先日参加(出発前帰宅後)した第30回日本ヘリコバクター学会学術集会の学術集会賞 受賞者一覧がホームページに発表されましたが,今年は落選していました…

 

2年連続とはいきませんでしたが,発表した2演題とも論文化できていますし,現状でのベストを尽くした結果ですので悔いはありません.

 

 

来年は淡路島での開催(第31回日本ヘリコバクター学会学術集会,現時点で研究テーマが見つかっていないので参加するかどうかは未定です.

 

引き続き日常診療にしっかりと取り組みながら,アイデアの「ひらめき」を待ちます!

September 26, 2024より,全訳を記します.

 

Button-Battery IngestionN Engl J Med 2024;391:1139

ボタン電池の誤飲

 

症例は生来健康な生後11ヶ月の女児で,嚥下障害と咳嗽が2週間前から徐々に悪化しているため,救急外来を受診されました.心拍数は168回/分で呼吸数は33回/分,酸素飽和度はroom airで100%でした.身体診察で,患児は急性の苦痛を訴えていました.不規則な呼吸と喘鳴が認められました.胸部X線検査では頸部食道に 「ハロー 」または 「ダブルリング 」サイン,つまりボタン電池と硬貨を区別する所見を伴う異物が明らかになりました.電池の周辺腐食も見られました.緊急上部内視鏡検査が行われました.電池は摘出され,明らかな粘膜外傷や出血はありませんでした.処置から約10時間後,大量の吐血と出血性ショックが生じました.緊急外科的検査で,当初出血源は同定されませんでしたが,術中血管造影によって拡張した食道と左総頸動脈との間に瘻孔があることが分かりました.動脈を結紮し,止血されました.ボタン電池の誤飲・誤嚥は,組織壊死や穿孔,瘻孔形成の危険性があるため,迅速な確認と除去が必要です.患児は最初の処置から32日後,神経学的・機能的障害はなく,自宅退院となりました.

 

Discoid Lupus ErythematosusN Engl J Med 2024;391:e24

円板状エリテマトーデス

 

症例は20-pack-yearの喫煙歴がある42歳の女性で,2年前からの顔面発疹を主訴に皮膚科クリニックを受診されました.受診の1年前,化粧を落とすことなく皮疹が評価され,にきびの可能性があるとして治療が勧められていました.今回の診察では,化粧を落とした後に皮膚検査が行われました.右眉毛上に中心性色素沈着を伴う硬結や毛包の拡張,脱毛が見られ,右頬にも色素沈着や色素沈着減少が散在する斑を伴っていました.左頬には散在する結節や開放性の面皰,色素沈着と色素沈着低下を呈する領域が認められました.右眉毛上の皮膚生検標本を調べると,真皮-表皮接合部および毛包上皮に浸潤した苔癬様浸潤が明らかになり,表在性および深在性の毛包周囲・血管周囲のリンパ球浸潤を伴う拡張した毛包小窩が認められました.基底膜の肥厚とムチンの沈着も認められました.直接免疫蛍光法で,真皮-表皮接合部にIgMおよびIgGの顆粒状沈着が同定されました.全身性エリテマトーデスを評価するための臨床検査で,抗核抗体が160倍であることが分かりました.慢性皮膚エリテマトーデスの一種である,円板状エリテマトーデスと診断されました.ヒドロキシクロロキンとクロベタゾール外用による治療が開始されました.6週間後のフォローアップで,サリドマイドによる治療が計画されました.

September 19, 2024より,全訳を記します.

 

Fabry’s DiseaseN Engl J Med 2024;391:1038

ファブリー病

 

症例は44歳の男性で,5年来の高熱不耐症と手足の灼熱痛を主訴に,リウマチクリニックを受診されました.労作時呼吸困難や発汗減少,洞性頻脈,原因不明の蛋白尿もありました.身体診察では,20年前から存在する臍周囲の血管性皮膚病変があり,被角血管腫と一致する所見でした.24時間蓄尿したサンプルは,非ネフローゼ性の蛋白尿でした.腎組織標本の光学顕微鏡検査では,細胞質が空胞化した糸球体上皮細胞が局所的に腫大していました.電子顕微鏡検査で,ファブリー病に特徴的なゼブラ小体として知られる,糸球体上皮細胞にグロボトリアオシルセラミドの典型的な層板状の沈着が明らかになりました.白血球分析では,α-ガラクトシダーゼ A活性が1.0 nmol/時/mg 未満でした(基準範囲:45〜85).遺伝子検査でGLA の変異が同定されました.ファブリー病の診断がなされました.ファブリー病は,ライソゾーム加水分解酵素であるα-ガラクトシダーゼ Aの欠損を特徴とする,X連鎖性のライソゾーム貯蔵疾患です.結果的に細胞内にスフィンゴ糖脂質が蓄積し,本症例で見られるような神経障害や自律神経機能障害,低汗症,皮膚病変,蛋白尿など,さまざまな症状が引き起こされます.患者の家族の遺伝子検査によって,母親と兄弟にGLA 変異が同定されました.酵素補充療法による治療が開始され,心臓の評価と長期管理のために神経内科や腎臓内科,循環器内科の専門医に紹介されました.

 

Flail ChestN Engl J Med 2024;391:e22

フレイルチェスト

 

症例は慢性閉塞性肺疾患の既往歴のある59歳の男性で,自動車衝突事故の後,救急部に運ばれてきました.エアバッグが展開しなかった後,患者の車のハンドルが胸部を直撃しました.心拍数 99回/分,血圧 123/84mmHg,呼吸数 30回/分,酸素吸入中(FiO2 45%)の酸素飽和度 90%でした.身体診察では,胸部と腹部に紅斑がありました.また,吸気時に前胸壁と右胸壁が内側に虚脱し,呼気時に外側に膨張しました.フレイルチェスト,すなわち複数箇所の肋骨骨折による胸壁の一部分の逆説的な動き,と診断されました.フレイルチェストは,肺挫傷や急性呼吸不全のリスクが高いことと関連します.胸部CTでは,両側の複数の肋骨骨折と,胸骨体および胸骨丙に複数の骨折が認められました.気管内挿管が行われた後,肋骨と胸骨の骨折に対して観血的整復と内固定が行われました.術後2日目に抜管され,術後8日目に自宅に退院されました.1ヶ月後のフォローアップでは,フレイルチェストは完全に治っていました.

11月28日(木)19:00~20:00に行われる,第638回 八戸胃腸研究会の講演依頼がありました!

 

 

調べると,八戸胃腸研究会は,昭和39年6月東北大学斎藤達雄教授をお招きして,第1回の発会式を行ない…[出典:胃と腸 3巻3号(1968年3月発行)とあり,「第638回」という数字からも分かるように,八戸胃腸研究会は伝統ある研究会です.

 

医局や大学病院,大病院に属していない医師がメインで講演するのは異例のことで,決め手になったのはコツコツ積み上げた業績と物怖じしない「トーク」力(笑)のようです.

 

 

なお,お願いされた講演のテーマは「機能性ディスペプシア」で,治療における私の工夫などを話す予定です.

 

ただ,機能性ディスペプシアに関して執筆した論文がないので,急いで構想を練って作成しようと思います.

 

やはり,講演するうえで執筆した論文がないと説得力に欠けますので.

 

 

先日記事にしたように,加齢によって「体力」は落ちていますが,「気力」を振り絞って頑張りたいと思います!