楕円球空間 -53ページ目

クライバー本

「カルロス・クライバー 孤高不滅の指揮者」(河出書房新社)

いわゆるムック本だが、生協の書籍部で置いてあったので即購入。自分は所謂不健全なクラオタではない、と信じているので楽屋話みたいな話題には昏い。なので結構この手の本も楽しめる。

ある意味驚き、ある意味よいか、とも思ったのだが、クライバーには海賊版が多い。で、本の最後に全演奏会のリストがあって、海賊版が出ているものにマークが付いている(笑い)。傀集家には貴重な情報か、と。自分は「エレクトラ」のライヴが聴いてみたい。どこかにないかなぁ。

クライバー熱が高まったのでネット検索してみると、こういうのがある。



http://www.youtube.com/watch?v=kHAS7r8Pd0k

とっても楽しそうに振っている。2幕の最後、何度見てもよい。新幹線移動が辛くなかった。

最近読んだ本

「東山魁夷と旅するドイツ・オーストリア」(東京書籍)
東山魁夷は子供の時に一度見に行った記憶があるが、ドイツとこんなに縁のある画家とは知らなかった。東山魁夷美術館の館長で、いわさきちひろの息子さんが、魁夷の描いたドイツの風景画と同じアングルを訪ねる、といういい意味でヲタクの本。でも自分もそこに行きたくなってしょうがなくなるのでやっぱりいい本なんだろう、と思う。少し問題があるとすると作者の自分語りというか魁夷の気持ちを勝手に忖度して文がちょっと嫌かな。

「リッカルド・ムーティ自伝~はじめに音楽、次それから言葉~」
クライバー亡き後、ヤンソンスと並んで自分が敬愛する指揮者であるムーティ。自伝の存在は去年1月にシカゴに学会で行ったときにシカゴ交響楽団のホームの売店で売っていたので知っていたが邦訳されたのでこっちを購入。インタビューをまとめた本なんだろうが、面白い逸話もいろいろありそれなりに読み応えはあった。

4-5月の専攻長仕事が忙しすぎて心が疲れていて、やたらに本が読みたくなる。田崎晴明先生の名著「熱力学」も読了した。やっぱり統計力学より熱力学のほうが難しいな、と。まだすっきりしない感は残った(学生時代に比べてば大分見通しは良くなったとは言え)。

演奏会終わる

もう10日も前だが終わった。

とても無事に、とは言えなかったが(笑い)。最大のトラブルは演奏中に弓がバラバラになった人が出たこと。さすがに驚いた。しかも激しい2楽章の途中だったので。

演奏会を聴いた家人曰く「頑張ってた」。ヴァイオリン独奏は「音が小さくて会場の後ろのほうはよく聴こえなかった」とも。やっぱり舞台の上と会場では聴こえ方が違うものだ、と。

代償は指の故障。演奏が原因かどうかわからないが、右手人差し指の第二関節が不調で曲げて力を入れると痛い。パソコンのし過ぎじゃなきゃいいけど。

研究室雑感

気候が良くなった。

花粉症も終わり、正に風薫る五月。キャンパスは郊外にあるので空気がよく見晴らしもよく大変気持ちいい。学内業務も一区切りついたので窓を空けて計算に勤しんでいると鳥の囀りが賑やかで更に気持ちいい。ドイツ留学中も、研究所が思い切り郊外にあり同じように鳥の囀りが賑やかだった。

気分だけドイツ。

ショスタコ11番

大学オケの後輩のソ連音楽マニアから紹介されたのが12年くらい前。

12番は大学オケの先輩から教えてもらって「なかなかいい曲だ」という印象だったが、それを上回りそうな強烈な曲、というのが第一印象。とはいえショスタコとはイマイチ相性があわずあまり聞いていなかったが、丁度今のオケで10番をやっている関係でまた聞いてみた。

バルシャイ指揮WDR交響楽団(西ドイツ放送響)は2楽章の銅鑼とスネアが強烈な録音で面白い。でもやっぱり原点ともいうべきムラヴィンスキーが聞きたくなり久々にCDを購入。で、演奏は、というと、一度聞くと耳から離れない(苦笑)。録音も悪し、いつものように金管の音は不純物の多い金属で作った楽器のような倍音の少ない独特の響きで、銅鑼もスネアも特に強調されていない録音なんだが、とにかく記憶の深いところに刻み込まれるようなインパクトのある演奏。

やっぱり名演だな。

「日本の起源」

東島誠と與那覇潤という中堅若手の非保守の論客による日本論。

対談形式になっていて読みやすいかと思って買ったのだが、内容はなかなかの重量級で、自分がそれなりに詳しいと思っている時代(戦国~安土桃山、と近現代)以外は正直難しく、議論の立ち位置を理解することにも時間がかかる。

とは言え、通読すれば著者2人の立ち位置は非常に明確で、「今の保守の連中ほど歴史を勉強していない(都合よく解釈している)」という、自分の立ち位置に近いメッセージがかなり強烈に発信されている。特に與那覇氏が合間合間で入れるチャチャのような毒舌が面白い・・。

「中国化する日本」(與那覇潤)ほど読みやすくはないものの、特に日本史を高校で専攻した人は必読か、と。従来の通念がぶっ壊されることは間違いないかと。

休日

3月4月と休みなしで駆け抜けたので、休暇を取得。

とは言え前の晩から具合が悪く、午前中はほとんど寝て過ごすことに。専攻長の仕事も少し様子が見えて落ち着いて、論文を1本発進させたので気が抜けたか・・・。でもまだまだ申請書やらプレゼンの準備やらもう1つ論文やら学生とスタッフの論文の確認やらあるんだけど・・・。

午後になってなんとか起きだして、近場の植物園に家人と出かけ、フクシア展を楽しみ園内を散歩。帰宅して休養してからスペインバルで軽く食べて就寝。バル(「Xativa」)は木屋町二条という好立地にあって居心地がよく、何度も使いそうな感じ。

6連休のうちにしっかり体を治してまたやらねば。

HHhH

以前から注目していた「HHhH」(ローラン・ビネ)を遂に購入し読了。

ここ数年読んだ中で間違いなくベスト・オブ・ベストの傑作。1942年のドイツ第三帝国チェコ保護領総督R・ハイドリヒ暗殺、という史実を描く内容なのだが、ノンフィクションではなく、歴史小説でもない。登場人物に余分な(とあえて書くのはこの本に対する最大級の賛辞であるのは読んだ方には分かるだろう)想いを語らせることなく、徹底的に史料に寄り添いながら執筆している一方、無味乾燥な史料のまとめとは全く異なり、そこには登場人物の息遣いがあり、思想があり、狂気があり、正義感がある。やはり「小説」になっている。新しい分野を開拓していると言っても過言では無いだろう(正直に言うと、「グランド・ジャット島の休日」を見た時の印象と似ていて、同じスタイルで2回は書けないタイプの小説だと思う)。

既に読者は史実を知っていて、終幕も知っているにも関わらず、このリズム感、迫力、重々しさは何なのか。凄まじいまでの迫力が溢れていて、たった5,6分の電車通勤の間すら惜しんで読んだ。最後の数十ページはページをめくるのももどかしく思う一方、もうすぐこの小説が終わってしまうという辛い気持ちも湧き上がり、2つの想いに引き裂かれた。これはなかなか出会えるレベルの本ではない。絶賛。ぜひ皆さんも読んで欲しい。

演奏会へ

以前入っていた室内オケ時代のコンマスの方がカルテットの演奏会を開く、ということで行ってきた。

コンマスは大学の先輩で、オケではなかったが強烈にVnがうまい。その上手さも、よくいるアマチュアの「俺様うまいんだよ」というあざとさが全くなく、実に品のよい演奏。で音も超綺麗。先輩の人間性があふれる演奏になっている。今回は「皇帝」「ハープ「アメリカ」というどれがメインでもいい3曲を全部入れちゃった超弩級のプログラム。正直どうなるか、と心配もして会場に行ったわけだが・・・

1曲めの「皇帝」の出だしの音から、もうそれはアマチュアの音ではなかった。Vaは芸大出身のプロがゲストで入っているが、あとの3人はアマチュア。なのに和音も音の処理も完全にアマのレベルを超越していて、これより下手な音大生のカルテットはいくらでもあるだろう、という印象。「ハープ」はさすがに難しそうで、所々に素人くささを感じさせる部分があったものの(ただそれは内声部の責任か、と思う)、「アメリカ」はまたいい演奏で、本当におなか一杯になった。

先輩は元々綺麗な音だったが、さらに磨きがかかり・・、と思ったら2年前に楽器を某有名楽器に替えたそうで・・・。ウン千万はしたんじゃないか、と。ガ◯二ー◯ですからねぇ。音の煌きとか張りとか深みが全然違いました。あれを聞くといい楽器欲しくなるね。

訃報

N先生が急逝された。

N先生は自分が教育を受けた、という意味で師事したわけではないが、折に触れて暖かい励ましとお言葉を頂戴した。3月1日にS先生叙勲の祝賀パーティーで挨拶なさって、大変お元気そうだったのだが・・・。4月1日に入院されて2週間でお亡くなりに。本当に寂しい。先生のことを忘れたくないので先生のお言葉を書いておきたい。

・(N先生が退職なさる時、当時助教授だった私がたまたまお会いした時に)「◯◯さん、頑張りや。教授になるには、分野で1番にならんといかん。大学いうのはかなり自由なところで好きなことできるけど、1番にならんとなかなかいいポストには就けんもんや。だから◯◯さん、頑張りや。」

・(教授に昇任した直後に合同ゼミでお会いして昇任のご報告をした時に)「◯◯さん、あんた偉いな。よう頑張った」(私は不覚にも涙が出そうになった)

・(現在のポストに異動したときに)「異動してよかったな。いろいろ大変やったやろ。いろいろ聞いとる。周囲が若い人を盛り立てなあかんのにな。◯◯さんは悪ないよ。」

最後に笑い話もして終わりたい。

・「親御さんの顔を想像して、甘うに甘うにつけてやってください」(一堂爆笑)

でも寂しいです。N先生。