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社会人になっても「勉強する人」「しない人」の差は、将来の認知症リスクに表れる!【山田悠史医師】

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社会人になっても「勉強する人」「しない人」の差は、将来の認知症リスクに表れる!【山田悠史医師】

 

世界最高峰の老年医学科で働く山田悠史医師が、脳の老化と認知症の進行を遅らせるために「本当に必要なこと」「まったく必要でないこと」を伝えます。 

 

【グラフ】日本の認知症患者数は増加の一途をたどっている!

 

mi-mollet(ミモレ)

 

 山田 悠史 米国内科・老年医学専門医。慶應義塾大学医学部を卒業後、日本全国の総合診療科で勤務。新型コロナ専門病棟等を経て、現在は、米国ニューヨークのマウントサイナイ医科大学老年医学科で高齢者診療に従事する。フジテレビ「ライブニュースα」レギュラーコメンテーター、「NewsPicks」公式コメンテーター(プロピッカー)。カンボジアではNPO法人APSARA総合診療医学会の常務理事として活動。著書に、『最高の老後 「死ぬまで元気」を実現する5つのM』、『健康の大疑問』(マガジンハウス)など。 X:@YujiY0402 Podcast:山田悠史「医者のいらないラジオ」 Spotify Apple Podcasts Anchor Voicy  

勉強をする習慣がない日本の社会人

写真:Shutterstock

 

あなたは、自宅に帰って勉強をする習慣がありますか?そう聞かれて明確にイエスと答えられる人はあまり多くないかもしれません。 

 

実際、日本の社会人には、勉強をする習慣があまりないそうです。

 

例えば、2022年の総務省が実施した「社会生活基本調査」(参考文献1)によれば、勤務先以外での自己研鑽に関して、「特に何も行っていない」と回答した人は5割を超えていました。

 

過半数の社会人が自己研鑽のための勉強を全くしていないということです。

 

また、勉強時間の平均をとると、1日13分しかなかったことも報告されています。

 

もちろんあくまで平均値ですが、これではとても勉強をしているとは言えません。

 

 正直なところ、私にはこのことにあまり共感ができません。

 

これほど楽しいことはない、と隙さえあれば勉強してしまう人間だからです。

 

ただし、なぜそうなってしまうのかへの理解はできます。

 

人生は忙しいのです。

 

仕事、家事、子育て、友人との付き合い、同僚との飲み会、メールのやりとり、YouTubeで大好きな芸人の番組を見る時間。勉強をする暇などなく、あっという間に1日は過ぎ去ってしまうものです。

 

 しかし、そうしたことに時間を奪われ、勉強の時間が取れないことは、ダブルパンチとなる可能性があります。

 

現在の自分のスキルアップや能力アップを望めないばかりか、将来の自分をも心配しなければならない可能性があるのです。

 

 なぜなら、子ども時代の教育から、大人になってからの勉強まで、生涯を通じての知的活動が、認知症リスクと密接に関係していることが知られているからです。

問われるのは学校に行った年数ではなく、「しっかり勉強したかどうか」

写真:Shutterstock

 

まずは、子ども時代の教育から考えていくことにしましょう。

 

お子さんがいる方は、自分のお子さんについての話だと思って読んでください。

 

実は、認知症リスクは子ども時代からその運命が左右され始めていることが知られています。

 

例えば、アメリカでの研究は、14~15歳時点での読解力が、将来的な認知症の有病率の約半分程度までを説明できるかもしれないと報告しています(参考文献2)。 

 

これは、単純に「大卒なら良いだろう」というように、学校に行った年数だけの問題とも言えません。

 

実際のところ、受けた教育の質や、実際にどれだけの学びを得たかの影響が大きいと考えられています(参考文献3,4)。

 

つまり、ただ学校に行くだけでなく、学校でしっかりと勉強に取り組むのが大切だということです。

 

これは、若い頃にしっかりと基礎的な学習を積むことで、脳の「認知予備力」を高める効果があるからだと言われています。

 

 この「認知予備力」とは、脳が持つ情報処理や問題解決能力の「蓄え」のようなものです。

 

若い頃からの学習や知的な活動を通じて、この予備力を高めておくと、年を重ねてその「蓄え」を費やさなければならなくなっても脳の機能を維持しやすくなります。

 

逆に、子どもの頃に勉強をサボってしまうと、この予備力が十分に育たず、蓄えがないため衰えのみが進んでしまい、将来的に認知症のリスクが高まる可能性があります。  

「教育」には脳の修復機能を促す可能性が

その裏付けとして、教育を通じて脳の神経細胞の修復などに関わるタンパク質濃度が上がることが観察されており、軸索形成やシナプス形成(すなわち、脳内で信号を届けるための電線やその電線のネットワークの構築)を通じて、教育は脳の修復能力を促進する可能性が報告されています(参考文献5)。

 

また、教育によって脳のネットワークの効率が上がり、加齢による変化が少なくなる可能性も指摘されています(参考文献6,7)。

 

すなわち、これをインターネット回線に例えれば、教育はインターネット回線の保護を強化し、効率を上げることで、よりスムーズで障害を受けにくいインターネット環境を構築するような介入だと言えます。

 

 さらに、教育レベルが高いと、より良い職業に就ける可能性が高くなります。

 

そうすると、経済的な余裕が生まれ、住環境や受けられる医療の選択肢が増えます。

 

また、その余裕から健康に対する意識も高まり、より健康的な生活習慣を送れるようになるかもしれません。

 

これらすべてが、将来の認知症リスクを下げることにつながっている可能性があります。

 

いずれにせよ、質の高い教育を受け、どれだけ深く学んだか、すなわち教育の質や達成度に応じて、認知症になるリスクが変化するようなのです。

大人になってからの「知的活動」が脳に与える影響

また、大人になってからの知的活動も、認知症リスクに大きな影響を与えます。

 

仕事や日常生活での「認知的刺激」、つまり頭を使う活動が豊富である人は、認知症のリスクが低いことが知られています。

 

13年以上にわたる10万人以上の人を対象とした研究では、仕事で高い認知的刺激を受けている人は、そうでない人に比べて認知症になるリスクが21%低いという結果が報告されています(参考文献5)。

 

これは、継続的に脳を使い続けることが、脳の健康維持に重要なことを示唆しています。

 

ここでいう「認知的刺激」というのは、仕事外での能動的な勉強はもちろんのこと、仕事の業務内での能動的な知的業務が含まれます。たとえば、ご紹介した研究の中では、大学講師としての授業の準備、科学者としての研究、技術者としてのソフトウェア開発などが創造的で複雑な仕事に含まれ、認知的刺激が高いと判断されている一方、レジ打ち、受付業務などシンプルでルーチンでできる受動的な仕事は、(もちろん業務としては重要ですが)認知的刺激の低い仕事と判断されています。

 

みなさんの仕事はどの程度がルーチンで済む仕事で、どの程度が能動的で想像力を働かせなければならない仕事でしょうか?

 

 それによって研究結果の当てはめ方が変わってくるかもしれません。 

 

また、特に注目すべきは、例え過去に受けた教育のレベルが低くても、仕事で高い認知的刺激を受けている人は、認知症リスクが低いと明らかにされた点です。

 

これは、たとえ子ども時代の教育が十分でなくても、大人になってから知的な活動に従事することで、挽回して認知症リスクを下げられる可能性を示唆しています。

 

 逆に、大人になってから勉強をやめたり、知的な活動に参加したりしなくなると、脳への刺激が減少します。

 

脳は使わないと機能が低下する臓器であり、日々の生活で頭を使う機会が少なくなると、認知機能が徐々に衰えてしまいます。

 

これは、筋肉を使わないと筋力が落ちるのと似ています。

 

だからこそ、社会人になっても新しいことを学んだり、趣味や活動を通じて脳を刺激し続けたりすることが重要です。

脳トレやパズルだけでは認知症は防げない

写真:Shutterstock

 

ここで重要なのは、「知的刺激」の質と量です。

 

例えば、短期間のコンピューターを使った認知トレーニング、いわゆる脳トレやパズルなどは、短期的には認知機能に小さな良い効果があるかもしれませんがその効果は極めて限定的で、長期的な効果は未だ示すことができていません(参考文献8)。

 

これは、費やした時間や継続性の問題なのかもしれません。

 

安易で付け焼き刃な「脳トレ」をちょっとやっただけではダメなのです。

 

広告では、まるで認知症を防ぐ魔法のように謳われてしまっているかもしれませんが。

 

 これに対して、仕事での知的刺激は長期間にわたって続くため、より効果的だと考えられます。

 

また、仕事以外でも、日常生活の中で継続的に知的な活動を行うことこそが重要なのです。 

 

一方で、知的活動とは正反対の影響を与える可能性があるのが、ソーシャルメディアの過剰な利用かもしれません。

 

一見、脳への刺激になっているように見えても、うつや不安につながったり(参考文献9)、睡眠の質を低下させたり(参考文献10)することで、結果として脳の健康には悪影響を与えてしまう可能性があります。 

 

以上から、子ども時代の勉強をサボることや、大人になって知的活動をやめてしまうことが認知症リスクにつながる過程は、次のようにまとめることができます。

 

 1. 子ども時代の教育は認知予備力を高め、将来の脳の健康を支える基礎を作る

 

 2. 大人になってからの知的活動は、認知機能を維持・向上させ、脳の健康を保つ

 

 3. 継続的な知的活動は、社会経済的な状況を支えることにも繋がり、間接的に認知症リスクを低下させる可能性がある 

 

 4. 反対に、知的活動の不足やソーシャルメディアの過剰利用は、認知症リスクを高める可能性がある

 

 このように、子ども時代からの教育、そして大人になってからも継続的に知的活動に従事することがあなたを認知症リスクから守ることにつながります。

 

また、仮にどこかで勉強をサボって負債を抱えてしまっても、その後の頑張りでその負債を返済し、貯金ができる可能性があります。

 

 逆に、知的な活動が少なく、勉強の習慣がない人は、一歩ずつ認知症を近づけてしまっていると考えられます。

 

   前回記事「SNSやYouTubeの見すぎは「うつ病」の引き金に。

 

うつ病の治療は「認知症の予防薬」にもなる!【山田悠史医師】」>>  

 

山田 悠史

 

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