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症状が重くなくても精神科に行っていい。軽度のうつを経験した今伝えたいこと【体験談】
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症状が重くなくても精神科に行っていい。軽度のうつを経験した今伝えたいこと【体験談】
イラストレーターでコミックエッセイストのハラユキさんは、2022年に軽度のうつの診断を受けました。
『誰でもみんなうつになる 私のプチうつ脱出ガイド』(KADOKAWA)では、ハラユキさんが診断を受けるまでの経緯や、治すために試したこと、他の精神疾患の方の経験談が描かれています。
本書では、病院に行った方がいいタイミング・病院選び・薬に関する疑問など、聞きにくいものの、悩むポイントについても精神科医に取材しています。
ハラユキさんに、メンタルクリニック受診のご経験や、「休むこと」へのお考えを伺いました。
<漫画>『誰でもみんなうつになる 私のプチうつ脱出ガイド』(KADOKAWA)より
■症状が重くなくても行ってもいい
――ハラユキさんは、元々メンタルクリニックについてどんなイメージを持っていましたか?
私は完璧主義や几帳面などの「うつになりやすい特徴」には当てはまらなかったですし、うつになった話をしたら「意外!」という反応が返ってくることも多かったくらいで、人生で関わることのない縁の遠い診療科だと思っていました。
ただ今振り返ると、ワンオペ育児で大変だった頃は育児ノイローゼに片足を突っ込んでいたと思います。
でも10年以上前にはメンタルクリニックへ行くという発想がありませんでした。
その後『ほしいのは「つかれない家族」』(講談社)での育児の取材や、オンラインコミュニティで読者さんから、育児中のうつや、夫婦関係でメンタルクリニックにかかっているなど、メンタル不調の話をたくさん聞いたんです。
生活に地続きのものだとわかって、「私もワンオペ育児でしんどかった頃、うつだったのかもしれない」と身近に感じるようになりました。
以前は「死にたい」と思うくらい、つらい状態であったり、命の危機が迫っているような人が行く場所だと思っていました。
今回の不調を感じる前から、K先生という精神科医の知人に話を聞く機会があって、症状が重くなくても、軽い状態でも、とりあえず相談に行って意見を聞いてみていいとわかって、ハードルが下がっていました。
だから「次にメンタルで困ったことがあったら、行ってみよう」くらいの気軽な気持ちで行くことができたんです。
――実際に受診してみていかがでしたか?
私が行ったところは、「クローバークリニック」という名称で、入口に「精神科」「メンタルクリニック」といった言葉が使われていなくて、ハードルを感じている人への配慮が感じられました。
クリニック内の様子も、耳鼻科や眼科など、ほかの診療科と変わらず、「精神科」を怖いと感じる人や特別に感じてしまう気持ちへの気遣いもありました。
私は軽度のうつと診断されて、最初は自分の症状について「これぐらいで、うつなんだ」と思いました。
でも私の場合は早めに受診したことがよかったのであって、ひどくなると、動けなくなったり死にたくなったりすることもあり得たんです。
すごくつらい状態で病院探しをするのはすごく大変ですよね。
私は寝込むほどでなくても、病院探しがしんどかったです。
幸いK先生に相談しながら病院探しができたので、合う病院を見つけられました。
■今後のために休まなきゃいけない
――「うつは休むことが大事」と先生も言っていて、本にも書いてあったとのことですが、なかなか仕事を休めない人も多いですよね。ハラユキさんは仕事を休むことについてどうお考えでしたか?
私の場合は、タイミングが良かったですね。
フリーランスになったばかりでなく、当時抱えていたお仕事も長い付き合いのある取引先が多くて、「休みたい」と言いやすかった。
加えて、今後仕事を続けていくためには、休まなきゃいけないと思ったんです。
会社によるものの、昔よりは社員がメンタル不調が原因で休むことをケアしなきゃいけないという認識は高まってきていると感じます。
それでも「休みたい」と言いにくい状況に置かれている人がたくさんいらっしゃるのはわかっているので、簡単に「みんな休むといいよ」とは言いにくいです。
ただ「休まないと悪化する」という話を精神科・心療内科の世界では聞きます。
本書では、他の方の無理して悪化した経験談も載せました。
先のことを考えると、休めないことでのリスクもあるんですよね。
私はクライアントさんには恵まれていたものの、フリーランスなので、休めばその分収入が減るので悩みました。
本当はゆっくり休んだ方がいいのですが、最初に期間を決めて、「期限内に治すぞ!」という気持ちが強かったです。
だからこそ本書で描いたように、色々なことを試しました。
――「休みやすさ」は会社によってバラつきがある印象です。
東洋経済オンラインの連載で、フランスの働き方の取材をしました。
フランスは最低2週間のバカンスを取るくらい、長期休暇の取れる社会ですが、どうやってそういう社会になったのか。
始まりはなんと1936年だそうです!
今のフランスでは考えられないですが、「長期休暇を取ったら仕事が回らない」という考えがあって、休むことへの抵抗感があったらしいんです。
それでも政府は試行錯誤を繰り返して、国民にバカンスを定着させていった。
日本の働き方改革が始まったのは2019年。始まったばかりなので、まだ休みを言い出しにくかったり、トラブルが起きたりします。
「休みやすさ」は国や社会のシステムの問題である部分が大きくて、そこに一人で立ち向かうのは難しい。
でも不調を誤魔化し続けたら、いつか限界が訪れてしまうと思います。
悪化してしまうよりは治すことに集中した方がいいですし、その考えが浸透してほしいですね。
■大丈夫だと思っていても、傷ついていた
――お仕事上、SNS利用は欠かせない中、本作ではSNSとの距離感を見直していましたが、どんなことに気を付けていたか教えてください。
『ほしいのは「つかれない家族」』のような男女の家事育児分担のテーマは、攻撃的なコメントがつくこともあって、怒ったり落ち込んだりしていたのですが、だんだんと慣れて、ミスはすぐに謝るとか、むやみに討論しないとか、やり取りしても無駄なタイプには近寄らないとか、批判も勉強になることはあるので受け取るとか、自分なりのSNS対応策を確立していました。
ただ、今回のように自分の土台が弱ってしまうと、大丈夫だったものが堪えてしまうのだとわかりました。
頭では対処できていても、心にはずっと溜まっているものがあったんですよね。
このときはSNSの時間を調整しようと思って、新たな対策を描いたものの、最近はよくないと思いながらも、スマホでのSNS利用は復活しつつあります。
フリーランスで一人でいることが多いので、SNSは人とのコミュニケーションの時間でもある。
精神的な健康や、情報を得ている部分もありますし、猫のかわいい写真が流れてくることもありますし(笑)。
今後も右往左往しながらSNSと向き合っていくのだと思います。
今回、自分の中で「これくらいを越えると危険」なラインがわかったり、自覚はなくても傷ついたり疲れたりはしていることに気づけたのはよかったです。
※後編に続きます
【プロフィール】
ハラユキ コミックエッセイスト、イラストレーター。著書に『週末プチ冒険はじめました』(KADOKAWA)、『ほしいのはつかれない家族』(講談社)、『オラ!スペイン旅ごはん』(イーストプレス)など。 2年間のスペイン滞在をきっかけに、海外でも取材活動をスタート。家事育児分担や家族のコミュニケーションをテーマにしたオンライン・コミュニティ「バル・ハラユキ」も主催・運営中。 ■X:@yukky_kk ■Instagram:@yukky_kkk
インタビュー・文/雪代すみれ
雪代すみれ
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