メンバーのお名前や雰囲気をお借りしたお話です。
最初のお話はこちら ⇒ 「Winback 1」
前回のお話はこちら ⇒ 「Winback 10」
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―3ヶ月前。
雑居ビルの2階にある、「Winback」と彫られた小さな木の表札のかかったドアの前。
若い女性がノックをしようとして片手を上げてはまた下ろすという動作を繰り返している。
ガチャ。
「あっ!」
突然内側からドアが開いて二宮が顔を出す。
「何かご用ですか?」
「あ、あの~、こちらってその・・・」
そこまで言って口ごもる。
なんと切り出したらいいのか迷っているようだ。
緩くウエーブのかかった栗色のロングヘアにヘーゼルカラーの瞳。
顔立ちから見て欧米系とのハーフだろうか。
緊張のせいか青白くさえ見える頬に、伏せたまつげの影が映る。
「何か取り返したい物がおありなんですか?」
「え? は、はい。そうなんです。
ほんとに何でも取り返していただけるんでしょうか。」
「ええ。その正当な持ち主があなただと証明していただければですが。」
「証明・・・。」
困ったようにうつむく。
「あなたが取り返したい物は何ですか?」
「・・・絵です。」
「絵?」
「はい。母の絵を取り返していただきたいのです。」
「お母様の?
とりあえずお話を伺いましょうか。
どうぞお入りください。」
女性の名は、沙織・アンダーソン、26歳。
松尾太郎画伯の孫娘にあたる。
松尾は元陸軍将校だったが、ペリリュー島の戦いで片足を失くして戦線を離脱、帰国した。
終戦後は足が不自由なせいで定職にはつけず、挿絵やポスターなどを描いて
細々と生計を立てていたようだ。
松尾には詩織、香織という二人の娘がおり、歳を取ってからの子供だったこともあって
とても大事にしていた。
しかし詩織が結婚を約束した男は横須賀基地駐屯のアメリカ兵で、
昔気質で厳格だった松尾は猛反対。
ちょうど同じ頃、出展した美術展で入賞して一躍人気画家となったこともあり、
財産目当てではないかと疑ってもいたのだ。
結局、詩織は家出同然で結婚をし、沙織を産んだ。
一家はその後、父親の異動によりアメリカに移住し平穏に暮らしていたのだが、
詩織は病にかかり5年前に亡くなった。
松尾が祖父であることを沙織が知らされたのは、詩織が亡くなる少し前だったという。
「それで、取り返したい絵というのは?」
「祖父が母をモデルに描いた『春の詩』という絵です。
母がモデルの絵は2枚あって、もう一つの『秋の詩』は17歳の誕生日に
祖父がプレゼントした物で、母が家を出る時に持ち出しています。
『春の詩』は大学の卒業祝いに贈られるはずだったそうなんですが、
卒業前に母は家を出てしまって。」
「『春の詩』と『秋の詩』ですか・・・。
題名が似通っているのは何か意味が?」
「2枚の絵は同じ場所、同じ構図、同じモデルで、
春と秋の季節の違いを表した対になる絵画なんです。」
「なるほど。
松尾画伯はすでに亡くなられていると思いますが、『春の詩』は今どこに?」
「おそらく叔母が持っているのではないかと思います。」
「叔母さんというのはお母様の妹の香織さんのことですか?」
「そうです。」
≪つづく≫
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予定より間が空いてしまいました。(^^ゞ しかもまだるっこしいシーンでてすみません。
裏設定で終わらせようかと思ったんですが、取り返す理由の説明は必要かなと。
軽井沢沢耳介に揚丼珍〆彦って(笑)。画数があってりゃいいってもんじゃない。
占いと言えば、お正月の「二宮ん家」で、「5月27日の収録後に共演者がとんでもない問題を
起こす」って予言されてましたよね。
気になってニノさんのXとか見てたけど、特に何もなかったみたいでよかったです。