こだわりのつっこみ -5ページ目

こだわりのつっこみ

素人が音楽、小説、映画などを自己中心的に語ります。

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 今さらあがいても遅いかもしれない、とは思う。たぶん、もう遅い。でもぼくの場合、というか小林真の場合、そんなことを言いはじめたらきりがないくらい、すべてが根本的に、徹底的に遅すぎるのである。
 考えてみると、真にかぎらず、この世にはもう遅すぎることや、とりかえしのつかないことばかりがあふれているのかもしれない。
 とりかえしのつかないスニーカー。
 とりかえしのつかない母親の不倫。
 とりかえしのつかないひろかの体。
 とりかえしのつかない唱子の夢。
 そして、とりかえしのつかないぼくの前世――
(p142より)

 
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映画化やアニメ化されている、森絵都さんの長編小説、カラフルです。
天使なんかが出てくるので、ファンタジーか?
と思わせますが、いやいやその実かなり森ワールド満開の巧みな心理描写や現実問題に引き込まれます。


あらすじです。

何かの罪を犯しぼくの魂がさまよっている中で、突然天使が現れ、魂に向かって妙なことを言います。
天使の名はプラプラ
彼が言うには、ぼくは何らかの大きな過ちを犯したため、輪廻のサイクルからはずれてしまい、二度と生まれ変わることはない。
しかし、抽選に当たったため、下界である一定期間誰かの体を借り、修行をつんでいく再挑戦(ホームステイ)ができる
前世の記憶を取り戻し、自身が犯した罪の大きさを自覚したとき、魂は体から離れて輪廻のサイクルに復帰することができる、とのこと。

気が進まなかったぼくの魂でしたが、3日前に服毒自殺をはかった小林真という中学3年生の体を借り、下界での生活を送ることになりました。

心停止し、死んでしまったと思っていた小林真が突然目を覚ますと(ぼくの魂が入り込んだため)、当然両親は大喜び。
一見普通の家庭に見える小林家ですが、なぜ真が自殺したのかが逆に釈然としません。

するとプラプラは、小林真の記憶を、ぼくの魂に教えます。

真の父親は、利己的。
真の母親は、フラメンコ教室の講師と不倫していた。
真の兄、は無神経な意地悪男。
真の初恋の相手桑原ひろかは、中年の男と援助交際をしていた。
そして真自身、背が低いことをコンプレックスにもち、友達も恋人もいないくらい少年だった。

そんな仮面家族や、めぐまれない境遇を哀れみつつも、ぼくの魂は真の体を借りて生活していくことにします。
ただ、真と違うところは、ぼくの魂は仮面家族の仮面をはぎ、やりたいように生活することを決めたこと。

さて、ぼくの魂は、自身が犯した罪を自覚し、無事に輪廻のサイクルに戻ることはできるのでしょうかはてなマーク


では以下はネタバレ含むので、いやな方は見ないで下さい。








カラフル (文春文庫)/森 絵都
¥530
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~1回目 2011.1.26~

さて、あらすじをもう少し細かくネタバレ仕様にして紹介します。

母親には不倫を知っていると告発し、父親と兄満との関係もギクシャクのまま。
初恋の人ひろかの援助交際もやめさせようとするも失敗。
ただ、学校では早乙女くんという友人ができるまでにその生活を変化させていく真。
しかし、以前の真と変わらなかったことは放課後の部活動にいそしむこと。
真は美術部員として一人で創作活動に励んでおり、その才能も知る人ぞ知るものでした。
真の体を借りたぼくの魂も、同じく絵を描いていくうちに、真が感じていた楽しさを感じるようになります。

状況は、いったんは家庭崩壊寸前に追い込まれるものの、徐々に変化が。

母 → 不倫の陳謝と真の絵に対して希望を持っていた旨の手紙をもらう。
父 → 前の会社では責任をかぶらされて辞めていたこと。現在の勤め先で出世し、ようやく悪いことが終わり、自分のしたい仕事ができるようになったこと。
満 → 実は真の事を考えており、医者になろうと急に進路変更したのも真が甦ったから。
ひろか → 援助交際はやめさせることはできなかったが、彼女も悩める普通の女子中学生の気持ちを持っていた。

さらに家族は真のために美術を学べることのできる高校を真に紹介するなど、家族との関係が改善され、またはコンプレックスを押しのけられるくらい真の持っていた才能に気づく。
そこで、自分の魂はどうなってもいいから、真を生き返らせてあげたい、とぼくの魂は思うようになっていきます。

天使のプラプラに頼むと、1日以内に自分の犯した罪が何だったのか分かれば、真にもう一度真の魂をよみがえらせてあげるとのこと。
今まで分からなかったのに、1日で分かるはずもないと焦るぼくの魂ですが、同じ美術部員の佐野唱子との会話の中で気づきます。自分が犯した罪を。

「ぼくは殺人を犯したんだね」
プラプラは表情を変えなかった。
「ぼくは人を殺した」
「・・・・・・」
「自分を殺した」
「・・・・・・」
「ぼくはぼくを殺したんだ」
くっと唇をかみしめ、ぼくは言った。
「ぼくは、自殺した小林真の魂だ」(p233-234)

そうです、実はプラプラがしていたことは、自分自身がつまずいた場所で、自分自身の問題をもう一度見つめなおすことによって、もう一度自分に戻れるかどうかのテストだったのです。

しかし、それと知った途端、急に真はこわくなります。
今までは仮の(誰か見知らぬ人の)体や環境だと思っていたものが、自分のものだったと知った時、以前の時に戻ってしまわないのか急に自信を失ってしまうからです。
しかし、プラプラはこう言います。
人の人生は数十年。少し長めのホームステイだと思えばいいのだと。
そして、ぼくの魂は、小林真として一歩を踏み出していくのでした。


さて、感想です。

なんとなく、もしかしたらぼくの魂は小林真本人なんじゃないのかはてなマークということはオチを読まずともなんとなく分かりました。
しかし、この作品は別に推理小説ではないので、分かろうがなんだろうが関係なく面白い!!
特にプラプラから聞いていた情報が(これはおのずと生まれ変わる前の小林真が感じていた・記憶していたことなんだろうと思いますが)けっこう勘違いしていて、実際は自殺すべきでなかったこと知り、真に対してぼくの魂が沈痛に真の魂(結果、自分なのだけど)に訴えるところが徐々に顔を現し、それが面白かったです。

「真。やっぱりおまえ、早まったよ。
 すべてが遅すぎるわけじゃない。
 おまえが早まりすぎたんだ・・・・・・。」(p195)

「そういうめちゃくちゃふつうの高校生活を、本物の真にも送らせてやりたかった。あふれる涙を目のふちで押しとどめながら、ぼくは心底、そう思った。」(p198)

恐らく、以前の真は人とコミュニケーションをとることすら拒んでいたのでしょう。
ゆえに誤解をして、自分が必要のない人間であり、さらにその環境すらも恨んだまま死を決意したのでしょう。
しかし、ホームステイ中の真は、内に秘めた芸術の才能をもちながらも、普通の男子中学生として生活します。だからこそ、初めての友人早乙女くんと、自分の絵の才能をいち早く見抜いていた佐野唱子という2人のよき理解者が現れたのでしょう。

特に、この佐野唱子のひたむきな想いと、兄である満の真への愛情、これは本当に美しいキラキラです。

しかし、若干奇妙に感じる部分もあって、それはひろかの存在ガーン
ひろかは真の初恋の相手であり、さらに援助交際をしている子なのですが、あまりにも現実的でないのです。
正直、まずしゃべり方が気持ち悪い。というか、こんな中学生いるのかな?っていう感じです。
さらに、高校生ならともかく、中学生が援助交際っていうのがぜんぜんピンと来ませんでした。
私が田舎に住んでいるからでしょうかね・・・汗

まあそれを差し引いてもこの作品は素晴らしいです。

ここから浮かび上がるのは、人生はリセットできるというなんの根拠もない気休めを提示するのではありません。
ましてや、アニメ版「時をかける少女」のように、上手くいかなかったら時間を戻す的なファンタジーでもありません。

あくまでも今生きている人生において違う角度から見てみたり、自身を変えることで、自分を取り巻く環境も大きく変わったり世界が開けるということを暗示していると思うのです。
つまり、「あぁ、あの時こうだったら・・・」という後ろ向きの視点からではなく、「あぁ、これをこうしていたら・・・」という現実的・前向きの視点なのです。
これって意外と読んだことがあるようでなかったなぁ。
生きていく道に行き詰っても、このように視点を変えることが何か変化をもたらすかもしれませんよねニコニコ


総合評価:★★★★
読みやすさ:★★★★★
キャラ:★★★★
読み返したい度:★★★
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 すると、玄朗は玄朗で、彼もまたずっとそのことを考えていたとでもいった風に、自分はこんどの一行とできることなら一緒に帰りたかった、そしてよぼど健康を理由にその運動をしようと思ったが、やっとのことで思いとどまった。若し行をともにしていたら生命はなかったかも知れない、そんなことを少し陰にこもった口調で話し、
 「われわれの場合だって、無事に帰国できるとは決まっていないんだ。帰国できるかも知れないし、できないかも知れない。われわれはいま海の底へ沈めてしまうだけのために、いたずらに知識を掻き集めているのかも知れない」
(p49より)

 
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壮大な歴史小説、天平の甍を取り上げます。

これは、遣唐使である普照を主人公として、有名な唐の高僧鑑真を日本へと連れて来るということを追った作品です。

遣唐使や鑑真は中学生・高校生で勉強しましたが、しかしただその程度の知識しかありません。
どれくらいの人員で、どんな航路を辿り、そしてどれくらいかかったのか。
さらにどれくらい一生をかけた危険な大航海だったのか。
これを考えると、もっとその遣唐使にかけられた重みを感じることができます。

あらすじです。
天平4年(732)、朝廷で第9次遣唐使が派遣されることが決まり、翌年留学僧として、普照(ふしょう)栄叡(ようえい)が選ばれます。
2人は、大事な使命を告げられます。
それは、日本に根付いていない戒律をもたらしてくれる、伝戒の師を唐で見つけて招聘してほしいということでした。
当時の日本には、仏教において守らなければならない戒律というものが十分に伝わっておらず、それを知らないままに勝手に僧を名乗るものが多かったためでした。

4艘の船、普照らを含め総員約600名を乗せた遣唐使船は、出発。
船では、何を考えているかよく分からず斜に構えている態度の戒融、若く僧というよりも市井の人のような人間的な玄朗という留学僧も乗っており、一行は遭難寸前で唐にたどり着きます。

さて、唐に着いた留学僧たちは仏教盛んな本場、唐の寺院や雰囲気を味わいながらも、同じくかつて留学僧として渡唐してきた日本人たちとも交流します。
しかし、唐からは何も学ばず、日本で暮らしていた方が良かったと述べる景雲や、何十年も写経にのみ費やしてきた業行など、クセのある先達に、普照は困惑してしまいます。
そして唐に来て2年余りの歳月が経ち、戒融は自ら留学僧という身分を捨て、出奔。

そのような唐での様々な出来事に翻弄されながらも勉学に励む普照と栄叡ですが、唐に来て10年近く経ったある日に、帰国しようと思い立ちます。
それは、伝戒できる唐の僧を招聘するという本来の目的を思い出したためでした。

栄叡は業行が写経した経典を日本に持ち帰ることと、伝戒の師を日本に連れて行くことを自らの全力の仕事とすることとし、そこでたどり着いたのが唐の高僧、鑑真でした。


では以下はネタバレ含むので、いやな方は見ないで下さい。







天平の甍 (新潮文庫)/井上 靖
¥420
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~1回目 2011.1.24~

さて、あらすじの続きです。

もともとは鑑真の弟子の数名を日本に招聘しようとしていた普照栄叡ですが、弟子たちが及び腰と分かるや、鑑真自らが渡日することを決します。

ただし、そうは簡単には渡航できません。

そもそも、鑑真は唐の中でも重要な立場の高僧であり、おいそれと唐王朝政府も彼を日本には行かせたくありません。そこで密航の形で行かざるを得ず、当然難破の可能性が高い比較的小さな船を使わねばなりません。
事前発覚によって計画が頓挫したり、せっかく渡航にこぎつけるも遭難したり。
果ては中国南部、現在の海南島にまで流されたり。

そんな中で、鑑真や留学僧達にも変化が。
玄朗は遣唐使船と一緒に日本に帰国したいということで普照らの鑑真脱唐計画からは離脱。
何十年も写経を続けていた業行は、経典が海の藻屑となることはどうしても避けたいということで離脱。
海南島から揚州に戻る際に、鑑真を日本につれて帰ることに一番熱心だった栄叡が病に倒れ亡くなってしまう。
高僧鑑真も日本へ行く決意は変わらないものの、次第に目が見えなくなっていってしまう。

主人公の普照はこれらを目の当たりにし、鑑真を初めとする一行を、日本に連れて帰ることを諦めることとします。
その代わり、業行が写経した経典を日本に運ぶことに全力を尽くそうと決めるのでした。

さて、やがて時はやってきます。
20年ぶりの第十次遣唐使船が唐に到着したことを受け、事態は大きく変わっていきます。
遣唐使節が玄宗皇帝に鑑真を連れて帰りたいとお願いし許可され、普照と業行も遣唐使船に乗って帰れることになったのです。多くの経典を積んで。
まさに普照にとってみれば叶えたかった夢が叶う瞬間です。

普照と鑑真は見事日本にたどり着きます。
が、一方業行の乗った船は阿古奈波(沖縄)を最後に本土の土は踏めず、多大な経典とともに海に沈んでしまいました。


感想で す。

分量は少なめとはいえ、かなり史実に基づいた部分があるので、なかなか読み応えがあります。
歴史に興味がないと、結構きつめです。
あまり会話がなく、淡々と話が進んでいきますが、それが数少ない会話を引き立たせます。

「照は泣いているのか」
と、鑑真は訊いた。
「泣いてはおりませぬ」(p159)

一旦は海南島までの遭難後、師を日本に渡航させることを諦めた普照が、3年ぶりに日本に向かうために師が乗っている遣唐使船で師と再会した翌朝の会話です。
普照は泣いていてのですが、その涙が様々な思いを含んでいることをうかがわせ、それが鑑真の言葉によって包み込まれているという感じが十分に伝わります。

そして、普照・栄叡・戒融・玄朗・業行といった留学僧の性格がそれぞれ異なっていて、さらにそれぞれ納得させる生き方をしているところに、人間の面白さがうかがえます。

主人公の普照には、それらしい主張や思想があるようには感じられませんでしたが、最後に日本で戒律に関しての討論を日本の僧と討論するに当たり、完全に論破します。
それだけで、熱心に勉学に励み、唐に渡ったことで様々なことを吸収していったことがよく分かります。

栄叡は頑なに戒律を授けられる僧を連れてくることという重要な任務を最後まで遂行しようと尽力します。
最後は客死してしまいますが、それでも普照の親友ともいえる彼の行動は、普照に影響を及ぼしています。

戒融は個人的に好きな人物の一人です。
登場こそ少なめですが、彼の普照に問いかける言葉一つ一つが重い
先進国唐に辿り着いて仏蹟などに関心を奪われていく留学僧の中にあって、戒融は唐土に群がる飢えた難民を見ています。
さらに経典の語義を研究している人たちに対し、釈迦の教えはもっと大きなものがあるといいます。
「机の中にかじりついていることばかりが勉強と思うのか」(p30)
という言葉が一番印象的です。

玄朗は、僧としては失格かもしれないけれど、一番人間らしい性格をしているように思えます。
唐に向かう際の何日も続く荒波に自分自身を励ます言葉を一人ごち、いち早くホームシックにかかり、と思いきや還俗(僧を辞めて一般の人になること)して唐の女性と結婚しているというなんとも嫌いになれない性格。
なんだかんだで唐に一番馴染めるのは彼のような性格なのかもしれません。

そして業行。この人物には感情移入をせずにはいられません。
まずは彼の思想としてのこの言葉。
「・・・・・・自分で勉強しようと思って何年か潰してしまったのが失敗でした。自分が判らなかったんです。自分が幾ら勉強しても、たいしたことはないと早く判ればよかったんですが、それが遅かった。経典でも経疏でも、いま日本で一番必要なのは、一字の間違いもなく写されたものだと思うんです。・・・・・・」(p45)
業行も恐らく遣唐使船に乗って唐土を踏んだ時には熱心に勉強したことでしょう。そして日本のため、自分の名誉のために何か大きいことをしようとも思ったことでしょう。
しかし、いち早く自分の限界を察し、同時代や後世の優秀な人に託すということに至るまでに、どれくらいの葛藤や苦悶があったのだろうかを思うと、非常に苦しくなります。
それが実を結ぶと思った遣唐使船での帰国も、最後は不可能となっており、彼の何十年かは一体なんだったのだろう、翻って彼の人生とは何だったんだろうという無常がひしひしと伝わりました。

この本は、若いときにももちろん何かを得れるとは思いますが、ある程度年をとってから読み返すと、人生について考えることができるのではないでしょうか。
名作です!!



総合評価:★★★★
読みやすさ:★☆
キャラ:★★★
読み返したい度:★★★★★
レベル:中学2~3年生レベルですが、若干長めなので1~2日かかります。


ジャンル:ヒューマン・青春


あらすじ(背表紙から):

Mary Lennox goes to live with her uncle in a big, old house in the country.
There are many gardens round the house.

One day Mary finds a garden that has high walls and no door.

What is the secret of the garden?


面白さ:★★★★☆


※以下、結末まで話します。嫌な方は見ないでください。













The Secret Garden (Penguin Readers: Level 2)/F. Hodgson Burnett
¥621
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主な登場人物:

Mary Lennox
…主人公。痩せていて、誰の愛情も感じず、誰も愛せない少女。
Mr. Archibald Craven…Maryのおじ。ヨークシャーの大豪邸に住むが、家にいない。
Martha Sowerby…丸顔で優しい、Craven家の家政婦。
Dickon Sowerby…Marthaの弟で、動物や植物を愛する少年。
Ben Weatherstaff…Craven邸の庭師。
Colin Craven…Craven氏の息子。病弱。


内容:

インドで仕事をしていたLennox夫妻は、インドで病気にかかって死亡。娘のMaryは、おじの住むイギリスに行って暮らすことになります。
Lennox夫妻はMaryにほとんど手をかけず、そのためにMaryは誰も好きになることができず、また誰からも好きになってもらえないようなわがままで病気がちな子でした。

イギリスのヨークシャーのおじCraven氏の家は、100部屋あり、たくさんの庭もあるような大豪邸。MaryにはMarthaという家政婦が世話をしてくれることになりますが、彼女が言うには、常に部屋の中にいなければならないこと、ただし庭では遊んでよいと注意を受けます。さらに、意味深な一言。Craven氏の亡くなった愛妻の庭には入るな。

しかし、子供のことですから逆に気になってしまい、その庭をどうにか探そうと試みます。そこで、鋤を持った庭師、Ben Weatherstaffに出くわしたり、美しい声で歌うRobin(ヨーロッパコマドリ)を見つけたりします。

Cravenがその庭を秘密にする理由。
それは、いつもその庭で木に座り、本を読んでいた愛妻が木から転落して亡くなってしまったから。その時の怒りと絶望感からCraven氏は庭を閉め、ドアの鍵もどこかに放り投げたのでした。

毎日のように庭で遊んでいると、MaryはついにCraven氏がなくした鍵と、秘密の庭へのドアを見つけます。
恐る恐る開けて中に入ってみると、rose-treeやrose-plantsがあるのですが、死んだように芝は茶色。そこでなんとか美しい花園に甦らせようと、Maryは植え替え始めます。
しかしド素人だったMaryは、動物と植物を愛し、愛されているとうわさの、Marthaの弟Dickonに助けを求め、それから2人は毎日毎日Dickonと花園を作るために働きます。
以前は誰にも好かれず、また誰も好きでなかったMaryは、Dickonという心からの友を得ることができるのです。

さて、Maryが秘密の花園を探している前後、夜に度々だれかが泣く声がしていました。
気になったMaryですが、自分の部屋を出てはいけないとMarthaに言われていたので躊躇していたのですが、ある時部屋を抜け出してその声の元に向かいます。

すると、声の主はColinという少年で、ベッドに横たわっていました。
Cravenの子でありながら、まるでかつてのMaryのように卑屈で、自分の命は長くないと思い、誰からも愛されておらず、また自身もだれも好きになれないと思っています。
そこで、Maryは車椅子でColinを秘密の花園に連れ出し、元気になってもらおうとします。

秘密の花園を見て、話をし、どんどん元気になるColin。
車椅子から立ち上がり、卑屈な性格も変えていこうと決心するまでに。
さらに、父親であるCraven氏が帰ってきたらこの甦った花園に案内しようとするのです。

Craven氏は妻の死以降、自分の家を空けがちで、年中旅行に明け暮れていました。
というのも妻の事ばかり考えて悲観にくれ、さらには息子のColinも病気がちで短命だと思っていたからです。
しかし、ある夜庭にいて、自分を呼びかける夢を見ます。
幸せになれる予感がしたCraven氏は、帰国。邸宅に帰ります。

すると、秘密の花園から駆け出す子供を目にします。背が高く、大きな目をしているColinでした。
そしてColinは、Craven氏を緑豊かで花が咲き誇る、あの秘密の花園に案内するのでした。




感想:
 
率直に言ってしまうと、かなり面白い作品でした。
もちろん、ダイジェスト版だろうと思いますが、それでも十分伝わってきたし、オリジナルもいつか絶対に読もうと感じられるくらい、MaryとColinの成長が伝わってきました。

心が成長したMaryが、自分の生き写しのような卑屈なColinを次第に人間的にしていく感じがとっても良いです。
さらに、それが秘密の花園が次第に色を取り戻していくように、MaryやColinの心にも色が灯っていくのだと思うと、より一層深いのだなぁと思います。

さらに、DickonやBen Weatherstaffをはじめてとして、脇役もかなり素敵だと思います。

「天才」や「神」のように、本来は素晴らしい言葉なのに、使い古されてしまって逆に陳腐になってしまった言葉、「秘密の花園」ですが、原点となったこの作品を読んでおくことになんの損もありません。
レベル:中学2~3年生レベルですが、若干長めなので1~2日かかります。


ジャンル:スリル


あらすじ(背表 紙から):

A man is walking slowly in the desert.
He is not wearing a shirt.
The sun is on his back, which is burnt red.
He cannot see, he cannot think.
He does not know where he is or who he is.

He only knows that he must keep moving, keep putting one foot in the front of the other.
Keep moving, or die.


 面白さ:★★☆


※以下、結末まで話しま す。嫌な方は見ないでください。













The Man from Nowhere Level 2 (Cambridge English.../Bernard Smith
¥579
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主 な登場人物:

Christos Bardis
…石油タンカー会社に勤める、ギリシアの億万長者。
Morphia…Bardisの妻。
Andreas…BardisとMorphiaの息子。
Dr.Singh…マスカットの病院の医師。
Imelda…マスカットの病院の看護師。
Ibrahim…刑事。
 



インド洋の上空からオマーンのワヒバ砂漠に向けて進む自家用飛行機。乗っていた男女は、テヘランに向かう予定を急遽バーレーンに変更し、この砂漠を低空飛行で遊覧していたのです。
すると、突然バードストライクにより墜落、男女と彼らの子供を合わせた3人は無事だったものの、砂漠の真ん中に取り残されてしまったのです。
そこで、多少オマーンに地の利がある男は、救助を求めに東の海岸へ向け、徒を進めます。

意識がなくなってしまうくらい砂漠を歩くのは大変であり、ようやくオマーン東海岸の小さな村の少年が、その男を発見したときには、もはや意識がありませんでした。
男は首都マスカットの病院に搬送されるものの、しばらく意識が戻らず、うわごとのように「Morphia」や「Red snow」という言葉を発するくらい。
Ibrahim刑事による身元の割り出しや、テレビによる情報集めも肩透かしで、この男がどんな人物なのかが分かりません。

さて、動きが出たのは男が救出された4日後。
その日の朝に目覚めたのです。しかし、記憶喪失状態で。
しかし、看護師Imeldaがしっかり聞いていた「Morphia」や「Red snow」といううわごとを男に聞かせてみると、その男は思い出すのです。

自分がChristos Bardisという名で、妻のMorphiaと息子のAndreasを乗せた飛行機が墜落し、妻子を残したまま救助を求めに歩いてきたのだと。

そこで、ヘリコプターを動員し、Bardisも体調が回復しないながらも同乗、妻子の捜索に向かいます。
ただ、何もない砂漠に加え、日が暮れ始めると、もはや捜索は不可能で、ヘリコプターは帰還せざるを得ないかに思えました。

その頃、息子のAndreasはヘリコプターの音が近くで聞こえることに気づき、もはや暑さと疲労で動けないMorphiaに代わって母のバッグからライターを取り出し、飛行機から漏れた石油に火をつけます。
暗い中、砂漠に燃える何かを見つけたBardisは、妻子がそこにいることを確信。

ヘリコプターでようやく、妻子は救出されました。


感想:

よく爆発しませんでしたね、火をつけてあせる

ベタな展開ですが、工夫が凝らされていて結構物語としても面白かったです。
というか、ベタな展開にしてもらわないと、かなり悲劇的になってしまいますからね…

特に、目覚めなかったBardisと、砂漠で生き延びようとするMorphiaとAndreasの対比が上手く描かれていて、緊迫感がありました

レベル:中学2~3年生レベルなので数時間で読めると思います。


ジャンル:ヒューマン・青春


あらすじ(背表紙から):

The four March sisters - Meg, Jo, Beth, and Amy - have problems.
Their father is away in the war and they don't have much money.
But the girls have happy times too!!

Read this story of family love in a difficult year for the Marches.



面白さ:★☆


※以下、結末まで話します。嫌な方は見ないでください。













Little Women (Penguin Readers, Level 1)/Louisa May Alcott
¥510
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主な登場人物:

Meg
…マーチ家の長女(16)。長い茶色の髪の美人。家庭教師として働いている。
Jo…マーチ家の次女(15)。背が高くてやせ気味。おばの家で働いている。
Beth…マーチ家の三女(13)。寡黙で、学校へは行かずに家にいる。ピアノが得意。
Amy…マーチ家の四女(12)。青い目できれいな金髪。学校に通っている。
Laurie…隣人であるローレンスさんの孫。
Mr.Brook…Laurieの家庭教師。
Hannah…マーチ家のお手伝いさん。




クリスマスを間近に控えたマーチ家。しかし、父が戦争に出かけているために金が十分になく、クリスマスプレゼントさえ用意できない。
父親の手紙で、がんばって生きようとする4姉妹ですが、クリスマスでは母親にプレゼントしたり、近所のローレンス氏が食事を提供してくれるなど、慎ましいながらも楽しい生活を送っていました。

また、New Year partyに招かれたMegJo。フランスに在住していたローレンス氏の孫、Laurie青年とJoが意気投合し、それ以来よく遊ぶ仲になります。
さらに、喧嘩はありつつも仲直りしてお互いの結束を強くし、物を書くのが好きなJoの小説が新聞に掲載されるなど、父が不在のマーチ家にも幸せな生活が待っていました。

しかし、そんな折、父親が病気のために戦争から帰還し、現在はワシントンにいるという手紙を受け取ります。
母親は急いで金を用意し、ワシントンに向かい、残された4姉妹は一生懸命母親がいない生活を送りますが、そんなときにBethが病気に。

結局Bethは回復しますが、それと同じように父がクリスマスの日に帰宅するという、全員の望みが叶います。

MegはLaurieの先生であるMr.Brook氏にプロポーズされ、了承。
Joも物書きとしてファンができるほどに知られるようになりました。


感想:

抄訳を、さらにあらすじとしてまとめてしまったので、面白みのない展開ですなぁ。
でも、日本でも有名な若草物語
本当は、赤毛のアン並みに色々なことがあって、ハラハラするストーリーなのだろうということも暗に感じます。

あらすじでは、Amyが出てこないという失態・・・汗

これはもうちょっと分厚い抄訳(もしくは原著)を読むべきでしょうね。