After Final Amendment | The U.S. Patent Practice

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米国での特許実務に役立つ情報を発信しています。

本ブログでも AFCP2.0終了に関するエントリで取り上げたことがあるのですが、Final Office Action (いわゆる最後の拒絶理由通知) が発行された後のクレーム補正の要件についてまとめておきたいと思います。(なぜ今なのかは後程コメントします)

 

まず、規則上認められている補正は以下の通りです。

 

37 CFR 1.116(b)

(1) クレームを削除するか、以前のオフィスアクションで明示的に示された形式要件に従う補正を行うことができる。

(2) アピール (審判)の際に検討するために、拒絶されたクレームをより適切な形式で提示する補正を容認することができる。

 (3) 再審査中の出願または特許のメリットに関する補正は、補正が必要であり、以前に提出されなかった十分かつ十分な理由を示すことで容認することができる。

(2)の具体的な例としては、権利範囲を変えない態様で、従属クレームを独立クレームに記述し直したり、文言を明確にするといった形式的な補正が挙げられます。

 

ここで、重要なポイントは、アフター・ファイナルにおける補正は、出願人の権利として認められているわけではない点となります。

 

MPEP 714.13(II)  ENTRY NOT A MATTER OF RIGHT

出願人は、権利として (as a matter of right) 、最終的に拒絶されたクレームを修正したり、最後の拒絶後に新しいクレームを追加したり (37 CFR 1.116 を参照)、以前に取り消されたクレームを復活させることはできない

結局のところ、1.116(b)に列挙された補正が受け入れられる (=Enter される) かどうかについても、審査官の裁量に委ねられており、その判断には個人差が生ずることもあり得るということです。

 

とはいえ、クレームの削除や、クレーム表現・誤記の修正については、受け入れられる可能性が高いです。一方で、以下のような実体的な補正は、基本的に認められません。

  1. 明細書から新たな構成要素 (new issue) を導入することによる限定的減縮
    • クレームの追加やクレームの範囲の拡張は当然不可
  2. さらなる審査やサーチが必要となる補正
  3. アピール開始後の補正

1. については、AFCP 2.0を利用すれば認められることもありましたが、AFCP 2.0 なき今、ほぼ不可能となってしまいました。

 

また、1. と 2.と関連して、従属クレームで既に審査されている限定を導入する補正でも、場合によっては、さらなる審査が必要になると判断され、受け入れられないことがあります。

 

ここで、本日のエントリを書くに至った理由なのですが、許可可能と判断されている従属クレームを独立クレームに併合する補正について、この2の理由により、認められないケースがありました。

 

このケースでは、従属クレームに記載された特徴が独立クレームに記載されることで、その特徴と他の従属クレームの要素との新たな組み合わせについて、記載要件などの審査が必要となると判断されました。

 

対応としては、(1)RCEを提出して補正クレームを審査してもらうか、(2)許可可能な従属クレームを独立クレームに書き換え、その従属クレームに従属するクレームを除く、他の全ての従属クレーム(と独立クレーム)をすべて削除する補正書を改めて提出するか、の二択になります。

 

(特許庁長官に Petition を出して手続き的な瑕疵を争うこともできますが、上述の通り、審査官に認められた裁量と、妥当と言わざるを得ない理由(新たな要素の組み合わせによる特許要件の審査)により、良い手とはいえないと考えます)

 

このようなケースを避ける対策は・・・思いつかないのが正直なところです。ファーストOAにおける補正や新しいクレームの追加の結果、許可可能なクレームが得られるわけですから、その許可可能なクレームに記載された特徴で独立クレームを補正して、クレームセットごと許可にもっていくのが通常のプロセスだと思います。

 

上述のような問題が毎回発生するとは思いたくありませんが、AFCP 2.0なき今、珍しくなくなる可能性もあります。もしこのようなケースに遭遇したら・・・お金を払ってすべてのクレームを生かすか、お金は払わない代わりに一部の従属クレームを諦めるか・・・代理人としても心苦しいところなのですが、決断が求められる点、ご留意ください。