機械翻訳の精度 | The U.S. Patent Practice

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長くにわたって、日本語で書かれた特許明細書を英文に翻訳するため、さまざまな翻訳ソフト/サービスを試しています(正確には、所内の方に試してもらっています)。

 

この試みは、翻訳会社に依頼して、機械翻訳を使って訳文を仕上げてもらうのではなく、自分たちで翻訳エンジンにかける部分をところから始めています。

 

しかしながら、これがなかなか、すんなりといきません。最近の生成AI発展の流れで、もうAI翻訳でよいよね、といったこともよく耳にします。しかしながら、私が確認する限り、少なくともエンジンにかけっぱなしでは、まだ使い物になりません。ポストエディターの求人が存在することからも、これは事実だと思います。

 

何がダメかというと、一番の問題は、用語の統一性です。符号のありなしにかかわらず、いろいろな表現がブレます。特に、符号付で定義されている要素名がぶれてしまうと、そのままでは明細書としては使えません。この点、エンジンのベンダーに問い合わせると、必ず返ってくるのが、「機械翻訳の特性」というものです。明細書書きとして最初に習うのが用語を統一することだと思っているので、非常に相性の悪い特性だと思います。

 

つまり、出来のよい機械翻訳による訳文を持っているとしたら、それはポストエディター(=翻訳者)の努力のたまものということです。翻訳者の皆様、この場を借りてお礼申し上げます。

 

結局のところ、今も変わらず、担当領域に明るい翻訳者の方をみつけて、継続的に翻訳をご担当いただくのが、英文明細書の品質向上の最善策といえます。

 

※一応、フォローしておくと、用語統一(と冠詞と数詞)の問題を除けば、市販のエンジンそのままでも良い訳文が出力されます。私が言いたいのは、実用に耐える英文特許明細書は、人の関与なしに仕上がらないということです。機械という言葉に惑わされがちですが、機械翻訳の品質はばらつく可能性があり、翻訳会社に依頼する際にも、担当者を固定してもらうなど、工夫が必要と考えます。

 

竹内茂樹@シリコンバレー / 米国特許弁護士 (CA), 日本国弁理士さんをフォロー

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