「誰かミルフィーユを見ていないか」

城の中に女王の声が響いていて、思わず歩いていた兵達も足を止めて振り返った

「今日はまだ見ていないな」
「俺も見ていないな」

「あの子は、どこに隠れたのかしら」

「ミルフィーユ様が何か」

「兵士や国民の前に出て挨拶しろと言ったら、逃げたのよ、本当に姫としての自覚があるのかしら」

「でもまだ小さいし、人見知りだし難しいのでは」

「小さいのは関係ありません、人見知り?根性が足りないんです、慣れておくことも大事な事です、見つけたら私の所に連れて来なさい」

溜息をつきながら歩き出す女王の背中は怒りのオーラを発しているみたいに見えた



話は数時間前に戻る


「待ちなさい!ミルフィーユ!」

待てと言われて待った人はいない

「…………嫌………嫌…………嫌………絶対に嫌」

大勢の人の前に出て挨拶しろと言うのよ

「そんなの………無理……絶対に無理」

私は人見知り……病的に人見知り

どれくらい走っただろうか、振り返り追手が来ないことを確認して、目についた部屋に飛び込んだ

「ここなら暫くは大丈夫、それにしても何で私はこうなんだろうか」

実は治したいと思った事もあるが…………

「どうにかならないかな、誰でもいい、神様……こうなったら悪魔でも、私のこれ治してくれないかな」

その場に跪き自然と目を閉じ両手を合わし

「どうか私の人見知りを治してください」

まあいない者に手を合わしても仕方ないか

諦めて立ち上がる………

「貴様今願い事をしたな」

頭の中に声が響いたから動きが止まった

「……………誰?」

「あたしか、貴様らが言うところの悪魔と言う奴だよ」

「……………悪魔…………」

確かに神様………こうなったら悪魔でもと考えたがまさか………本当に悪魔が現れたのか

「貴様……人見知りを治したいのか」

「…………治したいが………出来るの」

「あたしは悪魔………出来ないことはないがして欲しいのか」

できるならして欲しいが………悪魔が相手なら必ず

「私は何を差し出せばいいの」

対価を取られそうな気がしてきた

「対価は…………お前の全て……」

「………まさか命を………」

「命は取らない、そのうちわかる………でどうする」

私は………私は………治したい………人見知りを治したい………

「治してください……お願いします」

人見知りが治るなら何を失っても構わない

「取引成立だな………じゃ目を閉じろ」

言われるままに目を閉じる直前…………

「あの名前とかあるの?私はミルフィーユと言うの」

「名前ね………あるわよ………あたしはサテラ
………まあ記憶に残らないから覚えなくていいよ、あたしもミルフィーユの記憶は残らないから、じゃ始めるね」

再び目を閉じると、その直後意識が無くなった