その娘は
ホテルのバーカウンターで
酔い潰れていて
大丈夫ですか? と
声を掛けた
ええ
大丈夫です と言ったまま
また
寝落ちしてしまった
しばらく
近くで
氣にしながら呑んでいたが
そろそろ帰らねばと立つと
その娘は
こちらを見て
部屋まで
連れてって! と言う
いや
それなら
マスターに頼んだら良い
ちょっと
肩を貸してくれたら
それで…
仕方ないな
ならばと
その部屋番号を訊くと
どうしたことか
僕の部屋ではないか
おい
それは
僕の部屋番号
キミのは
そこではない
いいえ
ほら! と
鍵を渡す
えっ?
なぜに同じ部屋の鍵が?…
そんなはずはない
ここで
ちょっと待っててくれ
受付へと行って来ると
エレベーターに乗り
受付階はと見れば
ない!
ロビー階がない
それどころか
7階のボタンしかない
どういうことだ? と
7階のボタンを押すと
そのエレベーターは上へと動き出し
7階でドアが開く
降りると
そこには彼女がいて
おい
どういうことだ? と問えば
それに返事をせず
ここよ と
707号室へと入る
僕の部屋は? と
再確認するが
間違いなく僕も707号室だ
そうだ
荷物を入れてある
まずはそれを取り出してから…
その娘は微笑んで
おじいちゃん
あたしね
未来のあなたの ひ孫の
更にひ孫
未来の?
そう
未来から来たのよ
なぜに?
えー?
だって
おじいちゃんの位牌に
書いてあったから
ああ
そう言えば
未来に於いて
もしも
タイムマシンが出来たならば
いつかの
7月7日に
会いに来てくれ! と
そしてそれは
7の数字を目印として
そっと
過去を変えないように
僕だけに
分かるように来てくれ! と
子供たちに頼んでおいた

それよりも
さっきは酔い潰れていたが
大丈夫なのか?
あれね
酒ってものが
未来では禁止されて
もう呑めないから
試してみたら
やっぱり毒だったみたい
でも
それを一瞬で解毒する薬を
飲んだから
もう大丈夫
そうか
酒まで無くなったのか
で
今 我が家はどうなってる?
おじいちゃんから数えて
あたしが7代後よ
ざっと200年が過ぎて
西暦で言えば
2277年の7月7日
七夕だな
そう
七夕は
年に1度
天の川で会えるって…
あれって
お伽話ではなく
本当にあそこへと
橋が掛かり
ほら
あたしのタイムマシンも
そこへと飛んで
その橋を渡り
時空を越えて…
そうなんだ?
良く分からないが
そんなことを発見したのか
来てくれて
ありがとう!
まさか
こんなことが起こるとはね
僕の知る孫たちは
その後
どうしたかな?
えーとね
書類を見れば
皆 スポーツ選手になったみたい
そうか
それは良かった
あたしは
本家の側だけど
分家の側には
外国人の名前もあるから
国際化したみたいね
そうか
いつかはそうなると
思っていた
そうだ
頼みがある
私の5代前に
善次郎という
それは凄い男がいたそうで
そこへと
連れてってくれないか?
幕末の頃ね
今からだと
ギリギリかな?
このタイムマシンも
時空の割れ目のタイミングで
飛んで来ているから
あとわずかの内に
戻らないとならないのよ
でも
少しなら
報告なしでそっと
行けるかもね と微笑んで
そのホテルの屋上へと出れば
そこには
これ UFOだろ? って姿の
乗り物が浮かんでいて
その真下に立つと
僕らは 吸い込まれた
そこには
パソコンのパネルがあるだけで
あとは操作するボタンさえない
1863年 文久3年と告げる
すると
承知致しましたと
コンピューターが返す
次の瞬間
高く浮かび上がり
また
舞い降りる
到着したのは
幕末で
ここは?
あの
伝通院らしい
斜に構えて物騒な連中が
沢山集まっている
誰かが
大声で話し始めた
きっと
あれが
清川八郎だ
善次郎はいるか?
いた!
僕にそっくりだから
すぐに分かった
未来
あとは
分からない
そうだ
写真が残っている
近藤と 土方だけは
分かった
どうやら
出発らしい
そんな景色をそっと眺めていたら
怪しき奴! と
疑われた
ダメだ
ここに触れては
過去を変えてしまう
急いで戻らねばと
逃げ込んだタイムマシン
一瞬で時空を越えて
現代へと…
ならば
わずかで良い
未来をも見せてくれないか?
そうね
あと数分あるから
ギリギリだけど
見るだけならと
窓越しから
外をと見れば
車は空を飛び
高層ビルは無くなり
空に邪魔するものはない
なるほど
こういう未来かと
微笑んだところで
目が覚めた
未来は今より
ずっと良いと
いつか誰かが言ってたけれど
人間たちは
争うことを辞めたようだ
そんな未来ならば
嬉しくなるが
果たして
バカな大将たちは
いかに…