(※21)(※20)ではQ上既約な式が重解をもたないことを確認したが、この命題は任意の拡大体Mについて成立する。
M上既約な式f(α X)=0が重解θをもつとする。θのQ上最小多項式g(x)はM上においてf(α X)で割り切れる。したがってg(X)=0も重解θをもつことになるが、これは(※20)の結果に反する。
(ガロア群の位数)=(拡大次数)という等式は、任意の代数的拡大で成り立つことになる。
(※22)(123…n)というn個の数字をシャッフルする方法はn!通りである。これらn!通りのシャッフルからなる群をn次対称群という。
対称群の演算についてはf・g:(123…n)→f(g(123…n))と定義するのが一
般的である。この定義に従えば、f・gの結果は、「gの置換を施した後をfの置換を
施した結果」と一致する。しかし、本書では対称群の演算についても、f・gの結果
と「fの置換を施した後gの置換を施した結果」が一致するよう定めている。
本書の定義に従うと、たとえばf:(123)→(132)、g(123)→(231)とすると
き、f・g:(123)→(213)である。
いずれの順序で演算を定義してもn次対称群は群の公理をみたし群となるが、その
確認は読者に任せる。
(※23)まず、f(x)=X⁵-6X+3がQ上既約であることを確認する。
f(x)がQ上既約でなければ、(1次式)×(4次式)もしくは(2次式)×(3次式)いずれかの分解が可能である。
f(X)=(X+а)(X⁴+bX³+cX²+dX+e)とすると、а=±1、±3のいず
れかになる。f(X)=0が±1、±3を解にもたないことから、この分解が不可能で
あることが分かる。
また、f(X)=(X²+аX+b)(X³+cX²+dX+e)と分解できたとする。このときb=±1、±3のいずれかである。
b=±3とするとe=±1。1次係数を比較して-6=аe+bdよりа≡0(mod 3)。2次係数を比較して0=аd+eとなるが、この等式は成り立ちえない。
b=±1とするとe=±3。上と同様にc、d、e≡0(mod3)が導かれる。3次係数の比較から得られる0=аc+d+bが成り立たちえない。
あわせてf(X)がZ上――整数係数上――既約であることが得られた。次にZ上で既約な式はQ上既約でもあることを確認する。対偶にかえてQ上既約でなければZ上でも既約でないことを示そう。
Q上でf(X)=g(X)h(X)と分解できたとする。ただしg(X)、h(X)の各係数に含まれる分数は既約分数とする。
g(x)、h(x)の分母各数の最小公倍数をそれぞれm、nとする。このときmn・f(x)={m・g(x)}{n・h(x)}はZ上の分解である。分数の既約性より{m・g(x)}の係数の中にはmの倍数でない数が、{n・h(x)}の係数の中にはnの倍数でない数がそれぞれ含まれている。
このとき、f(x)が整係数の式ならば次の①、②が成り立つ。
① {m・g(x)}の係数はすべてnの倍数である。
② {n・h(x)}の係数はすべてmの倍数である。
以下①を示そう。①がみたされていなければ、{m・g(x)}、{n・h(x)} の双方の係数にnの倍数でない数が含まれる。nの倍数でない数が係数となる最小の項の次数をそれぞれа₁次、a₂次とする。このとき、mn・f(x)のа₁+а₂次係数はnの倍数にならない。したがってf(x)はZ上の式ではない。対偶にかえて、f(X)がZ上の式ならば①はみたされている。②についても同様である。
したがって{m・g(X)}÷nも{n・h(X)}÷mもZ上の式である。
f(x)=[{m・g(X)}÷n][{n・h(X)}÷m]より、Q上既約でないf(X)がZ上既約でないことが示された。
最後に、f(x)=0の実数解が3個であることを確認する。
実数解が3個以上であることは、f(-2)=-17、f(0)=3、f(1)=-2、f(2)=23から分かる。またf(X)を微分したf’(X)=x⁴-6=0の実数解はx=
±⁴√6の2個である。したがって、f(X)はx=±⁴√6でのみ、傾きが0になる。
あわせてf(x)=0の実数解は3個であることが得られた。
(※24)実数でない数を虚数といい、実数と虚数をあわせて複素数という。複素数а+bi(а、bは実数 iは√‐1)に対し、а-biをその複素共役という。
(※25)群Gに含まれる元の個数をGの位数という。これに対し、Gの元gについてgⁿ=eをみたす最小のnをgの位数という。
(※26)対称群の元のうち、n個の元のみをサイクルさせる置換をnサイクルの元という。たとえば(12345)→(12453)は3、4、5の3数をサイクルさせているので3サイクルの元である。nサイクルの元については、サイクルさせるn個の数字のみを取り出して表記することもある。「(12345)→(12453)」=(345)がこの表記法の一例である。
nサイクルの元のうち、特に2サイクルの元を互換とよぶ。
(※27)3次対称群S₃の部分群は、「S₃(位数6)、H₁(位数3)、H₂~H₄(位数2)、単位群e(位数1)」の計6個であることが知られている。ガロア拡大体LがS₃をガロア群とするとき、Q→Lの間には拡大次数2の中間体M₁、拡大次数3の中間体M₂~ M₄が存在する。QとS₃、M₁とH₁、M₂~M₄とH₂~H₄、Lとeがそれぞれ対応している。
(※28)θのQ上共役解をθ’とする。Q上の2式f(x)、g(x)についてf(θ)
=g(θ)ならばf(θ’)=g(θ’)が成り立つ。したがってf(θ)=f(θ’)ならばg(θ)=g(θ’)も成り立つ。
このことからf(θ)、g(θ)が見かけ上異なる式であっても等号が成り立てば、これらに不変に作用するガロア群の元は一致することが分かる。したがってMの元の表記のしかたによらず、Mの固定群が一意に定まることが保証されていることになる。
(※29)固定群が群の公理をみたしていることを確認する。
まずh₁、h₂∈Hからh₁h₂∈Hを導こう。(A(h₁(θ))=A(θ)にアーベルの既約定理を適用してθ→h₂(θ)を施すと、A(h₁(h₂(θ)))=A(h₂(θ))。A(h₂(θ))=A(θ)とあわせてA(h₁(h₂(θ)))=A(θ)よりh₁h₂∈Hが示された。Hは①「定められた演算で閉じている」。
②「単位元e∈H」は明らか。
次にh∈Hからh⁻¹∈Hを導こう。(A(h(θ))=A(θ)にアーベルの既約定理
を適用してθ→h⁻¹(θ)を施すとA(θ)=A(h⁻¹(θ))が得られ、③「逆元
h⁻¹∈H」 が分かる。
また④「結合法則をみたしている」のは、ガロア群Gの部分集合であることから問題ない。
次にHの固定体Mが四則演算で閉じていることを確認する。
Mの任意の元а、bについて「а+b а-b аb а÷b」∈Mを示せばよい。たとえばа÷b∈Mは以下のようにしてわかる。
A(θ)÷B(θ)=C(θ)…①とする。このときа、b∈MよりHの任意の元hについてA(h(θ))=A(θ),B(h(θ))=B(θ)…②が成り立つ。
またB(θ)C(θ)=A(θ)にθ→h(θ)の置換を施しB(h(θ))C(h(θ))
=A(h(θ))より、A(h(θ))÷B(h(θ))=C(h(θ))…③。①~③あわせてC(θ)=C(h(θ))が得られる。MにはHの作用で不変なすべての元が含まれていることからC(θ)∈Mが示された。
(※30)ガロア対応が必ずしも自明な対応関係でないことを説明する。
部分群Hの固定体がMであるとき、Mのすべての元にHは不変に作用する。しかしMのすべての元に不変に作用する置換がHの元であるとは限らない。Hに含まれない元もMのすべての元に不変に作用する可能性が考えられる。
また中間体Mの固定群がHであるとき、Mのすべての元はHの作用によって不変である。しかしHの作用によって不変である元がMの元であるとは限らない。Mに含まれない元もHの作用で不変である可能性が考えられる。
定理19を示すにはこれらの可能性を否定する必要がある。