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こころに映りゆく由無しごとを其処は可となく書き付けて
ごうなっだのでありますぐるらめ。

最後の句オモテ「す」ーー「京」と、ウラ「京」ーー「す」の折り返し点です。


す——京 

菫咲く/疵す獐樟/白虹京           (三春)
 すみれさく きずすのろくす はくこう京
京右獄は/末黒の薄/鏈れ魅す        (初春)

季語:菫・三春。末黒の薄(すぐろのすすき)・初春。
獐(のろ):シカ科の哺乳類。オスは三股の角をもつ。ユーラシア大陸に分布。ノロジカ。
右獄(うごく):平安時代京都右京区にあった獄舎。
末黒野(すぐろの):早春、害虫駆除のためと萌え出る草の成長を早めるために野焼きする。その黒々としたなかの、川べりなどにわずかに残す緑の風情を言う。
鏈る(くさる):①長く連なる。つづく。②つなぐ。繋ぎ合わせる。

スミレの花咲くころ、ノロジカは角をクスノキにこすりつける。動物から同類の植物へ——「獐」から「樟」へ——の挨拶、愛情のキスなのだ。小さい幸せ・謙虚・誠実・スミレの花言葉。京の空には〈白いアルカン・シエル〉が懸かっている。
京に残す平安の獄舎あと。末黒のすすき。連綿のもたらす暗黒の美しさ。

双六の「上がり」は「京」。「京」は漢字ではなく仮名の扱いなので、カナの最後つまり「仮名尻(かなじり)」といいます。因みに、いろはの「い」はカナのトップなので「仮名頭(かながしら)」。

 ここでも「京」を仮名として作ってみました。

———帀文(そうぶん)俳諧/
        メビウス連句しりとり駅伝双六
の折り返し点、です。これから帰路はいわば下り坂。須走りで完走です。お疲れさまでした。  
  *
このシリーズは終わりです。ありがとうございました。
         ウロ こと 「ウロボロス34」 拝
二階建て俳句も最終コーナー。イロハの最後「~せす」です。
歌留多では「京」が〆です。


せ——す 

施行宿/かの棘紆余し/杖拝す        (三春)
 せぎやうやど かのいらうよし つゑはいす
酸葉恵つ/松籟のかど/夜雨山羊背       (仲春)

季語:施行宿・三春。酸葉・仲春。
施行宿(せぎょうやど):修行者・遍路を無料で泊める宿。善根宿。
紆余(うよ):曲がりくねっていること。 
酸葉(すいば):タデ科。葉や茎に酸味がある。スカンポ。
 
善根宿はほんとうに有難い。難儀な行路もおかげさまでこうして休めるのです。共にしたこの杖を捧げて拝礼しました。
 スカンポを摘んで口にしました。酸い味が懐かしい。松林を吹き抜ける風の音が止んだ。夜の雨が音もなく山羊の背を濡らしている。

拗音(音節「キャ」「しょ」のように一音を二字で書き表すもの)が句のなかにあるときは、対のもう一つの句にも拗音の字句が必要です。ここの例では、第一句の上五に「ギヤウ」とでてきたので、第二句で中七に「ショウ」を工夫しました。
しっくりしないので、作り替えます。

青帝や/夜目遠目佐保/床拝す          (初春)
 せいていや よめとほめさほ とこはいす 
酸葉こと/ボサ目歩とめよ/夜出で伊勢     (仲春)

季語:青帝・初春。酸葉・仲春。
青帝(せいてい):五行説で春をつかさどる神。
夜目遠目(よめとおめ):「夜目遠目笠の内」女の容貌がいっそう美しく見えること。
佐保(さほ):佐保姫。春をつかさどる佐保山の女神。平城京の東に位置するので五行説で春霞の衣をまとう女神とされ西の龍田山と対比される。
ボサ:ボサノバ。サンバの新型。
 
春の神、青帝は佐保姫を遠くから目にとめて憎からず思いました。そして夜の褥に誘われました。
 スカンポのすっぱいこと。ちょっと、ちょっと、ボサノバのCDとめてよ。伊勢参りは夜立ちだってよ。

左見右見(とみこうみ)。右顧左眄(うこさべん)。——結局これにします。

ことしは去年より3度暑いのだそうです。
昨日は医者を2軒ハシゴして95歳の夏をナントカ乗り切りました。さすがに疲れました。
待合室で呼ばれるのを待っている間、俳句をヒネルのは手頃な暇つぶし。
新しい句体を考案するのは、楽しい時間つぶしです。
このシリーズのあとご披露しますが、……

ブラジルは四季が日本と真逆で、今が一番寒い時です。2月が真夏。強いとうもろこし酒を飲んで大騒ぎするカーニバルの準備に官民を挙げて「今忙し」でしょう。
正詠み(読み下し)に加えて、逆読みすると別の句になるというウラオモテ二重構造の俳句を遊んでいます。
季節は連句のキマリを守って、季語もちゃんと入れて、イロハ順に、…と、自分で規則を作って作っています。「…ゑひもせすん」でおわりですから、もうちょっとのお付き合いです。


も――せ

餅雪や/ひかり赤裸々/日誌記せ     (晩冬)
 もちゆきや ひかりせきらら につしきせ
夕日に/裸々木芹交ひ/や消ゆ知母    (三春)

季語:餅雪・晩冬。芹・三春。
知母(ちも):①ハナスゲの漢名。リュウゼツラン亜科。②漢方薬解熱剤。
や:【副助詞】軽い疑問をあらわす。やも知れない。

 綿雪が地上を覆っています。素裸のひかりが喜んで乱舞しています。そうだ。日記に書き留めておかなきゃ……仲たがいしたままの親友の死を。
 夕日が疎林にわらわらと崩れ落ちています。セリを摘みに来たのですが、かなり生えそろってきているけど、ハナスゲはもうなくなったのかな?

「雪」という季語は、「三冬」と思っていたら「晩冬」なんですね。

切れ字に命令形を使うときは激しい悲しみの時、という不文律を守っていませんが……「解釈」はとりあえずそのような趣旨で。

歯医者がすんだと思ったら、ひどく咳きこんで息苦しい。
肺炎は年寄りには「死に至る病(キエルケゴール)」だ。こりゃ、いよいよ年貢の納め時かな?と思って、しおらしく医者に訴えた。いきなり鼻に紙縒(こより)を突っ込まれたときはオドロイタ。15分間待たされて、診察室へ。医者はムズカシイ顔をしている。歯ブラシと着替えを持ってすぐ…入院、かな、と覚悟を決めた。
医者のムズカシイ顔は「歯が痛いんだ」、そうだった。自分のことなら、少なくとも患者の前でムズカシイ顔をするものじゃない。金帯橋の歯医者を紹介した。
コロナ風邪がまたハヤッテいるのだそうだ。痰は白い。肺は影ナシ。どこにも病相ナシ。どうして咳きこむのかワカラナイ。処方箋には痰切飴。保険が利かないでしょううけど…と医者は申し訳なさそうに言った。

診察前は家人に支えられてやっと歩いたが、帰りは人を追い越して闊歩した。クーラーをつけて3時間昼寝した。冷やしたメロンを二切れ食った。うまかった。