July 7, 2022より,全訳を記します.1例目は6月16日に先行発表されたサル痘の症例です.続いていた目のClinical Pictureは今回は「お休み」です.

 

Monkeypox Genital LesionsN Engl J Med 2022;387:66

サル痘の性器病変

 

症例はコントロールされたHIV感染を有する31歳の男性で,1週間前からの無痛性の性器の発疹および2日前からの発熱や咽頭痛を主訴にクリニックを受診されました.3週間前に,コンドームを付けず新しい男性パートナーと性交渉をしていました.身体診察で,右鼠径部に斑状の発疹と有痛性のリンパ節腫脹,陰茎に2つの潰瘍性病変といくつかのくぼんだ膿疱が観察されました.梅毒やクラミジア,淋菌の検査は陰性でした.鼠径リンパ肉芽腫や軟性下疳の可能性を鑑みて,抗菌療法が開始されました.初診から5日後,患者は小水疱膿疱性病変が顔面や手に生じて再診されました.性器や手の病変から得られたスワブのPCR検査で,サル痘が陽性でした.サル痘の典型例では,有熱性の早期徴候に続いて発疹が出現し,身体の一部に見られた病変が同時に拡大していきます.最近の世界的なサル痘のアウトブレイクでは,早期徴候をしばしば伴わない,無痛性の肛門や性器の病変が,男性同士の性交渉を含む,感染者と密な接触があった者で観察されています.初診から2週間以内に,特別な治療介入なしに病変は和らぎました.他患で観察された,サル痘の性器病変例を追加して示します.

 

Fungal Ball in the Urinary BladderN Engl J Med 2022;387:e2

膀胱内の真菌球

 

症例は2型糖尿病を有する68歳の男性で,3日前からの排尿障害や間欠的な血尿,圧をかけて排泄された尿内の小さな球を主訴に救急外来を受診されました.発熱や悪寒,側腹部痛の訴えはありませんでした.症状発現の3ヶ月前,SGLT-2阻害薬による治療が開始されました.身体診察の結果は正常でした.尿には直径1.5cmの白い球が含まれていました.血液検査でHbA1c 7.8%(基準値:4~6)で,尿検査では尿糖や膿尿,血尿,そして酵母菌の存在が明らかとなりました.超音波検査を行うと,膀胱底部に2cmの可動性の腫瘤が見られました.尿培養でCandida albicnasが発育し,真菌球を伴う感じだっ膀胱炎の診断がなされました.2型糖尿病を有する患者では泌尿生殖器系感染症のリスクが高まり,SGLT-2阻害薬は尿糖の程度を高めることでこのリスクをさらに上昇させます.この薬剤群は性器の真菌感染症,例えばカンジダ膣炎や亀頭炎としばしば関連しやすくなります.フルコナゾールによる治療が開始され,SGLT-2阻害薬の治療は中止されました.膀胱鏡検査は施行されませんでした.4週間後のフォローアップで,症状は和らいでいました.