ここでいうダイレクト案件とは、日本出願人と米国代理人とが、日本代理人(つまり日本の事務所)を介さずに直接やりとりして手続きする案件のことを指します。これが一般的な呼称なのかはわかりませんが、このようなスキームについては、ある程度知られているところではないかと思います。
米国代理人として、複数のファームでダイレクト案件・非ダイレクト案件を多数扱った経験から、私なりに思うところを簡潔にまとめてみたいと思います。
まず最初に、どちらがよいのか? 結論は、It depends. (場合による)
ダイレクト案件のメリット
- 日本の代理人の手数料が不要
- 意図やフィードバックが直接かつ迅速に伝わる (但し、言語バリアがないことが前提)
- 代理人間の摩擦がない (常に摩擦があるわけではありませんが、可能性として)
ダイレクト案件のデメリット
- 出願人(知財担当者)の負担が増加する。例)IDSの管理、翻訳、出願明細書レビュー、応答指示など
- 知財担当者は、より高い実務的なスキルが求められる(米国案件を直接扱う必要があるため)
- 言語バリア
メリットについては、やはり1のコストが一番大きいでしょうか。一方で、デメリットの1も大きいです(特にIDSの管理=各国OAの管理)。PCT出願を多用しており、各国出願のOAの管理を日本の代理人に丸投げしているようなケースだと、重い腰があがらないのではないかと思います。
また、デメリットの2も無視できません。米国特許の実務能力という点でみたとき、日本の特許事務所の能力は高いといってよいと思います。また、手続き的な知識や経験も蓄積されています。そこに頼れなくなるわけですから、社内手続きの整備や教育など、それなりの施策が必要になります。
このデメリット2に関連して、ダイレクト案件と非ダイレクト案件、私の手元に送られてくる指示の内容を比べると、私の経験上、非ダイレクト案件(つまり日本の代理人経由)の方が、品質のばらつきが小さいように思います。これは私見ですが、事務所の内外担当の方々は、それを専門とされている分、スキルレベルも高くまとまっているのではないかと思います。但し、出願人、国内代理人問わず、米国代理人顔負けの応答案をいただくことも多い点、申し添えておきます。
また、ダイレクトでやりとりする場合、依頼先の米国事務所にヘルプをお願いすれば助けてくれると思いますが、一般論として、何でも無料で請け負ってくれるわけではない点に留意しておく必要があります。
需要があるのかどうかわかりませんが、もし悩まれることがあるようでしたらご相談に乗りますのでお知らせください。