(※47)整数の割り算a÷b=c…dにおいてb>d≧0をみたす余りdが必ず存在する
ことが除法の原理として知られている。同様に多項式の割り算f(X)÷g(X)についてもdegg(x)>deg h(X)≧0をみたす余りh(X)の存在が保証されている。
多項式の割り算を行う際には係数の四則演算を繰り返すことで「割られる式」の次数を下げていき、「割られる式」の次数が「割る式」の次数を下回ったところで計算は終了する。このことが除法の原理が成り立つ要因である。
これらの操作はQ上の多項式のみならず、任意の拡大体M上の多項式でも可能なので、除法の原理は任意の拡大体において成り立つ。
(※48)定理2の証明中の(1)、(2)に補足を加える。
(1)については以下のようにして分かる。а÷b=c…dのとき、d=a-bcが成り立つ。aⅩ+bY=1…①が整数解をもてば、dX+bY=(а‐bc)X+bY=1…②も整数解をもつ。①式の解を(s t)としたとき、(s t+cs)などが②式の解となる。
またbとdが互いに素でなければ、bとbc+d=аも互いに素でない。対偶にかえてаとbが互いに素ならば、bとdも互いに素である。
上記の理屈は、а~dが整数であっても多項式でもあっても変わらない。
(※49)原始元の存在(定理4)の証明にいくつか補足を加える。
代数的単拡大列をQ→M₁→M₂→M₃とする。(1)「2回の代数的単拡大をへて構成された体が単拡大体であること」がみたされていれば、M₂は単拡大体であり原始元が存在する。Q→M₂→M₃に注目して再び(1)を用いると、M₃が単拡大体であることが得られる。
α、β∈Q(α+qβ)とするとα、βはいずれも(α+qβ)形式で表記できる。したがって、Q(α β)のすべての元は(α+qβ)形式で表記され、Q(α β)⊆Q(α+qβ)が導かれる。同様にα+qβ∈Q(α β)ならば、Q(α+qβ)の元はいずれも(α β)形式で表記でき、Q(α β)⊇Q(α+qβ)が得られる。
g(α+qβ X)、f(α+qβ-qX)がβ以外に共通解をもてば、X=β’と(α+qβ-qX)=α’を合わせて(α+qβ-qβ’)=α’。すなわちq=(α-α’)÷(β-β’)となる。したがってこの等式をみたさないようなqを選べばよい。
(※50)定理3の証明では「θ形式で表記できる数の集合」が体になっていることを確認した。その証明をQ(α)上のβ形式におきかえると以下のようになる。
まず、Q(α)上のβ形式の集合が四則演算で閉じていることを確認する。以下、βのQ上最小多項式をf(α X)=0とする。
Q(α)上のβ形式2数の和・差がQ(α)上のβ形式になることは明らか。
Q(α)上のβ形式2数の積h(α β)は、βの次数がQ(α)上のβ形式の定義からオーバーしている可能性がある。その場合、h(α X)をf(α X)で割って、deg f(α X)>deg h’(α X)をみたす余りh’(α X)を求める。h(α β)=h’(α β)より、h’(α β)が2数の積に等しいQ(α)上のβ形式である。
最後にQ(α)上のβ形式2数g(α β)、h(α β)について、g(α β)÷h(α β)の商となるQ(α)上のβ形式が存在することを確認する。証明は以下のように変形できる。
→(1)「Yを未知数とする不定方程式g(α β)=h(α β)Yが解となるQ(α)上のβ形式をもつこと」を示せばよい。
→(2)「1=h(α β)Yが解となるQ(α)上のβ形式をもつこと」を示せばよい。
→(3)「Y、Zを未知数とする不定方程式1=f(α β)Z+h(α β)Yが解となる
Q(α)上のβ形式をもつこと」を示せばよい。
→(4)「1=f(X)Z+h(X)Yが解となるQ(α)上の式をもつこと」を示せばよい。
したがって証明は定理2’に帰着する。
(※51)2変数の基本対称式は「x+y xy」の2式である。また、3変数の基本対称式は「x+y+z xy+yz+xy xyz」の3式である。次数1の「x+yとx+y+z」、次数2の「xyとxy+yz+xy」がそれぞれ対応している。
(※52)f=x³+y³+z³とする。xに0を代入し、f’=y³+z³=(y+z)³-3xy(x+y)を得る。y+zとx+y+z、yzとxy+yz+xzがそれぞれ対応しているので、g=(x+y+z)³-3(xy+yz+xz)(x+y+z)である。
(※53)対称式の基本定理の証明では、f’、hが基本対称式化可能であることを仮定して、fが基本対称式化可能であることを示した。すなわちfが基本対称式化可能であることを示すには、f’、hが基本対称式化可能であることを示せばよいことになる。このように証明すべき式を変数もしくは次数の低い式に変えていき、最終的には変数1もしくは次数1の式に証明を帰着させるというのが二重帰納法の真意である。
(※54)x⁻¹x=eからxx⁻¹=eを導こう。両辺に左からxをかけるとxx⁻¹x=x、すなわち(xx⁻¹)x=xが得られ、xx⁻¹=eが分かる。この逆元との可換性はコーシーの定理(定理18)の証明に用いることになる。
(※55)コーシーの定理の証明中の(1)、(2)について補足する。
位数nの群Gから重複を許してp-1個の元を選ぶ方法はnのp-1乗通りである。これらについてそれぞれ逆元をかけるとeになることから(1)が分かる。
また、(※54)で述べた逆元との可換性をふまえると、p個の元の積(123…p)がeならば、これをスライドさせた(23…p1)、(34…p12)…の積もeになることが分かる。またpが素数なので、(123…p)の中に異なる複数の元に含まれていれば、p回のスライドで異なるp個の選び方が得られる。あわせて(2)が示された。
(※56)互換2個の積について以下のように分類する。
2個の互換が同一の互換であるとき、その積は単位元eになる…①。また2個の互換
に同一の数字が含まれていないとき、その積は可換である…②。2個の互換が共通の数字を1個含んでいる場合は、共通する数字を変えてから積の順序を反転させる操作で不変である…③。
上記①~③を等式化すると以下のようになる。
① (аb)(аb)=単位元e
② (ab)(cd)=(cd)(аb)
③ (аb)(bc)=(bc)(аc)=(аc)(аb)
特に③の変形は以降何度も引用することになる。