株式会社 丸信 社長のブログ

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株式会社丸信 代表取締役 平木洋二のブログ
包装資材販売、シール・ラベルの印刷、紙器印刷加工業を営む株式会社丸信の社長のブログです。

今月の輪読会ではドン・キホーテ創業者の安田隆夫氏の『運 ドン・キホーテ創業者「最強の遺言」』を読んでいる。

 

 

大学卒業後、麻雀で糊口をしのぐ生活をで数年送り、無一文から「泥棒市場」というわずか18坪の店を立ち上げ、小売業界の常識を次々と破壊し、一代で売上高2兆円、時価総額2.5兆円規模の世界的流通企業(パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス)を築き上げた希代の経営者による、人生とビジネスにおける「勝利の法則」を語った一冊だ。
最初はギャンブラー的経営者の自叙伝かと思ったが、とんでもない。
 

凄い本だ。
 

著者、ドンキの成功の秘訣は、精緻なマーケティング戦略でもなく、特殊な才能でもなく、タイトルにある通り「運」にあるという。しかし、本書で語られる「運」は、私たちが普段口にするような「たまたまツキがあった」というようなスピリチュアルなものでも、天任せの偶然でもない。経営者として、そして一人の人間としていかに運をマネジメントし、自らの行動によって引き寄せるかという、極めて実践的で泥臭い「科学」であり「実学」だ。

私自身のこれまでの経営体験と照らし合わせても、気づきと深い共感に満ちた読書体験となった。今回は、私への自戒と備忘録を兼ねて、本書から得た「運をコントロールする極意」について、いくつかの重要なトピックに分けてブログに書き留めておきたい。

「運がいい人」とは「運を使いきれる人」である

本書の根底にあるのは、「人によって与えられる運の総量に大差はない」という考え方だ。現実には明らかに運のいい人と悪い人がいるように見えるが、それは与えられた運をどう使ったかの違いに過ぎない。つまり、運がいい人とは「運を使いきれる人」であり、運の悪い人は「運を使い切れない人」、あるいは「使いこなせない人」なのだという。

人生にもビジネスにも、必ず幸運(追い風)と不運(向かい風)が交互にやってくる。ここで重要なのは「幸運の最大化と不運の最小化」である。

人は不運な局面に立たされたとき、なんとか損失を取り戻そうとジタバタと悪あがきをしてしまいがちだ。しかし、下手に動けば傷口はさらに広がる。安田氏が提唱するのは、不運なときは自己抑制し、冬眠する熊のようにじっと耐え忍ぶ「穴熊戦法」である。手持ちの資本(資金だけでなく、気力や体力、ブランドの評判など)を温存し、嵐が過ぎ去るのを待つ。

そして、不運をしのいだ後に必ずやってくる「幸運」の波に乗ったときには、腹八分目で満足せず「圧勝」を目指して一気呵成に攻め込む。ノーアウト満塁なら迷わずホームランを狙い、目一杯の果実を収穫し尽くす。この攻めと守りの強烈なメリハリこそが、運の総量を最大化し、次なる不運に耐えうる頑丈なセーフティネットを築く秘訣だと氏は主張している。ここら辺りはギャンブラーっぽい。

 

運を落とす「他責」と、運を引き寄せる「主語の転換」

では、どのようにすれば「運の感受性(チャンスとピンチを見極めるアンテナ)」を研ぎ澄ますことができるのか。

本書では、絶対にやってはいけない運のキラーとして「他責的な言動」を厳しく戒めている。

失敗したときに「世の中が悪い」「景気が悪い」「部下が無能だ」と他人のせいにする人は、自らを改善し成長する機会を永遠に失い、周囲からの信用も失っていく。信用を失えば、良い情報もチャンスも巡ってこなくなる。他責にした瞬間に、運は完全に逃げていくのだ。

 

私も油断すると、つい「他責」をやってしまう。どんな時でも「責任の源は自分」と思える修行が足りていない。

電信柱が高いのも、郵便ポストが赤いのもすべて社内で起こることは社長の責任であるとは一倉定先生のお言葉なれど、実践するのは容易ではない。

 

そして、この自己中心的なエゴを壊し、運の感受性を最大化するための最大のキーワードが「主語の転換」であるという。

「私が何を売りたいか」「私のやり方が正しい」という『私』主語から、「お客様は何を求めているのか」「従業員が最大限に力を発揮するにはどうすべきか」という『相手』主語へ、思考の出発点を180度転換させる。

安田氏自身、50歳を過ぎてから我欲を捨て、主語を他者に転換した途端に、企業として劇的な成長を遂げたと告白されている。なぜなら、主語を「顧客」に置けば、市場の最前線で起きている生々しい変化(幸運の種や不運の予兆)をフィルターなしで捉えることができるからだ。

これは、当社・丸信が掲げる「お役立ち」の精神、そして「他を益し喜ばすこと」というモラロジーの哲学とも通底している。相手の立場に立ち、お客様の「不(不安・不満・不便)」を解消しようと行動すること。その利他の精神こそが、結果として最も合理的で正確な情報収集となり、運を引き寄せる最強の戦略になると思うのだ。

個運を「集団運」に昇華させる権限委譲

そして、本書の白眉とも言えるのが「個運」を組織の力である「集団運」へと昇華させるという考え方だ。

ドン・キホーテの圧倒的な強さの源泉は、圧縮陳列やPOP洪水といった目に見えるノウハウではなく、その根底にある「大胆な権限委譲」にあると著者は言う。

創業期、安田氏は自身のノウハウを従業員に説明しても全く理解されず、行き詰まってしまったという。そこで苦肉の策として、仕入れから陳列、値付けに至るまで、現場の担当者に権限を委譲(丸投げ)した。

するとどうだろう。従業員たちは「やらされ仕事」ではなく「自分の店」という当事者意識を持ち、自ら考え、判断し、行動し始めた。商売をゲームのように楽しみ、勤勉かつ猛烈な働き者集団へと化していったのだ。

経営者一人の「個運」に依存するのではなく、現場の何千、何万という従業員の情熱と「個運」を結集させることで、個人の力の総和をはるかに超える「集団運」が生まれる。この権限委譲こそが、ドン・キホーテにコペルニクス的転回を与えたのだ。

 この権限委譲と人材育成の重要性について、強烈なシンクロニシティを感じる講演を思い出した。

もう15年か20年前だったろうか、九州に本社を置き、売上高1兆円を超す巨大卸グループを築き上げたある経営者の方の講演を聴く機会に恵まれた。

なぜ彼らはそれほどまでの圧倒的なスケールに成長し、1兆円企業へと上り詰めることができたのか。その秘訣は、精緻なマーケティング戦略でも画期的な新商品でもなく、非常にシンプルで、しかし極めて強力な「ある企業文化」にあった。

その経営者は、静かに、しかし確信に満ちた口調でこう仰った。

「うちの会社がこれだけ成長できたのは、昇進したら即後釜を育て始め、部下が育ったら自分はさらに上の仕事にチャレンジする、この我が社のルールであり企業文化にあります」

長く印象に残っている言葉だ。組織の成長のボトルネックがどこにあるのかを、これほど見事に言い表した言葉はない。

「私がいなければ現場は回らない」と仕事を抱え込む優秀なプレイヤーは、実は組織の成長を止めている。自らの権限を譲り、後進(自分の代わり)を育て、現場を信じて任せる。そうやって全員が上のステージへと押し上げられていく連鎖こそが、「集団運」を引き寄せる絶対条件なのだ。

運の三大条件と「勝つか、学ぶか」

本書では、個人の運を上げる三大条件として「攻め」「挑戦」「楽観主義」を挙げている。

不確実な時代において「リスクを取らないことが最大のリスク」である。闇雲ではなく、現実を直視した上での果敢な挑戦。そして、未来に対して「自分が変えてやる」というポジティブな楽観主義。

安田氏は「仮説は必ず間違える。だからファクトに謙虚になれ」と語る。

挑戦すれば当然、失敗(不運)も伴う。しかし、そこで投資家の藤野英人氏が対談で語っていたように「勝つか、負けるか」ではなく「勝つか、学ぶか」という思考を持てるかどうかが重要だ。

打率(成功率)ばかりを気にして打席に立たなければ、ホームランは永遠に出ない。挑戦して失敗し、そこから学ぶことで、仮説の精度は上がり、数年後には圧倒的な能力の差となって表れる。まずは行動し、その結果(ファクト)に対してどこまでも謙虚に修正を繰り返すことだ。

「業態あって業界なし」の境地

「主語の転換」でお客様の「不」に向き合い、「権限委譲」によって全社員の集団運を爆発させる。

その組織が行き着く究極の姿は、一体どこなのだろうか。

それこそが、「業態あって業界なし」という境地である。

「我々はチェーンストアという『業界』の枠にはまるつもりはない。ドン・キホーテという自分たち独自の『業態(ビジネスフォーマット)』を磨き込み、競争のない世界を創るのだ」と語っておられる。そして見事にブルーオーシャンを築き上げたのだ。

我が社も規模は違えど目指す所は全く同じだ。

長年、包装資材や印刷やパッケージに携わってきた。しかし、自らを「印刷会社」だと定義した瞬間、私たちは「印刷業界」という血みどろのレッドオーシャン(価格競争)に引きずり込まれる。自らを「包装資材問屋」だと定義した瞬間、他社との同質化競争に巻き込まれる。

我が社は印刷会社でもなければ、単なる包装資材問屋でもない。

お客様の「不(不安・不満・不便)」を解消するためであれば、食品のECサイト(九州お取り寄せ本舗)やOEMのマッチングサイトも立ち上げるし、食品検査室も自社内に作る。採用のお手伝いもやれば、補助金の専門家も雇用する。

これらはすべて、「包材屋や印刷屋の常識」から見れば異端かもしれない。

しかし、これこそが「丸信という独自の業態」なのだ。

お客様の課題解決(お役立ち)のために、社員を鍛えながら提供価値を高め続ける、絶えず進化し続ける。これを極限まで磨き上げれば、もはや比較される「業界」など存在しなくなる。これぞ究極の目指す姿だ。我々はもっと尖って良いのだ。

 

本書を読み終え、私は改めて人間として経営者としての未熟さを思い知らされた。

失敗から学ぶことができてないし、取組みをやり切ってない。権限移譲もやってはいるが中途半端かもしれない。時々「他責」の心も顔を出す。この安田氏のように早く達観していれば、もっとお客様のお役に立ち、社員もより幸せにできたであろう。

 

運を天任せにはできない。自ら挑戦し、他者を思いやり、現場を信じて権限を譲り、失敗から泥臭く学び続ける者にだけ、運の女神は微笑むのだ。

「経営者の一歩より、社員の半歩」。

この言葉を胸に刻み、全社員の「集団運」を最高潮に高められるよう、残された時間を努力したい。

 

巻末のエピローグで安田氏はこう語って本書を締められている。

 

(引用はじめ)

 

周囲の人々に興味をもって理解し、優しさと共感をみせることが良運を招く最も効果的な方法なのだ。

だからこそ私はこの本を読んでくれた人たち全員の幸せを、心の底から願っている。ここに書かれていることを明日から実践していけば、あなたの人生、あなたの会社の運気はどんどん変わっていくはずだ。そうして日本のあちこちに一つ一つ、希望の灯がともっていけば、国家の「集団運」も良くなっていくはずだ。多くの人が果敢な挑戦をして運を引き寄せ「オールハッピー」になることを願いながら、ここで筆を置くことにしたい。

 

(引用おわり)

 

著者の人心開発救済的な「祈り」と国家への伝統報恩の心が伝わってくる。

 

著者に感謝し、実践あるのみ。

 

朝の私設図書室にて