僕が死ぬ日・・生まれる日 -78ページ目

僕が死ぬ日・・生まれる日

僕が死んで・・生まれる日までの記録

義明は1度上げた腰を再び下ろした。


そして小雪からウーロン茶を受け取ると隣に座った男を横目で観察し始めた。


高そうなスーツに身を包み、腕にはシルバーの外国製の高価な腕時計・・・


こいつ・・金貸しか??


そう思いながらふと、スーツの胸元を見るとそこには・・


三菱のバッチをつけている。


こいつ・・三菱の社員か???エリートって訳か・・


「銀行のお仕事は大変でしょ小池さん・・・」


小雪はそんな義明の疑問に答えるように彼にそう話しかける。


「ああ・・今は景気が良いのでね!でも、何時まで続くか・・

何でも石油が高騰する兆しがあるようで・・そんな事より・・」


彼はそんな話をしに来たのでは無いと言いたげにそう呟いた。


「まぁ~まぁ~ビールでも飲みますか??」


小雪はそんな彼をあしらう様にそうビールを勧めた。


どうも彼は義明の存在が気になるようで何度も義明を横目でチラ、チラ見つめた。


「こちらの方は??」


そんな小池の問いに小雪は・・


「ああ・・彼は私が住んでいる長屋の方で浅田さんと言うのよ!

ほら、浅田商店の社長さん・・」


「浅田商店・・あの・・浅田商店ですか?」


そんな小池の言葉に義明は笑いながら言った。


「そうです!あの浅田商店です・・」と


「そうですか!あんな急成長の業績を伸ばしている会社の社長さんも・・

こんな店で飲まれるんですね!

失礼しました・・私、こう言う者です。」


そう彼は言いながら胸元から自分の名刺を差し出す。


三菱銀行 三島支店 融資課 課長


小池 鉄也

それが彼の肩書きであった。


「いや~小雪さんに何度もアタックをしてるのですか!

なかなか首を縦に振っていただけなくって・・」


小池は聞いても居ないのにそんな事を話し出す。


「小雪さんがウチの融資の相談に来た時に偶然に私が担当しまして・・

その時、一目ぼれで・・

私と結婚をすれば、こんな薄汚い飲み屋なんかで苦労する事も無いのに・・

まったく・・女心はややこしい・・」


そんな言葉に少しだけ義明はムッと不機嫌になった。


その反面、この店の経営状態があまり良くない事を初めて知った。


小雪はあまり自分の事を話したがらない。


この土地の人間ではない事は知って居たがそれ以外は義明は何も知らなかった。


「処で小雪さんお返事は???」


小池は自信満々でそう問いただす。


「ええ・・何度もお返事をしている通りに・・

こんな水商売の私では・・

申し訳ありません。いろいろと良くして頂いているのに・・

諦めてください。」


そんな小雪の言葉に小池は不機嫌そうに・・


「私は諦めませんよ!必ずあなたをモノにしてみせる!」


そう言うとグラスのお酒を飲み干し店を後にした。


「あらあら・・義明さん!随分と見っとも無い所を・・

こんな女の何処が良いのか?

エリートさんの考えは理解できないわ!」


そう言いながら小雪は笑った。


義明は勘定をすませると店を後にした。


それと同時に数人の人相の悪い男達が入って来た。


「ごめんよ!小雪さん!いい加減・・金!返してくれよ!」


そうわめき散らしながら男達は店の中に居た他の客をにらみつける。


「晃!お前、1人で帰れるか??」


「う・・うん!大丈夫だけど・・」


「なんか、小雪さん、困っているようなので少し残るわ!俺・・」


そう義明は呟くと晃を自宅に帰し再びのれんをくぐった。


「なんだ!随分と今夜は騒がしいな~~」


そんな言葉を呟きながら・・


※今回のお話はこれでお終いです。

それは皆様!ごきげんよ~~う(=⌒▽⌒=)


本当に大切な者の価値は失って初めて知る事が出来る・・


あたり前のように側に居てくれる人間の存在を・・


人はあたり前だと何時の間にか感じてしまい。


その大切を見失ってしまう。


そして、そのあたり前が消えた時に・・


初めてその大切さに気がつくのだ。


人間とは・・・


なんと愚かな生き物なのだろうか・・


本当に・・・


晃は小学校に入学した。


入学式の日、義明は着慣れないスーツに久しぶりに袖を通した。


「孫にも衣装ね!」


そんな義明を見ながら小雪は笑いながら言った・・


「お前に言われたくね~~よ!」


義明はそんな汚い言葉を使いながら嬉しそうに笑った。


晃の小学校には3つの幼稚園から生徒が集まった。


初めての教室、初めて出会う仲間達・・


気が強い晃であったが、そんな初めてに少しだけ緊張した。


そして・・


何時もあたり前のように自分の前に座って居た真子が居ない事に・・


なんとなく寂しさを感じていた。


「お前!共栄幼稚園の晃だろ!

結構、強いらしいじゃん!」


不意に後ろの席の生徒が晃に話しかける。


彼の名前は加藤建一・・


村の西にある韮山幼稚園の園児であった。


「ああ・・お前は??

だから・・何??」


そんなシラケタ言い方の晃に建一は言った・・・


「お前・・生意気だな!

今まではそれで通用したかもしれないけど・・

これからは俺が居るからそうは行かないぞ!」


建一は晃を睨みつけながらそう呟いた。


「ケッ!偉そうに・・」


晃はそう呟きなら舌打をした。


悦子が死んで6年になろうとしていた。


義明はそれなり成功をしていた。


店も3店舗になり長屋に住む人間の何倍もの金を稼いでいた。


「義明さん!そろそろここを出て家でも買ったら??」


そんな事を言う住人も居たが義明はそんな時に何時も笑って言った。


「俺はここが好きなんだ・・

ここには何時も悦子が居てくれるきがするから・・」と


義明にお見合いの話が無い訳ではなかった。


長屋の世話焼き女房達が次々に写真を彼の家に持って来る。


しかし、義明は何時もそんな写真を眺めながらすまなそうに言った・・


「すいません!悦子、以上の女は居ないから・・」と


そんな義明を見つめながら小雪は何時も暗い気持ちになっていた。


何時までも悦子の亡霊に縛れて居たので・・


悦子、自身が可哀想よ!


彼女の一番の願いは、あなたと晃君の幸せなのだから・・と


小雪は美人であった。


年はもう直ぐ30歳を越えるくらいで義明とそんなに年は変わらない。


何時も義明の世話をしている小雪に長屋の女が言った事がある。


「小雪ちゃんが義明さんと結婚すれば良いのに・・」と・・


そんな話がある度に小雪は笑いながら言った・・


「こんな水商売の女・・あの人には不釣合いだわ!」と・・


ある日の夜、義明と晃は小雪の店で夕食を食べていた。


「義明さん!たまには一杯飲まれますか??」


小雪は笑いながら義明に言った・・


「いいや・・酒はやめたので・・」


義明の返事は何時も同じであった。


義明は最後にこの店で長屋の男達と飲んだ後・・・


6年間、ひと口もお酒を飲んで居なかった。


それが義明の意地であった。


そんな彼を彼を知らない人間は意思が強い男と言った・・


しかし、小雪は・・哀れな可哀想な男だと涙するのであった。


時間は夜の8時をまわろうとしていた。


「晃、!そろそろ帰ろうか!」


そう義明が晃に言った瞬間・・・


小雪の店のドアが突然に開かれた。


義明は無意識に開かれたドアの方向を見つめた。


そこには1人の男性が立っていた。


「小雪さん!今日こそはちゃんとしたお返事を頂きたい・・」


そう呟きながらその男はドシンと義明の隣のカウンター席に越しかけた。


ちゃんとした返事???


義明は帰るのを少しだけ止める事にした。


「小雪さん・・ウーロン茶を一杯もらえますか??」


そんな義明の言葉に小雪はつらそうな顔をした。


※今回のお話はこれでお終い・・

皆様!ごきげんよ~~~う(=⌒▽⌒=)

晃はボロボロになりながら自宅に戻った。


家には既に義明か帰宅をしており夕食の支度をしていた。


「おい!晃・・随分と男前になって帰って来たな!」


義明はそう笑いながら晃の頭を数回、ポン!と叩いた。


「う・・・うん!ちょっと・・」


義明は特にこんな時に晃を追及する事は無かった。


子供には子供の世界がある。


そして幾ら幼い子供でもそれを解決して行くの自分自身なのだから・・


だから、晃が話せば親身に聞くけれど彼が話さない時は何も聞かない・・


それが、親子のルールであった。


「お前!泥だらけだぞ!風呂にでも行くか!」


義明は手際よく夕食の支度を済ませると風呂に行く用意をした。


彼らの家には風呂が無かった。


この長屋に住む全ての人間の家に風呂は無い。


町営の温泉場が近くにあり町の住人は無料でその温泉に入る事が出来た。


自宅から数分の所にその温泉はあった。


湯船に浸かり義明は晃を抱っこしながら鼻歌を歌い出す・・


「晃!何があったか知らないけど・・

その悔しさを忘れるんじゃないぞ!

良いか!力だ!全ての望を叶えるのは力だ!

それを忘れるな!

力さえあれば・・悔し涙を流さなくて済む人生を送れるのだから・・」


晃はただ、何も言わず小さく頷いた・・


次の日の早朝に晃は山田屋に向った。


手には真子から貰ったキーホルダーと同じタイプの色違いの物を握り締めていた。


山田屋の前に小型のトラックが止まっていて真子の荷物を積み込んでいた。


堤防の上から晃はその光景を眺めていた。


すると一瞬、外に出て来た真子と目が合った。


晃は目で真子に合図をした。


「こっちに来いよ!」と・・


真子は大人の目を盗むようにその場を抜け出し堤防を登って来た。


「見送りに来てくれたの??」


「ああ・・どうせ見送りに来てくれる奴なんて居ないと思ってね!」


「うん・・別に誰にも言っていないし・・

それにそんな友達も居ないし・・

でも、晃君が来てくれたから!私、嬉しい・・」


そう呟きながら真子は笑った・・


「っつたく!これ!」


晃は照れくさそうにズボンのポケットに手を入れた・・


「これ!やるよ!お前に・・」


チリン~~~チリン~~~


数回、鈴の鳴った・・


「あっ!私があげたのと色違いだね!

お揃いだね!

大切にするよ!絶対に・・

そうだ!多分、今度、会う時は二人とも凄く大きくなっていると思うから・・

この鈴を目印にしようよ!

今度会う時に絶対にこの鈴を持って来てね!」


「ああ・・解ったよ!お前・・ガンバレよ!」


晃はそう呟いた。


「真子~~~何処に居るんだ!真子~~出発するぞ!」


そんな真吾の声が聞こえた。


「行かないと・・本当にお別れだね・・」


「ああ・・お別れだ・・」


不意に晃の右の手の平に優しい温もりが伝わる・・


「握手・・・」


真子はそう微笑みながら言った。


もしも、二人が大人だったらきっと、別れの口付けをする事だろう・・


お互いの心を忘れないように・・・


しかし、そんな行為をするにはまだ、二人は幼すぎたのかもしれない・・


走り去るトラックを堤防の上から見つめながら・・


晃は大きく右手を上に上げだ・・


「バイバイ・・真子・・」


そんな言葉を呟きながら・・


あと数日で小学校に入学する・・


そんなある春の休日の話であった。