義明は1度上げた腰を再び下ろした。
そして小雪からウーロン茶を受け取ると隣に座った男を横目で観察し始めた。
高そうなスーツに身を包み、腕にはシルバーの外国製の高価な腕時計・・・
こいつ・・金貸しか??
そう思いながらふと、スーツの胸元を見るとそこには・・
三菱のバッチをつけている。
こいつ・・三菱の社員か???エリートって訳か・・
「銀行のお仕事は大変でしょ小池さん・・・」
小雪はそんな義明の疑問に答えるように彼にそう話しかける。
「ああ・・今は景気が良いのでね!でも、何時まで続くか・・
何でも石油が高騰する兆しがあるようで・・そんな事より・・」
彼はそんな話をしに来たのでは無いと言いたげにそう呟いた。
「まぁ~まぁ~ビールでも飲みますか??」
小雪はそんな彼をあしらう様にそうビールを勧めた。
どうも彼は義明の存在が気になるようで何度も義明を横目でチラ、チラ見つめた。
「こちらの方は??」
そんな小池の問いに小雪は・・
「ああ・・彼は私が住んでいる長屋の方で浅田さんと言うのよ!
ほら、浅田商店の社長さん・・」
「浅田商店・・あの・・浅田商店ですか?」
そんな小池の言葉に義明は笑いながら言った。
「そうです!あの浅田商店です・・」と
「そうですか!あんな急成長の業績を伸ばしている会社の社長さんも・・
こんな店で飲まれるんですね!
失礼しました・・私、こう言う者です。」
そう彼は言いながら胸元から自分の名刺を差し出す。
三菱銀行 三島支店 融資課 課長
小池 鉄也
それが彼の肩書きであった。
「いや~小雪さんに何度もアタックをしてるのですか!
なかなか首を縦に振っていただけなくって・・」
小池は聞いても居ないのにそんな事を話し出す。
「小雪さんがウチの融資の相談に来た時に偶然に私が担当しまして・・
その時、一目ぼれで・・
私と結婚をすれば、こんな薄汚い飲み屋なんかで苦労する事も無いのに・・
まったく・・女心はややこしい・・」
そんな言葉に少しだけ義明はムッと不機嫌になった。
その反面、この店の経営状態があまり良くない事を初めて知った。
小雪はあまり自分の事を話したがらない。
この土地の人間ではない事は知って居たがそれ以外は義明は何も知らなかった。
「処で小雪さんお返事は???」
小池は自信満々でそう問いただす。
「ええ・・何度もお返事をしている通りに・・
こんな水商売の私では・・
申し訳ありません。いろいろと良くして頂いているのに・・
諦めてください。」
そんな小雪の言葉に小池は不機嫌そうに・・
「私は諦めませんよ!必ずあなたをモノにしてみせる!」
そう言うとグラスのお酒を飲み干し店を後にした。
「あらあら・・義明さん!随分と見っとも無い所を・・
こんな女の何処が良いのか?
エリートさんの考えは理解できないわ!」
そう言いながら小雪は笑った。
義明は勘定をすませると店を後にした。
それと同時に数人の人相の悪い男達が入って来た。
「ごめんよ!小雪さん!いい加減・・金!返してくれよ!」
そうわめき散らしながら男達は店の中に居た他の客をにらみつける。
「晃!お前、1人で帰れるか??」
「う・・うん!大丈夫だけど・・」
「なんか、小雪さん、困っているようなので少し残るわ!俺・・」
そう義明は呟くと晃を自宅に帰し再びのれんをくぐった。
「なんだ!随分と今夜は騒がしいな~~」
そんな言葉を呟きながら・・
※今回のお話はこれでお終いです。
それは皆様!ごきげんよ~~う(=⌒▽⌒=)