今回のNEJM:Images in Clinical Medicineは,「お休み」になっています.

 

March 28, 2024に続き,短いスパンで今年2回目になります.

 

 

先週3編掲載された理由は今回の「お休み」のためだったのでしょうか?

 

なお,サル痘,今はエムポックスと呼ばれていますが,その時は新規性・話題性からと思われる3編目としての掲載(2022年6月16日),そしてその後改めて掲載(2022年7月7日)がありました.

 

May 16, 2024より,全訳を記します.今回は3編と,いつもより1編多くなっております.3例目はありふれた食道静脈瘤・門脈圧亢進症性胃炎なのですが,なぜかNEJMにアクセプトされています.

 

Pacemaker-Lead Dislodgement and Cardiac PerforationN Engl J Med 2024;390:1802

ペースメーカーのリード逸脱と心臓穿孔

 

症例は96歳の女性で,完全心臓ブロックに対して単室経静脈ペースメーカーが埋め込まれた4日後に生じた胸膜性の胸痛が1日続ため,救急外来を受診されました.血圧は100/60mmHg,心拍数は40回/分でした.心電図で,心拍数は84回/分の完全心臓ブロックや心拍数 42回/分で右脚ブロックを伴う補充調律,心室補足を伴わないペーシングスパイクが見られました.胸部X線検査では右心室のリードの先端が左胸郭中央上に位置していました.胸部CTでペーシングリードの先端が右心室を横切って左胸膜腔に至っており,左側の胸水が中等量認められました.気胸や心嚢液貯留はありませんでした.心臓穿孔を伴うペースメーカーリードの逸脱の診断がなされました.ペースメーカーが逸脱した患者では胸痛や呼吸困難,失神,心タンポナーデまたは気胸の症状を呈することがあります.バックアップとして控えていた心臓胸部外科チームによって,緊急に経皮的なリード再置換術が行われました.合併症はありませんでした.受診から3日後,自宅に退院されました.

Chronic SilicosisN Engl J Med 2024;390:e46

慢性珪肺症

 

症例は胃腸炎で入院した47歳の男性で,胸部レントゲン検査で異常が見つかりました.25-pack-yearの喫煙歴があり,30年以上採石場で働いていました.呼吸器症状はなく,バイタルサインや身体所見は正常でした.胸部レントゲン検査ではびまん性の結節性陰影が認められました.胸部CTではリンパ管周囲に分布する肺の結節影が明らかになり,むしろを敷いたような石灰化を伴うっ縦隔リンパ節腫脹も見られました.スパイロメトリーでは閉塞性を認めない拘束性の換気パターンを示していました.気管支肺胞洗浄を伴う気管支協検査と経気管支的な肺の低温生検が行われました.結核などの感染症の検査は陰性でした.生検標本を偏光下で組織病理学的に分析したところ,豊富なシリカの結晶が認められました.慢性珪肺症,すなわち二酸化ケイ素の吸入によって起こる職業性塵肺症の診断がなされました.この状態は石炭採掘やサンドブラスト(砂吹き),本症例のような採石などの仕事にあたる労働者を苦しめます.禁煙カウンセリングが行われ,ニコチン置換療法が開始されました.労働安全局に報告書が提出されました.患者は人工呼吸器を装着し,次の仕事を見つけることが難しかったので採石場の仕事を再開しました.6ヶ月後のフォローアップで訪れた際,無症状のままでした.

May 9, 2024より,全訳を記します.1例目は聖隷横浜病院の青木海斗先生らの報告です.

 

Polyarteritis NodosaN Engl J Med 2024;390:1711

結節性多発動脈炎

 

症例は62歳の男性で,1ヶ月前からの左右の大腿前面と下腿後面の筋肉痛及び筋力低下,10kgの体重減少を主訴に受診されました.身体診察では,大腿前面と下腿後面のしびれが認められましたが,皮膚の変化や腹部の圧痛はありませんでした.血液検査では炎症性マーカーの上昇が見られました.胸部や腹部,骨盤のCT所見に異常はありませんでした.ANCAやB型肝炎ウィルスの検査は陰性でした.結節性多発動脈炎が懸念され,腹部血管造影が行われ,腹腔動脈や下腸間膜動脈,腎動脈の軸で動脈瘤および血管壁の不整が明らかになりました.経口グルココルチコイドとシクロフォスファミドによる治療が開始されました.10日後,腸の穿孔が生じました.切除された横行結腸の病理組織学的検査で,中型動脈の壁に好中球浸潤とフィブリノイド壊死が見られたほか,内弾性板の断裂がありました.結節性多発動脈炎の最終診断がなされました.術後の入院経過が長引くなか,腹腔内膿瘍は治療され,免疫抑制療法が調整されました.初診から5か月後のフォローアップにおいて,血管造影で血管の変化は消失していることが分かりました.

Lymphatic FilariasisN Engl J Med 2024;390:e43

リンパ系フィラリア