日本の実務家の方から、子出願と譲渡証 (assignment) 登録について質問を受けましたので、関連するルールをまとめておきたいと思います。
子出願と譲渡証については、MPEP 306に記載があります。その内容を表にまとめてみました。
分割出願 (divisional application) や継続出願 (continuation application) では、親出願と同じ内容を開示していることから、譲渡証を改めて提出しなくても、親出願の譲渡証が有効とされています。
一方、一部継続出願 (continuation-in-part application) では、親出願に対して何らかの新規事項 (new matter)を追加することになるため、その追加発明にかかる権利についての譲渡証が必要となります。ただし、例外があり、企業など、譲受人 (assignee) が出願人である場合には、発明者から譲受人への権利移転は出願時点で明らかなため、提出を省略できることになっています。
以上は、USPTOに対する手続きに関するルールですが、第三者(善意の購入者、Bona Fide Purchasers (BFP))対抗要件と区別して考える必要があります。
譲渡、付与又は移転を構成する権利は、その書面が、その日付から3か月以内又は当該後の譲受若しくは抵当設定の日より前のいずれか早い時点までに米国特許商標庁に記録されない限り (unless it is recorded)、善意にして有償の後の譲受人又は抵当権者に対しては無効となる。
上の表にあるように、分割出願、継続出願、一部継続出願それぞれの場合において、手続き上、譲渡証の提出が省略可能ですが、このまま譲渡登録をしなかった場合、公的な譲渡記録データベース上で、これら子出願と譲渡証とが関連付けられないことになります。この状態で、第三者に対抗するための要件、すなわち擬制告知 (constructive notice) がなされているのかという論点があります。
親出願との関係は、例えばPatent Centerの情報を参照すれば調べられるはずなのでconstructive noticeあり、という主張は可能かもしれません。また、分割出願・継続出願については、MPEP306が「(親出願の譲渡証が)有効」といっているのだから有効という主張もあり得るかもしれません。
いずれにしても、法的に曖昧な点があり、将来、争点となる可能性があります。したがって、最も安全なプラクティスとしては、すべての子出願についても譲渡証を登録申請しておくことになります。
コスト削減の目的で、継続出願のケースでは、出願時には譲渡証の登録を保留し、のちに特許になったとき、あるいは権利行使の可能性がみえた段階で検討する運用とするのはありかと思います。
※なお、デューデリジェンスなどで権利関係を調査する際にも、子出願が譲渡証と関連付けられていないと、親出願との関係を辿る必要が生じ、手間(=コスト)が増大する可能性があります。その観点からも、子出願をすべて登録しておくことにメリットはあります。