◆Over the rainbow◆ -65ページ目

2007/09/21

あいつと並んで
歩く廊下は
どうしてあんなに
長いんだろう



前には
学年有数の仲良しカップル


正直最初気まずかった

久しぶりに
一緒に歩けたのに


ぴったり並んで
歩調を合わせる彼らとの差が
私たちの間に
微妙に保たれた
わずか数十センチの空間に
すべて凝縮されてる気がした





蝶ちゃん

私は
必死こいで頑張れば
あんたの隣に
並ぶことはできる


でも
絶対に
笑顔は見れない


皮肉だよね


あんたの笑った顔に
落とされたのに






曲がり角で
私を抜いていくとき
近くで見えた蝶の腕は
よく焼けてて
筋肉質で
『俺非力だから~』なんて
言ってた頃の細腕の面影なぞ
微塵も感じさせないくらい
"男"になってた



手を伸ばせば
触れることもできただろう

でも
私の指が
届くことは決してない



鏡に映る蝶の顔は
きっと
不快そうな仏頂面だったろう

見が隣にいるときとは
別人のような




蝶が
近くにいればいるほど
隔てるものの大きさを感じる

いつから
そんなに遠くに行っちゃったの


ねぇ

蝶ちゃん

2007/09/20

あぁ
そっか

死んだから

変わったんだ






もう
聞くことないんだ

本当に
ないんだ




きっと
私たちの知らないとこで
あいつは
練習してたんだろう

あの人の声を




半ば押しつけた
あの役


あの声を演じてるときの
蝶の声は
テノール独特の光沢を
むりやり低く隠したようで
当たり前ながら
明らかに笑いを含んでて
でもそれが妙にはまり役で



あの声が
私たちを
初めてひとつにした




こうして
ひとつずつ
一緒にいた時間のカケラは
失われていくのね





ありがとう

さようなら


また気が向いたら
声を聞かせてください



あなたの
深くてよく通る声が
大好きでした


さよなら

2007/09/20

偶然ほど怖いものは

ないと思った




確かに
ありふれた名前だよ
でも
最後の最後で
あそこまで偶然って
重なるものなんだろうか




灼熱の体育館で
たった一粒
左の頬を伝った涙は
外気に触れて
いくぶん冷たく感じた


まさか
あのタイミングで
こんな偶然が

しかも1人じゃなく
2人って





どれだけ
濃密な時間だったか
今となっては
何一つ
手元に残ってない
思い出すことも
日毎に下手になっていって
だからこそ
余計に輝きを放って



もっと大切に
生きればよかった

本当に大切なものは
失ってから気づく

知ってたはずなのに


なんていとおしく
憎たらしい歴史






あいつの気配ごと
消し去れてしまえたら
どんなに楽だろう


でも
そのあとに残るであろう
どうしようもない虚無感を
昇華させられる自信がない


だから私は
すべてを失っても
蝶を想い続けるんだろう


それが唯一
大事な大事な
黄金の記憶を
守る手段だから



自分を傷つけず
相手も傷つけず
上手に愛する方法って
ないんだろうか




千切れるくらい想っても
蝶はもう
どこにもいないのに