はじめに

本記事では、私が受験した令和7年度琉球大学法科大学院B日程の不合格経験をもとに、特に刑法における敗因を詳細に分析します。同様の試験を受ける受験生にとって、参考になれば幸いです。

 

  再現答案に関する合格者からのフィードバック

受験後、令和6年度司法試験合格者4名(予備試験合格者2名、琉球大学法科大学院卒業生2名)と、実際に同B日程の合格者1名に、私の再現答案を確認していただき、貴重なフィードバックをいただきました。この場を借りて、改めて感謝申し上げます。

 

ちなみに、自分は以前、パンダさんの個別指導を受けていると説明しました。パンダさんの名誉のためにいうと、今回のB日程合格者の方もパンダさんの個別指導を受けていました(すごい偶然)。不合格の要因はパンダさんの個別指導が原因ではないということです。

 

上記5名のアドバイスを受けて、令和7年度琉球大学法科大学院のB日程の不合格の要因は刑法の足切りだと分析しています。後述するように刑法で構成要件該当性が認定できていないために、その後の正当防衛の点数が入っていないことによる足切りです。

 

以下の記事では傷害致死罪の検討が・・・とありますが

そうではなく、上記のとおり構成要件該当性→違法性阻却事由の検討ができていないという基礎的理解ができていないため不合格になったと分析しています。

 

ちなみに、この記事を書いている時点では、成績表は手元にありません。同大学に成績表の開示請求を行っています。

 

  刑法の問題と採点基準

琉球大学法科大学院のHPに掲載されている問題と配点基準を参照しながら、分析を進めます。問題は正当防衛の事例であり、採点基準は以下の通りでした。

 

【採点基準】

(1) 構成要件該当性 20点

(2) 違法性 70点

・正当防衛の趣旨 

・正当防衛の要件 

・「やむを得ずにした⾏為」の解釈 

(3) その他 10点

 

【問題】

 

【自分の再現】

 

  正当防衛の論述について

私の再現答案では、「やむを得ずにした行為」について詳細に論じており、利き腕である右手での攻撃・人体の枢要部たる頭部への攻撃・こぶし大の石といった凶器の使用といった事情も丁寧に拾っています。B日程合格者の答案でも、上記利き腕や人体の枢要部への攻撃については言及していません。

 

つまり、自分の主観としては「やむを得ずにした行為」のところは、かなり書けています。しかし、琉大ロー卒業生の司法試験合格者の方から、構成要件該当性が認定されていない可能性を指摘されました。

 

(4) 一方で、V 女は、X 男から不同意性交等をされそうであったことから、自己の貞操を守るために上記行為を行っているため、かかる行為に正当防衛(36条 1 項)  が成立し、違法性が阻却されないか。


ア. 「急迫不正の侵害」(36 条 1 項)とは、法益の侵害がなされているか、又は間近に差し迫っている場合のことをいう。正当防衛として保護される法益として、生命、身体及び財産のみならず、貞操といった法益も含まれる。


本件の X 男は深夜、X 男から不同意性交等をされそうになっていることから、貞操について侵害がなされようとしている。そのため、本件では「急迫不正の侵害」が認められる。
 

イ. 「自己又は他人の権利を防衛するため」(36 条 1 項)とは、防衛の意思を有することをいう。本件では、前記のとおり V 女は「自己」の貞操を守るために行っていることから、防衛の意思が認められる。


ウ. 「やむを得ずにした行為」(36 条 1 項)とは、防衛行為の相当性を有することをいう。具体的に武器対等の原則を基本としつつ、当事者の性別、体格、年齢、格闘技の経験の有無などを総合考慮し判断する。本件では、V の女はこぶし大の意思を所持しており、X 男はすでであったことから、形式的には武器対等とはいえない。しかし、X 男は、若い男子大学生であり、空手三段の実力があった。そのため、X 男はすででも、V 女を制圧することができ、実質的に武器対等といえる。


また、本件では深夜、X 男から羽交い締めにされ、不同意性交をされそうになった。そして、V 所は助けを求めても誰も助けにくる気配がなかった。このような状況下では、たとえ V 女がこぶし大の石を用いて、X 男の頭部を強打したとしても防衛行為の相当性をみたすものといえる。


そのため、V 女の行為は「やむを得ずにした行為」といる。

 

B日程合格者の答案では、客観的・主観的構成要件を明確に認定した上で違法性阻却事由を検討しており、私の答案との間に大きな差があったと考えられます。

 

また、私は罪名を「殺人罪」としましたが、本問では殺意の認定が微妙なラインでした。主観面の検討を適切に行えば、殺人罪の検討ルートが誤りだと気づけたと思います(後述する個別指導による添削での指摘などを受けて)。司法試験合格者の方の意見も踏まえ、傷害致死罪で検討する方が適切だったと反省しています。

 

さらに、当時の私は刑法の対策が不十分で、答案作成の基礎力に欠けていました。後に個別指導を受けた際にも、主観面の認定(故意の認定をよく落とす)ができていないと指摘されています。予備校と独学での学習では、答案の癖や改善点に気づくのが難しいという課題も浮き彫りになりました。

 

ただ答案を書くだけでだめで、合格者などにちゃんと答案を見てもらうことが必要だと感じました。この答案を書くという作業で身につく能力もあります。ただ、独学で学習をしていると、できるところとできないところのムラがどうしてもでてしまいます。

 

例えば、前記のように自分の答案は「やむを得ずにした行為」のところは、それなりによく書けているのに、刑法の基礎的な理解である構成要件該当性→違法性阻却事由の検討ができないということになります。

 

また、出題趣旨にも「V女の構成要件該当性を論じる必要があり」と明記されていることから、構成要件該当性の判断ができていなかったことが、刑法での足切りに繋がったと結論付けます。

 

つまり、構成要件該当性の認定ができていないため、その後の正当防衛以下の点数が入っていないということです。そのため、刑法で足切りになったと分析しています。

 

  今後の対策(予備論文も見据えて)

  • 刑法の基礎力強化: 特に構成要件該当性に関する理解を深め、正確に認定できるよう練習を積みます。
    • この点は、個別指導の講師から大塚刑法基本刑法読込講座を勧められ、同講座を何周かして、刑法の問題集や予備の過去問も一通り解きました。
    • 次回のC日程では、その結果がどう出るか楽しみではあります。
  • 答案作成の基礎力向上: 答案構成や論理展開を丁寧に学び、司法試験合格者などからフィードバックを受けながら改善します。
  • 客観的な視点の獲得: 自分の答案を客観的に評価し、問題点や改善点を見つける目を養います。

今回の失敗を糧に、より一層努力を重ね、次回の試験では必ず合格を勝ち取ります。