すには、各拡大のガロア群が可換群であることを示せばよい。

 

 以下、各拡大のガロア群が可換群であることを確認する。[A・H]→[B・H]のガロア群に話を絞って証明を進めるが、その他の拡大についてもまったく同様の議論が成立する。

 

 一般にLの任意の元α=A(θ)に、Mの固定群Hを作用させると、その軌道はαのM上共役解と一致する(※62)。[A・H]→[B・H]の原始元をβとすれば、β=B(θ)はA・Hの作用により、[A・H]上最小多項式の全共役解に置換される。したがってこの作用による置換が、[A・H]→[B・H]のガロア群となる。

 

 ここで、βはMの元なのでHの作用で不変である。したがって、A・HのかわりにAを作用させても得られる軌道は変わらない。

 また、B・H⊇Bより[B・H]⊆[B]が成り立つ。したがってβ∈[B]より、βはBの作用により不変である。したがって剰余類群A/Bの剰余類から代表元を1つずつ選んで作用させても、やはり軌道は変わらない(※63)。

 

 このように、剰余類群の各剰余類の元を1つずつ選んで作用させることを「剰余類群を作用させる」と表現することにする。剰余類群を作用させる際にも、軌道と固定部分群による剰余類群に1対1の対応がつくことについては(※64)で確認している。

 

さて、可換群では任意の部分群による剰余類群が可換群となる。剰余類群A/Bは可換群

であったから、その剰余類群は可換群である。このことを用いるとA/Bによる作用の軌道「[A・H]→[B・H]のガロア群」と可換群の各元の間に1対1の対応をつけることが可能である。

 

具体的な対応関係は以下のようになる。

A/Bの作用によるβの固定部分群をH/Bとし、剰余類(A/B)/(H/B)の類Fに含まれる任意の元をfと表記することにする。このとき「b→f’(b)」=「B(θ)→B(f(θ))」が成り立つよう、Fとf’を対応させる。

 

最後にこの対応が演算の結果に保存されることを確認しよう。F₁・F₂とf₁’・f’₂が対応していることを示すには、f₁’(f’₂(B(θ)))=B(f₁(f₂(θ)))が成り立つことを示せばよい。

f’₁(B(θ))=B(f₁(θ))にアーベルの既約定理を適用して、θ→f₂(θ)を施すとf’₁(B(f₂(θ))=B(f₁(f₂(θ))が得られる。B(f₂(θ))=f’₂(B(θ))なので求める等式が得られた。

 

以上で、「[A・H]→[B・H]のガロア群」が可換群であることが示された。その他各拡大のガロア群も同様に可換群であり、Mのガロア群は可解群である。

                                 ■

  

 

(定理32)

ガロア拡大列Q→M→Lにおいて、Mを1の原始n乗根を含むガロア拡大体とし、M→Lをβを原始元とする{n次}べき根拡大とする。

このとき、Lに「βのQ上共役解を原始元とする{n次}べき根拡大」を重ねることでβの全Q上共役解を含む拡大体L’を構成できる。

ただし{n次}べき根拡大とはMの元のn乗根を原始元とする拡大を意味している(※46)。

 

証明)M→Lは{n次}べき根拡大なので、βはMの元のn乗根である。Mの原始元をαとすれば、βを解にもつM上の式xⁿ-f(α)=0が存在する。

 αのQ上共役解の集合を「α=α₁ α₂ α₃…」とする。Mはガロア拡大体なので、「f(α₁) f(α₂) f(α₃)…」∈Mである。ここで以下の式をつくる。

 

{xⁿ-f(α₁)}{xⁿ-f(α₂)}{xⁿ-f(α₃)}…=0… ①

対称式の基本定理(定理9)より、①式はβを解にもつQ上の式である。アーベルの既約定理により、βの任意のQ上共役解β’は①式の解になる。

 

またM⊂Lより、Mの元はLの元でもある。したがって、「f(α₁) f(α₂) f(α₃)…」∈Lより、Lにこれらのn乗根を加える拡大は{n次}べき根拡大である。1の原始n乗根がLに含まれていることから、これらの{n次}べき根拡大によってβの全Q上共役解を含む拡大体L’が得られる。                     ■