不安研究CACE-11 不安のない世界が実現したらどうなるか?後編 | 石読みと人間観察ラボ
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不安とは―
ふ‐あん【不安】
[名・形動]気がかりで落ち着かないこと。心配なこと。また、そのさま。 日常に潜む漠然とした不安感は、人の精神を脅かし、安定感を無くしてしまい、それは幸福とは程遠い精神状態へとなってしまいます。そんな不安を研究し、どのように対処していけばよいか、安心感を得られる方法はあるのかを調べることを目的として、ウィリアム・D・上原先生よりアドバイスをいただき、”不安研究所”を立ち上げさせていただきました。 今回は不安のない世界にいたとしても生じる不安をどうすればよいか、について考えていきたいと思います。 不安になる要素を高い純度で取り除いた世界に住めば、ほとんどの不安は無くなって、それとも、やはり不安というものは生じてしまうのか? 星新一氏と、伊藤計劃氏の作り上げた世界の中では、人々は穏やかに安全に過ごしていました。けれども、やはり不安を感じる人が出てきて、幸せとは言えない結末へ進んで行ってしまう。あるいは、幸せや不幸よりも無味乾燥な結末を迎えてしまう。 皆がこうあると良いと思えるような、不安を解消して幸せになる方法が、本当に存在するのでしょうか?今はまだ手探りの状態ですが、そこへと行きつけるようなヒントを探しながら、進めていきたいと思います。 前回は小説から抜粋させていただいたのですが、今回は漫画から引用させていただきます。手塚治虫氏の『ブラックジャック』はご存知でしょうか?どのようなケガや病気も治してしまう、天才的な腕を持つ無免許のお医者様なんですが、その漫画のエピソードの一つに、不安を取り除くにはどうすればよいかのヒントとなるようなお話がありました。今よりもずっとロボットなどの機械開発が進み、医療機関のコンピュータの制御基板に人工知能を搭載し、その巨大なコンピュータ一台で患者さんの問診、投薬、手術などの医療スケジュールを100%完璧にこなせるようになりました。 そのコンピュータを作った博士はその研究と結果を誇りに思っており、人工とはいえ自分で考えることのできるコンピュータは、ところが患者さんは、今まで生身の人間にしてもらっていたことをコンピュータで制御しながらロボットにしてもらう事に、一抹の不安を覚えます。ロボットに自分の世話を何から何までしてもらうという未知の経験であるという事と、今まで何のトラブルもなく、100%の結果を出してきたロボットに対して、自分のときに初めて事故を起こすのではないかと懸念してしまうのです。 ということは、人は100%安全な状況にいたとしても、それが自分で信頼と責任をもって選択したのでなければ、安心はできないという事です。自分の意思とは関係なく与えられた環境や物に対しては、不安や疑惑が生じやすいのかもしれません。 制御コンピュータにお世話されている患者さんが、自分が信頼して体を預けられたのはブラックジャックただ一人だというところで、コンピュータの自信は揺らぎ、自らの手で患者さんを巻き込んでストを起こしてしまいます。そしてブラックジャックという医者をここに呼んで欲しいと要望するのです。 この物語の根底にあるテーマは、”信頼”だと私は思っていて、コンピューターは自分には向けられない信頼というものを知りたくて、ブラックジャックの深層心理を探ろうとします。対するブラックジャックはコンピュータの人工知能に真摯に向き合い、自分なりの誠意を持って 不安というのは想像力の産物であり、心が不安定な時に生み出される漠然としたネガティブな未来予測でもあると思います。理想は、自己の安定を図ることで、自分で幸せになるための選択が出来るようになること、未来が明るくなるように希望を持てるようになることだと思います。その為には、内なる自分と向き合って信頼関係を築いていくことが大事なのではないかなと思うのです。内なる自分が信頼して自分自身に身をゆだねることが、どうすればできるのでしょうか。 ブラックジャックの『コンピュータとの約束』では、ブラックジャックはコンピュータの要望を、ロボットだから、コンピュータだからと軽く見積もらず、あくまで人に接するのと同じようにコンピュータに接し、愚直なまでに約束を守り通してコンピュータからの信頼を得て、無事危機を救うことができました。 信頼関係を築くのに必要なことは、”約束したことを守る”ということ、そして、”誤魔化しや嘘をつかない”という事です。人間関係を構築するときの基本中の基本ですが、自分自身が対象となる時、周りの空気を読んだり立場を考えることでつい自分を後回しにしたり、誤魔化してしまったりすることがあります。 出来るだけ内観をして自分が本当に思っている事に気づくことで、誤魔化しのない選択が出来るようになっていくでしょう。そしていつしか、自分に自信を持ってその答えを選択する時、不安は消えているのだと思います。オマケ。義勇さんのアンノウン・マザーグースです。帰ってきたアンノウンマザーグース祭り。再開です。 生い立ちや背負ったものが重くて複雑なところもありますが、自分が嫌いな様で自己信頼度高そうな感じがするんですよね。一見矛盾しているようで、彼の中では矛盾していなくて、したたかに自分を貫いているようにも見えて良いです。不安も安心も自分次第で、心の奥底の安堵に気が付いてくださいね。