September 26, 2024より,全訳を記します.
Button-Battery Ingestion(N Engl J Med 2024;391:1139)
ボタン電池の誤飲
症例は生来健康な生後11ヶ月の女児で,嚥下障害と咳嗽が2週間前から徐々に悪化しているため,救急外来を受診されました.心拍数は168回/分で呼吸数は33回/分,酸素飽和度はroom airで100%でした.身体診察で,患児は急性の苦痛を訴えていました.不規則な呼吸と喘鳴が認められました.胸部X線検査では頸部食道に 「ハロー 」または 「ダブルリング 」サイン,つまりボタン電池と硬貨を区別する所見を伴う異物が明らかになりました.電池の周辺腐食も見られました.緊急上部内視鏡検査が行われました.電池は摘出され,明らかな粘膜外傷や出血はありませんでした.処置から約10時間後,大量の吐血と出血性ショックが生じました.緊急外科的検査で,当初出血源は同定されませんでしたが,術中血管造影によって拡張した食道と左総頸動脈との間に瘻孔があることが分かりました.動脈を結紮し,止血されました.ボタン電池の誤飲・誤嚥は,組織壊死や穿孔,瘻孔形成の危険性があるため,迅速な確認と除去が必要です.患児は最初の処置から32日後,神経学的・機能的障害はなく,自宅退院となりました.
Discoid Lupus Erythematosus(N Engl J Med 2024;391:e24)
円板状エリテマトーデス
症例は20-pack-yearの喫煙歴がある42歳の女性で,2年前からの顔面発疹を主訴に皮膚科クリニックを受診されました.受診の1年前,化粧を落とすことなく皮疹が評価され,にきびの可能性があるとして治療が勧められていました.今回の診察では,化粧を落とした後に皮膚検査が行われました.右眉毛上に中心性色素沈着を伴う硬結や毛包の拡張,脱毛が見られ,右頬にも色素沈着や色素沈着減少が散在する斑を伴っていました.左頬には散在する結節や開放性の面皰,色素沈着と色素沈着低下を呈する領域が認められました.右眉毛上の皮膚生検標本を調べると,真皮-表皮接合部および毛包上皮に浸潤した苔癬様浸潤が明らかになり,表在性および深在性の毛包周囲・血管周囲のリンパ球浸潤を伴う拡張した毛包小窩が認められました.基底膜の肥厚とムチンの沈着も認められました.直接免疫蛍光法で,真皮-表皮接合部にIgMおよびIgGの顆粒状沈着が同定されました.全身性エリテマトーデスを評価するための臨床検査で,抗核抗体が160倍であることが分かりました.慢性皮膚エリテマトーデスの一種である,円板状エリテマトーデスと診断されました.ヒドロキシクロロキンとクロベタゾール外用による治療が開始されました.6週間後のフォローアップで,サリドマイドによる治療が計画されました.