オフィスアクションにおいて、以下のような記述をみかけることがあります。
優先権書類の認証謄本 (certified copy) の英訳が提出されるまで日本出願日への優先権は完成されない旨の記述があります。
オフィスアクション冒頭に記述されるこのネガティブな文言により、認証謄本の英訳の提出を促されているようにもみえます。この記述をどう受け取るべきか、考え方をまとめておきたいと思います。
米国で日本出願に基づく優先権を主張するために提出が求められるのは、日本の特許庁から発行された認証謄本です。
(3) 長官は、 その基礎となる元の外国出願の願書、明細書および図面についての認証謄本・・・の提出を求めることができる (may require)
(1) 優先権の主張 および 35 U.S.C. 119(b) または PCT 規則17に規定される外国出願の認証謄本は、いずれの場合も、当該出願が係属中である間に提出しなければならない。・・・(例外規定が続く)
通常、この謄本そのものは、優先権書類交換 (Proirity Document Exchange; PDX) プログラムを通じて、電子的に取得されます。(以前、このシステムがうまく動かず、郵送で提出する必要があった時期がありました (過去のエントリ))
一方、認証謄本の翻訳文については、原則、提出は不要とされています。
(3) 英語以外の言語で作成された外国出願について、その英訳は、次の場合を除き、提出を要しない。
(i) 当該出願が、本章 § 41.202 に規定されるインターフェアレンス(干渉)手続、又は本章第 42 部に規定される derivation手続に関与している場合。
(ii) 審査官が引用する引用文献の日付を克服するために必要である場合。
(iii) 審査官により特に要求された (specifically required) 場合。
実際、これまで多くの特許出願が、翻訳文の提出なしに許可されるに至っています。
では、翻訳文の提出が必要となるのはどのようなケースなのでしょうか。
典型的には、上記の (ii) 項にあるように、優先日から米国出願日までの間に開示された先行技術文献による拒絶を回避する場合となります。例えば、標準規格に関連する特許出願のように、似た時期に同種の出願がなされることの多い分野で、翻訳文提出が必要となるケースが多いように思います。
ここで、冒頭のオフィスアクションの記述の問題に戻るのですが、その記述は、上記 (iii)項の、「審査官により特に要求された」ケースにあたるのでしょうか。もしそうであれば、翻訳文を提出しなくてはいけないことになります。
正直なところ、明確に答えるのは難しいのですが、上記のケースでは、審査官により翻訳文が要求されていると解釈するほうが無難といえます。(上述のオフィスアクションの記述の後半では "the certified copy of the instant application"となっており、表現が不正確ではありますが)
この場合、翻訳文とともに、「認証謄本の翻訳が正確である」旨のステートメントを提出する必要があります。このステートメントは、翻訳を担当した翻訳者か、日英に堪能な確認者(アトーニーやエージェント、担当者など)による署名が必要です。
確認者によるステートメントの例:
CERTIFICATE OF ACCURACY
I, [Legal Name], certify that I am competent to translate from Japanese into English, and that the attached document is a true, accurate, and complete translation of the document described as:
Certified Copy of Japanese Patent Application No. [Number]
To the best of my knowledge and ability, the translated text correctly reflects the content and meaning of the original source text.
Date: [MM/DD/YYYY]
Signature: [Signature]
Name: [Legal Name]
