朝会社に出掛ける際、自宅マンションのエレベーターに途中から乗って来られた年配の女性から
「TV観ましたよ。凄い立派なことをなさっているのですね」
と声を掛けられた。
4年弱のサラリーマン生活を終え、久留米に戻る際に買った中古マンション。3棟で計300世帯が暮らす大型コミュニティだ。もう27年も住んでいるが、失礼ながら同じ棟のこの方がどなたか存じ上げない。
話し掛けられることは少ないから、心の準備が出来ておらず、
「あ、、はい、恐縮です」
と答えるのがやっとだった。
幼少時代から高2まで暮らした故郷の安武団地も約300世帯だが、知らない人はほとんどいないくらいの街だった。その為か、だれも家に鍵を掛ける習慣がなかった。
今は狭くて古いがセキュリティもある程度は担保され、周りとの関係性の希薄さが私には住み良いマンションなのだが、意外と自分は知られているものだと驚いた。
先日、子育て応援企業として県知事から表彰され、その模様が地元のTVニュースで流れたらしい。その少し前は西日本新聞社の経済部長さんから取材を受け、その内容が二日に亘って朝刊に掲載され、多くの反響があった。
幼少時代から褒められた経験が少ない私にはこんなプラスのフィードバックが嬉しくないと言ったら嘘になる。
しかし、もはや、敷地内で泥酔して千鳥足でうろつくことも、急に催しても、立ち小便(失礼)なんかもできないなー
さてさて、この本との格闘は続いている。
読んでいる時は面白いのだが、これを自分の経営に活かすとなると結構難しい。多分野に亘って多くの重要な経営理論が解説されており、次の理論を読んでいるうちに前の理論を忘れてしまう。オーディオブックでも今、3回目を聴いているがカタカナ語句や英略語がぜんぜん頭に入ってこない。
何度も何度も振り返りながらの読書となり、遅々として進まない。
なので定期的なアウトプットが必要だ。
一方で自社で行っていることの正しさを確認できることもあるし、自分や自社に欠けている事を認識させられることもある。
18章、19章ではどのようなリーダーシップを採れば社員のモチベーションが上がり、組織として高いパフォーマンスを発揮できるかの理想形が示されている。
少し前に読んだニュータイプの時代でも
経営者にとって可変で最も重要な経営資源は社員のモチベーションだと学んだ。
ヒトの能力はそれを導くリーダーの「意味」の与え方によって簡単に増減する。つまり「意味」を与えることによってヒトというリソースから大きな能力を引き出すリーダーこそが大きな経済価値を生みだす。
社員から共感を得て、彼らを奮い立たせることのできるような意味を生み出し、モチベーションを引き出すのがニュータイプのリーダーであると。
職務特性理論によると内発的動機を高める職務特性は以下の5つらしい。
①多様性(職務遂行に多様な能力を必要とすること)
②アイデンティティ(最初から最後まで職務に携われる)
③有用性(他者の生活、人生に影響を与えること)
④自律性(自律性をもって仕事ができること)
⑤フィードバック(従事者が職務の成果を認識できること)
弊社内で考えると営業やディレクターは①~④に比較的該当している。なのでセルフモチベートできる人は嬉々として仕事してくれてる。
一方で、デザイナーや工場の仕事は②、③、④、⑤に欠けると思う。
今取り組んでいるラベルコンテストなどへの参加やQC発表会は有効だと思う。
ただ我が社が組織として決定的に弱いのが⑤のフィードバックだろう。
私も苦手だ。(褒めるのも叱るのも)
良い印刷物、良いデザインだとお客様に認めてもらえた時は営業は工場スタッフやデザイナーに伝えなければならないのだ。
私も誉める、叱るのフィードバックを恥ずかしがらずに(?)もっと表現しなければならない。
加えて、近年、新たに大事になってきているのが「他者視点でのモチベーション」、プロポーシャル・モチベーション(PSM)とある。
これは関心が自身だけでなく他者(顧客、部下、社会等)にも向いているおり、他人に貢献することにモチベーションを見出すことだ。
事例としてリクルート社を挙げてある。
「顧客とのイタコ化」
(さすが一流の学者はメタファーが上手い。)
リクルートはお客様の「不安」「不満」などの「不」の要素を突き止め、それの解消から新しい事業を生み出し続けている。
これについてはこの本に詳しい。まだ本ブログでは紹介していないが素晴らしい本だ。
(社員さんにこの本が私のビジネスモデルの元ネタだとバレてしまう)
弊社で言うならお客様への「お役立ち活動」がこれにあたる。
そして、著者はこの内発的動機とプロポーシャル・モチベーションが共に高い個人が高い創造性やパフォーマンスを発揮すると結論づけている。
そして、これらを補完するのがリーダーシップだ。
途中の議論は省いて結論に行こう。
トランスフォーメーショナル・リーダーシップとシェアード・リーダーシップの組み合わせが最強だ。
トランスフォーメーショナル・リーダーシップ(TFL)とは?ざっくりで言うなら
「明確にビジョンを掲げて、自社や自組織の仕事の魅力を部下に伝え、部下を啓蒙し、新しい事を奨励し、部下の学習や成長を重視する」
そしてこのTFLは今後重要性が増す。
なぜなら、既に人々は物質的に豊かになり、物質的欲求が満たされた人はより精神的な豊かさを求めるようになる。
さらに不確実性が高まってる環境下では単なる将来予測は意味を持たず、むしろ「将来こうしたい」というビジョンを掲げ、周囲を啓蒙することの方が有用だからだ。
そして、シェアード・リーダーシップ(以下SL)。
「グループ内の複数の人間、時には全員がリーダシップを執る」
新しい知は、既存の知と既存の知の新しい組み合わせから生まれる。それには組織内のメンバーの知の交換こそが何よりも重要だ。
あるメンバーが自分がそのグループ(組織)に属しているという心理的アイデンティティを持てるなら、そのメンバーは他のメンバーと積極的に知識を交換する心理メカニズムが働く。
従来の垂直型の組織では、リーダーはグループや組織を「自分のもの」と思えても、フォロアー(部下)はそのようなアイデンティティを持ちにくい。
一方でそのメンバーの全員がリーダーとしての役割を担う場合は、全員が当事者意識をもてる。すなわち全員が「これは自分のグループ(組織)である」というアイデンティティをを持ちやすいのだ。結果として知の交換が積極的に行われるようになる。
そして研究結果から、「SL型の組織で最もパフォーマンスを発揮するの各メンバー(つまりリーダー)がTFLを執った時」ということが実証されたようだ。
つまり、「自分のビジョンは何か」「自分は何者で、何をして生きていくか」を一人一人が深く内省し、そのビジョンを基に啓蒙し合いながらリーダーシップを発揮していけるような組織が最高であると結論づけられている。
今後の知識社会では個人の創造性が重要であり、繰り返すが、
「内発的動機とプロポーシャル・モチベーション(PSM)が共に高い個人が高い創造性やパフォーマンスを発揮する」
では、どのような企業がこの「内発的動機×PSM」の高い人材を生み出せるのか?
著者はそれは「TFLとSLに満ちた企業」だと結論付けている。
SLではチームメンバーの全員がそれぞれリーダーにように振る舞い、互いに影響し合うと学んだ。当然それは個人の内発的動機を高める。
TFL×SLの組織であれば自身も他のメンバーもビジョンを持って、互いに啓蒙・刺激し合うことだから、「彼のビジョンは何か」「彼女が面白いと感じることは何か」を考える他者視点が必要になるので結果としてPSMを高める。
これらをまとめたのが以下の図だ。
カタカナとアルファベットが多く混乱されることだろう。もう少し噛み砕いて平易に解説できると良いのだが、、、力不足です。
弊社では縦割りの組織の他に委員会やプロジェクトなどの横断的組織がある。委員会は会社の課題を解決する為の組織であり、プロジェクトはお客様の課題解決を目指す組織である。これらのリーダーには新卒3年目、中途入社だと2年目から立候補できる。
つまり部門長以外にも多くの委員長やプロジェクトリーダーがいる。さらにこれら多くの委員会やプロジェクト内でも多くの役割分担があり、メンバーの責任感を醸成している。つまりシェアード・リーダーシップ(SL)を比較的多くの社員が持ち易い職場だと言えると思う。
ではそれらリーダーやメンバーが
「明確にビジョンを掲げて、自社や自組織の仕事の魅力を部下に伝え、部下を啓蒙し、新しい事を奨励し、部下の学習や成長を重視する」
状態かと問われれば、まだ不十分であろう。つい私が出しゃばって、各チーム(委員会やプロジェクト)のビジョンまで示したり、新しいことを奨励してしまっている。
ここが改善点である。これが内発的動機を高めきれていない点だと反省させられる。これら小集団のリーダーがビジョンを示したり、新しいことを奨励するというトランスフォーメーショナル・リーダーシップ(TFL)を執れるようにしなけれならない。
また「お客様の不」をヒヤリングし、それをみんなでシェアしCRM上に保存する活動や1週間に一度はお客様のお役に立つ活動を義務付けており、、控えめに言っても「他者視点でのモチベーション」、プロポーシャル・モチベーション(PSM)は一定のレベルにあると思う。
全体として、上の図と比較的近い状態にあると思えなくもない。
ただし、我が社に決定的に欠けているのは「適切なフィードバック」と「さらなる権限移譲」だと理解した。さらに皆さんが内発的動機を高め、パフォーマンスを発揮してもらう為に、フィードバックを恥ずかしがったり、躊躇したりせずに行い、かつもっと大胆に「権限移譲」することが私、そして組織の課題なのだ。
朝のオフィスにて