そして人となる・・・・・2013.7 NO7
沖縄修学旅行への想いー大宮北高校での実践ー (2)
ふるさとの海が どこまでも 青いのは
あなたの心が どこまでも深いから
海の青さ それは あなたの心
あなただけが知る 深い色
私の好きな歌の一節だ。八重山諸島の海の色が今でも私の心に沁み
こんでいる。西表島、黒島の人々、何度も訪ねた鳩間島、祭りの原
点を見た小浜島、竹富島、石垣島、そこの人々と共に生活したこと
から、風景の奥にある厳しい歴史と人々の心に触れることが出来た
。きらきらと輝くエメラレルドグリーンの海の中に、苦しみと悲し
みと喜びを溶け込ませながら生きている現実を感じとることができ
た。
一つの場面が今でも心に深く残っている。黒島でしばらく生活し
てなじみになった島のおじさんが、家に招いてくれた。2月だった
と思う。小さな島の家の座敷に真ん中におじさんがそしてその右隣
に男の子が座っていた。精一杯のごちそうが並んでいた。い...つもと違う雰囲気に驚いていると「今日は、よく来てくれました。
こんど息子は本土に就職します。大和の人だから、どうかこの子ど
もたちが無事に過ごせるように一緒に祝ってください」。おじさん
は深々と頭を下げた。私は本土、大和の代表になっていた。いつも
一緒に遊んでいた子どもの一人だったのだ。当時の私にはその親の
気持ちを理解したつもりであったが、子どもを持ち育てた今は、親
としてその切実さが涙がでるほどわかる。あの子は、その後どうな
っただろうか。 しかし、今も就職の厳しさは変わらない。高卒で
の就職率は50%以下である。
72年の3月には石垣島から本土に向かう島中の中卒生徒の集団就
職の船に一緒に乗った。埠頭には石垣中の中学校からブラスバンド
と在校生が見送っていた。にぎやかな演奏とみんなの見送りに甲板
から修学旅行にいくような陽気な姿があふれていた。そのうち船の
銅鑼がなり、蛍の光の演奏が流れてきた瞬間、本土に就職する甲板
の卒業生が号泣し始めた。考えてみても、本土はあまりにも遠い。
見も知らぬ地に行く彼らの心細さ、不安はいかほどであったことか
。
船が離れていく。色とりどりのテープが切れながら青い海に落ちて
いく。埠頭の在校生たちが堤防に向かって走りだし手を振り、指笛
を鳴り響かせた。長い埠頭と堤防の方から聞こえてくる指笛と、甲
板から今にも落ちそうに身を乗り出して鳴らす指笛がエメラルドグ
リーンの海の上を、姿がみえなくなってもいつまでも行き通ってい
た。
こうした場面に高校生が出会うことはないだろう。しかし、風景、
人々の姿から見えるものがある。見ようとさえすれば見ることがで
きる。その体験をしてもらいたかった。
「沖縄には行けない」と決めていたが、高校生たちに沖縄の姿を見
てもらうためならいいだろうと自分に言い聞かせ、23年ぶり沖縄
に行ったのだった。続く
ふるさとの海が どこまでも 青いのは
あなたの心が どこまでも深いから
海の青さ それは あなたの心
あなただけが知る 深い色
私の好きな歌の一節だ。八重山諸島の海の色が今でも私の心に沁み
こんでいる。西表島、黒島の人々、何度も訪ねた鳩間島、祭りの原
点を見た小浜島、竹富島、石垣島、そこの人々と共に生活したこと
から、風景の奥にある厳しい歴史と人々の心に触れることが出来た
。きらきらと輝くエメラレルドグリーンの海の中に、苦しみと悲し
みと喜びを溶け込ませながら生きている現実を感じとることができ
た。
一つの場面が今でも心に深く残っている。黒島でしばらく生活し
てなじみになった島のおじさんが、家に招いてくれた。2月だった
と思う。小さな島の家の座敷に真ん中におじさんがそしてその右隣
に男の子が座っていた。精一杯のごちそうが並んでいた。い...つもと違う雰囲気に驚いていると「今日は、よく来てくれました。
こんど息子は本土に就職します。大和の人だから、どうかこの子ど
もたちが無事に過ごせるように一緒に祝ってください」。おじさん
は深々と頭を下げた。私は本土、大和の代表になっていた。いつも
一緒に遊んでいた子どもの一人だったのだ。当時の私にはその親の
気持ちを理解したつもりであったが、子どもを持ち育てた今は、親
としてその切実さが涙がでるほどわかる。あの子は、その後どうな
っただろうか。 しかし、今も就職の厳しさは変わらない。高卒で
の就職率は50%以下である。
72年の3月には石垣島から本土に向かう島中の中卒生徒の集団就
職の船に一緒に乗った。埠頭には石垣中の中学校からブラスバンド
と在校生が見送っていた。にぎやかな演奏とみんなの見送りに甲板
から修学旅行にいくような陽気な姿があふれていた。そのうち船の
銅鑼がなり、蛍の光の演奏が流れてきた瞬間、本土に就職する甲板
の卒業生が号泣し始めた。考えてみても、本土はあまりにも遠い。
見も知らぬ地に行く彼らの心細さ、不安はいかほどであったことか
。
船が離れていく。色とりどりのテープが切れながら青い海に落ちて
いく。埠頭の在校生たちが堤防に向かって走りだし手を振り、指笛
を鳴り響かせた。長い埠頭と堤防の方から聞こえてくる指笛と、甲
板から今にも落ちそうに身を乗り出して鳴らす指笛がエメラルドグ
リーンの海の上を、姿がみえなくなってもいつまでも行き通ってい
た。
こうした場面に高校生が出会うことはないだろう。しかし、風景、
人々の姿から見えるものがある。見ようとさえすれば見ることがで
きる。その体験をしてもらいたかった。
「沖縄には行けない」と決めていたが、高校生たちに沖縄の姿を見
てもらうためならいいだろうと自分に言い聞かせ、23年ぶり沖縄
に行ったのだった。続く