以前、どこかでまとめたような気もするのですが・・・少し前のOAで審査官から誤った指摘を受けたので、本エントリでまとめておきます。(将来、関連するエントリが見つかったらリンクを追加しておきます)
Conditional Limitations (Contingent Limitationsとも呼ばれる、ここでは条件付き限定とする) とは、if や when などによって条件が指定され、その条件が満たされた場合にのみ、対応する特徴が実行されるような内容のクレーム限定を指します。
例)A method comprising:
...
perform step A if a first condition happens;
perform step B if a second condition happens;
...
upon receipt/input of や after のような使った表現に対しても、条件付き限定とみなす審査官もいます (if や whenの場合と比べて数は少ないです)。一方、if, whenを使っても、何事もなかったかのように引例を当て込んでくる審査官もいます。
現在の特許庁の運用では、このような条件付き限定を方法クレームで使用すると、Broadest Reasonable Interpretation (BRI) のもと、その限定が無視されます(Patentable Weightなし)。列挙した2つの条件が相互に排他的である場合には、引例にいずれか一方が開示されていれば、新規性が否定され得ます(本ブログのエントリ「Sierra Wireless v. Sisvel:Conditional Limitation」参照)。
この条件付き限定について記載されたMPEP(審査便覧)の対応箇所の日本語訳・筆者修正版は以下の通りです。わかりやすさ重視で積極的に変更しているので、より厳格な内容については原文をご参照ください。
MPEP 2111.04 II. Contingent Limitations
条件付き限定を含む方法・プロセスクレームの最も広範な合理的解釈 (BRI) においては、実施されなければならない必須のステップのみが要件となり、条件が満たされていないことを理由として実施される必要のないステップは要件とならない。
例えば、第 1 条件が発生したときに step A を実行し、第 2 条件が発生したときに step B を実行する方法クレームを想定する(筆者注:上のクレームの例参照)。
クレームされている発明が、第 1 条件及び第 2 条件の何れの発生も伴わずに実施可能である場合、BRIにおいて、step A 及び step B は何れも要件とならない。
クレームされている発明が、第 1 条件の発生のみを必要とする場合には、step A が要件となる。
クレームされている発明が、第 1 条件及び第 2 条件の両方の発生を必要とする場合には、step A 及び step B の 両方が要件となる。
条件が満たされる場合にのみ実行される機能を有するシステムクレーム(若しくは装置・製品クレーム)のBRIにおいては、そのような機能を実施するための構造が要件となる。システムクレームの解釈は方法クレームの解釈とは異なるが、これは、条件が満たされ、かつ、機能が実際に実施されているか否かに関係なく、クレームされている構造がシステムに存在しなければならいことを理由とする。
方法クレーム及びシステムクレームの両方の文脈における条件付き限定の解析につ いては、Schulhauser,Appeal 2013-007847 (PTAB April 28,2016)を参照のこと。
なお、訴訟におけるクレーム解釈において、方法クレームで if などの条件節を記載しても、その限定すべてが考慮されるパターンもあります。Hytera Communs. Co. v. Motorola Sols., Inc. (Fed. Cir. 2021)
機会があればこちらも取り上げてみたいと思います。