こだわりのつっこみ -6ページ目

こだわりのつっこみ

素人が音楽、小説、映画などを自己中心的に語ります。

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 「お見合いのことだけどさ……」
 「はい」
 鈴香は神妙な声を出した。
 「親の事情とかもあるんだろうから、やったらどうかな」
 「うん」
 剛平は鈴香と顔を見合わせ、いたずらをそそのかすように言った。
 「それで、そのあとことわっちまえよ」
 鈴香は剛平の目を見つめ、嬉しそうにほほえんだ。
 「はい」
 それから二人ともしばらく無言で、しゃかしゃかと氷いちごを崩すことに専念した。
 陽が落ちるまでにはまだ少し時間があった。
(p224-225より)

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日本におけるパスティーシュ作家の代表的人物である、清水義範さんの短編集間違いだらけのビール選び読んでみました。

パスティーシュとは、パロディのようなもので、文体などを何かに似せて(例えば取扱説明書などを極端にパ ロディ化するなど)つくる小説の分野です。

清水義範さんの作品は、以前からファンで、エッセイなどを含めいくつか読んだことがあったのですが、今回は私にとっては意外なものでした。

というのも、パスティーシュの風味がないものがほとんどで、日常のひとコマやちょっとした恐怖など、どちらかといえば阿刀田高作品を読んでいるかのようだったのです。




今回は1篇ごとに簡単な感想を書くにとどめますが、以下は
ネタバレを含むので、嫌な方は見ないでください。
 









間違いだらけのビール選び (講談社文庫)/清水 義範
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~1回目 2010.12.28~

1.間違いだらけのビール選び・・・3点
 (ビールの商品名の羅列が「あぁ清水さんっぽいな」と思った、唯一パスティーシュを感じさせないでもない作品。これはビールに限らず食品や嗜好品全般に言えるようなブラックなユーモアを感じました。)

2.猫の額・・・5点
 (猫の額ほどの庭を整え、老後の庭いじりを趣味にしようとした男が、猫の糞に悩まされる話。発狂しそうな展開なのに、逆に自然界に対しての畏敬にもっていくとは。恩蔵さん、優しすぎですぜ。)

3.雨・・・6点
 (なんだか恐いラスト。やけに映像が目に浮かびます。崩れてきた土砂から出てきた死体は誰なんだろう・・・)

4.家内安全・・・4点
 (年末多忙を極めるデパート勤めで家族の正月の予定をさして頭に入れてなかった男の正月。家族がいなければ、何もすることがない正月を迎えてしまった彼は、正月三が日をどうすごしたのだろうか。)

5.空白の頃・・・8点
 (確かに、小学生の頃なんて俺も何していたか記憶にない。学校へ毎日通って楽しかった記憶があるんだけど、その時に何を考え、何を思っていたのかなんて断片程度。それを大人目線(+先生目線)で綴っています。子供の頃の感覚がふと甦ってなかなか面白かったです。)

6.二人の女・・・7点
 (分かる~と思ってしまった作品。子供にとっては母親(嫁)、祖母(姑)どちらも好きなんですけどねぇ。しかし、子供ながらに私も母親を応援していました。それがゆえに祖母から敬遠する気持ちをもったことも確かです。ただし、この作品では主人公の女子高生が、むしろ自分は祖母寄りの人間なんだと気づく部分が新鮮です。)

7.ブラッド・ゾーン・・・7点
(発見されれば殺されると思ったウイルスが、脳を侵食して必死に人間を動かそうとする・・・なんだか恐いですね。危ういところで発症は免れますが、その緊迫感がすごく伝わります。)

8.私の中の別人・・・5点
 (虚構と現実。人は誰でも、いくつもの顔を持っていますが、それが度を越してしまうと恐ろしいことに・・・。p192の『見つけたよ』には、美奈子と同じように私も息が止まってしまいました。)

9.青空の季節・・・9点
 (初々しくて、懐かしい物語。裕次郎が流行っていた頃でしょうから、まだギリギリ貞操観念があっていいんでないでしょうか。冒頭で引用したのは、この短編です。色んなコンプレックスも、自分が大好きな女性と思いが通じるってだけで吹っ飛びますよね。それにしても、鈴香の「私のこと嫌いになっちゃったの」っていう言い方、素敵ですね。)

10.島の一夜・・・8点
 (展開はベッタベタ。しかし、終わり方がいい。最後まで描かないところがミソでしょうかね。千秋を通して、研究の楽しさや、当たり前に思っていた無人島の研究所生活も何か変化があるように思えるのです。いやー、それにしても過ちを犯さないところが真面目な先生。)

11.本番いきま~す・・・5点
 (多分そうなんだろうな、っていう感想を持ちますが、まさにその通りなのでしょう。まるで機械的に進行されていくテレビ。自分の時間感覚と実際の時間のズレ。当たり前の光景ですが、それにしてもよくこれを小説にしたなガーン)





総合評価:★★☆
読みやすさ:★★★★
キャラ:★★☆
読み返したい度:
レベル:中学2~3年生レベルなので数時間で読めると思います。


ジャンル:推理物


あらすじ(背表紙から):

When his father is arrested in Dubai, Kareem has to move fast.
He must show that his father is not a thief - and prove that his family is honest.
For Kareem is going to marry the beautiful and intelligent Samira Al-Hussein, and she could never marry someone from a bad family.

So Kareem and his brother get to work quickly - with a little help from Samira.


 面白さ:★★★


※以下、結末まで話します。嫌な方は見ないでください。













The Piano: Level 2 (Bookworms Series)/Rosemary Border
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主な登場人物:

Kareem
…将来有望の大学生。Samiraと婚約するも前途多難。
Samira…名家の女性。Kareemと婚約している。
Sheikh…Kareemの父が勤める会社の長。夫人が宝石を盗まれる。
Omar…Sheikhのドラ息子で、現在はインターネットビジネス会社を立ち上げている。
Ibrahim…Kareemの弟で、兄の手助けを行う心優しき男。


Kareemは、両親から名家の娘、Samiraとの結婚を認められ、自身も大学で優秀な成績を残し、順風満帆な人生を送るものだと思われていました。
しかし、働き者のKareemの父親は、Dubaiで取り引きをしに出かけ、その先で警察に逮捕されてしまいます。
容疑は晴れたものの、真犯人は見つからないまま。そんな状況で娘には嫁に行かすことは出来ないとSamiraの父親は、婚約を破棄します。

なんとか結婚をしたいKareemとSamiraは、真犯人を見つけて父親の無実を証明し、Samiraの父に婚約解消をリセットしてもらうことを決意します。

さて、事件はKareemの父親がDubaiに向かう2週間前に、Salem夫人の宝石類が盗まれたことに端を発します。
その盗まれた宝石の一部をKareemの父親がもっていたのです。
父親いわく、Dubaiに出かける前日にSalem氏の秘書の名で小包と手紙が自分の机においてあり、何が入っているか分からずその手紙の指示通りにしただけだったということです。
結果、秘書はそんな小包は置いていないといい、その小包の中に宝石が入っていたことから、逮捕されたという流れ。

KareemはSamiraと協力し、関係者に事情を聞きまわります。
すると、有力な真犯人が浮かび上がります。
それはSalem氏の息子、Omar
彼は最近インターネットビジネスを始め、何かと最近金に困っていたそう。
小包に入っていた宝石は、盗まれたものの一部だったので、残りはOmarの手に未だあるかもしれないというわずかな望みを託し、Kareemは弟のIbrahimと共にDubaiにあるOmarの会社に清掃員に扮して乗り込みます。

さて、結果はクロ。
Omarは鉢植えの土の中に宝石を隠していました。
Samiraの機転と、Kareemの大胆な行動力により、Omarが宝石を所持していることをビデオに記録、それをSamiraの父親に見てもらうことで、事件が白日のもとにさらされます。
Kareemの父も本当に無罪だということがはっきりし、KareemとSamiraは晴れて結婚の運びとなりました。


感想:

この物語は、純粋な犯人探しというよりも、KareemとSamiraの行動を追うという側面が強いです。
結構Samiraが行動的で、強そうな女性なので、Kareemは色々と今後大変そうだなぁガーン

でも、結構いらないところを膨らませ、ほしい部分がさりげなく触れられている程度だったので、なんか純粋に楽しめたー!って感じはしませんでしたダウン

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 「それよりもまず言いたいのは、わしは現在、桜井さんなどと馴々しく呼ばれることを好まんことを諸君に告げたい。いやしくもデンキチ王国の国王だからな。デンキチ国王、王さま、ハイネス、いやユア・マジェスティとでも呼んでくれなくては、わしは返事をしない」
 「それならば王さま、そのデンキチ王国というのは本当にあるのですか」
 「ちゃんと現実に、堂々と存在する」
 「それは、地球上のどこいら辺りにあるのです?まさかあなたの邸宅だけがその国家なのではありますまいね」
 「いや、今のところはわが国はあまり大きくはない。元は日本領土であった瀬戸内海の、かつてはテング島と呼ばれていた島が、デンキチ王国となったのだ」
(p152より)


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さあ、なんとも愉快な小説、父っちゃんは大変人です。
刊行された年はやや古いのですが、それを差し引いてもなかなかアホな作品に仕上がっています。

さて、あらすじです。
妻と息子と暮らす、ラーメン好きな貧乏人の桜井伝吉は、ある日兄の死により莫大な遺産を相続することになります。
その日暮らしの桜井家が、一夜にして日本有数の大金持ちに。

しかし、相続税により、その7割以上を日本国に納めるにあたり(とはいえ、残った金も相当なものなのですが)、突如、デンキチ王国を日本国内につくることにします。

そんな奇人つくった、デンキチ王国の盛衰記です。


では以下はネタバレ含むので、いやな方は見ないで下さい。







父っちゃんは大変人 (新潮文庫)/北 杜夫
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~2回目 2010.12.15~

さて、あらすじをもう少し細かくネタバレ仕様にして紹介します。

兄の死により、唯一の肉親だった桜井伝吉が遺産を相続し、それまで日々の生活を送るのにも苦労していた桜井家の生活は激動を迎えます。

もちろん、伝吉氏には多くの相続税を納めなければならないということもありましたが、その常人には理解できない思いつきで、どんどん生活を一変させていきます。

例えば、湯水のように金を使って田園調布に豪邸を建設したり、かと思いきやいきなりケチになったり、さらには自ら金を稼ごうとして貧乏時代からの大好物だったインスタントラーメンを開発したり、ホストクラブにホストとして就職したりします。

そして、その思いつきの最たるものが、日本国が出場を辞退したモスクワオリンピックに、選手として出場すること。
そのために、日本とは別の国、デンキチ王国を建国することで出場することを画策します。
日ソ両国の政治家に多額の政治献金を送り込み、何の因果か出場。
もちろん結果はさんさんたるものですが、帰国後は嘲りと賞賛の中、伝吉氏を国王とするデンキチ王国は着々と国家の体を整えていきます。

紙幣を作り、アジアのある地を植民地にするなど、どんどんエスカレートしていく伝吉氏に、最初は静観していた日本国政府も、いよいよ監視の目を強めていきます。
伝吉氏の度重なるこれらの行動に、日本政府は伝吉氏を精神鑑定にかけ、強制的に入院させます。
結果的には精神状態が正常とされた伝吉氏でしたが、日本政府に対する怒りは頂点に達し、突如日本国政府に宣戦布告を行うのです。

ここにおいて、デンキチ王国と日本国政府間の戦争が開始されます。
なんと、知らぬ間にデンキチ王国は植民地で麻薬をつくり、それによる莫大な資金をもとに軍備を調えていたのです。

自衛隊の活躍により、デンキチ王国は陥落。伝吉氏は日本国の裁判にかけられることとなります。
しかし、この戦争において死者は双方一人も出なかったこと、また諸外国が伝吉氏に好意的だったことが伝吉氏に幸いしました。
財産と豪邸を没収する代わりに、無罪の判決が出されます。

最終的には、インスタントラーメンの製造工場のみ所有を許されることで落ち着いた伝吉一家は、過去のような貧乏生活でも、裕福生活でもない、まずまずの生活を送るようになったのでした。


さて、感想です。

冒頭でも言いましたが、アホですニコニコ
国家をつくった理由が、現政権を批判してとか、新たなる理想郷を作ろうというのでもなく、至極簡単に言えば、「思いつき」という点ですべて集約できると思います。

その点で言えば、伝吉氏にとって、オリンピックに出場することと、プロ野球チームの監督になることと、国王になって王国をつくることに、大した差はありません。

そこが、この小説を政治小説とか経済小説にせず、滑稽話に落ち着かせているというところが非常に面白かったです。
逆に変に思想を挟むよりも、リアルな感じもします。

一般的に「国家」と呼ぶには、以下の3つが揃うことが条件となります。
それは、「国民」「領土」「主権」。
このデンキチ王国は、唯一「主権」が伴っていなかった(日本国が許可しなかった)だけで、その「主権」でさえ、諸外国には認められそうになっています。
金の力さえあれば「国民」「領土」が揃うことは、面白いのと同時に、非常に恐い一面があることが分かります。

しかし、プロ野球のくだりがいかんせん長すぎるぐぅぐぅ
野球に興味ない人は、この長い部分で飽きてしまうのではないかと思います。

ただ、総合的にいえば、バカ満載の伝吉氏の思いつきや(特にホストクラブの話)、デンキチ王国VS日本国政府の描写など、皮肉が入りつつ見事に仕上げてしまうところに、楽しさを感じました音譜



総合評価:★★☆
読みやすさ:★★★
キャラ:★★★☆
読み返したい度:
レベル:中学2~3年生レベルで1時間以内に読めると思います。


ジャンル:友情


あらすじ(背表紙から):

A TV programme is looking for young people.
The winners can talk to Leonardo DiCaprio.

'Talk to Leonard! Be on TV! I'm going to win!' says Kara.
But her best friend, Hannah, is the winner not her.
Now Kara wants to ask her friend a very important question.


面白さ:★★★


※以下、結末まで話します。嫌な方は見ないでください。











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内容:
レオナルドディカプリオが大好きなKaraは、友人のMarkHannahをあきれさせるくらい、毎日毎日彼のことを語る高校生。
そんな彼女にディカプリオと会えるチャンスが。
テレビ番組のオーディションがあり、選ばれるとディカプリオにインタビューできるのです。

Karaたち3人は、オーディションを受けます。

そして結果発表の日、電話でKaraに告げられた言葉は、「補欠合格」。
つまり、合格者が病気などで行けなくなったら、代役としてインタビューできるのです。Karaは落胆し、さらにMarkに合格したのは親友であるHammahであることを告げられるにあたり、KaraはHammahの家に向かいます。

もちろん、Karaのお願いは、親友でさらに自分の方がディカプリオが好きなのだから病気だといってキャンセルしてほしい、ということ。
しかし、Hammahもテレビに出演したいので、断ります。
当然、なじるKaraと拒むHammahとの間で、友情が決裂するほどの険悪な雰囲気。

さて、インタビュー当日。
Hammahは会場に向かう前に、Karaの家に向かっていました。
Karaに、病欠ということにするから、自分の代わりに会場に行ってほしいと言うために。
しかし、Karaはあの時のことを誤り、やさしくHammahを会場へと送り出すのです。


感想:
大事なのは、テレビ番組でもディカプリオでもなく、友達

最後はお互いが譲り合い、一番いい方向に向かったというべきでしょうか。

Karaが毎日毎日ディカプリオのことを話すから、Hammahも覚えちゃったんでしょうね目
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 雑然とした台所をゆっくり見まわす。汚れた食器、壁のカレンダー、立ったままのポテトチップスを食べている娘、そして、どっしりと立派な、つやつや光ったチェリーパイ。
 家事は何一つ満足にできないくせに、毎日お菓子をつくるだなんて、そんな風にむきになるなんて、まったくあいつらしい。本でも読んだのかもしれない。ハンドメイドのお菓子が子供におよぼす好影響について。
 僕は静枝が台所に立って悪戦苦闘している姿を想像した。痛々しくて滑稽で哀しくて、僕は百年ぶりくらいに、静枝をいとおしいと思った。許そうと思った。
 
(p151-152より)


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今回は、江國香織さんの短編集、つめたいよるにを紹介します。
短編集ですので、あえてあらすじは書きませんが、この作品集にはかの有名な「デューク」が掲載されています。

10年位前のセンター試験の国語Ⅰの問題文として出題され、試験にもかかわらず会場で涙する受験生が現れた、という伝説の残る、あの「デューク」です。
・・・まあ、私は泣かなかったけれど、あの試験会場で感動した一人ですDASH!

まあまあ、「デューク」は以下に語るとして、個人的に面白かった4作品をチョイスしてみました。
それは、「デューク」、「スイート・ラバーズ」、「子供たちの晩餐」、「さくらんぼパイ」です。

冒頭で引用した文章は、「さくらんぼパイ」の一節であります。



では以下はネタバレ含むので、いやな方は見ないで下さい。






つめたいよるに (新潮文庫)/江國 香織
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~2回目 2010.12.7~

まず、江國さんの作風として、文章がキラキラしているキラキラということがあると思います。
文章が綺麗だとか、整っているとか、そういうことではなく(そういうことも含め)。

短編集では、設定や状況を色々変えながら、そのキラキラをいかんなく発揮していると思いました。

実際、ストーリーはそこまでユニークでもありません

例えば・・・

デューク」は、愛犬のデュークが死に、茫然自失の主人公の女の子の前に、端正な顔の男の子が現れる。デュークは、男の子姿となって、その女の子との最後の思い出づくりをし、女の子にさようならを告げる。

スイート・ラバーズ」は、結婚を間近に控えた麻子が、病室でおじいちゃんと語らう。亡くなったおばあちゃんの生まれ変わりかのごとく似ている麻子。おじいちゃんが亡くなるとき、麻子の中からおばあちゃんが出る。おばあちゃんは、おじいちゃんのそばにいたくて、麻子の中にいたのだ。

子供たちの晩餐」は、両親が子供たちを置いて出かける。母親は完璧な料理をいつも作っているが、そのときも完璧な料理を子供たちに作り置きしていた。両親が出かけた後、子供たちは母親の作ってくれていた料理を庭に埋め、カップラーメンや駄菓子など、体に悪そうな食べ物を楽しそうに食べる。

さくらんぼパイ」は、離婚をし娘を妻にとられた「僕」は娘の求めに応じて、本来なら行くべきでない、元妻と娘の家に向かう。妻が部屋に閉じこもり、出てこないのだ。離婚以来、料理下手にもかかわらず毎日娘にお菓子をつくっていたが、娘がチェリーパイを食べなかったからだ。「僕」はチェリーパイを食べ、娘を1日預かると言い、「パイおいしかった」との言葉を残し、部屋を出る。

というように、どこかにありそうなファンタジーであったり、日常のひとコマだったりします。
しかし、江國さんの魔法にかかれば、それは素敵な文章になるのです。

ただし、あまりにもオチがすっきりしない作品も多かったのも事実です。
というのも、清水義範作品などで短編集を多く読んだ私は、短編集には明快なオチを期待してしまうのです。それが、不完全燃焼なものも多かったと感じましたガーン



総合評価:★★★
読みやすさ:★★★★
キャラ:★★
読み返したい度:★★