§2.4 ガロア群関連証明

定理11、13を証明する。

(定理11)

 ガロア拡大体Lの原始元θをその全Q上共役解に置き換える置換の集合をMとする。

Mの任意の2つの元をg:θ→g(θ)、h:θ→h(θ)とするときg・h:θ→g(h(θ))と定めると、Mは群の公理をみたし群になる。

 

 以下、θのQ上最小多項式をf(x)=0とする。

 証明)群の公理①~④について順に確認していく。

 

 この集合が①「定められた演算で閉じている」ことについては、g(h(θ))がf(X)=0の解であること、すなわちf{(g(h(θ))}=0を示せばよい。

 f(g(θ))=0にアーベルの既約定理を適用すると、f{g(h(θ))}=0が得られる。

 

 ②「単位元の存在」については、恒等置換θ→θがその役割を果たす。

 

 次に③「逆元の存在」を確認する。ガロア群Gの元を「g₁ g₂ g₃…」とし、θの任意のQ上共役解をθ’とする。θ→θ’の逆元の存在を示すには、θ∈「g₁(θ’) g₂(θ’) g₃(θ’)…」を確認すればよい。

まず①の結果より「g₁(θ’) g₂(θ’) g₃(θ’)…」はいずれもf(X)=0の

解である。

 また、アーベルの既約定理(定理1)よりg(θ’)=g’(θ’)ならばg(θ)=g’(θ)、対偶にかえてg(θ)≠g’(θ)ならばg(θ’)≠g’(θ’)である。したがって、「g₁(θ’) g₂(θ’) g₃(θ’)…」の中に同一の元は含まれない。この中にはf(x)=0の解すべてが含まれており、θ∈「g₁(θ’) g₂(θ’) g₃(θ’)…」が得られた。

 θ=g(θ’)をみたすgが、θ→θ’の逆元となる。

 なお、g⁻1・g=eならば、g・g⁻¹=eも成り立つことについては(※54)で確認している。 

 

 最後に④「結合法則をみたしている」ことについて述べる。

 f・g:θ→f(g(θ))である。f(g(θ))にさらにθ→h(θ)の置換を施すと、f(g(h(θ)))に変わる。したがって(f・g)・h:θ→f(g(h(θ)))である。

 またg・h:θ→g(h(θ))である。f(θ)にθ→g(h(θ))の置換を施すと、f(g(h(θ)))に変わる。したがってf・(g・h):θ→f(g(h(θ)))である。

 あわせて(f・g)・h=f・(g・h)が得られた。         ■

                               

 

(定理13)

ガロア群の構造は原始元の選び方によらず一意に定まる。

 

証明)ガロア拡大体Lの異なる原始元をθ、βとする。θ、βを原始元とみた際のガロア群をそれぞれG、G’としてGとG’が同型であることを示そう。

 

βのθ形式をβ=B(θ)とし、θのQ上共役解の集合を「θ=θ₁ θ₂ θ₃…」

とする。ここで以下の①式をつくる。

 (X-B(θ))(X-B(θ₂))(X-B(θ₃))…=0…①

対称式の基本定理より、①式はβを解にもつQ上多項式である。次数の比較から、この式がβのQ上最小多項式である。

 

 そこでGの元f:θ→f(θ)に対し、これと対応するG’の元f’を「β→f’(β)」=「B(θ)→B(f(θ))」が成り立つように選んでいく。これにより、GとG’の各元に1対1の対応がつく。

 

 次に、この1対1の対応が演算の結果に保存されることを確認する。f・gとf’・g’が対応していることを示すには、f’(g’(B(θ)))=B(f(g(θ))を示せばよい。

 f’(B(θ))=B(f(θ))にアーベルの既約定理を適用して、θ→g(θ)を施すと

f’(B(g(θ)))=B(f(g(θ)))。B(g(θ))=g’(B(θ))より、求める等式が得られた。                            ■

 

 

§2.3 ガロア拡大関連証明

定理7、定理9、定理8の順に証明を述べる。

(定理7)

Q→M→Lを代数的拡大列とし、Lをガロア拡大体とする。このとき、M→Lもガロア拡大である。

 

証明)Lの任意の元をαとする。仮定によりαの全Q上共役解はLに含まれている。定理7を示すには、αの全M上共役解がLに含まれていることを示せばよい。式にすると「αの全Q上共役解」⊇「αの全M上共役解」…①が必要となる。

Q⊂Mより、αのQ上最小多項式は、M上の式でもある。アーベルの既約定理(定理1’)をM上で用いると①が得られる。                     ■

 

 

(定理9 対称式の基本定理)

 任意の対称式は、基本対称式化可能である。

 ただし、基本対称式化とはn変数の対称式について、式中に含まれる文字をn変数の基本対称式にまとめる変形をさしている。

 

証明には対称式の変数・次数に関する二重帰納法を用いる。

 

 まず対称式の変数・次数の意味について説明する。

 対称式の変数とは、対称式に含まれる文字の個数をさしている。たとえばXYZの変数は3である。

 また、1つの項のすべての文字のべき指数の和を次数という。X²Y²Z²の次数は6である。

通常の多項式の場合と同様に、各項の次数の中で最大の数をその式の次数という。X²Y²Z²+XYZの次数も6である。

 

一般にn変数の基本対称式はn個存在する。その次数は1からnまでの各数である。n-1変数の基本対称式とn変数の基本対称式について、次数が等しいものを「対応している」と表現することにする。(※51)では、この対応関係について例示している。証明にはこの対応関係を用いることになる。

 

証明)まず、変数1の対称式は、次数を問わず基本対称式化されている。また次数1の対称式は変数を問わず、基本対称式化可能である。

 

次に「変数m未満・次数n以下の対称式が基本対称式化可能であること」と「変数m以下・次数n未満の対称式が基本対称式化可能であること」を仮定して、「変数m・次数nの対称式が基本対称式化可能であること」を確認する。

 

変数m・次数nの対称式f(X Y Z…)について、以下の手順①~③で対称式gをつくる。このgの作り方については、(※52)で実例を挙げている。

 

①    任意の文字の1つrに0を代入し、変数m-1の対称式f’に変える。

②    帰納法の仮定を用いて、f’を基本対称式化する。

③    式中のm-1変数の基本対称式について、rを加えてそれぞれを「対応する」m変数の基本対称式に直し、得た式をgとする。

 

gはその作り方より基本対称式化された式である。

またf、f’、gの次数については、degf≧degf’=deg g…①が成り立つ。degf’=deg gは対応する基本対称式の次数が等しいことによる。

 

さて、fとgはrに0を代入するとf’になるという共通点をもつ。したがってf-gのすべての項の因数にrが含まれており、f-gはrで割り切ることができる。rは対称式に含まれる任意の文字なので、f-gは基本対称式(XYZ…)で割り切れる。その商をhとするとdegh<deg(f-g)≦degfより、hの次数はn未満である。なお、deg(f-g)≦degfのところで①を用いている。

f-g=(XYZ…)hより、f=(XYZ…)h+g。帰納法の仮定によりhは基本対称式化可能であり、gが基本対称式化された式であることとあわせて、fが基本対称式化可能であることが示された(※53)。                   ■

 

 

(定理8 ガロア拡大体の十分条件)

代数的拡大体Lの原始元をθとする。θの全Q上共役解がLに含まれているとき、Lはガロア拡大体である。

 

 証明)Lの任意の元をαとし、そのθ形式をα=А(θ)とする。αの全Q上共役解がLに含まれていることを示せばよい。

 

 θのQ上共役解の集合を「θ=θ₁ θ₂ θ₃…」とすると、仮定によりこの集合の元はすべてLに含まれている。したがって「A(θ₁) A(θ₂) A(θ₃)…」∈Lである。

 

ここで以下の式を考える。

(X-A(θ₁))(X-A(θ₂))(X-A(θ₃))…=0…①

この①式は「θ₁ θ₂ θ₃…」に関する対称式になっているので、係数は「θ₁ θ₂ θ₃…」について基本対称式化可能である。したがって、①式はA(θ)を解にもつQ上の式である。アーベルの既約定理(定理1)より、αの全Q上共役解は「A(θ₁) A(θ₂) A(θ₃)…」の中に含まれている。

 

あわせて、αの全Q上共役解がLに含まれていることが示された。    ■

                                    

§2.2 単拡大体関連証明

 

定理3~定理6の順に証明を述べる。

(定理3)

 θ形式で表記できる数の集合は体になっており、Q(θ)とは同一の集合である。

 また、Q(θ)の元のθ形式による表記は一意に定まる。

 

 証明)まず、θ形式の集合が四則演算で閉じていることを確認する。以下、θのQ上最小多項式をf(X)=0とする。

 

 θ形式2数の和・差がθ形式になることは明らか。

 

 θ形式2数の積h(θ)は、次数がθ形式の定義からオーバーしている可能性がある。その場合、h(X)をf(X)で割って、deg f(X)>deg  h’(X)をみたす余りh’(X)を求める。f(θ)=0よりh(θ)=h’(θ)。したがってh’(θ)が2数の積に等しいθ形式である。

 

 最後にθ形式2数g(θ)、h(θ)について、g(θ)÷h(θ)の商となるθ形式が存在することを確認する。証明は以下のように変形できる。

 

→(1)「Yを未知数とする不定方程式g(θ)=h(θ)Yが解となるθ形式をもつこと」を示せばよい。

→(2)「1=h(θ)Yが解となるθ形式をもつこと」を示せばよい。

→(3)「Y、Zを未知数とする不定方程式1=f(θ)Z+h(θ)Yが解となるθ形式をもつこと」を示せばよい。

→(4)「1=f(X)Z+h(X)Yが解となるQ上の式をもつこと」を示せばよい。

 

各変形が可能な理由は以下の通りである。

(1)→(2) (2)の式の解にg(θ)をかけると、(1)の式の解になる。除法の原理を用いて次数を調整すれば、(1)の式の解となるθ形式が求まる。

(2)→(3) f(θ)=0より。

(3)→(4) (4)の式の解にθを代入すると(3)の式の解となる。次数が定義からオーバーしている場合は、やはり除法の原理を用いて調整すればよい。

(4)→    h(θ)はθ形式という仮定より、deg f(X)>deg h(X)が成り立ち、f(x)とh(x)は互いに素である。したがって定理2から(4)が導かれる。

 

以上で、θ形式2数の四則演算の結果に等しいθ形式が存在することが示された。

 

次に、Q(θ)と「θ形式で表記できる数の集合」が等しいことを確認する。

Q(θ)とは有理数とθの四則演算の結果になりうる数の集合をさしている。したがってQ(θ)⊇「θ形式で表記できる数の集合」は明らか。

有理数もθもθ形式のうちに含まれる。「θ形式で表記できる数」が四則演算で閉じていることから、Q(θ)の元はいずれもθ形式で表記できる。よって、Q(θ)⊆「θ形式で表記できる数の集合」が成り立つ。

あわせて、Q(θ)=「θ形式で表記できる数の集合」が得られた。

 

最後にQ(θ)の元のθ形式による表記が一意に定まることを確認する。

以下、背理法を用いる。ある元のθ形式による表記が2通り存在するとし、それらをg(θ)、h(θ)とする。g(θ)=h(θ)より、θを解にもつ方程式g(x)-h(x)=0が存在することになる。この式の右辺の次数はf(x)を下回るので、θの最小多項式がf(x)=0であることと矛盾する。              ■

 

 

(定理4 原始元の存在)

代数的拡大体は単拡大体である。

 

証明) 以下、2回の代数的単拡大をへて構成された体が単拡大体であることを確認する。代数的単拡大が3回以上の場合に関する証明も、代数的単拡大が2回の場合に帰着する。

 2回の代数的拡大の原始元をα、βとする。またそれぞれの任意のQ上共役解をα’、β’と表記し、有理数qを(α-α’)÷(β-β’)の商と一致しない数とする。このような有理数は無数に存在する。

 このとき証明課題を以下のように変えていくことができる。

→(1)「Q(α β)=Q(α+qβ)をみたす有理数qが存在すること」を示せばよい。

→(2)「α、β∈Q(α+qβ)かつα+qβ∈Q(α β)」を示せばよい。

→(3)「β∈Q(α+qβ)」を示せばよい。

→(4)「βのQ(α+qβ)上最小多項式が1次式であること」を示せばよい。

→(5)「βのみを共通解とするQ(α+qβ)上の2式が存在すること」を示せばよい。

 

 各変形の詳細は以下のとおりである。

(1)→(2)α、β∈Q(α+qβ)からはQ(α+qβ)⊇Q(α β)が、α+qβ∈Q(α β)からはQ(α+qβ)⊆Q(α β)が得られ、あわせてQ(α+qβ)=Q(α β)となる。 

(2)→(3)α+qβ∈Q(α β)は明らか。また、β∈Q(α+qβ)ならば、α=(α+qβ)-qβより、α∈Q(α+qβ)。

(3)→(4)1次式の解は、定数項の数と一致する。

(4)→(5)アーベルの既約定理(定理1’)による。

(5)→αのQ上最小多項式をf(X)、βのQ(α+qβ)上最小多項式をg(α+qβ X)とする。f(X)にX→(α+qβ-qX)の置換を施しf(α+qβ-qX)をつくる。g(α+qβ X)、f(α+qβ-qX)はいずれもβを解にもつQ(α+qβ)上の式である。また有理数qの選び方から2式はβ以外に共通解をもたない。したがって(5)が示された。                     

 

上記の証明の変形については、(※49)でも補足を加えている。           ■

 

 

(定理5 拡大次数の一意性)

 原始元の選び方によらず、代数的拡大体Lの拡大次数は一意に定まる。

 

証明)代数的拡大体Lの異なる原始元をβ、θとして、βとθのQ上最小多項式の次数が一致することを示そう。β、θのQ上最小多項式の次数をそれぞれа、nとしてа=nを導くことにする。

 

 以下、代数的数「α₁ α₂ α₃…」の各数に有理数をかけて足し合わせた式を{}を用いて{α₁ α₂ α₃…}と表記することにする。たとえば、{1 β β²…βª⁻¹}は1+q₁β +q₂β²…+qa‐1βª⁻¹という形の式を意味している。

 

 定理3により{1 β β²…βª⁻¹}、{1 θ θ²…θⁿ⁻¹}はLのすべての元を一意的に表記することができる。以下{1 θ θ²…θⁿ⁻¹}から1以外の任意の元を取り除き、{1 β β²…βª⁻¹}の元の1つβ’と取り換えても、Lのすべての元を一意的に表記できることを示そう。この操作をn-1回繰り返すと、Lのすべての元を一意的に表記できるn項の式{1 β’ β”…}が得られるが、βも原始元であることからa=nが導かれる。

 

 以下{1 θ θ²…θⁿ⁻¹}からθを取り除いた場合について考えるが、取り除く元は「θ θ²…θⁿ⁻¹」のいずれであっても構わない。まず{1 β’θ² θ³…θⁿ⁻¹}がLのすべての元を表記できることの証明の概要は以下のようになる。

 

→(1)「θが{1 β’θ² θ³…θⁿ⁻¹}で表記できること」を示せばよい。

→(2)「β’を表記するθ形式のθの係数が0でないこと」を示せばよい。

→(3){1 θ² θ³…θⁿ⁻¹}によって表記されないβ’が存在すること」を示せばよい。

 

→(1) Lのすべての元は{1 θ θ² θ³…θⁿ⁻¹}によって表記される。(1)がみたされていればこの式のθを{1 β’θ² θ³…θⁿ⁻¹}に置き換える変形が可能である。したがってLのすべての元が{1 β’θ² θ³…θⁿ⁻¹}で表記できることになる。

(1)→(2) (2)がみたされていれば、β’=q₀+q₁θ+q₂θ²+…(q₁≠0)と表記できる。この式をθについて整理すると、(1)の式が得られる。

(3)→    背理法を用いる。「β β²…βª⁻¹」の各数すべてが{1 θ² θ³…   θⁿ⁻¹}で表記されたとする。θを表記するβ形式の各項「β β²…   βª⁻¹」を{1 θ² θ³…θⁿ⁻¹}に置き換えていくと、θを表記するθ形式――θとは見かけ上異なる――が得られる。これはθ形式による表記の一意性に矛盾する。

 

次に{1 β’θ² θ³…θⁿ⁻¹}によるLの元の表記が一意に定まることを確認する。

 背理法を用いる。{1 β’θ² θ³…θⁿ⁻¹}によって2通りの表記をもつLの元が存在すると仮定する。

 ここでこの2通りの表記について①β’の係数が等しい場合と②β’の係数が異なる場合について場合分けする。

まず①の場合、2式を引き算すると0を表記する{1 θ² θ³…θⁿ⁻¹}が得られる。したがって0に関するθ形式の一意性から①は起こりえないことが導かれる。

次に②の場合、2式を引き算すると、β’の係数は0にならない。そこでこの式をβ’について整理すると、β’を表記する{1 θ² θ³…θⁿ⁻¹}が得られるが、これはβ’の選び方に反する。β’の選び方から②も起こりえないことが導かれた。

                                 ■

 

 

(定理6 次元の積公式)

Q→M→Lを代数的拡大列とする。Q→Mの拡大次数をа、M→Lの拡大次数をnとするとき、Q→Lの拡大次数はanである。

 

証明)代数的拡大列Q→M→Lにおいて、Q→M、M→Lの原始元をそれぞれα、βとする。また、αのQ上最小多項式、βのM上最小多項式の次数をそれぞれа、nとする。「1   α α² α³…αª⁻¹」「1 β β² β³…βⁿ⁻¹」の元を1個ずつ選び積をつくると、ahn個の積ができる。

(1)「これらan個の数に有理数をかけて足し合わせたan項の式によってLのすべての元が一意的に表記されること」を示そう。定理5により、Lのすべての元を一意的に表記できる式の項数は一意に定まることが保証されている。したがって、(1)からLの拡大次数がan次であることが導かれる。

 

以下は、定理3の証明とまったく同様の流れをたどるので、概要のみのべることにする。

「1 β β² β³…βⁿ⁻¹」の各数にQ(α)の元をかけて足し合わせた式をQ(α)上のβ形式とよぶことにする。

このとき「Q(α)上のβ形式で表記できる数の集合」は四則演算について閉じており、体になっている(※50)。そのため、L=「Q(α)上のβ形式で表記できる数の集合」が成り立つ。また、Q(α)の元のα形式による表記は一意に定まる。したがって、Lの各元はα形式上のβ形式によって一意的に表記される。この式を展開すると、(1)の条件をみたすаn項の式となる。                      ■