2025/8/4付 特許適格性の評価に関する通知 | The U.S. Patent Practice

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2025/8/4付で、Kim特許担当副長官より、ソフトウェア関連の発明を担当する審査官向け(Technology Centers 2100, 2600, 3600)の通知が出されていたようです。

 

https://www.uspto.gov/sites/default/files/documents/memo-101-20250804.pdf

 

基本的には、Alice/Mayoフレームワークに基づく審査基準に沿って審査するにあたり、ソフトウェア関連発明に関して特に注意すべきポイントについて周知し、適切な運用を促すものとなっています。

 

 

特に強調されている箇所を以下に抜粋&翻訳します(Google Translate + α)。日ごろから101条の理不尽を味わっている立場として、よくぞ言ってくれました!といえる内容です。今後の意見書では、メモの一部を使用して反論する予定です。

 

Step 2A, Prong One 関連

精神プロセス(mental process) のグループ化には限界がある (not without limits)。審査官は、人間の精神では実際には実行できないクレームの限定を包含するような方法で、このグループ化を拡大しないよう注意する必要がある。
・・・人間の心の中では実際には実行できない方法でAIを包含するクレーム限定は、このグループには該当しない。

司法上の例外を記載する(recite)クレームと、単に司法上の例外を含む (merely involve) クレームの区別:審査官は、例外を記載したクレーム(更なる適格性分析が必要)と、単に例外を含むクレーム(適格性があり、更なる適格性分析を必要としない)を注意深く区別する必要がある。

 

Step 2A, Prong Two 関連

クレーム全体 (claim as a whole) の分析:Step 2A, Prong Twoにおける分析では、クレーム全体を検討する。追加要素が例外をどのように利用し、または相互作用するかによって、司法例外が実用化に統合される可能性がある。

改良 (improvements) に関する考慮:・・・コンピュータ関連技術において、審査官は、クレームがコンピュータの機能または他の技術もしくは技術分野の改良を反映していると判断し、記載された司法上の例外を当該例外の実際的な適用に統合することにより、Step 2A, Prong Twoにおいてクレームが適格であると結論付けることができる。

・・・審査官は、開示された発明が技術または技術分野を改良するかどうかを判断するために明細書を参照し、開示された改良がクレームに反映されていることを確認するためにクレームを評価する必要がある。

審査官は、クレームの限定を過度に単純化し (oversimplify) 、「適用する (apply it)」という考慮事項の適用範囲を拡大しないように注意する必要がある。(筆者注:抽象的アイデアをコンピュータに単に「適用する」だけでは通常適格性を有しない)

さらに、審査官は、「適用する」という考慮事項が、しばしば改良に関する考慮事項と重複することに留意する必要がある。これら2つの考慮事項を評価する際に、審査官は以下の点を考慮する:
1. クレームが解決策または結果のアイデアのみを記載しているかどうか。すなわち、クレームが課題の解決策がどのように達成されるかの詳細を記載していないか、あるいは、クレームが課題に対する特定の解決策または所望の結果を達成するための特定の方法を網羅しているか。
2. クレームが、コンピュータまたはその他の機械を、既存のプロセスを実行するための単なるツールとして言及しているに過ぎないか、あるいは、クレームがコンピュータの能力を改良すること、もしくは既存の技術を改良することを意図しているか。

 

審査全般

審査官は、クレームが特許適格性を有するか否かについて「僅差 (close call)」の判断となる場合、そのクレームが米国特許法第101条に基づき特許不適格となる可能性が50%を超える場合にのみ (more likely than not) 拒絶を行うべきであることに留意すべきである。審査官がクレームの適格性について確信が持てないという理由だけで、クレームを拒絶すべきではない。

 

全体的に、審査基準を厳格に適用せよ、というようなメッセージになっていると私は感じました。このメモの周知徹底により、昨今の一貫性のない拒絶理由が減ることを切に願っています。