§2.5 最小分解体関連証明

定理15~定理18、定理14の順に証明を述べる。

(定理15)

 有理数係数f(X)=0の最小分解体Lはガロア拡大体である。

 

証明) Lの原始元をθとする。その任意のQ上共役解θ’がLに含まれていることを示せばよい。

 f(x)=0の解を「α₁ α₂ α₃…」とし、各解のθ形式を「A₁(θ) A₂(θ) A₃(θ)…」とする。

また原始元θは(α₁ α₂ α₃…)形式で表記される。θを表記する(α₁ α₂ α₃…)形式を{α₁ α₂ α₃…}と表記することにする。

このとき、以下の等式が成り立つ。

 θ={α₁ α₂ α₃…}={A₁(θ) A₂(θ) A₃(θ)…}

このQ上の等式はアーベルの既約定理により以下のように書き換えられる。

 θ’={A₁(θ’) A₂(θ’) A₃(θ’)…}

ここで再びアーベルの既約定理を用いると「A₁(θ’) A₂(θ’) A₃(θ’)…」がいずれもf(x)=0の解であることが得られる。

したがってθ’はf(x)=0の解と有理数の式で表記できるのでLの元である。原始元θの任意のQ上共役解がLに含まれており、Lはガロア拡大体の十分条件をみたしている。                               ■

 

 

(定理16)

 有理数係数n次方程式f(X)=0の最小分解体Lのガロア群は、n次対称群の部分群と同型である。

 ただし対称群の演算については、fとgの積をf・g:(123…n)→「(123…n)にfの置換を施した後、gの置換を施した結果」と定義する。

 

 証明)Lの原始元をθ、ガロア群をGとする。

 定理15の証明のときと同様に、f(x)=0の解を「α₁ α₂ α₃…」とし、θ={α₁ α₂ α₃…}={A₁(θ) A₂(θ) A₃(θ)…}とする。

 

 Gの任意の元をgとする。このとき「A₁(g(θ)) A₂(g(θ)) A₃(g(θ))…」はいずれも異なるf(X)=0の解である(定理11証明参照)。したがってGの元の置換によって、解はシャッフルされることになる。

 

 次に、Gの元g、hについてg≠hならば解のシャッフルのされ方が異なることを背理法を用いて確認する。

 

gとhによる解のシャッフルが同一ならば、{A₁(g(θ)) A₂(g(θ)) A₃(g(θ))…}={A₁(h(θ)) A₂(h(θ)) A₃(h(θ))…}が成り立つ。

 

一方θ={A₁(θ) A₂(θ) A₃(θ)…}にアーベルの既約定理を適用してθ→g(θ)、θ→h(θ)の置換を施すと、g(θ)={A₁(g(θ)) A₂(g(θ)) A₃(g(θ))…}、h(θ)={A₁(h(θ)) A₂(h(θ)) A₃(h(θ))…}がそれぞれ得られる。

 

あわせて、gとhによる解のシャッフルが同一であるときg(θ)=h(θ)、すなわちg=hであることが示された。対偶にかえてg≠hならば解のシャッフルのされ方は異なる。

 

上記から、ガロア群の元とn次対称群の部分群の元に1対1の対応がつけられる。

たとえば、「A₁(g(θ) A₂(g(θ)) A₃(g(θ))」=「α₁ α₃ α₂」ならばgと(123)→(132)を対応させることになる。

 

最後にこの1対1の対応が演算の結果に保存されることを示そう。

ガロア群Gの元g、hに対して、これらと対応するn次対称群の元をg’、h’とする。g・hと、g’・h’が対応していることを示せばよい。

g・hによりf(x)=0の解は「A₁(θ) A₂(θ) A₃(θ)…」→「A₁(g(θ)) A₂(g(θ)) A₃(g(θ))…」→「A₁(g(h(θ))) A₂(g(h(θ))) A₃(g(h(θ)))…」とシャッフルされる。したがってg’の置換が施された状態で、さらにh’の置換が施されることになる。対称群の演算の定義によりこの結果はg’・h’の結果に一致する。                            ■

 

 

 (定理17)

有理数係数f(X)=0が複素数θを解にもつとき、その複素共役θ’も解になる。

 

証明)複素数の計算については、次の①~③が成り立つ。

①    α・βとα’・β’は複素共役関係にある。式にすると(a+bi)(c+di)と

(a-bi)(c-di)が複素共役関係ということになる。

②    実数cについてcαとcα’は複素共役関係にある。式にするとc(a+bi)と

c(a-bi)が複素共役関係ということになる。

③    α+βとα’+β’は複素共役関係にある。式にすると(a+bi)+(c+di)と

(a-bi)+(c-di)が複素共役関係ということになる。

 

上記の①~③を用いて、f(θ)=0からf(θ’)=0を導こう。①よりθのn乗とθ’のn乗が、②よりf(θ)とf(θ’)の各項が、③よりf(θ)とf(θ’)が、それぞれ複素共役関係にあることが得られる。

 0の複素共役は0なので、f(θ’)=0が示された。      ■

 

(定理18 コーシーの定理)

群Gの位数をnとし、その任意の素因数をpとする。このときGには位数pの元が含まれている。

 

証明)Gの元について、その積が単位元eとなるようなp個の元の選び方を数える。ただし同一の元を複数回選ぶことを認め、また選ぶ順序が異なるものは異なる選び方としてカウントするものとする。

 このとき(1)「選び方はnの(p-1)乗通りである」。nはpの倍数なので、nの(p-1)乗はpの倍数である。

 

 次にp個の元の選び方の中で、異なる複数の元を含む選び方を取り除いていく。(2)「異なる複数の元を含むような選び方は(pの倍数)通りである」。

 

 あわせて、単一の元をp乗して単位元eにする方法は、0通りもしくは「pの倍数」通りのいずれかであることが得られた。eのp乗がeであることから、このような選び方は0通りではありえない。したがってpを位数とする元が、最少でもp-1個存在することになり、位数pの元の存在が示された。      

 

なお、証明中の(1)、(2)については(※55)で補足している。           ■           

  

 

(定理14)

 既約5次方程式f(ⅹ)=0が実数解を3個もつとき、その最小分解体Lのガロア群Gは5次対称群S₅になる。

 

証明に用いる互換という用語については(※26)で述べている。また、(※56)では互換に関するいくつかの計算法則をまとめている。

 

証明) 証明の概要は以下のようになる。

→(1)「GにS₅の互換10個すべてが含まれていること」を示せばよい。

→(2)「Gに、5文字が2回ずつ出てくるような5個の互換が含まれていること」を示せばよい。

→(3)「Gに、1つの互換と位数5の元が含まれていること」を示せばよい。

 

 証明の変型過程について補足する。なお以下の説明は、「а b c d e」にあてはめる数字を問わず成立する。

→(1)(※57)で述べるように、S₅の任意の元は互換の積によって表記できる。したがって全10個の互換からGは生成される。

(1)→(2)互換については(аb)(bc)(аb)=(аc)という等式変型が可能である。したがって(аb)、(bc)、(cd)、(de)、(аe)という5個の互換から残る5個の互換も得られる。

(2)→(3)互換を(аb)、位数5の元をgとする。このとき(аb)、g(аb)g⁻¹、g(аb)g⁻²、g(аb)g⁻³,g(аb)g⁻⁴が(2)の条件をみたす5個の互換となる。                ■