令和7年度琉球大学法科大学院のC日程入試の結果
先日行われた令和7年度琉球大学法科大学院のC日程入試の結果と、試験内容についての分析をご報告します。
試験結果
- 合否: 不合格
- 成績: 総合順位は2位でしたが、法律科目の合計得点が6割に届かず、合格基準を満たすことができませんでした。
- 備考: 今回のC日程では、法学既修者を対象とした合格者はいなかったようです。
各科目の難易度と所感
実際に試験問題を解いた感想として、各科目の難易度は以下の通りです。
- 憲法: 試験時間が足りず、出題の仕方も少し変えており、時間的な制約の面と問いの仕方から、非常に難しいと感じました。
- 刑法: 複数の異なる学説を踏まえて論述する必要があり、こちらも難問でした。
- 実際の試験本番ではドツボにはまってしまいました。
- 民法: 解答の方向性さえ掴めれば正解に近づける問題のようでしたが(実際には試験本番はテンパっているのでそこまでの余裕はない)、その糸口を見つけるまでに時間を要し、満足のいく答案を作成できませんでした。
- 商法: B日程では基本的に一つの論点が問われたのに対し、C日程では大きく二つの法律上の瑕疵について論じる必要があり、論述の分量が多いと感じました。
- 民事訴訟法: 比較的、基礎的な知識が問われているという印象でした。
B日程との比較:難易度と採点について
B日程の難易度を100と仮定した場合、C日程の難易度は130~150程度で、30~50%ほど難しくなっていると感じました。
一方で、採点基準については、C日程の方がB日程よりも甘めになっている印象を受けました。具体的には、15~20%程度、点数が付きやすくなっているように感じます。
特に採点基準の変化を感じたのは憲法です。B日程では「政治的行為」という特定の枠組みで論じなければほとんど点数が付かなかったのに対し、C日程では目的手段審査で検討しても点数が与えられていました。
民法に関しても、B日程・C日程ともに得点率は4割台でしたが、内容には違いがありました。
- B日程: 自分としては75~80%程度の出来栄えと感じましたが、実際の得点は46%(70点/150点満点)でした。
- C日程: 主観的な出来栄えは40%程度と感じていましたが、実際の得点は40%(60点/150点満点)でした。 この結果から、C日程の方が採点が甘めになっているのではないかと推測しています。
学習の成果:民事訴訟法
今回の試験で大きな成果があったのは民事訴訟法です。年末から重点的に対策を進めてきた結果、50点満点中44点(得点率88%)という高得点を獲得できました。
実は試験本番で「既判力」の正確な定義を書くことができませんでした。しかし、民事訴訟法114条1項(確定判決の主文における訴訟物の存否の判断に既判力が生じる)と114条2項(相殺に供した反対債権の不存在に既判力が生じる)の知識を基に、伊藤塾の完全マスター民事訴訟法で学んだ内容を論述し、得点に繋げることができました。
従前から民訴法は苦手科目でした。公務員試験でも行政書士試験でも、他の国家資格でも民訴法は使っていませんでした。そのため、学習の量が他の民法や憲法などと比較して少ないことから、科目自体に苦手意識がありました。
しかし、以前受けた答練(コンプリート論文答練)も含め、民事訴訟法を集中的に学習したことが、実際の試験の点数という形で明確に表れ、自身の成長を実感する貴重な機会となりました。
ちなみに以下は自分の再現答案です。
実際に自分が書いた答案
参考答案など
加えて、参考答案も作成してみました。
参考書などを読んで、おそらく回答筋であろう答案
答案構成(上記参考答案をチャットGPT4Oで作成しました。)
【民法】
問題1(抵当権抹消登記請求)
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請求要件:①Xの所有権、②Y名義の抵当権登記の存在、③Yが登記を対抗できない。
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Xの主張:Bの無権代理行為(113条1項)であり、追認がないので無効。
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Yの反論:94条2項の「第三者」として保護される。
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Xの再反論:虚偽の外観はあるが、Yに過失があり、善意無過失ではないため保護されない。
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結論:Yの登記は無効であり、Xの抹消請求は認められる。
問題2 設問1・2(法定地上権の成否)
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設問1(Q抵当権):
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Y1の視点では土地建物が同一所有。
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建物が共有でも法定地上権は成立。
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設問2(P抵当権):
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抵当権設定時に土地建物が別人所有。
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法定地上権は成立せず、Xの明渡請求認容。
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【刑法】
設問1(強盗殺人の共同正犯)
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Xの行為:暴行によりVを死亡させ、強盗殺人成立。
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Yの行為:V死亡後に財物奪取。Xの行為を利用し犯行遂行。
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結論:承継的共同正犯としてYにも強盗殺人罪成立。
設問2(窃盗罪または占有離脱物横領罪)
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ポイント:YはV死亡後に行為。暴行との因果性なし。
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結論:強盗罪は成立せず、窃盗罪または占有離脱物横領罪が成立。
設問3(因果的共犯論)
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主張:共犯の処罰根拠は因果的寄与の程度。
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結論:Yには強盗殺人罪は重すぎる。窃盗罪の共同正犯にとどまる。
【憲法】
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争点:風俗案内所の表現行為(広告・ビラ等)への条例による制限。
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21条1項適用性:性表現も「その他一切の表現の自由」として保障。
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制約の合憲性審査:
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表現の自由は重要権利 → 慎重な審査要。
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ただし、性表現であるため、中間審査基準を採用。
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中間審査基準の適用:
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α目的(青少年保護)は重要。
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β手段(区域・罰則付き規制)は、適合性・必要性・相当性あり。
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結論:本件条例は21条1項に反せず、合憲。
【商法】
瑕疵①(取締役会の定足数欠如)
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違法性:369条1項違反、招集手続きの法令違反。
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裁量棄却の可否:60%もの株主が決議に参加していることから → 裁量棄却。
瑕疵②(招集通知期間の不足)
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違法性:299条1項違反。
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裁量棄却の可否:2日間の軽微な違反で決議に影響なし → 訴えは認められない。
【民訴法】
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争点:既判力の範囲(114条2項)と乙債権主張の可否。
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Xの主張:乙債権は400万円→残額100万円。
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Yの主張:乙債権は500万円→残額200万円。
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判断:
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既判力は「相殺に供した額」に限定。
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乙債権の残額200万円については既判力は及ばない。
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結論:Xの主張は正当でない。Yの請求可能。