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The U.S. Patent Practice

米国での特許実務に役立つ情報を発信しています。

委任状 (Power of Attorney) への出願人の代表者による署名や、発明者による宣誓書・譲渡証への署名は、手書きではなく、電子的にタイプした英文のフルネームの前後をスラッシュで囲む "S-Signature" で行うことができます。

 

例:/Shigeki Takeuchi/

 

37 C.F.R. 1.4 (d)(2) S-Signature

S-Signatureとは,フォワード・スラッシュの間に挿入されている署名であって,本条(d)(1)に定義される手書き署名ではない。 . . .  特許出願,特許又は再審査若 しくは補充審査手続に関する添付物として特許商標庁に提出される通信であって,紙面によるもの又は§1.6(d)に定めるファクシミリ送信によるもの又は§1.6(a)(4)に定めるUSPTO特許電子出願システムによるものは,本条(d)(1)に定めた方式により,本人自身による署名 (すなわち,手書き署名)の代わりにS-Signatureによる署名をすることができる

このようにすることで、(1) 知財担当者から発明者へフォームを送信 (2) 各発明者がフォームを印刷し、署名し、スキャンしたものを返送、というステップの一部が省略され、署名のための作業を電子的に完結することが可能となります。 

 

気を付けておくべき点は以下の通りです。

 

・S-Signature の近くに、英文タイプした名前が別途必要です(上の私の例だと Shigeki Takeuchi)。冗長にも見えますが、S-Signatureはあくまで署名であり、タイプした名前が別途必要となります。(とはいえ、既存の委任状や宣誓書には、もともとタイプした名前の欄がすでにあると思いますので、特に問題にはならないかなと思います。)

 

・S-Signature はあくまで手書き署名の代わりのため、本人が直接タイプする必要があります。本人の了解を得て第三者が代わりにタイプしても特許庁にはバレませんが、そのような署名は無効となります。また、規則上、その第三者は、本人の署名であることを示す証拠を保持しないといけないことになっています。

 

37 C.F.R. 1.4 (d)(5)(ii)

(ii) 署名に関する証明

. . . 第(d)項(2)、(3)、または(4)項に基づき他人が署名した文書を提出する者は、当該文​​書に署名のある者が実際に署名を挿入したと信じるに足る合理的な根拠を有する義務があり、当該署名の真正性を証明する証拠を保管しなければならない . . . 

この要件は、通常の署名依頼プロセス、すなわち、電子メールで署名者本人に(出願書類とともに)フォーム(署名欄のみブランク)を送信し、本人からの返信でS-Signature付フォームを受信し保管することにより満たすことができます。

 

私が担当させていただいている日本発の案件の多くも、手書き署名によるものが大半を占めています。リモートワークも一般的となり、プリントアウトとスキャン作業が億劫な方も多いと思います。そのような方は、ぜひS-Signatureの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

 

なお、S-Signatureの S は何の略なのかという疑問について、オフィシャルな説明はみつかりませんでしたが、一説によると、一部の連邦裁判所において同様の目的で使用される /s/ (signed) という表記に由来するとのことでした。