§2.7 可解群関連証明

定理23、定理26、定理24~25の順に証明を述べる。

 

(定理23)

 ガロア拡大体Lに関する代数的拡大列をQ →M→Lとし、Lのガロア群をGとする。

このとき①「Q→Mがガロア拡大であること」と②「Mの固定群HがGの正規部分群であること」は同値である。

 

 証明)L、Mの原始元をそれぞれθ、αとし、αのθ形式をα=A(θ)とする。またG、Hの任意の元をそれぞれg、hと表記することにする。

証明は以下の同値変型から得られる。

 

  (1)「Mがガロア拡大体である」

 ⇔(2)「A(g(θ))∈M」

 ⇔(3)「A(g(θ))=A(g(h(θ)))が成り立つ」

 ⇔(4)「A(θ)=A(ghg⁻¹(θ))が成り立つ」

 ⇔(5)「ghg⁻¹∈H」

 ⇔(6)「HがGの正規部分群である」

  

各同値変形の詳細については(※59)で補足している。       ■

 

 

(定理26)

 ガロア拡大体Lの原始元をθ、ガロア群をGとする。Gの任意の2つの元をf、gとし、Lの任意の元αのθ形式をA(θ)とする。またαの固定部分群をHとする。

このとき、①「A (f(θ))=A (g(θ))が成り立つこと」と②「f、gがHによる同一の(右)剰余類に含まれていること」は同値である。

したがって、A(θ)の軌道とHによる剰余類には1対1の対応がつく。

 

証明)証明は以下の同値変型による。

(1)「A (f(θ))=A (g(θ))が成り立つ」

   ⇔(2)「A (θ)=A (g(f⁻¹(θ))が成り立つ」

   ⇔(3)「gf⁻¹∈H」

   ⇔(4)「g∈Hf」

   ⇔(5)「f、gが同一の剰余類Hfに含まれている」      ■

 

                                  

 (定理24)

 ガロア拡大体Lに関するガロア拡大列をQ→M→Lとする。また、Lのガロア群をGとし、Mの固定群をHとする。

 このとき、「Q→Mのガロア群」と「剰余類群G/H」は同型である。

 

 証明)M、Lの原始元をα、θとし、α=A(θ)とする。αにGを作用させた際の軌道は、αの全Q上共役解に一致する。また、αの固定部分群はHである。

 したがって定理26より、Mのガロア群と剰余類群G/Hの各元には1対1の対応がつく。

 

具体的な対応関係は以下のようになる。

剰余類群G/Hの任意の類をFとし、Fに含まれる任意の元をfとする。「剰余類群G/H」の元Fに対し、「α→f’(α)」=「A(θ)→A(f(θ))」が成り立つよう「Q→Mのガロア群」の元f’を対応させればよい。

 

 次にこの対応が演算の結果に保存されることを確認する。

 F₁・F₂とf’₁・f’₂が対応していることを示すには、f’₁(f’₂(A(θ)))=A(f₁(f₂(θ)))の成立を示せばよい。

 f₁(A(θ))=f’₁(A(θ))にアーベルの既約定理を適用してθ→f₂(θ)を施すと、 f₁(A(f₂(θ)))=f’₁(A(f₂(θ))が得られる。A(f₂(θ))=f₂(A(θ))より、f’₁(f’₂(A(θ)))=A(f₁(f₂(θ)))が示された。   ■

 

 

(定理25)

 ガロア拡大体Lに関する代数的拡大列をQ→M→Lとし、Mの固定群をHとする。このときM→Lのガロア群はHである。

 

証明)M、Lの原始元をそれぞれα、θとし、θのM上最小多項式をf(α X)とする。このときM(θ)=Lが成り立ち、θはM→Lの原始元でもある(※8参照)。

例によって、αのθ形式をα=A(θ)とする。

定理20の証明でもみたように、θのQ上共役解θ’について、①「f(α θ’)=0が成り立つこと」と②「A(θ)=A(θ’)が成り立つこと」は同値である。①→②からH⊇「M→Lのガロア群」が、②→①からH⊆「M→Lのガロア群」が導かれ、あわせてH=「M→Lのガロア群」が得られる。                   ■

 

 

§2.6 ガロア対応関連証明

(定理20)

ガロア拡大体Lとその中間体Mの拡大次数をそれぞれl、mとする。このとき、Mの固

定群の位数はl÷mになる。

 

 証明)M、Lの原始元をそれぞれα、θとする。このときM(θ)=Lが成り立つ。

 また、αのQ上最小多項式をf(X)、θのM上最小多項式をg(α X)とする。

 

  αのQ上共役解を「α=α₁ α₂ α₃…」として、以下の式をつくる。

 g(α X)g(α₂ X)g(α₃ X)…=0…①

この①式は対称式の基本定理よりθを解にもつQ上の式である。次数の関係からこの式がθのQ上最小多項式であり、①式は重解をもたない。

 

さて、θのQ上共役解のうち、g(α x)=0の解となるものをθ’と表記することにする。

g(A(θ) θ)=0にアーベルの既約定理を適用して、g(A(θ’) θ’)=0と書き換えられる。ここでA(θ’)は「α=α₁ α₂ α₃…」のいずれかであるが、上記の式のうちθ’を解にもつのはg(α X)=0のみである。したがってA(θ’)=A(θ)が得られた。

 

次に、θのQ上共役解のうち、g(α x)=0の解でないものをθ”と表記することにする。

さきほどと同様にg(A(θ”) θ”)=0と変形すると、A(θ)≠A(θ”)が得られる。

 

あわせて、「A(θ)=A(θ’)が成り立つこと」と「θ’がg(α x)=0の解になること」が同値であることが示された。したがって「α=A(θ)に不変に作用する置換の個数」と「g(α x)=0の次数」が一致する。

Mの固定群はαの固定部分群と一致するので、その位数はM→Lの拡大次数l÷mである。                            ■

 

 

 (定理21)

 ガロア拡大体Lの拡大次数をlとし、そのガロア群をGとする。Gの部分群Hの位数をhとするとき、Hの固定体となる中間体Mの拡大次数はl÷hである。

 

証明)M、Lの原始元をα、θとし、θのM上最小多項式をf(α x)=0とする。MはHの固定体なので、Hはα=A(θ)に不変に作用する。

定理20の証明でみたように、「A(θ)=A(θ’)が成り立つこと」と「θ’がf(α X)

=0の解であること」は同値である。Hの元を「e=h₁ h₂ h₃…」とすれば、「h₁(θ) h₂(θ) h₃(θ)…」はいずれもf(α X)=0の解である。

 

次に「h₁(θ) h₂(θ) h₃(θ)…」を解にもつ以下の式をつくる。

(x-h₁(θ))(x-h₂(θ))(x-h₃(θ))…=0…①

この①式の係数は「e=h₁(θ) h₂(θ) h₃(θ)…」の基本対称式になってお

り、Hの作用で不変である(※58)。MにはHの作用で不変なすべての元が含まれているので、①式はθを解にもつM上の式である。

 アーベルの既約定理より、f(α X)=0の解はいずれも①式の解となる。

 

あわせて、①式=f(α x)が得られ、Hの位数とM→Lの拡大次数が一致することが

示された。次元の積公式(定理6)より、Mの拡大次数はl÷hである。

                                  ■

 

 

 §2.5 最小分解体関連証明

定理15~定理18、定理14の順に証明を述べる。

(定理15)

 有理数係数f(X)=0の最小分解体Lはガロア拡大体である。

 

証明) Lの原始元をθとする。その任意のQ上共役解θ’がLに含まれていることを示せばよい。

 f(x)=0の解を「α₁ α₂ α₃…」とし、各解のθ形式を「A₁(θ) A₂(θ) A₃(θ)…」とする。

また原始元θは(α₁ α₂ α₃…)形式で表記される。θを表記する(α₁ α₂ α₃…)形式を{α₁ α₂ α₃…}と表記することにする。

このとき、以下の等式が成り立つ。

 θ={α₁ α₂ α₃…}={A₁(θ) A₂(θ) A₃(θ)…}

このQ上の等式はアーベルの既約定理により以下のように書き換えられる。

 θ’={A₁(θ’) A₂(θ’) A₃(θ’)…}

ここで再びアーベルの既約定理を用いると「A₁(θ’) A₂(θ’) A₃(θ’)…」がいずれもf(x)=0の解であることが得られる。

したがってθ’はf(x)=0の解と有理数の式で表記できるのでLの元である。原始元θの任意のQ上共役解がLに含まれており、Lはガロア拡大体の十分条件をみたしている。                               ■

 

 

(定理16)

 有理数係数n次方程式f(X)=0の最小分解体Lのガロア群は、n次対称群の部分群と同型である。

 ただし対称群の演算については、fとgの積をf・g:(123…n)→「(123…n)にfの置換を施した後、gの置換を施した結果」と定義する。

 

 証明)Lの原始元をθ、ガロア群をGとする。

 定理15の証明のときと同様に、f(x)=0の解を「α₁ α₂ α₃…」とし、θ={α₁ α₂ α₃…}={A₁(θ) A₂(θ) A₃(θ)…}とする。

 

 Gの任意の元をgとする。このとき「A₁(g(θ)) A₂(g(θ)) A₃(g(θ))…」はいずれも異なるf(X)=0の解である(定理11証明参照)。したがってGの元の置換によって、解はシャッフルされることになる。

 

 次に、Gの元g、hについてg≠hならば解のシャッフルのされ方が異なることを背理法を用いて確認する。

 

gとhによる解のシャッフルが同一ならば、{A₁(g(θ)) A₂(g(θ)) A₃(g(θ))…}={A₁(h(θ)) A₂(h(θ)) A₃(h(θ))…}が成り立つ。

 

一方θ={A₁(θ) A₂(θ) A₃(θ)…}にアーベルの既約定理を適用してθ→g(θ)、θ→h(θ)の置換を施すと、g(θ)={A₁(g(θ)) A₂(g(θ)) A₃(g(θ))…}、h(θ)={A₁(h(θ)) A₂(h(θ)) A₃(h(θ))…}がそれぞれ得られる。

 

あわせて、gとhによる解のシャッフルが同一であるときg(θ)=h(θ)、すなわちg=hであることが示された。対偶にかえてg≠hならば解のシャッフルのされ方は異なる。

 

上記から、ガロア群の元とn次対称群の部分群の元に1対1の対応がつけられる。

たとえば、「A₁(g(θ) A₂(g(θ)) A₃(g(θ))」=「α₁ α₃ α₂」ならばgと(123)→(132)を対応させることになる。

 

最後にこの1対1の対応が演算の結果に保存されることを示そう。

ガロア群Gの元g、hに対して、これらと対応するn次対称群の元をg’、h’とする。g・hと、g’・h’が対応していることを示せばよい。

g・hによりf(x)=0の解は「A₁(θ) A₂(θ) A₃(θ)…」→「A₁(g(θ)) A₂(g(θ)) A₃(g(θ))…」→「A₁(g(h(θ))) A₂(g(h(θ))) A₃(g(h(θ)))…」とシャッフルされる。したがってg’の置換が施された状態で、さらにh’の置換が施されることになる。対称群の演算の定義によりこの結果はg’・h’の結果に一致する。                            ■

 

 

 (定理17)

有理数係数f(X)=0が複素数θを解にもつとき、その複素共役θ’も解になる。

 

証明)複素数の計算については、次の①~③が成り立つ。

①    α・βとα’・β’は複素共役関係にある。式にすると(a+bi)(c+di)と

(a-bi)(c-di)が複素共役関係ということになる。

②    実数cについてcαとcα’は複素共役関係にある。式にするとc(a+bi)と

c(a-bi)が複素共役関係ということになる。

③    α+βとα’+β’は複素共役関係にある。式にすると(a+bi)+(c+di)と

(a-bi)+(c-di)が複素共役関係ということになる。

 

上記の①~③を用いて、f(θ)=0からf(θ’)=0を導こう。①よりθのn乗とθ’のn乗が、②よりf(θ)とf(θ’)の各項が、③よりf(θ)とf(θ’)が、それぞれ複素共役関係にあることが得られる。

 0の複素共役は0なので、f(θ’)=0が示された。      ■

 

(定理18 コーシーの定理)

群Gの位数をnとし、その任意の素因数をpとする。このときGには位数pの元が含まれている。

 

証明)Gの元について、その積が単位元eとなるようなp個の元の選び方を数える。ただし同一の元を複数回選ぶことを認め、また選ぶ順序が異なるものは異なる選び方としてカウントするものとする。

 このとき(1)「選び方はnの(p-1)乗通りである」。nはpの倍数なので、nの(p-1)乗はpの倍数である。

 

 次にp個の元の選び方の中で、異なる複数の元を含む選び方を取り除いていく。(2)「異なる複数の元を含むような選び方は(pの倍数)通りである」。

 

 あわせて、単一の元をp乗して単位元eにする方法は、0通りもしくは「pの倍数」通りのいずれかであることが得られた。eのp乗がeであることから、このような選び方は0通りではありえない。したがってpを位数とする元が、最少でもp-1個存在することになり、位数pの元の存在が示された。      

 

なお、証明中の(1)、(2)については(※55)で補足している。           ■           

  

 

(定理14)

 既約5次方程式f(ⅹ)=0が実数解を3個もつとき、その最小分解体Lのガロア群Gは5次対称群S₅になる。

 

証明に用いる互換という用語については(※26)で述べている。また、(※56)では互換に関するいくつかの計算法則をまとめている。

 

証明) 証明の概要は以下のようになる。

→(1)「GにS₅の互換10個すべてが含まれていること」を示せばよい。

→(2)「Gに、5文字が2回ずつ出てくるような5個の互換が含まれていること」を示せばよい。

→(3)「Gに、1つの互換と位数5の元が含まれていること」を示せばよい。

 

 証明の変型過程について補足する。なお以下の説明は、「а b c d e」にあてはめる数字を問わず成立する。

→(1)(※57)で述べるように、S₅の任意の元は互換の積によって表記できる。したがって全10個の互換からGは生成される。

(1)→(2)互換については(аb)(bc)(аb)=(аc)という等式変型が可能である。したがって(аb)、(bc)、(cd)、(de)、(аe)という5個の互換から残る5個の互換も得られる。

(2)→(3)互換を(аb)、位数5の元をgとする。このとき(аb)、g(аb)g⁻¹、g(аb)g⁻²、g(аb)g⁻³,g(аb)g⁻⁴が(2)の条件をみたす5個の互換となる。                ■