「信じられないでしょう、普通なら馬鹿げた話に聞こえるでしょうね」

普通なら………そうなるが………なにか引っかかる、なんだ……何が引っかかってるのか

「その直後の記憶がないの……次に気がつくと自室にいたの……周りの話だと兵士や国民の前で立派に挨拶したとか………私にその記憶がないのよ……おかしいでしょう」

そうだ、わかった

「悪魔の名前は確か」

「サテラと名乗っていたような」

サテラ…………まさか………女王の方と同じだ

サテラの正体は…………悪魔なのか

「その後も記憶が無いことがあるの。酷いと2日分もない事もあるの」

その間はサテラが表に出ている事になる

そうなるとあの演説をしていたのは……………サテラ………となるのか

サテラは何をしたいんだ

テーブルの上の御馳走はほぼなくなっていた

「もうそろそろ部屋に入るか」

「ねぇエイタ……ここお風呂あるかな」

「ちょっと調べてくる」

そう言って俺は部屋を出て階段を上がると長い廊下に出た

両側に扉があり突き当りには窓がありそこから月明かりが差し込んできていた

何時の間にか夜になってたみたいだ


この世界にも夜があるんだなと思いながら近寄り覗くと眼前に黒い森、その奥に街の灯りが見えている

「あそこに行くだけなのに……なんかすごく遠そうに感じるな」

あそこに行くには殺鬼姫をなんとかしないといけない

女神が作戦を言っていたが果たして通用するのか………不安しかない

引き返しながら各部屋を覗いて再び下に降りて

「ミルフィーユ……部屋の中にあるみたいだぞ」

「わかった……ありがとう……じゃ」

ミルフィーユは右側の部屋に

「じゃおやすみエイタ……明日も……よろしくお願いします……」

入っていった

閉まるのを確認して俺は反対の部屋に入った

入ると正面に簡素な机と椅子がありその前に小さな窓があって月明かりが入ってきている

右には風呂に通じる扉が、反対にはこちらも簡素なベット

「俺も浸かるか」

用意して温水に体をつけると何とも言えない気持ち良さが全身を包んでゆく

「( ´ー`)フゥー...生き返ったって感じだな」

ふと見ると脇に小さな箱が見えた

ゆっくりと開けると中から冷気が流れてきて

「これは………飲み物が入っている」

それにしてもこのお湯と言い食事といいそしてこの箱といいどういう仕掛けで動いているんだ……魔法とかそんなことか」

一本飲み物を取ると風呂場を出てベットに

「さあ明日は大変な一日なるかな、ゆっくりと休むとするか」

入ると直ぐに眠気がやって来た

こうして長い一日が終わった






「誰かミルフィーユを見ていないか」

城の中に女王の声が響いていて、思わず歩いていた兵達も足を止めて振り返った

「今日はまだ見ていないな」
「俺も見ていないな」

「あの子は、どこに隠れたのかしら」

「ミルフィーユ様が何か」

「兵士や国民の前に出て挨拶しろと言ったら、逃げたのよ、本当に姫としての自覚があるのかしら」

「でもまだ小さいし、人見知りだし難しいのでは」

「小さいのは関係ありません、人見知り?根性が足りないんです、慣れておくことも大事な事です、見つけたら私の所に連れて来なさい」

溜息をつきながら歩き出す女王の背中は怒りのオーラを発しているみたいに見えた



話は数時間前に戻る


「待ちなさい!ミルフィーユ!」

待てと言われて待った人はいない

「…………嫌………嫌…………嫌………絶対に嫌」

大勢の人の前に出て挨拶しろと言うのよ

「そんなの………無理……絶対に無理」

私は人見知り……病的に人見知り

どれくらい走っただろうか、振り返り追手が来ないことを確認して、目についた部屋に飛び込んだ

「ここなら暫くは大丈夫、それにしても何で私はこうなんだろうか」

実は治したいと思った事もあるが…………

「どうにかならないかな、誰でもいい、神様……こうなったら悪魔でも、私のこれ治してくれないかな」

その場に跪き自然と目を閉じ両手を合わし

「どうか私の人見知りを治してください」

まあいない者に手を合わしても仕方ないか

諦めて立ち上がる………

「貴様今願い事をしたな」

頭の中に声が響いたから動きが止まった

「……………誰?」

「あたしか、貴様らが言うところの悪魔と言う奴だよ」

「……………悪魔…………」

確かに神様………こうなったら悪魔でもと考えたがまさか………本当に悪魔が現れたのか

「貴様……人見知りを治したいのか」

「…………治したいが………出来るの」

「あたしは悪魔………出来ないことはないがして欲しいのか」

できるならして欲しいが………悪魔が相手なら必ず

「私は何を差し出せばいいの」

対価を取られそうな気がしてきた

「対価は…………お前の全て……」

「………まさか命を………」

「命は取らない、そのうちわかる………でどうする」

私は………私は………治したい………人見知りを治したい………

「治してください……お願いします」

人見知りが治るなら何を失っても構わない

「取引成立だな………じゃ目を閉じろ」

言われるままに目を閉じる直前…………

「あの名前とかあるの?私はミルフィーユと言うの」

「名前ね………あるわよ………あたしはサテラ
………まあ記憶に残らないから覚えなくていいよ、あたしもミルフィーユの記憶は残らないから、じゃ始めるね」

再び目を閉じると、その直後意識が無くなった







小屋に入ると

「エイタ、美味しそうな匂いがする」

それに誘われるように廊下を進むとミルフィーユが扉の前で止まり

「エイタ、この部屋からする」

無警戒で中に入るミルフィーユを追って入った部屋の中央にテーブルがありその上に豪華な料理が乗っていた

「エイタ……これ食べても……良いんだよね」

多分……大丈夫……の筈……

俺達は席につくと料理を食べながら

(ありがとう女神)

と心の中で言った

それにしても大変美味しい

こんなの食べたことがないし見たことが無い物も混ざっていた

「エイタ、これ美味しい」

食べながら今までの事を話した

勿論サテラの事は伏せているが

「そうなんだ、あなたは私の国の兵士で、何かがあって私達はこの世界に飛ばされた、それならどうして私に記憶がないのかしら」

それはサテラが表になってい………………サテラの時の記憶がないのか

逆はどうなるんだ

サテラにはミルフィーユの時の記憶はあるのか

「ありがとう、大体わかったわ、要するに魔王を倒さないと戻れないのね」

無理かもしれない

「………………………………………」

「………………………………………」


二人の間に沈黙が降りてきた

何か話さないと、だが話題が浮かばない

「私ね……昔は人見知りだったの、それも病的に」

沈黙を破ったのはミルフィーユだった

「…………えっ………」

今の姫からは想像できない

「少し私の昔話するね」

ミルフィーユはゆっくりと話し始めた